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ミッション コボルト討伐緊急作戦会議!

(ミッション 猫さんを助け出せ! 制限時間 4日)


あれから毎日コボルトを全滅せんと10階層に来てはいるが、制限時間が止まる事は無かった。今も10階層を一回りしてボス部屋の前に戻ってきたところだ。


「一度、ボス部屋で休憩しましょう。」

「わかった、開けるぞ。カケル手伝え。」

「了解」


最下層ボス部屋を休憩に使う事なんて、俺たち位だろう。そんな余裕があるなら、他のより稼ぎの良いダンジョンに行くはずだから。それにしても4階層止まりのパーティと同じとは思えない。


「カレン、コボルト討伐緊急作戦会議を所望するぞ。」

「え?何会議?」

「コボルト討伐緊急作戦会議だ。このまま戦い続けても駄目だ。方法を考えるぞ。」


その言葉に1番驚いたのがマリリさんだった。手を口に当てその口は少し開いたままで、それ以上声も出せない程に驚き目を見開いている。


マリリさんが現実へ帰ってきてからも大変だった。タリリをべた褒めしているし、俺たちに今回のタリリがどれだけ凄いのか一生懸命に説明してくれた。


カレンが声高に宣言をする。その足元にはオークが転がっている。


「はい!第1回 コボルト討伐緊急作戦会議を始めます。」

「何か良い案ある人?」

「では私から、私達もミカンと同じ様に、ショートソードの二刀流にしたら今の2倍の速さで倒せると思うんだが。どうだろうか?」

「対象はタリリとアンタよね?私は剣術の事は分からないわ。アンタならどう?」

「俺か?俺は1本でも剣に遊ばれている感じだから二刀流は無理だな。タリリなら力が余ってそうだからいけるんじゃないか?」

「アンタ、何か無いの?」

「正攻法で行くなら、採掘者を多数雇う事だな。ただ金がかかるのがネックだ。」

「正攻法じゃないのも、あるんでしょ?」


カレンはパーティを預かる身だからか、意外とお金に関してはシビアだ。無駄づかいをしているのを見た事が無い。


「正攻法じゃければ、水責め、毒ガス、火攻めなどの全フロア対象の攻撃だな。」

「危ないわ、他のパーティがいたら使えないわね。次は?」

「これはこれから検証をする必要があるが、エサで誘き寄せて纏めて一網打尽にする方法だ。」

「なるほどエサで釣るのか、良さそうだ。」

「エサはなによ?」


俺はしばらく考えたが、コボルトが何を食べるのか思い当たらなかった。


「コボルトって何食べるんだ?」

「さあ?犬っぽいから肉?骨かしら?」

「カケルさん、エサは食べ物以外でもよろしいんですよね。猫さんにしていただいた様に。」

「ええ、そうですね。コボルトは耳と鼻が良かったのでそれを利用すれば効率的ですね。」


今、俺たちは十字路の中心部にいる。その足元には街で購入して来た骨つきの生肉が横たわっている。


「この生肉意味あるわけ?」

「無いな、多分。」


コボルトは四方の通路から、集まって来ているが肉に誘き寄せられているかと言うと分からない。


「カレン、レアで頼む。」

「無理よ…。消えて無くなるわ。」

「…。」

「本当にごめんなさい、出来ないんだから仕方ないじゃない。」


俺はみんなに守られながら、薪を燃やして骨付きステーキを焼き始めた。確かに肉の焼ける良い匂いがして来た。実に食欲をそそられる香りだ。


「煙いぞ。」

「おいしい匂いです。ぐーぐーです。」

「ミカンちゃん、今日はお肉にしょうね。」

「肉です。」

「確かにコボルトが匂いに釣られて来ていますわ。ですが、これでは私達も身動きとれませんわ。」


匂いによって集まって来てはいる。しかし10階層全体に効果があるとは思えない。


「とりあえず、今回はここにいるだけ倒して仕切り直しましょう。」

「了解。」


「第2回 コボルト討伐緊急作戦会議!」

「パチパチ!」


ボス部屋に帰って来た俺たちは、いかにしてフロア全体のコボルトを集めるかを考えていた。


「肉にしろ、音にしろ、コボルトはそこそこ集まってくるわ。ある程度集めてさっきみたいに倒して、また別の場所で繰り返せばいけるんじないかしら。」

「カケルさん、集めてから倒す事には理由があるのでしょうか。教えて頂けませんか?」

「これも検証中なんですが、ボスは倒すとしばらくすると再度魔法陣から出現しますよね。まずこれがリポップ、再出現ですね。そのトリガーは今いるモンスターを倒す事。」

「はい、ではカケルさんはボス以外もリポップするからまとめて倒す必要があると、つまり時間差をつけると前のモンスターがリポップしてしまうと考えていらっしゃるのですね。」

