ミッション タリリとトラップ
タリリが落ち着いた後、その部屋のコインを拾い集めると先に続く通路へと進んだ。
「それにしても、タリリは良くあの謎を解けたな。ノーヒントだっただろ?」
「ヒント?ああ、カケルたちにはミッションが出ていたな。」
「そうだ、それが有っても俺は解けなかったけどな。やっばりミカンちゃんは賢いよ。」
しかし、タリリの様子がおかしい。
「いや、たまたまだ、壺が4つも並んでいるから気になって覗いていたら、手が滑って1つ落としてしまったんだ。慌てて直して気付いたら通路が開いていた。」
タリリは少し恥ずかしそうにそう言った。
「本当にたまたまね。タリリらしいわ。」
「タリリったら、せっかく感心してましたのに。ふふふ。」
「ミカンちゃん、本当に良く分かったね。凄いよー。」
「タリリのが凄いです。」
通路を抜けると円形の部屋に出た。そこは闘技場と言っても良い部屋だ。丸い広場を囲むように一段上がった場所には観客席の様な物まで見える。
俺たちが入ると、入ってきた扉が独りでに閉まる。
開いていた対面の扉も同時に閉じられた。
俺たちが前後の扉を見ていると、観客席に無数のゴブリンスケルトンが逆再生の様に組み上がっていく。
ゴブリンスケルトンは武器を打ち付け、足を踏み鳴らし、まるで場を盛り上げるかの様にリズミカルに
音を奏でている。
「何が始まるのよ。観客までいるなんて。」
「あの扉が気になるな。何が出てくるのが。」
「ドラゴンとか無いよね、扉は大きく無いから大丈夫よねー。」
「タリリ、もしもの時は跳びますので、カレンさんから離れない様に。」
「分かった。」
「ハーちゃんです。」
カレンもマリリさんも話しながらも最大限の警戒を行なっている。ミカンちゃんは既にハーちゃんを出して扉の前に待機させている。
「変ね、何も出て来ないわね。」
「もう結構経つぞ。」
俺たちはいつまでたっても出て来ないモンスターにイライラしてきた。
「スケルトン煩いわね。」
「もしかして、ゴブリンスケルトンがそうなのか?」
「あれもモンスターでしたわね。」
「盲点だ。」
「ホネホネです。」
カレンとマリリさん、ミカンちゃんはゴブリンスケルトンを蹂躙し始めた。
「ファイア、ファイア!」
「ストーン」
「ストーンです。」
吹き荒れる魔法の嵐にゴブリンスケルトンは抵抗もせず、剣を打ち付け足を踏み鳴らしたまま倒れていった。
「なんか、呆気ないわね。」
「矢も魔法も飛んできませんでしたー。」
「カレン、開いてないぞ。どうなってるんだ。」
タリリがカレンに出口の扉が依然閉ざされたままな事に抗議しているが、そんなのカレンも知るわけ無く困った顔をしている。
「ねぇ?アンタ、どうしてよ。」
コイツ丸投げして来やがった。俺だって知らないと思いながらも観客席を見回して生き残りがいないかの確認をしていく。
「全滅させたわよ。心配なら転移するからコインをついでに拾って来て。」
「はーい、私も行きます。」
「ジェシカさん気をつけてね。」
俺たちは2人で同じ観客席へ跳んだ。出口に向かって左側だ。
「うわぁ、歩き難いー。」
ジェシカさんはゴブリンスケルトンの残骸の上をガシャガシャと音を立てながら歩いている。時折しゃがんでいるのは鉄貨を拾っているのだろう。
「ジェシカさん、地面が赤くなっている所はまだ熱いから、コインは拾わなくてもいいからね。」
階下からジェシカさんに向けて、カレンが両手を口に当て叫んでいる。
「はーい、近づきませーん。」
そう返事を返しながらも、また1つまた1つと拾ったコインをエプロンのポケットに入れていく。その右ポケットはもうコインでパンパンになっている。
「ふーん、ふふーん。」
ゴブリンスケルトンの骨を手で掻き分けながら、鼻歌交じりで拾っていくジェシカさんを横目で見ながら、こちら側には撃ち漏らしはいない事が確認出来た。
「ミカンちゃん、そっちはどう?」
カレンは俺たちとは反対側の観客席に声をかけた。すると、ミカンちゃんとタリリの返事が聞こえた。
「骨はバラバラです。全滅です。」
「これは腰に来るぞ、イタタタ。」
どうやら、全てのゴブリンスケルトンを倒した様だ。ならば、ただ閉じ込める為の罠だったのか?そうしてまんまと閉じ込められた俺たちを嘲笑う為の観客なのか?
