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ミッション アンナ再び

ウインテでの夜は温かい風呂と、柔らかなベッドのお陰で瞬く間に朝を迎えた。


「うーん、いい朝ね。もう1泊したいわ。」

「カレンさん、ミカンちゃん起こします?」

「まだ良いわ、寝かせてあげて。」


2人は備え付けの鏡を使って、身だしなみを整えている。カレンはラフな普段着から既にローブに着替えている。ジェシカさんはいつも緑色のワンピースと白いエプロンだ。前髪が気になるのか、念入りに整えている。


2人の準備が終わる頃、ミカンちゃんがモゾモゾと起き出した。髪の毛がくるくるなのが爆発している。


「おはようです。」

「おはよう、ミカンちゃん。」

「おはようございますー。」


そんな挨拶からこの日の朝が始まった。後3日で王都 フロースへ到着する。この先には小さな村しかなく2度のセーフゾーンでの野営が待っている。しかし兵士による完璧な護衛をされた馬車の旅なので、なんの不安も無い朝だ。



「ぴろりろーん!」

(ミッション 全財産でポーションを買え。 制限時間 3600秒)


「え?」

「マジかー。全財産でポーションを買えって。」

「全財産?!」

「あらあら。」

「食事してたら時間が有りませんわ。」

「カレンが良いなら、俺がいってくる。」

「私も行きますよ。ポケット必要ですよねー。」


カレンはさすがに全財産と言う所に、引っかかっている様だ。眉間に皺を寄せて悩んでいる。


「どうしてポーションなの?」

「理由か?」

「うん。」

「私達の馬車が襲われると言う事でしょうか?」

「途中の村で病人がいっぱいとかですかー。」

「ポーションはケガしか治す事ができませんわ。」


カレンの問いかけにみんなが意見を出して行く。


「他の馬車が盗賊に襲われたりか。」

「野犬やモンスターも考えられるな。」

「薬屋さんが転んでクスリを割ってしまって泣いてるです。」

「うーん、全部人助けね。買いましょう、いいわね。」


カレンやマリリさんまで買い出しに来ようとしたが、兵士が探すかも知れないのとの理由で残ってもらった。


「分かったわ。お願いね。」


俺とジェシカさんはパーティ資金だけでは無く、個人的なお金まで全て受け取り、街へ繰り出した。


「高っけー!」

「しっ!声が大きいです。」


ここウインテのポーションが高いのだ。およそアザリアの2倍だ。アザリアで銅貨2枚がここウインテで銅貨4枚だ。


「クブルムでも3枚でしたから、アザリアが安いんですよー。もうおじさん睨んでますよ。」

「す、すみません。」


俺は薬屋の店主に話しかける。


「ポーションを貰いたいんですが、何本有りますか?」

「そこにあるだろ。」


店主は棚の上にある瓶を顎で示す。おそよ100本ぐらいだろうか。


「ここにあるだけですか?」

「ああ、調整中のが同じぐらいあるが、まだ売れないな。明日まで待つなら渡せる。」

「いえ、もう出発しますので全部頂けますか。」

「持ってけ、金貨3枚。」


俺はカウンターに金貨を置くと、箱に詰めて貰ったポーションを抱えて店をでる。


「はい、どうぞー。」


ジェシカさんはエプロンのポケットを広げて待っていたので、人目がない事を確認すると収納した。


「この相場だと、2000本ぐらい無いと全財産にならないぞ。」

「あと何軒有りますかね。」

「絶対にポーションが足りないな。あと1時間じゃあアザリアには行けないしな。」

「ダメですよー。ここにはダンジョン無いんですからね。戻ってこれませんよ。」


次の店は裏に大きな薬草畑を持つ薬屋だった。期待出来そうだ。


「おはようございますー。」

「いらっしゃいませー。ポーションありますよ。」

「お邪魔します。」


ここの店のカウンターはジェシカさんぐらいの娘さんだ。金髪に茶色の瞳の犬耳の少女だ。入るなりポーションを勧められた。


「ポーション何本有りますか?そこの棚が全部ですか。」


棚の上には200本ぐらいのポーションが置かれている。


「い、いえ。まだ奥に。」

「全部頂けますか?申し訳ありませんがお願いします。」

「え、え、え。良いんですか。全部ですよ。」

「お父さーん。薬全部売れたよ!奇跡だよ!」


カウンターの少女は奥に向かって叫んでいる。

奥からドカドカと父親と母親らしき人が走ってきた。


「アンナ、何だって?!」

「全部だって?本数を確認したのかい。」

「ああ、そうだった。お客さん何本ご入り用ですか。」

「えーと、1本いくら?」

「銅貨3枚です。」

「なら2000本ぐらいかな。」


しかし、ジェシカさんは俺たちの会話を聞いていない。


「今、アンナって言ったよねー。この子もアンナちゃんなんだー。」


「お父さん、ピッタシだ。」

「お前さん領主とはどんな関係だ?」

「アンタ、お待ちよ。何言ってんだい。」

「しかしよ、こんな偶然あるかよ!」


なんか夫婦で揉め出したぞ。アンナさんを使わせてもらおう。


「えーと、アンナさんで合ってる?」

「え、はい。」

「パーティメンバーの妹さんがクブルムにいるんだけど同じ名前なんだ。なんと、ここにも偶然が!」

「クブルムの妹さんと同じなんですか。」

「クブルムか、景気が良いらしいな。ダンジョンが見つかったって噂だぞ。」

「はい、そうらしいですね。」


俺の「同じ名前なんて偶然ね!」作戦がスルーされ会話が進んで行く。仕方なく話を合わせていく。俺は大人だからな。


俺たちの会話をそれまで黙って聞いていたこっちのアンナさんのお母さんが何かを思い出したらしく、2人に話しかけた。


「アンタ、例の自分が亡くなっても妹さんの為にパーティをアザリアから呼び寄せてゴブリンを退治した上に、ダンジョンを発見した女の子の妹さんってうちの子と同じ名前だったよね。」

