ミッション 攻略開始
「ぴろりろーん!」
(ミッション モンスターハウスへ突入せよ 制限時間 1800)
「ミッション モンスターハウスへ突入せよ。 だってよ。どうする?」
「なによ!結局なの?!」
「仕方ないですわね。」
「こんなにミッションを嬉しく思った事はない。騎士として最高のミッションだ。」
「カレンちゃんも本当は行きたいです。」
俺たちは今来た階段を振り返り、まだ見ぬモンスターハウスを見据えた。
今日はアザレアダンジョン攻略当日だ。口止め料もあったので、カレンの指示でいつもよりもアイテムも充実している。その分俺の荷物の負担は増しているが。
「みんな、サクッと10階層まで行くわよ。この1年の遅れを取り戻すわよ。」
「「「はい!」」」
「おー?!」
あれ?なんか恥ずかしい。こっちを見るな。顔が熱い。もう、ダンジョンに入ってしまえ。
「ま、まてポーターが真っ先に入ってどうする?」
「待ちなさいよ、私が先よ!」
「カレンも私の後ろだ。守れないだろ。」
現在1階層入口から一本道の直線通路を10メートル進んだ所だ、前回苦労したパンプキンが3匹とタイニーパンプキンが2匹が密集している。いきなりの試練だ。前に入ったパーティはどこ行った。
「タリリ、ミカンちゃん 先ずは上空のパンプキンから行くわよ。私は壁を作って分断するわ。マリリはミカンちゃんのステップをお願い。」
「ファイアウォール」
「アースステップ」
アースステップとは地魔法の岩をきれいな立方体にしただけの物だ。パンプキンの下に射出して置く事でミカンちゃんの踏み台に利用している。ただ綺麗な立方体にする事には慣れが必要でマリリさんが練習していたのを何回か見ている。更に難しいのが岩の保持だ。ウォールの魔法の様にあらかじめ、一定時間保持する意識の無い魔法を無理やり、保持しているのだから。岩を飛ばす魔法は精霊に飛ばす為の合図を出して終了だ、的に当たるまで何もしないし、的に当たると岩は消えてしまう。だが、ステップ魔法は飛ばした岩を所定の位置で消えないように、精霊に指示を出し続ける必要があり、イメージを一定にしないと岩の形や位置が変わってしまい、ステップとしては不完全な物になってしまう。カレンのファイアも凄いが、ステップ魔法の制御の繊細さは流石はマリリさんだ。他のパーティでは必要ない魔法だが、きっと他の魔法使いとは一線を画する事になると思う。
「フッ」
「えい。えい。」
マリリは親切なおじさんの戦いを見てから、掛け声が変わっている。形から入る奴らしい。ミカンちゃんはその内にパンプキン2匹をメイスの一撃づつで仕留めている。マリリも1匹は落としている。その間タイニーパンプキンは完全魔法耐性があるにも関わらずその場に留まり、カレンのファイアウォールが消えてから、タリリ達の方へ移動を開始した。ステップから飛び降りたミカンちゃんとタリリはそれぞれ追加で1匹倒して、パンプキンを全て駆逐した。風の魔法も撃たせる事なく完封勝利だ。
「マリリもミカンちゃんもタリリも良かったわ。連係も完璧よ。どんどん行きましょう。」
「カレンのファイアウォールも継続時間が長くて、良かったぞ。」
「そう?ありがとう。」
「アンタは…。何もしてないわね。」
「警戒してるし、後ろ見てるし!今からコイン回収するし。」
まだ1階層だが、遭遇したモンスターは全てコインに変えている。敵を選んで戦っていたのが遥か昔に感じる。今は1階層ボス部屋の前だ、少しの休憩を挟んでアタックを行う。
