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ミッション 救出作戦

今は朝の5時位だろうか、3時位にはサイリサスに着いたが街の門は締め切られており、入る事が出来なかった。この街の門は北を除いた東西南にある。北には伯爵の小さな城とも言える屋敷があり2重になった城壁には南側しか門が無い。


「ダメね。やっぱり北には門が無かったわ。この向こう側が伯爵の家よね?どうしようか?」

「何をどうするつもりだ?」

「マリリさんのアースステップなら、この壁ぐらい乗り越えられると思うわ。」

「出来るとは思いますが、この高さをするのは少し心配ですわ。」

「東門まで戻れば、そろそろ門が開く時間じゃないか?」


俺たちはそびえる城壁を下から見上げてこれからの事を相談している。敵の本拠地を目の前にしてた、

ここまで来てもまだ作戦は立っていない。ちなみにミカンちゃんはまだ俺の背中だ。先程ローテーションで俺に戻って来た。


「カレン案は危険だから、とりあえず戻ろうか。」

「そうよね、私なら城壁乗り越えて来た人となんか、絶対に話なんてしないわ。」

「ではあまり期待はできませんけれど、誠意を持って正面から、子供たちを返して欲しい旨を伝えに行きましょう。」


それから1時間程かけ東門へ辿り着くと、門は既に開放されていた。門を抜けまだ人通りの無い街道を北の伯爵邸へすすむ。伯爵邸へまっすぐ伸びる道に出た時に、北から2頭の軍馬が俺たちの横を走り抜けて行く。


カレンとマリリさんは伯爵邸の城壁に設けられた門の前で2人の門兵と話をしている。


「アザリア教会に所属していますマリリと申します。昨夜こちらで保護された2名の子供たちを引き取りに参りました。どうかお取り次ぎをお願いします。」


マリリさんは門兵に頭を下げて丁寧に、用件を伝えているが兵士の回答はぶっきら棒で、取りつく島もない感じだ。


「そんな話は聞いていない。帰れ。」


それでもカレンとマリリさんは食い下がり


「アザリア教会からアイサさんとタルトちゃんを引き取りに来たって使えて下さい。」

「お前の事など聞いてない、直ちに立ち去れ。」

「お伝え頂かないと伯爵様に怒られると思いますわ。御勝手な判断はご自分の首を絞めることになりますが、よろしいでしょうか。」

「いい加減にしないと、容赦しないぞ。」


カレンとマリリさんは門兵に用件を伝えるが、2人の門兵は一切取り合わずに手に持った長槍で彼女らを押し返そうとした。


カレンは後方の俺たちを振り返り、両手の人差し指をクロスさせバッテンを作った。俺は分かっていた結果だが一応頷いておいた。


俺たちのやりとりを不審に思った門兵は槍を押す力を込めてカレンを強引に押しのけ、穂先を俺たちに向けた。


「きゃあ!」


カレンはよろけながらも、数歩後退りし兵士から距離を取った。


「何をごちゃごちゃと、痛い目を見ぬと分からぬ様だな。」



「よし、正当防衛成立。ナイスだカレン!」

「ストーン」

「ストーンです。」

「うあ?!」

「ぐわっ!」

「正当防衛って何よ?」

「正当な防衛だ。」

「一緒じゃない、後できちんと教えなさいよ。」

「ほら、行くぞ。」


岩の下敷きになった門兵2人を避けながら、門の前に進む。


「ファイア、ファイア、ファイア。」


鉄製の枠の分厚い木の扉が、枠ごと燃え尽きようとしている。相変わらずの火力だ。門の熱が冷めるのを待っていると音を聞きつけた兵士達が何事かと屋敷の中から駆け出してくる。


「ハーちゃんをお願い、なるべく死なない様にね。」

「ハーちゃんです。」


屋敷の前に群がる兵士をハーちゃんに任せて、俺たちは屋敷の中に入るとする。


「お邪魔しまーす。」

「失礼します。」

「いや、十分邪魔も失礼もしてるだろ。」


カレンとマリリさんは場違いな挨拶をしながら、玄関のドアを潜った。そこは大きなホールで脇にはテーブルとソファも置かれているが、目を引くのは天井から吊るされた豪華なシャンデリアだ。