「ああ、アンナとジェシカだったな。」


「ええ?!なんで、どうして?!」


ジェシカさんは突然に自分の名前が出たのに驚いている。目がまん丸くなっている。俺はジェシカさんの事がこんなにも早く伝わっている事に驚いていた。


「え?あの?妹がアンナさんで、そのお姉さんのパーティメンバー?え、え?」


こっちのアンナさんも動揺している様だ。どうしよう、この状態、収集がつかない。そんな時に救いの女神がご機嫌にやって来た。


「おはようございますー。あー、いたいた。アンタそろそろ時間よ。」


明るい挨拶と共にカレンが店の中に入って来た。


「ああ、もう少しだと思うんだ。」

「ああー赤い髪の魔法使い!」


アンナさんはついカレンを指差してしまい、慌てて後ろ手に隠しながら謝っている。


「お邪魔します。」

「邪魔するぞ。」

「おはようです。」


アンナさんはパーティメンバーを次々と見て驚いている。


「金髪のシスターさんに、美人な剣士さん、あとは小さな子もいる!」


「お父さん、お母さん、ダンジョンを見つけた人達だよ!!」


アンナさんのハイテンションな言葉にカレンは驚いている。


「お嬢さん方済まないが、聞いても構わないか。この兄さんが2000本のポーションを欲しいって言ってるんだが、アンタら領主と関係ないのか?」


「え?ここの領主なんて知らないわ。王都へ行く途中で昨夜、この街に寄っただけだから。」


「疑ってすまねえ。領主に2000本ものポーションを頼まれて、昨日持ち込んだら知らねえって言われてな。もうどうしていいか分かんなかったところでな。」


カレンの返事に父親は即座に頭を下げて謝罪する。


「そんな事があったんですね。」

「けど、こっちとしては丁度良かったわ。ポーションが大量に欲しかったの。」


カレンとアンナさんのお父さんの商談は上手く纏まりそうだ。


「お姉ちゃんたち、ダンジョン発見したんだよね。」

「えーと?」

「この子はアンナさん、ジェシカさんの妹さんと同じ名前だって。」


カレンは俺の説明にジェシカさんを眺めると、ジェシカさんは何やらエプロンのポケットに右手を掛けて、左手は自分の顔を指差してアピールしている。


俺はジェシカさんのポケットから幸せの配達人ボードを1枚取り出すとカレンに手渡した。


「私はカレン、ジェシカさんとパーティを組んでるわ。これがその証拠。」


カレンはカードナンバー1番と刻印された、ジェシカさんが広場の前で微笑んでいる絵が描かれた木の板を手渡した。


「これは何ですか?」

「この女の子がジェシカさんなの。1年前に亡くなったんだけど、今でも私達のパーティメンバーなのよ。」


「おお?ウルトラレア!!」

「アンタは煩いわね。空気を読みなさいよ。」


俺の驚愕とカレンの叱責のコンボにアンナさんがビックリしている。カレンは1つコホンと咳をして佇まいを直すと


「あのね、これクブルムのアンナさんが今回の記念に売り出すの。だけどね、この絵は1000枚に1枚しか無い特別な絵なの、だから貰った事は内緒にしてね。」


カレンは口に人差し指を乗せ、少し頭を横に傾けた。


「はい、ありがとうございます。大丈夫にします。」


アンナさんは頷き、幸せ配達人ボードを胸に抱くと、とびっきりの笑顔で微笑んだ。


その後、金貨80枚分のコインをだすと俺たちは全員で協力してカウンターの裏にある倉庫から2000本ものポーションを運び出した。


親子3人が倉庫に行く瞬間を見計らって、ジェシカさんのポケットに入れて行った。何箱も有ったポーションが帰る時には1人1箱しか持っていなかったのはアンナさん親子も不思議そうにはしていた。


「なんとか、買えたみたいね。」

「ああ、残り時間も無事止まったみたいだな。」

「ねぇ?ウインテのアンナさんを助ける為だったの?それともまだこれから何かあるの?」


俺たちは目の前の制限時間の残り秒数が止まっている事を見ると、ほっと安心したがこの大量のポーションの使い道に新たな不安を頂いていた。


「あーお金が無いわ。ゼロよ、クブルムに戻ろうかしら。」

「あのー皆さんはさっきので、全財産なんですよねー。」


ジェシカさんは遠慮がちに手を挙げると、そう聞いて来た。


「残念ながら、そうよ。」


かなり凹んでいるカレンと違いジェシカさんはそんなに不安では無いようだ。


「ダンジョン発見したにも関わらず、そんなに多く無いなって思ってですねー。ボスを何回も倒して、家のアンナに渡してもらったのが15枚でしたよね。」


ジェシカさんの質問に全員が頷いている。そしてジェシカさんが言おうとしている事を逃さずに聞こうと耳を傾けている。


「それで皆さんの全財産か金貨80枚だったのは、今まで自力で採掘した分だけのコインなのかなーって。」

「そうよ、今まで採掘した全てなの、残念ながら。」


ジェシカさんはその言葉を聞くと、確信した顔をした。


「では、報奨金はそこには入って無いんですよね?ダンジョン発見の報酬は?」


「え?!報奨金?!」

「確か大金を持ち歩かなくても良い様に、リーリオの教会で受け取る事になっているはずです。」

「あ、忘れてたわ!それが有ったわね。」


カレンは心底安堵したようで、すっかり脱力している。王都への馬車の中でもぼーっとしており、ミカンちゃんが心配そうな顔をしていた。

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