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ミッション イーリスの街

本日 2回目の投稿です。

宜しくお願いします。



王都を発って3日目の朝を迎えている。アルルちゃんの時以外には盗賊やモンスターの襲撃も無い。

王都向けの馬車や徒歩での旅人とはすれ違ったが特に問題も無く時は過ぎて行った。


「今日の夕方前にはイーリスに到着する予定だ。」

「タリリ、道しるべでも有ったのか?」

「そんなもの見てないぞ。」

「じゃあ、どうして夕方までに着くって分かるんだ?」

「女の勘だ。」

「そうか。」


スマホを操作して地図を見るが、先はグレーで塗り潰されている。少しだけ期待したが駄目だった。


「ちょっと、借りますねー。」


そう言うとジェシカさんは窓から伸ばした手で、スマホを摘み上げると足早に車内に戻って行った。


「奴は無敵だな。」


スマホを奪われ、手持ち無沙汰な俺にタリリは手綱を持ったままで話し掛けてくる。


「ああ、自由すぎるな。」


2人でジェシカさんの感想を言い合っていると、車内からアルルちゃんの声が聞こえて来た。


「み、見えました。こんにちはです。」

「こんにちはー。」


どうやらスマホを使って、ジェシカさんの姿を見える様にした様だ。アルルちゃんはスマホの中のジェシカさんに手を振っているが、ジェシカさんは直ぐ横でアルルちゃんに振っているそんなおかしな光景だった。


「ジェシカお姉ちゃんとお話ししてたんだ。」

「はいです。レンちゃん、フランシスカ、マリリありがとうです。」

「私も普通に話しちゃってたから。」

「仕方ないですわ、お友達を騙している様でお辛そうでしたから。」

「この方法を忘れてたね、ごめんね。」

「ううんです、ありがとうです。」

「けどカレンお姉ちゃんがお話ししなくてもそこが空いてるから誰かお座りしてるのかなって。」


アルルちゃんが指差すのはもちろん3人掛けシートの中央部分でジェシカさんが座っているところだ。両隣にはフランシスカさんとマリリさんが座っており、アルルちゃんの目には不自然に中央部が空いている様に見えている。