「あの」


カレンがメイドの様な女性に声をかけようとするが、メイド達は正面奥の扉へ逃げ込んでしまい代わりに兜と胴だけのプレートメイルを着込んだ騎士が1名が出て来た。


「アイサさんとタルトちゃんはどこ?」

「侵入者め死ね!」


騎士はカレンに向かいショートソードを振りかぶった。


「えい。えい。」


横からミカンちゃんがカレンの前に踊り出ると、1撃目でショートソードを叩き落とすと、2撃目を左から両脚に叩きつけると騎士は悲鳴と共にその場に崩折れた。


「ミカンちゃん、ハーちゃんをこの扉の前に移して。」

「はいです。」


ミカンちゃんは頷くと扉の前にハーちゃんが出現した。俺は騎士に子供達の居場所を聞こうとしたが騎士当人は膝の痛みで質問どころではなさそうだったので無理強いは辞めた。


「行くわよ」

「ああ」

「大丈夫よ。子供達の場所は、直接伯爵に聞くから。」

「なるほど。」


次の部屋に出るとこの部屋もガランとした大きな部屋だった。正面に扉が開いており、そこから兵士が雪崩れ込んで来ているのが見えた。


「カレン、上だ!」


タリリが叫びに視線を上げると、部屋の両側の壁の高い位置に渡り廊下があり、そこから数名の兵士達がこちらを魔法で狙い撃とうとしていた。


「アースウォール」

「アースウォールです。」

「正面は任せろ。ぐわっ!」

「駄目ですよ、タリリ。」


マリリさんは1人で前に出ようとするタリリの服を掴み叱りつけると、兵士たちに向かって警告の言葉を発した。


「私たちは子供たちを返して頂ければ直ぐにでも帰ります。どうか道を開けて頂けませんか。」


マリリさんは兵士のファイアボールを防ぎながらも兵士に忠告を促すが、正面の兵士たちはゆっくりと

前進をしてくる。


「残念ですが話を聞いて頂けない様ですので、護符を持っていない方は今すぐにお下がり下さい。カレンさんお願いします。」

「ファイア、ファイア、ファイア。」


左右の渡り廊下の人のいない場所と正面の兵士の直前に炎の柱が上がり天井を焦がし延焼をはじめる。

兵士は炎の柱の桁違いな火力に騒然としている。

しかし兵士だけではなく、こちらのパーティにも動揺が走っていた。


「あ、あれ?ヤバイどうしょう。」

「不味いな、火事は不味い。」

「ウォーターボール!ウォーターボール!ウォーターボール!」


ミカンちゃんが何回も水魔法を繰り返して漸く沈静化させた。その間も兵士からの攻撃は止んでいた。


「すみません、道を開けて頂けますか?」


兵士達はカレンの魔法の威力に怯えてはいたが、持ち場を離れる訳には行かず、扉の前に立ち尽くしている。


「ファイアボール!」


カレンがそう言って、作り出した火の玉は虎の形をしている。床が燃えない様に少しだけ浮かせているのには感心した。その虎は扉を目掛けてゆっくりと前進していく、兵士達はその熱量に驚き道を開けて行く。


「もう少し、扉から離れた方がいいですよー」


虎は扉の前でぐるぐると回り兵士達を壁際に追いやっていき、兵士達が壁際に寄ったところで炎の虎は扉の前まで戻って来るとその炎の身体を炸裂させ、扉を吹き飛ばした。


「行くわよ。」

「ハーちゃんです。」


俺たちが通り過ぎ、兵士が後を追おうとすると扉の前にハーちゃんが突如として出現しその行く手を遮った。


次の部屋も大きな部屋だった。部屋正面奥には2階に続く階段がある。その階段には先の部屋からの渡り廊下が左右から繋がっている。また正面の階段の踊り場に2人の子供を連れた執事と全身を鎧で包んだ騎士が2人と兵士が10人、俺たちを待ち構えていた。


「ここをソロウム伯の屋敷と知っての狼藉か!

