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ミッション サリア

俺たちの目の前には机や椅子などを乱雑に積み上げられたバリケードが出来ている。これは以前来た時は無かったものだ。アザリアの騎士が事故防止の意味で廃砦に入れなくするのならばもっときちんとするはずだから、この乱雑さから見ると外から来る者を拒む為の物を中にいる子供達か盗賊が作ったバリケードと推測される。


「盗賊では無いな。」


タリリは自信たっぷりに言い切っている。俺とマリリさんはタリリに続きを促した。


「壁の上や門の前に見張がいないだろ?それならバリケードが無い方が盗賊もいないと思わせられる。逆にバリケードがあるなら見張もいると思ったが気配を感じないからな。」


俺たちはタリリの言葉に感心している。


「何言ってるのよ!アンタたち盗賊なわけ無いでしょ。机や椅子や小さな板切れでバリケードってそんなかわいいこと盗賊がする訳ないでしょ。」


確か力の無い子供達が一生懸命に作ったとして考えると納得できる。盗賊なら尖った丸太の杭や有刺鉄線で武装した凶悪なバリケードが似合っている。


「こんにちはーー!いるんでしよ?」


カレンはバリケード所まで行って、中に向かって話しかけた。だか返事は無い。


「私はアザリアの教会から来たカレンよ!よろしくーー!」


「私達お昼これからなの。アンタたちの分もあるからここに置いておくわ。私が作ったんだから美味しいわよ!」


カレンは俺から受け取った弁当をバリケードの隙間から砦の中においた。そしてこちらへ戻りながら


「私達は向こうで食べるから!」


と俺たちを連れて砦から離れて行く。俺は振り向いて様子を見ようとしてカレンに頭を叩かれる。


「痛てーな!」

「子供達は警戒してるから、見たらダメ。私達は楽しくランチすればいいのよ。」

「どうして、マリリさんじゃなくてオマエが仕切ってるんだよ?」

「どっちでもいいでしょ。そんなの」

「レンちゃんさんは、良く仕事を手伝って下さいました。」

「ミカンも一緒!」

「昔はお金が無くてね、特に2人だけの時は特に。とてもポーターなんて雇うお金なんてなかったわよ。そんな時にまり姉ぇがバイトとして個人的に雇ってくれたのよ。」

「いえいえ、タリリが勢い良くいくと子供等は逃げ出してしまうのでレンちゃんさんはとミカンちゃんが手伝って下さってとても助かっていましたわ。」


おいタリリ。シスターさんの仕事を邪魔するんじゃない。こうして俺たちは少し遅い昼食を取ることになった。街道から外れた場所に腰を下ろした俺たちはカレン手製のサンドイッチを手に取った。


「おい!これ照り焼きチキンサンドか!うめーよ!」

「レンちゃん、美味しいよ。カケルより美味しい!」

「アンタ、ハンバーガーの時に話していたでしょ?アリサさんとその話をしたら色々な調味料を混ぜた照り焼きソースってが有るって、貸してくれたのよ。」

「うんうん、これだ。マジでありがとうううう…。」

「いえいえ。どういたしまってうぇ?!アンタ泣いてんの。」


醤油の味が懐かしくて、照り焼きの味が美味すぎて、カレンが覚えてくれたのが嬉しくて、何が何だかんだ分からない。俺はみんなから視線を逸らしてサンドイッチを頬張る。ヤバイ気恥ずかしい。


