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ミッション 三姉妹

「ラヴァンドの町はリーリオまで行くよりも、リーリスからの方が近いと思われますわ。」

「では、イーリスからリーリスまではこのまま街道を進み、リーリスからラヴァンドへはエンサータの街へ進路を取ればいいのだな。」


フランシスカさんの案内を元にタリリが行程を確認しているが、「リ」ばかりでよく分からない。タリリのリにも腹が立って来た。もちろんマリリさんは別だ。


「ミカンお姉ちゃんいいなー。勇者さんのお人形さん持ってるんだ。」


ミカンちゃんはアルルちゃんに王都で買った勇者の人形を貸してあげて一緒に遊んでいる。


「お父さんに私も欲しいって頼んだらね、お姫様のお人形を買って来たんだよ。私が女の子だからって、もう、そうじゃないのにね。」


「はい、最初は勇者です。決まりです。」

「そうだよね、決まりなのにね。」


2人は勇者人形の事で話が合うみたいで、盗賊に攫われた事も忘れて熱心に話し合っている。


「カレンさん、どうします?」

「どうって?」

「地方の悪徳商人でしたら、公爵家の名前を出せば、証拠を問わずに取り潰す事は簡単ですが。」

「え、ええ。それは最終手段にするわ。」

「そうですよー。フランシスカさんはお忍び旅行の最中なんですよ。印籠をだすのは最後ですよー。」

「え、お忍び旅行ですか?印籠とは?」


ジェシカさんのトンデモ発言にフランシスカさんは翻弄され気味になっている。ただカレンの言う通りフランシスカさんの案は地元の貴族が介入してきた時に使わせて貰おう。もう転勤はいやだ。転勤先に辿り着いていない身分で申し訳ないが嫌と言っておく。


辺りは少し暗くなり始めている。セーフゾーンを越えて1時間位した街道沿いの脇道に馬車を留めている。


「ここなら良いんじゃない。結構広いし。」


カレンのいる場所は脇道の横の草はらである。周りは木々に囲まれて、その1部分だけがポッカリと草はらになっている。


「はい、カケルさん。お願いしますね。」


ジェシカさんが差し出す白いポケットに手を入れ、俺とジェシカさんの足に気を付けて小屋を取り出した。練習した甲斐あって大した衝撃も無く小屋を設置出来た。


「完璧ですー。」

「カレン、どうよ。」


そこにはドヤ顔の俺とジェシカさんがいた。ただアルルちゃんだけは目を大きく見開いて、口を開けて固まっていた。


「あっ、忘れてたわ。フランシスカさんどうしよう。」

「でしたわね。秘密なのをすっかり忘れてましたわ。」


カレンはアルルちゃんに内緒にしてもらう様に約束していたが、いまさらだと思う。


「さあ、アルルちゃんも入って。私がお風呂するから、アンタ、夕飯お願い出来る?」

「了解。風呂壊すなよ。きちんと加減しろよ。」

「ファイアでしないわよ!加護石つかうわよ。」


カレンはプンプンとしながらも、ミカンちゃんとアルルちゃんの手を引いて、歌を唄いながら風呂場へと入って行った。


小さい子もいるし今日はパスタかな。よしナポリタンで行こう。俺は鍋を火にかけてパスタを茹でてる準備をしていく。お湯が沸くまでの時間に風呂の様子を見ておこう。


「カレン、パスタにしたからな。おーい、風呂は大丈夫か?」


風呂のドアの前で声を掛け、ドアを開けようと手を掛けた。


「アンタ、来ないでよ!来たら殺す!」

「カレンお姉ちゃん、殺すの?」

「アルルちゃん、大丈夫です。カケルは何回も殺されてるです。」

「お願いミカンちゃん、カギ閉めて来て。」


まだ、お湯も溜まって無いのに何をしてるんだと呆れながらも、声を掛けずに行けばラッキーだったのかと後悔した。


リビングではマリリさん、タリリ、ジェシカさん、フランシスカさんがソファに座って紅茶を飲んでいる。フランシスカさんの家にあった高級茶葉らしくジェシカさんは何度も匂いを嗅ぐと、蕩けるような表情をしている。