このフロース王国に仇なす逆賊め。容赦せぬぞ!」


執事が子供を盾にして口上を述べる。その背後に煌びやかな金の刺繍が入った服を来た太った男が見える。


「カレン、あれ伯爵か?」

「え、どれ?」


俺は伯爵を指差してカレンに教える。


「多分そうね。だけどもう聞く必要ないわ。」

「子供達を返して頂きに参りました。」


マリリさんは伯爵に向かい宣言するが、伯爵はマリリさんに向かい血走った目で唾を飛ばしながら吼える。


「教会風情が何を言うか!貴様らこそ我が妻をどこにやった!」

「アンタの妻じゃないわ!別人よ!」


伯爵は大きく頭を横に振り叫ぶ。


「貴様は何を言っている?サリアは私がオロル村から妻として迎え入れたのだ!」


カレンはモーリエ院長が言っていた亡き妻サリア様と孤児のサリアさんとを重ねているというの意味をこの時になって痛いほど分かった。重ねているのでは無く伯爵の中では亡き妻サリアが今でも生きているのだ。亡くなっていると言う事実を認められずに、現実が歪んでしまっているようだった。


「伯爵様は奥様のサリア様を愛していらっしゃるんですね。」


カレンは伯爵がどうしょうもなく哀れに見えた。


「ああ、もちろんだ。彼女の為なら何でもやった。オロル村の支援も、恋人も忘れさせてやった。」


カレンの言葉で伯爵は独白を始める。


「婚約者を忘れさせてやろうと大森林まで誘き出して、盗賊に見せかけてわざわざ殺してやったのに

…。」


伯爵は頭を掻き毟り、唾を飛ばしながら独白をつづける。


「それなのに、それなのに!サリアは元婚約者が亡くなった事を教えてやった儂の事を今の貴様の様な目で見るのだ!」


憐憫の眼差しを向けるカレンを指差して慟哭する。


「何だその目は!あああー!?」


伯爵は天井の一点を見据えて叫ぶ。


「ああ!確か妻に似た餓鬼もそんな目をしていた。何故だ!何故だ!」


カレンは左手を腰に右手の人差し指を真っ直ぐに伯爵に伸ばす。


「何故だじゃないでしょ。アンタ哀れね。きっと亡くなったサリア様も同じ気持ちだったのよ。」


「恋人がいるサリア様を無理矢理連れてきて、結婚したんでしょ?それでもサリア様がアンタに振り向かないから、恋人を殺したんでしょ?」


カレンは両手をお手上げという風に上げながら、先を続けた。


「アンタはバカよ。それだけ嫌がらせをされているのにアンタを好きになる訳ないでしょ?それが分からないアンタのバカさ加減をサリア様は哀れんだのよ。」


「孤児のサリアさんも私もみんな同じ気持ちよ。」


伯爵はカレンを血走った目で睨みつけると


「教会風情が孤児如きが村娘が、この儂を哀れむだと!ふざけるなー!」

「今の村娘ってだれの事よ?」


カレンは伯爵にゆっくりと問いただす。


「あ?ああ?」

「アンタの愛なんてその程度よ。本当に哀れね。」

「あああー!殺せ!そいつらも、餓鬼共も、アザリアの教会も邪魔する奴は全て殺せ!」


カレンは言い過ぎた様だ。子供達の安全を確保する前に伯爵を逆上させてしまった。


伯爵の指示で騎士と兵士は階段を駆け下りてくる。

それをタリリとミカンちゃんは階下で待ち受ける。

アイサとタルトを捕まえている執事は懐からナイフを取り出すとタルトへその刃を振り落とそうとする。伯爵はその手に持った片手剣を振り被ったまま、アイサ目掛けて駆け寄っていく。


「バンバン」

「ファイア!」


俺は両手の人差し指を伸ばして、執事と伯爵を狙った。それは朝日の中、眩いばかりの輝きと光の速さを持って執事と伯爵の肩を貫通し身体を後方へ吹き飛ばした。吹き飛ばされた先で2人の体は一瞬だけブレた様に見えた。伯爵を襲う予定だったファイアはその為に空振りに終わり屋敷を燃やし始めた。


