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ミッション 司祭とギフト

魔方陣の光が最高潮に達した時、異変が起こった。

4つの輪でそれぞれ1人の騎士が苦しみだしたのだ。騎士は両手を繋がれてたままで、苦しみ暴れていたが、どの騎士も頭を床に付けた姿勢で静かになる。痛みか何かで気を失ったのだろうか。俺たちも、繋がれてた騎士団もその様子をジッと伺っている。

すると司祭が気を失い伏せている騎士の背後に立つ。


「この方でした。じつは決まっていましたが。さあさあ、邪魔な兜は外します。顔がみえませんから。」


そう言って兜を順番に外していった。


全員の兜を外して程なく、1人の王国騎士が悲鳴ともに顔を上げた。その顔には迫り出した口と大きく開いた口には鋭い牙が並んでいた。しだいに毛深くなりその顔はオオカミの様に見えた。


「ワーウルフ?」


騎士達はモンスターと化した仲間の名前を呼ぶ。また、別の騎士は仲間が成り果てたモンスターの名前を呟く。別の1人の王国騎士もワーウルフへと変貌を遂げた。また聖紅騎士団の1人の顔はトカゲの顔へと変化して行った。


「リザードマン!」

「ワーウルフだけじゃないのか。」

「分隊長ー!」


繋がれた仲間達は背になっている分隊長を、見ようと必死に身体を捻り向き変えようとしている。最後の1人の聖紅騎士は肌の色が極端に白くなり、目は金色へと変化する。また鎧を引き千切りながら背中から1対の白い羽根が出現した。まるで天使のようであったが、すぐに白い羽根はくずれ落ち、金色の目は紅く染まり、血の涙を流している。口には鋭い歯が並び始めている。


「やったぞ。実験は成功だ。予想通りだ。あとは仕上げだ。」


「条件に合うのはどれだ?神に捧げ続けた魂はどれだ?」


男は残る輪を物色していく。ひとりひとりを舐める様に顔を近づけて観察していく。ただ俺たちポーターの輪には近づいて来ない。


「シスターもいるようですが、ポーター風情では信仰の度合いは低いでしょう。やはり、聖紅騎士団が理想でしょうか。」


「まあ、失敗作は廃棄しますか。騎士団の方々、その4匹の処分をお願いします。そろそろ、拘束が解けますよ。」


阿鼻叫喚の地獄絵図が広がる。ワーウルフは繋がれた騎士を噛み殺し、反対の騎士の腕を噛みちぎり、右腕の自由を取り戻す。輪は途切れるが左腕が繋がっている為に逃げ道は無い。同様な光景が4ヶ所で広がる。騎士達はただただ距離をとろうと、もがくしかない。


そんな中でも俺達は輪になって座ったままだ。動く事も、魔法で援護する事も出来ない。リザードマンの隣の騎士団は座ったまま、殺されていった。


「駄目なのよ。私は魔法を使おうとしたけど、だめなのよ。何回やっても同じ。精霊が抑えられてるみたい。この革の紐の所為で力が出せないって精霊が言ってるの。」


「立つ事も出来ないのも、それが原因なのか。」


無傷の輪が聖紅騎士団で1つ、教会のポーターが1つ。王国騎士団が1つ、王国のポーターが2つ。


「決めました!聖紅騎士団にしましょう。こちらは団長もご健在で最高の素体となるでしょう。後の方々は不要なので処分します。オーク辺りで良いでしょう。」


こんな時に限って、ミシッションは出ないし、俺の人生のタイムリミットが秒読み段階だ。兎に角、時間稼ぎだ。


「オイ!化け物司祭。俺の横にいるカレンはな、猫耳で、綺麗な目をしてる、ハッキリ言って可愛い!」


「バ、バカ!な、な何言ってるのよ。」


司祭はこちらに目を向けた。


「この期に及んで、お惚気話ですか。」


「化け物司祭、違うぞ。俺からのアドバイスだ。コイツは外見は良いが中身は既にオークだって事だ。」


「はああ?! コイツ殺す!」


「お忙しいところ、すみませんが準備が有りますので。」


よし、司祭の注意は引けた。


「こんなバケモノを作る事が目的じゃないんだろ!