「その通りです。」

「アンタ、先ずって言ったわよね?次があるの?」


カレンとマリリさんは頷きながら、俺の話をきいてくれる。タリリとミカンちゃんはオーク待ちをしている。あっちは任せよう。


「モンスターハウスってあっただろ?」

「バカ伯爵の奴ね。」

「他の階層のモンスターを除いても、モンスターハウスには非常に沢山のモンスターがいたのは覚えてるだろ?」

「ええ、覚えてるわ。」

「それだけのモンスターがいても、通路にはモンスターが普通にいただろ?だから、リポップとは別に新規で沸いたモンスターがモンスターハウスに溜まっていったんだと思っている。」

「その新規のモンスターの湧く条件が分からなくてな。」


カレンは意味が分からないようだ。俺も話していて分からなくなって来た。


「それが分かったら、何の意味があるのよ?」

「えーとな、新規ポップが全くのランダムなら打つ手は無いんだか、リポップの代わりなら減らす方法が無いのかなって。」

「倒す事が条件なんでしょ?」


マリリさんは頰に手を乗せ、少し考えてから


「別の条件があるかもしれないと、考えているのですか?例えば、階層間の移動とか?」

「はい、そこまででは無くとも初期の出現地点からある程度の離れた場合とかですね。」

「その条件があるのなら、モンスターをまとめてる事は逆効果になりますわね。」


俺はマリリさんの言葉に頷き、言葉を続ける。


「だから、ある程度の数のモンスターを纏めておいてもどんどんと新たにモンスターが集まって来るようなら、倒す事以外のリポップの条件があると検証できると思ったんですけどね。」

「分からないのね。」

「ああ、リポップなのか判断出来ないな。」


すると魔法陣の前で座り込んでいるタリリから声がかかる。


「それならこの部屋に集めたらどうだ?コボルトが扉を開けられない様にしておけば、隔離できるぞ。」

「オークが心配ね。あと他の採掘者もね。」

「だかタリリの隔離の案はいいと思う。通路で集めるよりも確実だな。」

「やってみましょ。」


次の角を曲がればボス部屋が見えくる。俺たちは10匹程度のコボルトを引き連れ通路を進んでいる。


「タリリ殺すな。」

「ミカンちゃん、足はダメだ。付いてこれなくなる。マリリさんコボルトにヒールをお願いします。」


俺たちはいわゆる、MMOゲームでいう所のトレインというモンスターの誘導および牽引を行なっている。ゲーム内でもこの世界でも、他のパーティを巻き込むと命の危険がある行為だ。しかしこのトレインが難しいのだ。行く手のコボルトを退かさないと前に進めないし、力を入れ過ぎると倒してしまう。また、引き連れているコボルトの攻撃も油断すると致命傷になる。コボルトもショートソードやナイフ、棍棒など所持する個体もいるのだから。幾ら護符があるとは言え、油断出来ない状態が続いている。


「カケル開けるぞ!」

「ああ」


俺とタリリはボス部屋の扉を開き、コボルトを引き連れ部屋へ入ろうとするが、扉の向こうにもコボルトの群れがいる為に入る事が出来ない。むしろ、出てくる勢いのが強いぐらいだ。


「コボルトもバカじゃないんだな。ここが開くのが分かってるのか。」

「何回もすれば、覚えるようね。」

「くそー!我ながら良い案だと思ったのに。」


こうしてこの日のコボルト退治は終了した。


(ミッション 猫さんを助け出せ! 制限時間 3日)


