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ミッション クブルムへ

「よろしくね!


ジェシカ」


スマホの画面にはその文字と共に、夢に出て来た少女の写真が送られてきた。構図的にはもう1人撮影者がいるようで、そのもう1人が俺と同じ世界からの転移者の可能性が高くなって来た。


「スキルなのか?通信関係かテレパシー的な?」


俺が1人つぶやいていると


「アンタの元いた場所ってミッションみたいな事が出来る人が多いの?」

「カケルさんが夢で見たという方でしょうか?」

「スキルです?テレパシーです?」

「おお、写真という奴だな。私も撮ったな。」


各人がバラバラに質問を問いかけてくる。若干1名は無視して良さそうだから、除いて順に回答していく。


「だれもが出来るようになるかは分からないな、ミッションに関してもこっちに来てからだし。」

「ふーん、けどこのメッセージは普通じゃないからあり得るんでしょ?」

「そうだな、可能性はあるな。」

「アンタ、返事は出来ないの?そのメッセージで。」


カレンの言う通り、メッセージの返信をしてみる。



「はじめまして、カケルです。 こちらはアザリアからクブルムへ向かう途中の馬車の上です。今日クブルムに到着予定です。そちらはどこでしょうか?」


送る文章を声に出しながら下の白い枠の中に打ち込んでいく。カレンを見るが問題ないようで、ウンウンと頷いている。


「良し、送信!」

「どう?」


紙飛行機のボタンを押し送信するが、俺が作成した文の横に未送信の表示がつく。


「駄目みたいだ。受信は出来るが送信は出来ないのか?それとも届いているのか?まったく分からん。」


「ブブ」

「クブルムで待ってる」


今度はメッセージにバイブ音と共に文字だけが届いた。


「お?」

「この内容なら届いている様ね。」

「確かに」

「クブルムですか。着いてから出発までは余り時間は有りませんわね。」

「何もなければ、翌日には出発ね。」


カレンの言う、何も無ければとは、馬車や馬について何も問題がなければと言う事だ。この乗合馬車は王都の何とか言う大きな所が定期的に運行しているもので、停車する街には必ず替わりの馬や馬車が用意されているのでほぼ予定通りの出発が予想される。


俺はしばらくしてもスマホから新しくメッセージも来なくなったので、再び電源をオフにしてポケットへしまい込み、毛布を被ろうとした。


「アンタ、もうそろそろ休憩よ。食べてから寝たら?」

「ああ、もうそんな時間か。そうするか。」


カレンが俺が寝ようとするのを止めた頃、道の先に石柱が街道を囲む様に何本も立っているのが見え出した。


「見えて来たぞ。セーフゾーンだ。」

「先客もいるみたいね。」


8本の石柱が丸く囲むその中は、旅人からはセーフゾーンと呼ばれその中にいる限りモンスターに襲われる事が無く安全に過ごす事が出来る場所だ。


「セーフゾーンって意味あるのか?」

「有るわよ。でもどうして?」


カレンはまた何を言ってるだという顔をしている。


「モンスターなんか、一度も見たことないからな。セーフゾーンって盗賊には効かないんだろ?」

「そうね、盗賊には効かないわ。」

「じゃあ意味無いよな?」

「知らないわよ。そんなの大昔の人に聞いて。」


「今みたいにダンジョンがきちんと管理される前までは多くのモンスターが野放しだった時代もあったそうです。」


カレンはミカンちゃんの方を向き、強制的に会話を打ち切ってきた。その代役としてマリリさんが教えてくれた。なるほど昔の名残か。


「逆に盗賊が集まってくるって話は聞くぞ。」

「本当に盗賊が多いな。騎士はきちんと仕事してるのかよ。」

「昨日の3人組みたいに、採掘者から盗賊に成り下がるのが多いからな。力があるから大した理由も無く人の財産や生命を奪ってしまうらしいぞ。」

「タリリはその点では、大丈夫だな。」


俺の言葉を聞きタリリは誇らしげにしている。


「当たり前だ、私はマリリの騎士だからな。」

「いや、優秀な妹が道を踏み外さないか見ててくれるからな。」

「んん?まあ、マリリが優秀なのはその通りだが。」


馬車は石柱の横を通過して、セーフゾーンの内側へ入っていった。特に神聖な感じとかを特別に感じる事は無く、ただ普通の広場というのが感想だ。


セーフゾーンの中は広く、先客の馬車も合わせて全部で10台位が停車しているがまだまだスペースには余裕がある。なおセーフゾーンの外側に馬車を置き、中心部に乗客が草地に腰を下ろして点々と休んでいる。