「馬車が揺れた時に何も無いのに、フランシスカお姉ちゃんとマリリお姉ちゃんが気にしてたの。」


「あら。」

「カレンさんの事言えませんわ。」


アルルちゃんに1本取られた2人は、お互いに顔を見合わせて笑い合っていた。その間のジェシカさんは少し居心地が悪そうに両脇の2人の顔を交互に眺めていた。


女の勘は、いやタリリの勘は当たった。そろそろ今夜の野営地を探さなくてはと考え出した時に、イーリスの街の外壁が見えて来た。


空が赤く染まる前にイーリスの街に着いたが、王都からの馬車が列を成している。入場審査と入市税の徴収が同時に行われている、その順番待ちの列だ。


「こうやって並ぶのは新鮮ですわ。」

「私は早く入りたいですー。」


ミカンちゃんもアルルちゃんも大人しく待っているのに若干1名が往生際悪く抵抗している。その脚をバタつかせたオーバーリアクションに笑いが起きている。


「お疲れ様です。採掘者7名でリーリスへ行く途中です。」


「そうか、中を検めるぞ。」


空が暗くなりかけた時に漸く順番が回ってきた。対応しているのは革の鎧を着た青年の兵士だ。


兵士は車内を見渡した後、馬車の周囲を確認していた兵士と視線を交わすと入市税を要求して来たので革袋からコインを取り出し渡したが、お釣りは返って来なかった。


「あぶねー。金貨しか用意してなかったらどうなってたか。」


俺が独りで焦っているのを、タリリは完全に無視をして馬車を街の中へと進めて行く。少し気まずいが気を取り直して宿屋を探しながら、タリリと意見を交わして行く。


「あそこはどうだ?結構広いぞ。」

「もう少し門から離れるぞ、この辺は高そうだ。」


手綱を握るタリリは手強く、俺の意見など聞く耳は持たない様だ。そうして辿り着いた宿屋はツバメの巣亭という家族で経営している2階建の普通の宿屋だった。


部屋に入るなり、ベッドに飛び込むカレンとジェシカさん。


「うーん。ベットも普通ね。」

「そうですねー。これなら小屋のベッドの方が良いですねー。」


今までの野営は地面の上に寝袋で横になっていた為に、腰や背中が痛くて堪らなかった。だから身体を休める意味でも宿屋に泊まる事が必要だった。


「食料を買い込んで、ラヴァンドの街に直接向かいましょ。」


「入市税も審査の時間も勿体ないですからねー。」


今後のルートについてカレンとジェシカさんが話しているとタリリが部屋のドアを開けて話しかけて来た。


「この街ではダンジョンは無いのか、ジェシカ?」

「え、ダンジョンですか?」


「タリリ、発見したのはコイツとミカンちゃんじゃない。忘れたの?」


驚くジェシカさんの代わりにカレンがフォローを入れる。


「そのスマホとか、虫の知らせとかは無いのか。」

「スマホには行った場所しか表示されませんし、虫の知らせなんて有りませんよー。」


ジェシカさんの言葉でタリリは残念そうに、マリリさんの待つ部屋に戻ろうと踵を返した。その背中にジェシカさんは声を掛けた。


「じゃあダンジョン探しに行きましょうかー。きっと有りますって。」


クブルムのダンジョンで10年振りの大発見なのに、ジェシカさんの強気な発言の根拠はなんだろうか。


結局、タリリ、マリリさん、ジェシカさん、俺の4人でダンジョン探索という名目で夜の街へと繰り出して行った。


「タリリ、どこが怪しいと思う?」

「洞窟が有ればいいが、無ければ墓場だな。」

「ええーお墓ですか?」

「タリリ、墓地は教会が管理しているのですよ。あれば既に見つかってますわ。」


「マリリさん、ダンジョンが墓地にある事も有るんですか?」

「今までは見つかっていませんが、ダンジョンがどこに出来るかは分かっていませんので、可能性はゼロでは有りません。」


マリリさんの言葉でタリリがドヤ顔をしているのが少し気になるが、今の散策もタリリのストレス解消が目的だから大目に見よう。


「ぴろりろーん!」

(ミッション スリを捕まえろ。 制限時間 180秒)


「ぴろりろーん!」

(ミッション 争いを止めろ。 制限時間 180秒)


「ぴろりろーん!」

(ミッション 花瓶を避けろ 制限時間 10秒)


「え?!」

「3つもですか!」

「カケル早くしろ!」

「1番下からお願いしますー。」


ジェシカさんの指示で3つ目から読み上げる。


「花瓶を避けろ、今すぐ!」

「花瓶だと?」


俺の視界には店の軒先に何鉢か並んでいるのが見えるが避けるような距離では無い。


「マリリさん上です!」


ジェシカさんの声で確認もせずにマリリさんはストーンウォールを頭上に展開する。同時に陶器の割れる音が響く。


「カケルさん、こっちは大丈夫ですので次を。」


俺はマリリさんに頷くと


「スリを捕まえろ、争いを止めろ 残り170秒です。」


どこからスリが逃げてくるかと、辺りを見回しているとドンと衝撃を感じた。とっさに革袋を確認するが無い。


「俺かよ!」

「何?!」

「待ちなさい、アースステップ。」

「逮捕だー!」


マリリさんのアースステップで躓き、男がもんどりうって転がって行く。


「うわぁ!」

「ん?何だコリャ。」


その先には革の鎧を着た採掘者達がいて、足元に転がって来た男を避けている。


「汚ねえな。」


革の鎧を着た男は、暴言を吐きながら転がる男を蹴り上げた。


「クソっ!」


どちらかの男の声が上がる。今倒れているのは革の鎧を着た男だ。軸足のブーツに深い切れ込みが入っている。


「よくもやりやがったな。」


革鎧の男の仲間が武器を抜いて、スリの男に相対する。1対3だ。スリはナイフを構えているが余裕はなさそうだ。


「こら、金返せ。」

「アースウォール。」


スリの男を囲むように土の壁が聳え立つ。


俺は助走をつけ跳びあがると、壁の上に手を掛けて上半身を乗り上げる。


「おい、アイツらに殺されたく無かったら金返せ。」


「ぴろりろーん!」

(ミッション 避けろ 制限時間 1秒)