その翌日の早朝、教会宿舎の食堂ではカレン率いるパーティ5人が揃っている。


「第3回コボルト討伐緊急作戦会議!」


まりりさんからカレンと報告が続く


「先ずは私からですが、カウンター業務のシスターからの話では、猫さんは3日後に王都に向けて運び出されるとの事です。それまではアザリアでの調査が引き続き行われると言う事です。」

「次は私からね。10階層の占有が問題になりそうよ。2体目の猫さんを探すパーティがコボルトの動きがおかしいって言ってるらしいわ。」


カレンがミカンちゃんの目を見て、はっきりと宣言する。


「だから、次が最後にしましょう。それで上手くいかなかったら終わりよ。調査中の猫さんを破壊する事もしないわ。みんなを犯罪者にしてまですることじゃないでしょ?」

「そうだな、了解だ。」

「はいです。」

「分かりましたわ。」

「了解した。」


「だから、みんな、今までよりもいい案を…。」


カレンはそこまで言いかけて、天井を見上げた。


「あー!!もう駄目ね。いい案じゃダメよ!」


カレンは俺を手に持つフォークで俺を指差す。


「アンタ、ヘンタイポーターでしょ。ベターじゃなくベストな作戦を言いなさい!1番最高なのをよ!」


カレンは時々無茶を言う。たが今回も自分の為じゃなく、ミカンちゃんの為だ。その気持ちに応えてたい。


「ベストか。正攻法じゃなくてもいいか?」

「この際仕方ないわ。」

「お、おい毒ガスはマズイぞ。」


タリリに首を振り違う事を伝えておく。


「俺たちにしか、いやカレンにしか出来ない事か1つだけある。」





時間は深夜の22時、場所はアザリアダンジョン10階層始まりの部屋に俺たち5人は木の棒を片手に並んでいる。


「他のパーティはこの階層にはいないわ。もちろんボス部屋にもいなかったわ。今がチャンスよ。みんないくわよ!」


カレンの掛け声とともに俺たちは走り出す。カレンと俺たちの持つ棒はロープで結んである。


「カレン、コボルト3匹発見だ。」


先頭のタリリが声高く報告する、コボルトはその声でこちらに気づき走ってくる。


「タリリいいぞ。」

「ミカンいいです。」

「俺も準備OKだ。」

「3匹跳ばすわ。」


カレンが直にコボルトを触るのは危険な為に、カレンと繋いだ棒で突く事によって触る代わりにならないかと考案した作戦だ。実際にタリリ、ミカンちゃん、俺が突いたコボルトはカレンの合図と共に消えて行った。