「ここは全員経験済みよね。アンタ忘れて無いわよね。」
「パンプキンヘッドだろ。部屋に入ったら兎に角ダッシュでボスまで走り、後は魔法を撃たす前にタコ殴りだろ?」
「そうよ。アンタも私もマリリさんも全員でね。」
「行くわよ」
部屋の中央にはデカイカボチャに目と口が彫られた、ほぼハロウィンのカボチャの特大版が置かれている。直径で3メートルぐらいはあるな。見上げる必要がある。この質量が襲って来たらひとたまりもないが、パンプキンヘッドはその場から一切動かない。風の魔法は飛ばして来るが。完全魔法耐性のまさに固定砲台だ。
「最初の一発だけね。」
カレンの言う通り、パンプキンヘッドに魔法を撃たせたのは最初の一発だけだった、それもタリリのラウンドシールドで防御した。あとは文字通りタコ殴りでパンプキンヘッドは魔法を撃とうとするが、俺たちの連打によって中断されていた。そして俺の手の中には銅貨が1枚握られている。安定化の手数料除いたら500円だ。ペットボトル1本も買えないぞ、1人当たり100円だ。
「2階層に降りるわよ。次は芋虫のエリアよ。ボスも芋虫よ。気持ち悪いから、私が焼くわ。」
「カレン頼む。切ったり、殴ったりすると変な汁が服に飛ぶからな。」
シスコンも嫌だったのか。前回はミカンちゃんは眉間に皺寄せて殴ってたなと思い出す。
2階層ではボスまでに12回、ボスで1回天井を焼いた。それも姿を見た瞬間に焼いた、躊躇いもなく。
「次の3階層はゴブリンエリアよ。仲間を呼ばれる前に殲滅しましょう。」
「カレン大丈夫か。結構早いペースじゃないか?ファイアも10発以上撃ってるだろ?」
「大丈夫よ。火の精霊も大丈夫って言ってるわよ。」
「そうなのか。無理するなよ。」
そう言えば、この世界のMPは意味不明な環境依存だったな。こんなに高火力なファイア連発されると、どうしてもMPが不足しないか心配になってしまう。そんな事を考えていると足元にはゴブリンの死体が2体転がっている。急いでコインを集めなくては。
「鉄貨が5枚。」
親指と人差し指でコインを挟んで腕を挙げる。
「いいわね、呼ばれる前に倒せるから、今までみたいに苦戦しないわ。」
「戦闘時間も半分以下ですわね。ヒールも不要になっていますわね。」
「そうだったわね。これまではヒール頼みで3階層をクリアしてたよね。」
「ミカンはポーションでお腹いっぱいだったです。ポンポンです。」
ミカンちゃんはお腹の前を手のひらでポッコリとさせている。
ボスまでに遭遇したモンスターは全てゴブリンだった。最高で5匹のグループで、途中で1匹追加した。しかも、その1匹が合流する前に更に仲間を呼ぼうとしたがカレンのファイアにより、事無きを得た。
「危なかった。いい判断だったぞ。カレン。」
タリリはカレンを賞賛する。俺もそう思う。戦闘中の5匹のゴブリンに集中し過ぎて、もし仲間を呼ばれていたら負傷者が出ていた可能性があった。本当にいい判断だったぞリーダー。周りを見る余裕が出来たって事かな。
俺達は3階層のボス部屋の前に到着し、突入前の軽いミーティングをしている。
「3階層のボスはゴブリンメイジよ。メイジと言ってもヒールも使用するから、回復されると厄介よ。
時間が長引くと事故も怖いわね。ファイアで先制して、その隙にタリリとカレンちゃんが叩く。いいわね。」
ボス部屋の扉を潜ると、黒いローブをまとったゴブリンが既にこちらに杖を向けていた。ズルくないか?