カレンは俺の様子に驚いていたが、泣きながらも食べ続ける俺を見て少し落ち着いたらしく、何やらマリリさんと話をしているようだった。


「この照り焼きソースは大森林で作られた物なんだって、しかも凄く高いんだから。1瓶で銀貨1枚ぐらいするらしいわ。」

「まあ、本当にお高いんですね。」


200ミリリットル瓶で1万円ぐらいの値段がするらしいからかなり高級品だ。


「アンタがこれが買える様にビシビシと、こき使ってあげるわ。感謝しなさいよ。」

「ああ、頼んだ。」

「ミカンもカケルをこき使う!ビシビシ。ビシビシ!」


ミカンちゃんそのビシビシはメイスのジェスチャーでは無いのかな?笑いが起こるが当人は悪気は無く、何故笑われたのか分からずにキョトンとしている。


「ふぅ。お腹一杯。」

「カレン、最高だった。」

「あらあら。こんどは私が照り焼きバーガーを作って差し上げましょうかしら。ふふふ」

「マリリ、それはどう言う意味だ!私も美味しいかったぞ。私に作ってくれ。」


ミカンちゃんは広げたハーちゃん毛布の上でコロンと横になり、お腹をポンポンと叩いている。そのニコニコとした笑顔はカレンに向けられていた。


(ミッション 失敗)


「ああ!忘れていた。」

「本当よね。いつも目の前に出ているのに不思議よね。」

「良くない事が起きない事を祈りますわ。」


その後はたわいもない話をしながら、1時間ぐらいそのまま過ごした。


「カレンさん、そろそろでしょうか。」

「ええ、行きましょうか。」


パンパンとローブや教会の制服を払い2人は立ち上がり砦にむかって歩き出す。ミカンちゃんとタリリはすぐに追いかけて行くが、俺はミカンちゃんの毛布などを背負い袋に入れてから4人の後を追った。


「おねーちゃんたちは悪い人じゃないの?」

「シリルだめよ。出て行っちゃ!」

「エミーお姉ちゃん、女の人しかいないよ!」

「シリル!危ないから。サリアお姉ちゃん呼んでくるから。」


女の人しか、とのフレーズが聞こえた為に俺は咄嗟に後ろを向いてしゃがみ込んだ。これで背負い袋で俺の姿は見えないはずだ。カレン達がこちらを振り向いているのが分かる。


「ぴろりろーん!」


(ミッション 女装しろ。 制限時間300秒)


あの場をマリリさんに任せて、カレンが走り寄ってくる。


「何?」

「女装しろ。 制限時間300秒」

「またピンポイントね。怪しいわね。」

「確かに」

「まあいいわ。手伝うから着なさい。ほら脱いで。」

「ま、まて、脱いでも着る服が無いぞ。」

「サイズ的にタリリとマリリさんのをメインに行くしか無いわ。あーウィッグが無いわ。」

「なぁ、男がいたらマズイなら跳ばしてもらってもいいぞ。」

「いいから、静かにしなさい。バレるわよ。」

「ああ」


カレンは俺の背負い袋の中を漁っている。


「ウィッグにパスタは無理よね。せめて茹でてあれば形になったのに。」

「本気か?」

「そんな訳ないでしょ、シスターの服なら頭に被るベールが有ったわよね。」


仕方ないマリリさんには後から謝ろう。俺はシスターの修道服を着込んだ。


「ほら、こっち向いて私の貸してあげるからメイクするわよ。」


カレンは俺の顔を掴むと自分の正面へ強引に向きを変えた。突然に顔が近づく。


「ち、ちょっと近いわよ。びっくりするじゃない!」

「お前が言うな。こっちのセリフだ!」

「うるさい。だまれ。」


お互いに座った姿勢でのやり取りの為、カレンから手や足は出ないので照れ隠しの為か、会話がヒートアップしてしまう。



「メイクおわり。いいんじゃない。ププッ」

「今、笑っただろ?俺も自信がある訳じゃないが。」

「はい、今から丁寧な言葉をお願いしますねーププッ」

「そうですわね。カレンさん、私はもう少し女性らしくしますわ。」


俺はそう言うと背負い袋から、保存食のパンを取り出すと修道服の中にグイと押し込んだ。


「バカ、アホ、ヘンタイ!」

「あら、いやですわ。綺麗な言葉をお使い下さいませ。ホホホ。」

「死ね…。」


俺はマリリさんをしのぐ巨乳シスターとして、颯爽と立ち上がり廃砦を目指す。


「行きますわよ、カレンさん。ホホホ」

「…。」


カレンは肩を僅かに震わせながらも、言葉も無く付いてきている。俺が門に近づくと足音に気付いたマリリさんは振り向くと驚き目を見開いた。その次の瞬間にはマリリさんは両手のひらで顔を覆うと素早く顔を伏せてた。心なしか両肩が上下している。