「マリリさん、リーリオの教会は今回が初めてですのよね。」

「はい、アザリアから出た事が有りませんでしたから。」

「ではリーリオの教会のウワサはご存知で?」


フランシスカさんはマリリさんにポットから、紅茶を注ぎながら話しかけている。


「どの様なウワサでしょうか?」


ソファーに深くもたれていたタリリも、高級茶葉の香りに酔いしれていたジェシカさんもウワサと聞き、身を乗り出して来た。


「悪いウワサか?剣の錆にするぞ。」

「怖い奴はいやですよー。幽霊とかじゃないですよね?」


「ふふ、そんな噂では有りません。奴隷保護で大変忙しいと聞いていましたから。」


「それは帝国からの逃亡奴隷の件でしょうか。1年に1件あるか無いかと聞いていましたが。」


「理由は分かりませんが、最近増えているとお父様がお客様とお話ししているのをお聞きしましたから。」


「それなら噂じゃないぞ。増えてるんだろ。」

「確か奴隷の首輪は一定期間、主人が触れないと首が絞まっていく仕組みでその僅かな間に、暗号を解読する必要があると聞いていますが。」


マリリさんは奴隷の首輪を知っていた様で、その仕組みを説明していく。


「はい、凡そ猶予は1週間。短い物で1日と設定してあるのも有るそうです。保護されるまでに何日か経過しているのが普通ですから、暗号解読に多くても2、3日しか掛けられません。」


その説明を受けてフランシスカさんも補足していく。その表情は明るくない。


「今までは仰る通り、1年に1件程度でしたからリーリオの教会総出で暗号解読をしていたそうですが、その件数が増え、暗号解読が間に合わないケースが増えて来ているそうです…。」


そこまでフランシスカさんが言い終えると、マリリさんは悲痛な面持ちで手を握りしめていた。


「暗号解読ってどうするんですか?」

「主人じゃない場合は首輪に付いている魔石7個を順番に触る必要があるようですわ。」

「ええ?すごく大変じゃないですか。」

「簡単そうだぞ。7個しかないんだろ?」


ジェシカさんとタリリとで難易度について意見が2分している。


「簡単では無いですけど、逃げ出さなければその内開くんじゃないですか?」


「ええ、主人が再び触るまでの間だけですが。触る都度推し順は変更されるそうです。」


「ええー。最悪ですね。意味あるんですですか?その暗号は?」

「本来の使い方は主人不在時に奴隷商人が解除したり、変更したりする為の仕組みらしいです。」


「奴隷商人って勝手に変えたりするんですか?」

「恐らく主人が事故や病気などで、亡くなった場合でしょう。」


ジェシカさんとマリリさんのQ&Aコーナーが始まってしまった事でタリリは興味を失い、再びソファーに沈み込んだ。


「それでシスターさん達は奴隷さんたちの首輪の順番当てで忙しいって事なんですね。」

「はい、そのように聞いてますわ。」


「ところで奴隷商人さん達ってシスターさん達みたいにノーヒントで解除なんてしてるんですか?それって大変ですよねー。」


「言われてみれば確かにそうですね。何か秘密があるのかも知れません。」


ここでジェシカさんは胸を張って立ち上がった。


「私達にはこれがあるから、余裕ですけどねー。」


とエプロンをちょんちょんとアピールしていた。


「ジェシカさん、奴隷の方がお一人の時に見られない様に背中からする等の細心の注意をお願いしますわ。」

「そうですね。ジェシカさんとカケルさんが揃うと少々心配です。私達が気を付けましょう。」


フランシスカさんはマリリさんと握手をして


「マリリさん、お独りで苦労されて来たんですね。わたくしも微力ながら尽力いたしますわ。」


と熱く語り合っていたが、元凶の1人は納得出来ずに騒いでいた。


「ええー!カケルさんと一緒にしないで下さいよー。」


そこにタオルを巻いただけのアルルちゃんとミカンちゃんが走り込んで来た。


「気持ち良かったー。」

「すっきりです。」

「アンタ達待ちなさいー!ジェシカさんー!2人を連れて来てー。」


風呂場からカレンの叫びが小屋中に響くと、ジェシカさんはタリリの横のソファーに飛び乗ると彼女を飛び越えて2人の前にドンと着地する。


「ミカンちゃん捕まえた!ほら、アルルちゃんと手を繋いでー。」

「捕まったです。」

「え??誰に?」


ミカンちゃんは大人しくアルルちゃんと手を繋ぐと、ジェシカさんに風呂場まで連行されて行った。


そんな風景を眺めていた、フランシスカさんとマリリさんは苦笑いをしていた。


「残念ながら、もう1人いましたわ。」

「そのようです、ふふふ。」


キッチン横のスペースでテーブルを囲んでいる。メニューはナポリタンと唐揚げだ。


「なんか乗ってるです。花です?」

「お花だー。」


ちびっ子2人がナポリタンに入っている、タコさんウインナーを花と言ってるがそれはタコさんだ。


「アンタが花なんて見掛けに寄らないわね。」


自分では結構いい出来とは思うが、ここにも節穴がいた。もう花で良い。


「熱いー。」

「熱いー。」


今度は唐揚げをひと口齧って、熱いと揃って叫ぶと

ひとしきり笑いあっていた。


「ほらほら、火傷しないでね。ふふふ。」


まるで3姉妹の様な仲の良さで、この日の夜は賑やかにふけて行った。

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