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ミッション 手紙

朝になりジェシカさんの家に戻ると、カレンはミカンちゃんと同じベッドで寝ようとしたので、俺はアンナさんのベッドで横になった。アンナさんはすでに起きており、いないので1人だ。


「アンタ、ミカンちゃんと寝なさい。」

「んー?私は別にどっちでもー。」


1人じゃなかった。ジェシカさんがベッドに倒れ込んでくるとカレンから命令が下った。おれは仕方なく眠い目を無理やり開けて、ミカンちゃんのベッドに倒れこんだ。


「ふふん、カレンさんと一緒だー。おやすみー」

「おやすみなさい。ジェシカさん。」


隣のベッドでうるさい2人も眠りにつく様だ。そんな事を考え終わらない内に俺も夢の世界に旅立った。




「起きて下さい、カレンさん!お姉ちゃんもおきてー!」


俺たちは昼過ぎまで熟睡していたが、それもアンナさんの声で終わりを告げられた。


「んー?どうしたのアンナ?」

「お姉ちゃんも寝るんだー。」


ジェシカはベッドの側まで来ていたアンナをガバッと捕まえると、2人してベッドに倒れこんだ。


「当たり前じゃん。眠くなるんだもん!」


たぶんアンナさんはそう言う事を言ってるんじゃ無いとは思うが、俺は3人乗りになって狭くなったベッドの片隅でジェシカさんの体温を背中に感じながら目を閉じていた。


「アンナはかわいいなー。」

「お姉ちゃん、やめてよー。もう!」


あまりにジェシカさんがベタベタとするからアンナさんは少し嫌がっている。


ドンドンと部屋の壁がノックされると、身なりを整え終えたマリリさんとタリリが部屋に入って来た。


「カレン、教会から兵士が表に来てるぞ!」

「あー、お姉ちゃん兵士さんがきてるんだった!」


タリリの声にアンナさんもつられて声を上げた。

すると、俺の頭に毛布がドサッと投げつけられたので起きろと言う事かと体を起こし掛けると、更に毛布が飛んで来た。


「着替えるから、アンタは起きるな!」

「これがカケルさんのやり方なのかー。」


俺はそう言うことかと再び横になった。だが、カレンもジェシカさんももう1つ間違いがある。このパーティのお色気要員はマリリさんだ。間違っても絶壁のカレンじゃない。まぁ、ジェシカさんでもいいか。


そんな事を考えているとカレンから声が掛かると、扉の開く音がする。


「アンタ、いつまで寝てるのよ。先に行くわよ。」

「先にいってますねー。」


何かが間違っている気がするが、毛布をどけベッドから降りると足早に追いかけた。


兵士からの要件は竜騎士が話があるから、テントまで来いとの出頭要請だった。俺たちはダンジョンまでの道のりを兵士と情報交換をしながら歩いていった。


昨日の探索で良かった事は、俺たちが落とし穴に落ちてから直ぐにダンジョンから出たようで俺たち以外の、行方不明者や怪我人はいなかったことだ。


悪かった事は最初の部分だけしか探索出来なかった為に、ダンジョンの脅威度が高いまま下げられない事だ。それは多くの採掘者にダンジョンの解放を出来ない事を意味する。従って神のギフトであるコインの収集にも悪い影響を与える事となる。


そして今俺たちは竜騎士のテントの中にいる。竜騎士とテーブルを挟んで俺たちは座っている。


竜騎士はフルプレート装備で兜はテーブルの上に置かれている。金髪で碧眼で色白のイケメンの竜騎士は俺らを見回すと口を開いた。


「早速だが、要件から話そう。ダンジョン命名権を譲って欲しい。」


ある程度予想はしていた為、カレンに動揺は見られない。ただ、ジェシカさんは俺の後ろで立っているが、見なくて分かるぐらい驚いている。


「こちらの条件は1つです。発見者の発表時に情報提供者として、この街のジェシカさんの名前を入れて頂きたいことです。」


竜騎士はカレンを見据えると


「ジェシカとはポーターでは無いな?」

「え?ポーターはそこの者ですが。それが。」


竜騎士は俺を見ると俺の名前を聞いてきた。


「名は?」

「カケルです。」


「残念ながら、ポーターは発見者に名を連ねられない決まりだ。昔、名を残したい金持ち供100人以上がポーターとして登録しようとした事件か有ってな、それ以来ポーターは除外される様になった。」