「降伏しろ、護符なんて関係ないのは今ので分かっただろ。」


騎士と兵士は伯爵と執事が吹き飛ばされ、巨大な炎の柱が天井まで焦がしていることに、呆然となっている。


「子供を置いて逃げるならば追う事はしない。この屋敷もその内に炎に包まれる!死にたくなければ急げ!!」

「アンタ、明るい所だと便利ね。」


俺が叫ぶと伯爵と執事には目もくれずに、兵士たちは俺たちが入って来た扉から出て行った。出て行くと同時に兵士の火事を告げる声が響いた。


マリリさんは階段を駆け上がり、呆然と立ち尽くすアイサとタルトを抱きしめた。


「もう大丈夫です。全部終わりましたから。さあ帰りますよ。」


みんな階段を上がり踊り場に集まっている。


「戻りましょっか。」

「あー、マリリさん伯爵たちの肩の傷を治して貰えますか?流石に死んだら不味いんで。カレンは伯爵たちをサイリサスの入口でも跳ばしてくれ。」


俺は背後の伯爵と執事を親指で指す。このままだと一酸化炭素中毒で死んでしまうかもしれない。


「ええ、了解致しましたわ。」


マリリさんは頷き伯爵たちの手当の為に、2人の傍にしゃがみ込むと治療を始めた。


「どうしてよ?」

「そのまま寝かせて置くと火事で死ぬぞ。」


しかしカレンは首を左右に振ると


「その必要ないわ、ミカンちゃん消火をお願い。」


カレンの返事に驚き、燃えている所を指差し、さらなる説明をしようとするが、延焼するだろうと思われた火事は今も凡そ直径で1メートルぐらいの範囲内だけで燃え盛っている。予想を遥かに下回る狭い範囲だけが不自然に燃えている。


「はいです。ウォーターボールです。」

「多分、建物全体に精霊の加護が付与してあるのよ。これ以上は燃え広がらないはずよ。」


ミカンちゃんの水魔法によって、完全に火が消えたのを確認する。天井と床にはファイアの円だけの大きさの穴が空きその縁を黒く焦がしているが、その穴から見える範囲では延焼は見られない。カレンはその様子を満足気に眺めると、俺に向かってドヤ顔をきめると一言だけ告げた。


「跳ぶわよ。」


俺たちはアザリアダンジョンを出て、アザリアの街へ向けて歩いている。子供達はカレンとマリリさんが手を引いて、口数少なく静かに歩いている。


パーティみんなの内心は執事から王国に仇なす逆賊と直接言われた為に、国から追われる事にならないかとビクビクしているが、子供達のいる手前口にする事は憚られた。


時間が経つにつれてみんな自分達のした事の大きさから今後が心配になって来ている。子供達を無事に助け終えミッションも完了したにもかかわらず言葉数が自然と少なくなってしまっている。


目の前には孤児院の入口でアイサさんとタルトちゃんを抱きしめるモーリエ院長とそれを取り巻くサイリサスの孤児達の姿がある。その中にはもちろんサリアさんの姿も見える。


俺たちの事をサリアさんとミルちゃんが見つけると2人はカレンとマリリさんのところまで走って来た。


「カレンお姉ちゃん、みんなを助けてくれてありがとう。」


とサリアさんが、またミルちゃんも


「アイサさんとタルトちゃんを助けてくれてありがとう。」

「うん、約束だからね。頑張ったよ。」

「いえいえ、どういたしまして。」


俺は少女達が抱き合い満面の笑みで喜びを分かち合っているのを眺める。タリリは俺の側でマリリの様子を眺めている。それではミカンちゃんはと探すと、孤児院の子たちといつの間にか砂場で山を作っている。その傍には兜と鎧が無造作に脱ぎ捨てられていた。こっちはこっちでいい笑顔だ。きっと俺はこの為に頑張ったんだなとしみじみと思う。


(あーミカンちゃん可愛いな。)



「ぴろりろーん!」


(ミッション フロース王国 第3王女を誘拐しろ! 制限時間 60日)


「ん?!」

「何?」

「え?」

「あら」

「ぴろりろーん!」


どうやら、ミッション様は俺たちを本格的に国家反逆罪の逆賊にしたいようだ。空中に浮かぶ文字にデコピンをかまして俺は未だ見ぬ、第3王女様の姿を思い描く、銀髪で歳は12才、第1王女と第2王女からは母親が違うため虐められている。しかし、王は第3王女が気に入っている為に、王妃や第1王女、第2王女が嫉妬して第3王女を亡き者にしようと企むがそこに、俺が「第3王女、貴女を誘拐にきましたポーターです。どうか誘拐されて下さい。」って颯爽と現れて第3王女を助けると言ったどこかパクリの妄想を楽しんでいる。


カレン達を見ながら、第3王女がお淑やかなお姫様である事を強く祈っておいた。



















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