スリはナイフを俺の喉を目掛けて振り抜いて来た、間一髪で致命傷を避ける事が出来た俺は、顎先から流血したまま、無様にも全身を地面に強打し身動きが取れないでいた。


もしこの場に冷静な者がいれば、カケルの身体がボヤけて見えた事だろう。


「カケル!」

「ヒール。」


「おい、兄さん大丈夫か?俺らにもコイツを貸してもらえないか。」


2つのカウンターは、まだどちらも停止していない。スリは捕まえている気がするが無情にも制限時間は減り続けている。


「構わないが、どうすれば良い?」


俺は座ったまま採掘者達に返事を返す。


「ここを開けてくれねえか?」

「マリリさん出来ます?」


マリリさんは頷いている、問題無いようだ。


「開けるけど逃すなよ。」


男達は鼻で笑っているので、俺はマリリさんにお願いした。


採掘者の前壁のみが崩れ落ちて土に還っていく。


「死ねや!」

「チッ。」


採掘者はショートソードを壁で囲まれた中央部へ振り下ろしていくが、スリの姿はそこには無い。


スリは反対の壁に手を掛け、身体を引き寄せると全身のバネを使い壁を蹴って採掘者達の真ん中へ飛び込んで行った。


ショートソードを振り抜いた男は、すれ違い様に首を切られると、その姿がブレた。


男の背後に控えていたハンマーを両手で持っていた採掘者はスリの着地と同時にハンマーを持つ両手首切断されている。


残りは杖を持つ男だけだ。杖を持つ男は瞬く間に仲間がやられた為に慌てて魔法を発動させる。1メートル程ある巨大な火の玉が男の前に出現する。


「避けろ!」


俺は杖を持つ男に声をかけるが、男はスリの動きが見えておらず魔法を放ってしまう。


「何?!」


それは杖の男の断末魔だった。スリの男が投げたナイフは火の玉を突き抜けると首に深く刺さった。


スリはもう1本のナイフを取り出すと、足首をケガして動けなくなっている採掘者の胸に振り下ろした。

革の鎧の男はハンドアックスで迎撃しようと試みたが無残にも空を切る。スリのナイフは革の鎧を貫いている。


「タリリエアリアルスマッシュ!」

「ストーン!アースウォール!」

「バンバンバンバンバン」


タリリのショートソードは緑の光を帯び、スリに迫る。それを受け止めればマリリさんのストーンの餌食になる完璧なタイミングだ。

スリは突き立てたナイフをそのままに体を起こす。


「クッ!」


スリはナイフをいつの間にか両手に持っており、右手のナイフでストーンを左手のナイフでタリリのショートソードを受け止めている。


そこに俺のレーザーの連打が追い打ちをかけていく。夜の為にダメージには期待出来ないが、スリは片膝を着いた。


「タリリ、エアリアルスマッシュトリプル!」

「ストーン、ストーン。」


そこにタリリとマリリさんの更なる追い討ちが迫る。タリリの緑の斬撃が3連続で右左右と飛び、スリの頭上にストーンが落下する。


スリはストーンを避ける為に大きく、背後に跳ぶがタリリの最後の斬撃がスリの上着を切り裂いた。しかし、決定打にはなってはいない。


「タリリエア」


タリリが追い打ちをするべく、踏み込もうとした瞬間にスリは両手のナイフをタリリとマリリさんに投げつけて来た。


「ストーンウォール、ストーンウォール」


そのナイフはマリリさんの作り出した壁によって、弾き返されたが、スリはその壁でマリリさんの視線を遮る様に動くと逃亡を図った。


直接目で追えなかったのは、僅かな時間だったが完全に見失ってしまった。


俺たちはスリの反撃を恐れて、その場で周囲を警戒していた。しばらく待っても襲撃は無く、街の喧騒も戻って来た。その時になってマリリさんが採掘者の治療に向かったが4人とも既に手遅れで事切れていた。


「ミッション失敗」の文字が赤く、目の前に2つ並んでいる。

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