「分かりました。問題有りません。」


俺は悩む素ぶりも見せずに了承した。その様に少し驚いていた様だ。もう少し抵抗するとでも思っていたのだろうか。


「ジェシカさんは、このクブルムの街に1年前まで住んでいました。」

「ふむ、それでその娘は?」

「昨年、このダンジョンから溢れ出たゴブリンによって命を落としました。」

「そうだったのか、その犠牲者を忘れぬ為にと言う訳か?」


カレンは竜騎士の問いに首を横に振ると、ジェシカさんを横目で見ると、大きく頷いて話出した。


「いいえ、彼女は情報提供者です。彼女が亡くなる前に出した手紙がこのポーターに届き、その情報を元に探索した所、このダンジョンの発見となりました。」


「その手紙はどこに?」


ジェシカさんが更に慌て出した。


「ブブブ」


スマホが振動したので、机の下で画面を確かめると


『どうしょう?どうしょう?手紙なんて書いてないよー』


と、ジェシカさんの慌てっぷりが分かるメッセージが飛んで来ていた。俺はフリックでメッセージを打ち込むと返信した。


『今から取りに帰るぞ。』


「竜騎士さま、ジェシカさんの家に有りますので取って参ります。」


そんな俺の申し出は一言で却下された。


「いや、別の者に取りにいかせるから良い。」


クソっどうする?竜騎士が外の兵士に声を掛けると、1人の兵士が入口を開けて入ってきた。


「御用でしょうか。」

「いまから、ジェシカなる者の家に向かい情報提供の手紙とやらを取って来い。ただ、その手紙は故人の形見故に丁重に扱う様に。」

「ハッ」


兵士は返事をするとテントを抜けて、ジェシカさんの家に向けて歩き出した。


「カレン?命名権って普通なのか?アザリアの街の近くにダンジョンが有ったからアザリアのダンジョンだろ。だから、クブルムの街だからクブルムのダンジョンじゃないのか?」

「違うわよ。アザリアのダンジョンが発見されたからアザリアの街が出来たのよ。」

「マジか。そっちが先か。」


俺はワザと大きなリアクションで体を反らせて、横目でジェシカさんの様子を確認しようとするが、左にはいない。首を大きく回して反対側まで確認したが見付けられない。


(ピンチで成仏しやがったのか?!)


ゴブリンを倒しても平気で居座り続けたのに、こんな事でいなくなりやがって。俺はカレンの袖を引っ張るとそう耳打ちした。


「うそ、うそよ。そんなにメンタル弱く無いわよ。ちょっと具合が悪くなっただけよ。」

「どうしたんだ、具合でも悪いのか?治療に長けた者を呼ぶが。」


カレンは驚きのあまりに、声が大きくなっていた。その慌て方に竜騎士は怪訝そうな感じではあるが、一応は心配してくれている。


「あ、すみません。ちょっと昨日からの疲れで具合が。けど、大丈夫ですから。」


「そうか、無理せぬようにな。」

「はい、お気遣いありがとうございます。」


カレンはイタタとお腹を押さえながら、大丈夫だと演技をしている。



同じ頃、ジェシカさんは街にたどり着き、家への道を駆け抜けていた。


「ハア、ハア、ヤバイ、ヤバイ!急がなくちゃー」


ジェシカさんは兵士が入ってくる時に横をすり抜けて、テントを飛び出していたのだ。ただ、その事にはカレンも俺も気づいていなかった。


家の扉を乱暴に開けて妹の名を呼ぶ。


「アンナーいるー!!」


呼びながらキッチンに転がり込む。そこにはおばあさんと料理の準備をするアンナの姿があった。


「お姉ちゃん、どうしたの?」

「今から兵士さんが来るの、来たらこの手紙が私からカケルさんにお願いした手紙ですって渡してくれる。」

「うん、いいけど。どの手紙?」

「ああ、それは今から書くの!」

「えええー?!」


ジェシカさんはアンナさんの手を引き、姉妹の部屋に連れて行く。


「び、便箋とか紙とかある?」

「これでいい?」


アンナさんから淡いピンク紙を貰うと、机に向かった。


「ぴろりろーん!」

(ミッション 手紙を完成させろ。 制限時間 150)