本当の目的は何だ!」

「次はバケモノなんて呼びませんよ、貴方は。」

「じゃあ、それを作って何をするつもりだ。」


だか、司祭は話には乗ってこない。


「煩いです。こちらを先にして、最後に貴方達をと思っていましたが纏めてしますか。」

「え?静かにしてます!もう何も聞きません。」


俺の時間稼ぎも虚しく、残り全ての輪に魔法陣が光輝きだした。


「カレン、時間稼ぎ失敗した。」

「早めてどうするのよ!」

「すまん。」


魔方陣の光は司祭の前の聖紅騎士団団長にも、輝いている。団長は苦しみを悲鳴を上げずに耐えている。他の輪では騎士やポーターが苦しみだした。


「クソ、誰だ?」


左右を振り返り仲間を見る。仲間達も振り返り苦しみだすのが誰か心配そうに見ている。カレンではない。タリリでもない。ミカンちゃんは大丈夫そうだ。マリリさんは大丈夫ですかって声が聞こえくるから、大丈夫だろう。あれ?じゃあ消去法的に俺か?


痛みが極限に達した為か、聖紅騎士団の団長は失神して、座ったまま頭を下げて静かになっている。司祭が兜を脱がすと、団長の両肩を掴んで話しかけている。


「貴方は神に選ばれた存在です。この中で最も使徒に近い存在に顕現するのです。」


司祭が肩を大きく揺さぶり続けると、団長の目が僅かに開くがそこに意識の光は無い。


「さあ!」


団長の背中から1対の白い羽根が生えてくる。目は金色になるが紅くなる兆候はない。


「@#Aa@@@@」


団長だった者は意味の分からない言葉を発して、立ち上がった。他のオークたちは座ったままで動けないでいる。


「素晴らしい!その御姿も美しく、まさに御使だ。」


「マリリ、あれは御使様なのか?」

「分かりませんわ、ただ神話に記されているその御姿とその特徴が一致していますわ。」


タリリとマリリさんの会話が聞こえてくる。本当に天使を作り出したのか?さっきの失敗作の天使もどきではなく。そう聞くと天使の身体が輝いて見える。天使っていったら、幼児に羽根が生えて、天使の輪を頭に付け、弓矢を持ったキューピッドだろ。成人男性じゃないだろ。


「では第2ステップと行きます。神の奇跡よ。御使を我と共に!」


司祭は聖紅騎士団の輪の側でコインの入った袋を持ち天井を見上げている。司祭は天使に視線を落とす。まだ、司祭にも天使にも異変はない。


「我と共に!!」


司祭が今度は天使に向かって叫んだ。するとコインの入った袋が破れ、中の白金貨が飛び散り、床に散らばり音を立てた。その内に全ての白金貨は煙の様に消えて行った。


「ギフトは消えた。我の願いは届いてる。何故だ!何故、御使に成れない!神よ!」


司祭は天井を睨みつけ叫んでいる。それは絶叫と呼ぶのが相応しい。


「カレン。俺モンスターになってる?」


お隣さんに聞いてみる。


「ええ、貴方も中身はゴブリンよ。死ねばいいのに。」


ここを無事に乗り越えても、地獄が待っている。

司祭はまだ時間がかかるようで、ローレンシウムだの、神だのと叫んでいる。俺達のを含めた他の魔法陣は既に光を失っており、オークが暴れ回っている。何故かオーク化は逃れられた。コイツはやっぱりオークだった説が有力な気がしてきた。


「あの怪物司祭倒すの今がチャンスなんだよな。アイツ今、大変そうだし。」

「こっちも動けないわよ。せめて魔法が使えたらいいのに。」

「どれ?光の精霊さん、アイツの頭撃ち抜いて」

「バン。」


その瞬間、司祭の頭部がぐらついた。


後で光の精霊に聞いた話では、地水風火闇の5精霊の行動を制限する超強力なアイテムだったらしい、ただ誰も使わない光の精霊は除外されていたらしく、光の精霊さんは自由に動けたらしい。こんな所にもコスト削減の落とし穴があったようだ。