「甘いわ!」
「アースウォール」
「守るです。」
こっちの女性陣も負けじとズルいようだ。
ゴブリンメイジに火柱があがり、こちらのパーティの前には土で出来た壁と岩で出来た壁が並び立ち、ゴブリンメイジの火の玉を食い止めていた。タリリは壁を避け疾っていたが、それは緩やかになり、歩きに変わる。
「綺麗サッパリだな。」
タリリは一言呟くと、ショートソードを腰の鞘へ戻した。3階層のボスで魔法耐性が高そうなメイジにもオーバーキルか。パンプキンを被ったモンスターが出てこない限りは余裕そうだな。
「俺はてっきり、モンスターの体内にコインの元が入っているのかと思ってたよ。」
「そうでしょ?」
「どこからとハッキリ教わっていませんでしたが、そのように考えていましたわ。」
「モヤモヤってゴブリンから出てるです。」
「ああ、そうだな。マリリと同意見だ。」
「じゃあ、これはどう説明すれば良い?」
俺はみんなに向かい、何も無い空間から金糸が登り上がるのを指差した。カレンがゴブリンメイジを影形も無く、燃やし尽くしたその場からだ。
「じゃあ、ボスだから魔方陣のあった場所って事じゃない?」
「どこでもいいじゃないか、コインが出るなら。」
「ローレンシウム様の奇跡それが、ギフトですわ。我々への遣わし方も当然奇跡ですわ。」
「モンスターの中にあったとしても、それが自然と出てくるのも不思議よね。それも奇跡と言えるわね。」
「それも、そうか?まぁいいか。」
「コインの回収が終わったなら、4階層にいくわよ。」
俺たちは4階層の2部屋を攻略したところだ。この階層もゴブリンばかりだ。ただ、メイジやヒーラーも混じっている。3階層のボスがもう雑魚として徘徊してるのか。
「ゴブリンです、えい。」
「ヒーラーは任せろ。フッ」
「メイジにファイア!」
「ストーン!」
4匹のゴブリンと遭遇したが、マリリさんですら、瞬殺だ。
「この階層のゴブリンは3階層より強いのか?」
順調すぎて、よく分からなくなっている。
「強い筈よ。今までの私達ならそろそろ、ゴブリンに囲まれ始めてるわね。ポーションも尽きる頃よね。」
「そうなのか。うわ」
コインを集めるのを中断し、ゴブリンの上に伏せる
と背負い袋に矢が刺さる。ゴブリンアーチャーか。
俺の前に石の壁が出来たこれはマリリさんの魔法か。タリリがゴブリンアーチャーに目掛けて走っていく。飛来する矢を躱してゴブリンアーチャーにショートソードを叩きつけた。ミカンちゃんはタリリを追越しもう1体のゴブリンアーチャーにメイスを振るった。
残り2匹のゴブリンアーチャーは弓を手放し、木の棒に鉄のスパイクを付けたメイスとハンドアックスにそれぞれが持ち換えようとしていた。
「バンバンバンバン。」
ゴブリン達の持ち手付近にそれぞれ、2発づつ光の魔法を当てた。手が大きく後ろへ逸れたが、武器を落とす事は無かった。
「ファイア。」
「ストーン。」
それで十分だった様だ。無傷で4匹のゴブリンアーチャーを倒す事が出来た。最後のゴブリンアーチャーの所まで来ると、その場所から4階層のボス部屋の豪華な装飾をされた扉が見えた。
「その部屋の前で、少し休憩しましょう。」
「ついに来たです。ボス部屋です。」
「1年経ってようやく来たわ。」
「いよいよですわね。」
「必ず勝つぞ。マリリの為に。」
うちのパーティのみなさんは10階層に来たかの様なコメントをしてらっしゃる。水を差すのも悪いから暖かく見守ってやろう。
「うん、うん。」
「何よ、気持ち悪い。」
「変な顔してないで、アンタも頑張りなさいよ。」
「それじゃあいくわよ。準備いいわね。」
「ぴろりろーん!」
(ミッション 避けろ 制限時間 3)
「みんな!避けろ!?」
前は扉なので、後ろを振り向くと今まさに騎士を引き連れた若い男性が火の魔法ファイアボールを放とうとしていた。皆驚いたが身体は既に、通路の端へと動いていた。
直後、魔法が扉に炸裂した。
「いやあ、ゴブリンかと思ったら、なんだ採掘者だったか。」
なんだ、じゃないだろ。危ないだろ!文句を言おうと口を開きかけると、袖を引かれた。
「カレンどうした?あのバカに文句を言わないと。PKかよ。謝りもしないで。」
「バカ、黙って。私がするから」
騎士を引き連れた男性は魔法を避ける為に、道の端へ分かれた俺たちを見て
「採掘者諸君、道を開けてくれて助かったよ。」
「君たちの時間と僕の時間では、価値がちがうからさ。さあ、いくよ。」
そう言うと、騎士が2人前に出てボス部屋の扉を開けると、若い男性を先頭に部屋に入っていった。
「おい!ちょっと待てよ!」
「駄目!!、すみません!」
「いけませんわ。」
「もうしわけありません。」
カレンが俺の言葉を遮り、謝罪する。横ではタリリもマリリさんも頭を下げている。なんだ?どういう状況だ?魔法が当たっていたら怪我をするところだった、しかもボス部屋に割り込みされたと言うのに。
ゴブリンと間違えたというのも怪しいが、間違えたのに謝らないのもおかしい。
若い男がこちらを見ていたが、その視線はボス部屋の扉が閉まる事で遮られた。