「こんにちは、私の作った照り焼きサンドどうだった?美味しかった?」

「うん、すっごく美味しかったよ。ありがとう、お姉ちゃん!」

「良かった。私はカレン、えーと貴女は?」

「シリル!」

「そっかシリルちゃんか。」


カレンは膝をついた姿勢でバリケードの隙間からシリルと会話を続ける。


「シリル離れて!」

「あ、サリアお姉ちゃん!このお姉ちゃんがさっきの食べ物くれたんだよ。」

「シリル!」


サリアと呼ばれる少女と共にきたもう1人の少女がシリルを抱えて後ろに下がる。カレンはその姿勢のままでサリアに話し掛ける。


「こんにちは私はカレン。アザリア教会から来たわ。」


カレンはバリケードに手を掛けて話を続ける。


「貴女はシリルちゃんみたいな小さいな子の面倒も見ながら、こんなバリケードまで作って大変だったわね。」


サリアはその場でじっとカレンの話に耳を傾けている。


「私はシスターマリリです。ここにいる仲間からはまり姉ぇねぇって呼ばれてるわ。私達と教会で暮らしませんか。」


サリアはマリリの話を聞きながらもカレンをじっと見ている。カレンはサリアの目を離さずに見つめ返している。


「モンスターなの?盗賊なの?いいえ、誰でも構わない。絶対に私が貴女を守るわ。」

「私強いのよ!凄く。」


サリアはカレンの言葉に感情が溢れ出たかのように問いかける。


「お姉ちゃんは本当に強いの?」

「ええ、凄く強いわ。」

「男の人よりも?」

「強いわよ。盗賊なんて何人いても余裕よ。」

「じゃあ騎士は?」

「騎士ならこの前に100人と戦ったわ。」

「じゃあ伯爵は?」

「え?伯爵?」


サリアから出た伯爵と言う言葉でカレンは僅かに驚き、微かな戸惑いが出てしまう。咄嗟に俺はフォローを入れる。


「このお姉ちゃんは伯爵の100人や200人より強いわ。」

「本当?伯爵より強いの?」

「ああ、余裕で強いわ。」

「カレンさん、ファイアを見せてやったらどうですか?論より証拠ですわ。」


カレンは少し思案したが、他の案が見つからず


「ええ、分かったわ。」

「サリアさん、みんなを連れて固まっていてね。中庭の真ん中には誰も近づけさせないでね。危ないから。」


サリアはシリルともう1人の小さな子を抱えて、中庭を見ている。


「サリアさん準備はいい?これが私の魔法、貴女達を守る力よ、良く見ててね。」

「ファイア!」


4人の子供達が見守る中、中庭の真ん中に炎の火柱が上がる。その熱風は子供達を通り過ぎ、バリケードを揺らす。


「「「「「きゃあ!」」」」」


子供達の悲鳴が上がる、その顔は驚きで塗り潰されている。


「どう?伯爵より強いでしょ。」

「お姉ちゃん。」


サリアは俯き必死に考えている。彼女はシリルをふくむ4人の子供達のリーダーなのだ。カレンや俺たちを信用すべきか、みんなの命を掛けた選択しなくてはならないのだ。


「ぴろりろーん!」


(ミッション アイサ、ミル、ハルル、アピア、タルトを助けだせ! 制限時間 7日)


「ぴろりろーん!ぴろりろーん!」

「え?」

「何よ?」

「ほう?」

「あら?」


「サリアさん、ちょっとごめんね。」


俺は目の前の子供達には聞こえない様に、小声でカレン達にミッションの内容を伝えていく。


「ミッション アイサ、ミル、ハルル、アピア、タルトを助けだせ! 制限時間 7日」

「誰よ?」


俺は首を左右に振る、他のみんなも同様に記憶にない様だ。改めてカレンはサリアに相対して言う。


「サリアさんはどうしたい?貴女の事は私が必ず守るから。」


サリアはカレンを真っ直ぐに見つめ口を開いた。

そうして俺たちは思わぬ事態に巻き込まれていくのだった。


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