「え??なあーにー?!」

「え?お姉ちゃん、どうしたの?」


突然、姉が叫ぶのでアンナは驚き姉をみると、姉は何も無い目の前の空間を指差している。


「ここに、変な字みたいな物が書いてあるの。それでね、最後に数字が有るんだけどそれがね、ドンドンと少なくなって行くんだ。」

「お姉ちゃん、何も無いよ。」

「いや、有るんだってー。怖いよー。」


姉が怖がっているそれが、アンナには分からない。


「お姉ちゃん!どうして怖いの?」

「あのね、これが前ね0になったらね。落とし穴に落ちたんだよー。死んじゃうかと思ったよー。」


姉の悩みを聞くとそんな事かと安堵したアンナは姉に言った。


「お姉ちゃん、死んでるだよ。もう死なないよー。」

「あれ?そうだね。そっか!」

「早くカケルに聞くです!時間が無いです!」


ジェシカさんは突然のミカンちゃんの声に驚いて、椅子から落ちそうになる。それをアンナさんとミカンちゃんが慌てて支えている。


「え?ミカンちゃん、いたの?いつから?」

「ミカンちゃんはお姉ちゃんと一緒に帰って来たよー。」

「はいです、ジェシカは早くするです。」


ミカンちゃんに促され、スマホにメッセージを送る。


「送ったよ。」

「あと90です、カケル急ぐです。」

「お姉ちゃん、こっちも早くー。」


ミカンちゃんはここにいない、カケルにやきもきしている。アンナさんは姉を急かす。どうやらこの世界は妹の出来が良いようだ。


ジェシカさんが手紙を書き進めていると、ジェシカさんは、不意に視線を上げ、ミカンちゃんを見ると


「手紙を完成させろって内容なんだってー。」

「じゃあ、頑張るです。」

「お姉ちゃん、頑張れー。」

「うん、お姉ちゃんがんばっちゃう!」


(ミッション 手紙を完成させろ。 制限時間 60)



『カケルさんへ


クブルムの街からすぐのところに洞穴があります。


ゴブリンがいるので倒して下さい。


妹のアンナが心配なので頑張ってね。


待ってます。


貴方のジェシカより♡』




ジェシカさんは2人に書き上げた手紙を見せると、誇らしげに胸をはっている。


「アンナ、ミカンちゃんどういいでしょう?」

「お姉ちゃん、ハートとかいらなかったよー。」

「不要です。カケル勘違いするです。」

「えー、だってピンクの紙なんだからさー。」


ミカンちゃんはジェシカさんの手から手紙を取ると、折り曲げて開いてと何度も繰り返している。そして最後に軽く細く丸めると最後に皺を伸ばして綺麗に畳んでアンナさんに手渡した。


「ミカンちゃん、何したの?」

「ミカンちゃんは1年前の手紙っぽくしたんだよねー。そのままだと綺麗すぎるから。」

「そうです。少し闇の精霊さんにもお願いしたです。」

「そうなんだ、凄いね。」


(ミッション 手紙を完成させろ。 制限時間 6)


ミッションの制限時間はミカンちゃんがアンナさんに手紙を渡そうとした時点で停止していた。


「間に合ったです。ジェシカが書いただけでは止まらなかったです。」

「そうだったの?ありがとうねー。」


すると玄関のドアがドンドンと叩かれ、兵士の到着を告げた。


アンナさんはおばあさんとミカンちゃんとの表面上は3人で兵士と対応した。兵士の依頼通りに一旦部屋に戻るとジェシカさんの手紙を兵士に手渡した。


「亡くなったお姉ちゃんの手紙なので、後で返して貰えますか?」


アンナさんはジェシカさんの演技指導の元、兵士への追い討ちをかけている。


「そうそう、もっと不安そうな顔で。」

「少しだけもったいぶって。」

「うんそんな感じの上目遣いで、アンナいいよー。」


アンナさんから手紙を受け取った兵士は良い人らしく、必ず返すからと何回も約束して、大事そうに持って行った。今そこで書かれた手紙だとは知らずに。

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