「ハアハア、右にコボルト1匹。」

「前に2匹です。」

「あと少し頑張って。」

「後ろにはいませんわ。」

「キツイ。」


再び5人か団子になり走る事、10分程してボス部屋の前に到着した。俺たちの周りにはコボルトの姿は見られない。


「ハアハア、終わったぞ。」

「お疲れ様です。タリリ。」

「タリリ間違っても開けるなよ。」

「それぐらいはわかる!」

「みんなお疲れ様。もうロープを切っていいわ。」

「了解。」

「アンタはダメ。わたしと確認に行くわよ。」

「はぁ?膝がガクガクなんですが。」

「時間が無いから、早く!」

「カレンちゃん、頑張って!」

「うん、行って来るから待っててね。」

「ほら、行くわよ。」


俺たちは3人に見送られながら、来た道を引き返す。


「カレン、そこの行き止まりに入るぞ。」

「分かったわ。」

「ほら、いたぞ。」

「よく分かるわね。」

「いまの俺はタリリに成り切っているから、タリリの気持ちがわかるんだ。タリリが見落としそうな場所とかもな。」

「何よ、それ。」

「マリリさんに良いところを見せたいし、みんなの先頭に立って行きたい、しかもミカンちゃんの為に少しでも早くしないとって考えると、つい見逃してしまうみたいなんだ。」

「分かっているなら、その時言いなさいよ。」

「タリリに悪いだろ?」

「へー」


カレンが意外そうな顔で俺を見る。


「実は走るので精一杯だった。悪い」

「ふふふ、鍛えなさいよ。」

「今度な」

「アンタは私にも、なり切れる?」

「え?」

「なんでも無いわ。」


カレンは俺に背を向け歩きだす。


「オマエはタリリみたいにはいかないな、単純だけど簡単じゃないからな。」

「そう?じゃあ、わたしの事きちんと見ていなさいよ。分かった?」

「ああ、分かった。」

「ふふふ。」


カレンは走りだす。ロープで繋がっているので俺も走り出した。


「そんなに走るとパンツ見えるぞ!」

「そ、そこは見なくていいから!」


カレンはローブの腰のあたりを両手で押さえる。


「そんな長いローブから見える訳ないだろ?」

「はぁ?アンタはやっぱり死ね!」


今度は俺が逃げる側で駆け出した。俺はこの世界の人間でない日本からの異世界転移者だ。来た時と同様に何の前触れも無く、突然に元の世界に戻る時がくるかもしれない。それまでにどれだけ言葉で好きと言ったところで全てが無になってしまう。だから狡いのは分かっているが曖昧な選択をした。



俺たちは10階層の始まりの部屋にたどり着いたあと

別ルートにてボス部屋までコボルトを探しながら戻って来た。


「みんなお待たせ。確認完了したわ。」

「疲れた。しんどいな。」

「次はいよいよボス部屋に転移して殲滅だな!」

「カレンちゃん、止まっているです。」

「あらあら、そうなんですの気付きませんでしたわ。」

「なんだとー!これで終わりなのか?今からが私の見せ場なのに。」


ミカンちゃんとマリリさんは目の前を指差している。確かにそろそろ残り時間が2日になっていてもいい頃だ。


(ミッション 猫さんを助け出せ! 制限時間 3日)


せめて秒の表示が必要だな、失敗した時には失敗って出るくせに成功した時も、もっと分かり易く表示して欲しい。


後から聞いた事だか、ミカンちゃんは地の精霊からネコさんの契約完了の報せを聞き、カウンターが止まっている事が分かったらしい。


「猫さんはもう土に戻っているのね?ミカンちゃん。」

「はいです。地の精霊さんが戻したと言ってるです。」

「明日、発見した人は驚くだろうな。」

「責任問題になったりしないか?私たちは大丈夫だろうな。」

「私たちは問題無いわよ。現場にいないんですもの。それに責任問題に成ればいいのよ。ミカンちゃんの猫さんをモンスターと間違えるなんて失礼よ。」

「はいです。」

「それじゃこの中片付けましょう。いい?跳ぶわよ。」


カレンがつま先でボス部屋の扉を2、3回蹴りながら転移の確認を取る。



コボルトで埋め尽くされたボス部屋に転移した俺たちは、ギュウギュウのすし詰め状態でかなり暑苦しかった。しかしそれも始めだけで、カレンのファイアが壁に沿って何本も炎の柱を作りコボルトを消失させ、またミカンちゃんとマリリさんのストーンにコボルトたちが潰されていくに従い、自由に動くスペースが出来たタリリが縦横無尽にコボルトを切り捨てて行く様が見て取れる様になって行った。そのコボルトたちは俺たちの突然の襲撃にパニックになっており、落ち着きを取り戻す前に大半が動かなくなっていた。


「最後のコボルトは私のタリリソードで!」


20分後、俺は部屋中に散らばるコインを拾い集めている。だれか手伝え本当に。ミカンちゃんはハーちゃんを作り出している。それを見て、カレンとマリリさんとミカンちゃんはハーちゃんを指差しながら話し合っている。


「このままの形のハーちゃんだと、誰かに見られたら猫さんと言われちゃうわね。」

「そうですわね。それでは少しばかり問題になりそうですね。」

「ミカンちゃん、ハーちゃんに帽子被せてみたら?」

「大きなリボンがいいです。」

「リボンね、いいわね。」


結局、ハーちゃんは猫さんとは違い黒猫になり、頭に大きなリボンとシッポにもリボンをつけている。

また大きな相違点はウインクしている表情も挙げられる。これならモンスターに間違われる事は無いだろう。


「うん、いいわね。」

「可愛らしいですわ。」

「ハーちゃんです。」


3人の満足そうな顔を見てモンスターには間違われ無いが、猫さんの関係者なのは相変わらず一目瞭然だなと思ったが言い出せないでいた。こういう事はタリリが空気を読まずに指摘するはずだから、成り行きを見守る事にしようと思う。俺は3人の反感を買う役目はタリリに譲ってやる事にした。


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