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ミッション 王都でショッピング

「ダンジョンでの鬱憤をここで晴らすわよ!」

「ヤケ買いですー!」

「ふふふ、遠慮はいたしませんわ。」

「アンナちゃんにヤケ買いです。」

「新しい剣見てもいいのか?いいんだな?」


王都に戻った翌日の朝、カレン達は城下町に買い物に来ている。もちろん俺も後ろからついて来ている。


「先ずはテントからよ。大きいのがいいわ。」

「ダンジョン用も欲しいぞ。」

「ピンクがいいです。ピンクです。」

「ミカン、ピンクは目立つぞ。」

「嬉しいです。」


今、俺たちがいるのは採掘者御用達の本格派アウトドアショップだ。ダンジョン攻略用のアイテムからレジャー用のアイテムまでなんでも揃うと言われている店だ。


目の前には大小20張のテントが所狭しと張られている。


「ベッドは置けないわね。」


カレンは大きなテントを見て回ると、そんな感想を述べた。さずがに無理だとおもう。


「カレン、これなら置けるぞ。」


タリリが勧めるそれは、支柱が6本立っており、その先端に穴の空いたシートを被せているだけだ。支柱の自立用にロープが張られているが、壁はなくメリットは広さだけだ。


「嫌よ、外から丸見えじゃない。」

「テントと言ったら、普通これだぞ。」


うん、テントと言うよりタープだ日除けのシートだ。このタイプか2本の支柱にシートをかける三角形のテントが大半だ。


8角形や16角形のトンガリテントは設営に時間がかかり採掘者用ではないらしい。クブルムで見た教会本部の大型テントはもちろん見かけない。


「野営用の大きなのは、またの機会ね。」

「このタイプはダンジョンじゃ穴掘れないから無理だろ?柱もロープも固定はどうするんだよ。」


カレンは支柱を持ち上げて裏面を見だ後で、説明を続けた。


「ほら、これ自立式なのよ。」

「魔方陣か?」

「そうよ。ただし風が強い屋外で使うときは、ロープでの固定が必要ね。」


さすが魔法だ。素晴らしい。


「どうせなら、ロープでの固定も魔法ですればいいのにな。」

「ん?有るわよ。このロープとか。1本で金貨1枚だって。この小さなテントで最低6本いるわね。」

「高いな!」

「だから別売りなのよ。」


カレンとそんな会話をしていると、ミカンちゃんのカレンを呼ぶ声が聞こえる。


「レンちゃん有ったです。ピンクテントです。」


4本支柱の自立式テントだ。この大きさなら6人はギリギリ寝られそうなサイズだ。地面に敷くグランドシートから、天面、側面全てのシートが淡いピンク色だ。


蛍光ピンクじゃないからまだマシだ。ミカンちゃんのチョイスを否定出来る訳がない。あのタリリですら何かを言いたそうにしているが口にはしない。


「いいんじゃない?かわいいわよ。ねぇアンタもそう思うわよね。」

「ああ、綺麗なピンク色だ。」

「良かったです。」


ミカンちゃんはカレンを見上げて、嬉しそうにしている。少し自慢気な様子もかわいい。


テントが決まったので、店内を一丸となって見ていく。結構何の為の道具か、使い方すら分からないものをが有った。


「これは何だ?タイヤか?」


幅30センチ、直径50センチ車輪の様だ。中心には目の様な模様がある。


「シーフ君ですね、シーカーやシーフやレンジャーと言った探索系の方がいない時に使う魔道具ですね。」


「凄いですね、これは必需品なんでは?」


「真っ直ぐしか進みませんし、落とし穴に落ちたら終わりの消耗品です、魔道具ですから値段もそれなりにします。」


「金貨10枚もするんですね。」


直進だけしか出来ないないから、壁に当たるとその都度向きを変えてやらなくてはならないし、30センチのタイヤが通らない場所の罠は見つけられない。


更にゴブリンの棍棒で殴られても、それで終了らしい。


これは買えない。人を雇った方が安くつく。


では、こっちの蓋の付いた木箱は何だろう。箱は板を組み合わせたものでは無く、無垢の丸太をくり抜いて箱にした様だ。しかも、箱にもフタにも精密な魔方陣が彫り込まれている。