パーティの全員がこちらを見てくる。やめろ見るな、バレる。ほら司祭がこっち見て目を見開いている。

うわ、こっちに来る。両手を何度か振ると、聖紅騎士団の輪が座った姿勢のまま倒れた。


「何故、貴方はオークにならないのですか?猫耳のお嬢さん?」


カレンの顎を掴むと顔を見るが、変化が無いのを確認すると、周囲を見回す。他の輪はオーク化しているのを見て納得すると、中央のコイン袋に目を留めた。


「何故、ギフトが残っている!!」


司祭が腕を振ると衝撃と風圧で俺達はひと塊りで壁際まで吹き飛ばされた。痛みの残る中、奴がコイン袋を取り上げているのが見えた。


「これは全て未処理のコイン!?それで?そんな偶然あるものか!」


司祭はぶつぶつと呟きながら、ゆっくりと近づいてくる。


「私はローレンシウム様に選ばれた存在だ。ギフトの秘密は私だけの物のはず、こんなポーター風情が神に選ばれる訳が無い。」


焦点が定まっていない。フラフラと歩み寄る。


「カレン。今日のバンごはんなんだっけ?今日の料理当バンお前だよな?おれバンバンジーがいいな。

バンバンジーだよ、バンバンジー。」


「貴方は何を言っているのですか?さっきから目障りです。」


司祭がお怒りだが、こっちは準備完了だ。


「ありがと。バンバンジーが何か分からないけど、助かったわ。」


カレンは腕を摩りながら杖を構える。


「ぴろりろーん!」


(ミッション 怪物司祭をやっつけろ! 制限時間 10)


「ぴろりろーん!ぴろりろーん!」

ミカンちゃんもやる気だ。


「ミッション! 怪物司祭をやっつけろ! 制限時間8」


「司祭様にバンバンジー!」

「塵も残さず、燃え尽きろ!」

「吹き荒れろ」

「グチャグチャのビュウビュウのカッチカチ!」

「とても硬くて、尖って、速いわよ。」


天井まで達する青白い炎が上がり、追撃として風の刃、半分溶けたような高速で飛来する岩石、更に尖った岩石が司祭を貫く。何名かの騎士はモンスターの攻撃を凌ぎながらも、こちらを驚愕と希望の眼差しで見つめる。


だが、まただ!カウントダウンは止まってない。


「あと残り4! トドメ行くぞ!バンバンジー!」

「ファイア、ファイア、凄いファイア!!」

「吹き飛べ」

「トゲトゲのカッチカチのカッチカチ!」

「トゲトゲのカッチカチのカッチカチですわ!」


ゴウと熱気と共に、3本の火柱が天井を焦がす。

鋭い風の刃と2個の尖った岩が司祭を貫く。

先程よりも威力を増した魔法が同時に司祭に襲いかかる。3本の火柱が収まった後の天井と床はまだ赤く融解している。そこに司祭の姿は無い。


「やったか?」


俺はワザと皆に聞こえるように言うが、みんな結果は分かっている。


(ミッション 怪物司祭をやっつけろ! 制限時間 2)


制限時間は残り2を残して停止している。ミッション成功の証だ。


「ほら、気を抜かないの。ファイア、ファイア、ファイア、ファイア、ファイア、ファイア、ファイア!」


おおう。騎士団があんなに苦戦していたリザードマンや天使もどきと

天使やオーク、ワーウルフを纏めてかよ。ま、騎士団は元お仲間だから、やり難いのもあるからな。魔法も封じられていたから、良くやった方か。それにしても、天使もどきは別にしても、司祭の何かしらをレジストした天使(正規品)もカレンは一撃で仕留めていた。魔法耐性とは別の力が働いていたのか?奇跡とは何だ?分からない事が増えていく。

まあ、これでコイン採掘が再開されるならいいか。

俺は使うことの無かったスマホを取り出しみる。

ロック画面のオークカレンを見て、司祭もカレンをオークに選んだのには親近感が少し湧いた。


「何、笑ってるのよ。」


スマホを見せながら


「みんなカレンを選ぶなって。」



とてもピンチで危機一髪な調査だったが、俺達は無事に全員揃って宿屋に帰ってくる事が出来た。騎士団は壊滅的な損害をだしたが、噂にも登らない。

聖紅騎士団の指示により、完全に隠蔽されたからだ。教会関係者しかも司祭の凶行だった為に、それは注意深く念入りに。俺達は口外しない代わりに、教会の所有する建物の一部を使用する許可をもらった。宿代が浮くのを喜ぶべきか首輪を付けられた事を嘆くべきか。


「宿代も浮くし、口止め料も半端ないわ。ラッキーガールね、私達!!」


「ラッキー!ラッキー!」


猫耳ガールとミカンちゃんはお喜びの様だ。

あと変わった点と言えば、マリリさん、タリリさんもここに住む様になった。マリリさんは教会の指示でここに住む事を決められたらしい。タリリはシスコンだ。


マリリさん達の引越しを手伝ったりして、あれから1週間が過ぎた。明日は我等がリーダー提案による、アザレアダンジョン完全攻略の日だ。目標はもちろん最下層10階。ボスすらカレンが前回、瞬殺しているから皆表情に余裕がある。


俺は明日の攻略に必要なアイテムや食料を鞄に詰め込み終わると、みんなが集まる食堂へと向かうのだった。















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