馬車から少し歩いた位置で俺は荷物を背から降ろす。


「ここでいいか?」

「いいんじゃない。」


カレンが腰を下ろすと周りにみんなも腰下ろしていく。カレンは全員が腰を下ろしたのを見ると俺に向かって話し出した。


「そのジェシカさん?の事なんだけど、アンタはどうしたい訳?」

「話はしたいな、俺と同郷の人がいるかも知れないからな。」

「何か頼まれていたんじゃないの?」

「それが良く思い出せないんだよ。多分ゴブリンを退治して欲しいとかだった気がするんだが。」


タリリは水を飲み大きく息を吐いた後、大した事でも無い事の様に話す。


「今日の夕方には着くんだろ?本人に直接聞けば問題無いだろ?」

「それで出来るか出来ないか決めればいいだろ?」


タリリはさも当然だと言う風に言うと、仰向けに横たわった。


「アンタはそれで良いの?途中下車してでもやりたいんじゃないの?」


カレンは真剣な眼差しで俺に問いかける。


「みんなには悪いが、困っているんだったら助けたい。ただ、写真や口調からはそんなに切迫詰まっていない感じもするから、先ずは話だけでもしたい。」

「じゃあ、取り敢えずクブルムでジェシカさんから話を聞きましょうか。それで良い?」


カレンの問いに頷きで答え


「ありがとう。それで十分だ。」

「また迷惑かけるけど、よろしく頼む。」

「本当にこのポーターは迷惑ばっかり持ってくるから、みんな付き合ってね。」


カレンが呆れながら皆にお願いしてくれる。


「ふふ、カレンさんがこんな事言うなんて、今までのポーターからすると信じられませんわね。」

「ああ、信じられないな。まあ今までのポーターは私達にこんな事頼んで来なかったからな。」


マリリさんとタリリが笑い合っているとカレンは顔を赤くしてマリリさんに弁解を始めた。


「ち、違うわよ。コイツが次から次へと変な事始めるから仕方なくよ。」

「うん、レンちゃんカケルは変で面白いです。」

「そう、そうよね。ミカンちゃん!」


何だかんだ言いながらも助けてくれるみんなに感謝しながら俺は食事の準備を始める。


俺のその姿を見ながらタリリはカレンに問いかける。


「いつもカケルが食事まで作ってくれるけど、そんな契約なのか?今までのポーターは私達が作った食事を食べる事はあっても作りはしなかったからな。」

「そうでしたわね。荷物を運ぶ以外の事をする方はほとんどいませんでしたわ。」

「その割に味が薄いだの、量が少ないだの文句ばかりだったな。」


「「え?契約?」」


俺とカレンの声が重なる。


「お!ハモったな。仲のいい事で。」


タリリが茶化してくるが、カレンも俺もそれどころでは無かった。


「ごめんなさい。契約してないわよね、そう言えば。」

「いやいや、契約しなくちゃいけなかったのか?俺としては何も問題無いけどな。」


タリリは俺を見ながら簡単な説明をする。


「大体の事は暗黙の了解で決まっているが、それでも後から報酬の事で問題になる事が多々あるらしいぞ。」


タリリは仰向けのまま、1つため息をつくと


「いくら契約しても、特に力の弱い子供のポーターは勝手に報酬を下げられたり、貰えなかったと教会に相談に来るのを見かけるぞ。」


「ええ、実際に相談にいらっしゃいますが、口頭での約束だったり、契約書を交わしていても金銭の受け渡しなので証拠がありませんから、教会としては何もできません。」


「そもそも教会は採掘者側だからな、教会に所属していないポーターは立場的にも弱いぞ。」


「なるほど、けど報酬に関しては問題ないかな。特に欲しい物とかも無いしな。契約しないと捕まるとかじゃなければこのままでも。」


しかしカレンはタリリや俺の話を聞いていない様で、眉間にしわを寄せて何やら考えているようだ。

そのうちに俺たちの視線に気づくと慌てて


「アンタは色々知らないし、心配だから契約するわよ。」

「ああ、それでも構わないけど。」

「カレンさん、どうして急に?」

「コイツの事だから、悪い奴に騙されるわ。絶対に!」


カレンは一呼吸の間をあけて俺を指差して、一気に捲し立てた。


「アンタは私達専用のポーターだから、他の採掘者は無視するのよ。ずーっとだから!みんなもそれで良いわよね!」

「お、おう。」

「あらあら。カレンさんたら。」

「カケル、ずーっと一緒!」

「私は問題無いぞ。」


カレンは俺たちの視線を受け、顔を赤く染めながら


「アンタはジェシカさんだったり、フランシスカさんだったり女の人には甘いんだから。」


その言葉を受けてタリリが余計な事を言う。


「ほう、カレン嫉妬か?ジェシカが気になるのか?」

「違うわよ!コイツはヘンタイなんだから、いつもマリリさんの胸ばかり見てるだから!」

「はあ?!」

「あらまあ。」


カレンの奴め、なんて事を言うのか。今必要なのかその情報は。これからマリリさんの大きな揺れる胸を見づらくなるじゃないか。


「マリリさん、ホントすみません。綺麗なものに目が行くのは仕方ない事で…。」


俺の言い訳を聞きながらも、マリリさんは左手を胸の下を通して右手で頬を支える格好で少し困った表情をしているが、その仕草で胸が余計に強調され俺は目が離せないでいた。


「ふふふ、気をつけて下さいね。」

「ほら!そうやって見てる!最低ね!」

「すまん、カレンの控えめなのも俺は好きだぞ。」

「バ、バカじゃないの!最低、ヘンタイ、死ね!」


カレンは料理中の俺に向かって、木のコップやら杖を投げて怒っている。辛うじて料理を身を呈して守ったが杖の当たりどころが悪く、痛みで地面にのたうち回る事になった。


その後はマリリさんにヒールを掛けてもらったり、食事をしたりして軽い休憩を取ると、再び馬車に乗り込みクブルムに着くまで、俺はゆっくりと進む時間の中で眠りについた。













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