「趣味悪いな、このダンジョンは。」
「どうしたのよ。」
「この骨どもが閉じ込められた俺たちを嘲笑う為だけのモンスターだったと思うと、このダンジョンは趣味が悪いなって思って。」
「そんなのもう分かり切ってるじゃない。」
「そうですよー、苦労して壺の謎を解いて見つけた部屋では足を掴まれ、動けなくした上にモンスターいーっぱい、その次はこの部屋ですよね。」
カレンの言葉を受けて、ジェシカさんがヒートアップしている。
「普通は苦労して謎を解いたら、ご褒美なんじゃ無いですか?」
「宝箱なんて望んでないけど、安全なルートぐらい用意してほしいわね。」
今度はジェシカさんの言葉にカレンが賛同している。だが、確かにそう言われると納得できる。
「いいえカレンさん、我々の中の生き残りの1人だけがこの部屋から出られるそうですわ。」
マリリさんは出口の扉の所に居て、扉の周りの装飾と思われた部分を指差して説明をした。
「このぐるっと描かれているのがそうなのね。」
「殺しあえ、最後に立つ者にのみに道は開く」と書かれた文字を指でトントンと不機嫌に突いている。
「本当に趣味悪いですねー。どうせ1人になって扉を開けても、1人じゃ倒せないほどのモンスターがいるんですよねー。」
「ええ、それか次の部屋に行く為には2人必要だとかね。」
「うわぁー」
「けど、このダンジョンならありそうですわね。」
タリリは天井を仰ぎ見て突然、後悔の念を叫ぶ。
「あー、私は名を残すんならもっと普通のダンジョンが良かったぞ。」
「ミカンもです。ここは嫌です。」
「私もそう思うわ。」
「ダンジョンに私の名前つかなくて良かったー。皆殺しのジェシカとか言われたく無いですー。」
「ふふふ全員一致なんですね、ダンジョン発見なんて普通の人なら泣いて喜ぶ事なんですけど。」
おれはカレンからタリリ、マリリさん、ミカンちゃん、ジェシカさんとそれぞれの目を合わせた後で一言添えた。
「変なパーティには変なダンジョンがお似合いだって事か。なるほど、なるほど。」
だか、それはブーメランだった様だ。
「他人事じゃないわよ、1番変なのはアンタじゃないの!ヘンタイ!」
「そうですよー。スケベーでヘンタイでエッチです。」
「まぁ、カケルの言う事も一理あるぞ、アザリア出の私達がヴァンパイヤをも瞬殺する魔法、多くの敵を潰すストーン、ゴーレムに転移に収納だぞ。普通では無いな。」
「ハーちゃんです。」
ミカンちゃんはきちんと訂正をいれている。
「あらあら、そんな危険なダンジョンに1人で行ってしまうのは変では無いのですか。」
「そうよ、自分だけまともな振りをしたって駄目よ。タリリソ…。もういいわ。」
カレンが言葉の途中で顔を赤らめ下を向いてしまう。
「カレンさん、途中で止めないで下さいよー。そんなダサい技名は勢いで言わないと恥ずかしいんですからー。」
「え?ダサい?!」
タリリの疑問にジェシカさんは容赦なかった。
「ええ、ダサいです。タリリソードクロスもタリリソードも全てダサいです。聞いていて恥ずかしいですー。」
「ジェシカさん、そうなんだけどもう少し優しくね。」
「確かに他の方には知られたくは無いのですが、タリリが楽しそうなので私からは言えませんでしたわ。
「マリリ?!」
「いや、俺はそのままのタリリが好きだ。」
「カケル、その告白がうれしいと思えないのは何故た。」
文句を言って無いはずの俺がタリリに追いかけられ散々だった。そして俺は息が荒いまま、出口の扉を収納して次の部屋に向かって歩いている。
想像していたモンスターハウスや仕掛けなど無く、一本道が続いていた。分かれ道や十字路も無くひたすら一本道だ。右に行ったり、左に行ったりと曲がってはいるが脇道はない。
「今度は下か。」
通路が行き止まると、そこには四角形の穴が空いていた。覗き込むと高さは2メートル程だ。通路の天井に穴が空いている感じだろうか。
「降りれそうだな。どうする。」
「そうね、トラップに注意して進みましょ。」
「了解。」
俺は腹這いになり、床に手を掛け足を先に下ろしていく。腰から下が宙ぶらりんとなり、後は飛び降りるだけだ。
「アンタ、ちょっと?!トラップは?」
「え??」
「きっとその床落ちるわよ。」
「おい?!」
「そうですねー。いかにも飛び降りろって感じですからねー。」
「あ、駄目だ。滑る、落ちる。」
床には掴む所が無いために、徐々に身体が下がっていく。
「もう、しょうがないわね。」
「カレンさんの言う事聞かないからですよー。」
カレンとジェシカさんが腕と服を引っ張り、引き上げてくれた。
「サンキュー、助かった。」
「ホント、バカね。」
「バカですねー。」
悔しいが助けて貰っているので、言い返す事は何も無い。ある訳がない。
「カケルさん、扉でも落としてみて下さい。」
ジェシカさんが穴の縁でエプロンのポケットを引っ張っている。俺はポケットに手を突っ込むと片側だけの扉をつかみ出した。
「重っ!」
完全にポケットから出た扉は片手で保持できる重さでは無く、重力に引かれ穴から落ちていった。グワーンと重い音がすると、扉は床板と共に真下に落下して行った。
「ほらね。」
「ですよねー。」
「ああ、カレン様、ジェシカ様の大勝利です。」
これはマジな落とし穴だ、底が暗くて見えない。扉が底に着いた音も聞こえない。
「アースステップ」
俺たちはマリリさんのアースステップの上で、左右に伸びる通路をどちらに進むか決めかねていた。
「どっちも、下り坂になってるわね。」
「ああ、結果な傾斜だぞ。」
「これはもしかすると、トラップで落とされる通路へ続いてるのでは無いのでしょうか。」
「宝箱と壺のですね。」
「様々なトラップを超え、ようやく上に戻る穴を見つけたと思ったらまた落とし穴とは死んでも死に切れないな。」
俺がやりきれない気持ちで感想をこぼすと、みんな頷いていたから、きっと同じ気持ちだったんだろう。
「その通路に続いてるのかを確認しましょ。」
「はい、こんな意地の悪いダンジョンなんかぜーんぶ丸裸ですよ。」
「ええ、だれも死なせません。このダンジョンでは。」
俺たちは打倒ダンジョンと心を1つにして、先に進んで行った。
50話までお読み頂き有難うございます。
これからもお付き合いをお願いします。