「カレン、こっちは凄そうだけど思ったより高く無いぞ。」


魔方陣の彫り込まれた箱が銀貨5枚だ。他の魔道具に比べて格段に安い。


「それは圧縮ボックスよ、中に入れた物が小さくなるのよ。」


なんだ、あるじゃ無いかアイテムボックス。しかも結構安い。


「どのくらいの量が入るんだ?」


値段的に収納量には期待していないが、参考までに聞いてみた。するとカレンは横の説明文に目を通すと


「えーと、圧縮率100ってあるから、入る量はこの箱100個分ね。」

「思ったより結構入るな。カモフラージュ用に買った方が良いよな?」

「え?何用って。」

「ジェシカさんの収納を誰かに、見られてもこれで誤魔化せるかなって。」


カレンは呆れた顔で笑っている。


「アンタ、圧縮ボックスはトイレの別名よ。ジェシカさんの収納とは次元が違うわ。もちろんこっちが低いのよ。」


「ト、トイレ?!」


カレンは俺の驚きを肯定するかの様に、頷いている。アイテムボックスをトイレ呼ばわりとは驚きを隠せないでいた。


「ん?アンタ勘違いしてるわよ。」

「勘違い?」


カレンは両手のひらを肩幅ぐらいに開くと、ぎゅっと左右の手のひらを合わせた。


「これが圧縮ボックスね。」


カレンは合わせていた両手のひらを再び、肩幅まで開いた。


「ここまで出来ると、ジェシカさんの収納よ。」

「不可逆変的な圧縮か、元に戻せないのか。」

「そうよ、しかも重さはそのまま。入れ過ぎると持てないわよ。」


けど、重量を気にしなければサイズが、1/100の位置になるんだから使い道はある。


「鉱石などの輸送が楽になるじゃないか?」


「そんな硬いもの潰れる訳ないじゃない。野菜クズぐらいじゃないと無理よ。水分も余り圧縮はされないわ。」


「だから、トイレとして使われてるのか。つまりゴミ箱だな。」


ようやく分かったかと、カレンはドヤ顔をしている。


俺はカレンの満足気な態度も悔しいが、ここにはガラクタしか置いてない事に対して、より腹が立っている。


「まともな物は無いのかここは。ん、これは?」


5本の車輪が付いた荷台がある。1本は前に付いているから、方向を変えるための車輪の様だ。木製の荷台には全周に魔方陣が描かれている。


俺が台車をいろいろな方向から眺めていると、うっすらと笑みを浮かべたカレンが、腰の後ろで手を組みながら、腰を屈め見上げる様な姿勢で近づいてきた。


「これはお助けポーターデラックスよ。アンタの背後を自動で付いてくるのよ。」

「荷物を持たなくていいのか?」

「違うと思うわ。20層とか潜る時にポーター1人じゃ、荷物を持ちきれないのよ。その時にこれを3台ぐらい連れて行くのよ。」


マリリさんもやって来て、話に加わってくる。


「そうらしいですわ。ポーター3名そして、この台車を9台が50階層攻略の最低ラインと聞いてますわ。」


「そんなに。」


おれは素直に驚いている。この台車の魔道具を使わなければポーターが最低12人でその分の食料も更に必要になる。


「50階層ってそんなに儲かるのか。」


俺にはお助けポーターデラックスがまるで、金貨を生み出す魔道具に見えて、急に触り難い物になった。


さっきまでベタベタと触っていた俺が、遠巻きに見つめるだけになったのをカレンは気付いた様だ。


「そのお助けポーターデラックスはどこかのポーターさんみたいに、調子に乗ってやり過ぎたり、下着を覗いてきたりしない優秀なポーターなのよ。運・ぶ・だ・け・なら、アンタの何倍も優秀よ。」


カレンはお助けポーターデラックスをポンポンと叩きながら、「運ぶだけ」の所をゆっくりと強調していた。


「最近じゃアンタは全てジェシカさん任せだから、ポーターですら無いわ。偽ポーターよね。ふふふ」


カレンはそんな雰囲気が照れ臭くなったのか、軽い憎まれ口を吐くと笑って誤魔化した。


「え、なになにー?どうしたんですかー。」


自分の名前を出されたジェシカさんは、俺とカレンを交互に見るとニヤニヤと笑みを浮かべている。


結局購入したリストは


6人用テント(ピンク色)

1人用テント(圧縮ボックス用)

魔物避け薬(通常品)

ランタンシール(6時間使い切りタイプ)

ヒーターシール(6時間使い切りタイプ)

エリアセンサー(魔道具)

ドレッサー

ドライヤー(魔道具)

圧縮ボックス


となっている。順に説明すると魔物避け薬は通常品だけあって特売品で3割引だった。ただし野犬やゴブリン程度までしか効果が無い。使い方は簡単で、瓶の蓋を開けて2、3滴づつ地面に垂らしたり、服につけたりすると、匂いで魔物が寄って来なくなるらしい。


ランタンシールとヒーターシールは5センチ角のシールで服の上に貼ると、ランタン代わりに光ったり、暖房代わりに暖かくなるシールだ。ランタンを手に持つ必要が無くなるので、前衛職に愛用されていると説明書がされていた。


エリアセンサーはテントの周りに置く、侵入者を検知すると大音量で知らせてくれる魔道具だ。長さ1メートルの2本のセンサー棒を立てておき、その間を通過したら検知する仕組みだ。テント周りを確認する為に4セット購入した。


ドレッサーは鏡付きの化粧台だ。マリリさんの希望で購入した。ドライヤーはドライヤーだ。髪を乾かす魔道具でこの世界では高級品に入るが普通に普及している。


圧縮ボックスはトイレとして、1人用のテントと合わせて購入した。収納の劣化版と散々バカにしていたがやっぱりトイレは必需品だった。ゴミ箱とかいってすみませんでした。
















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