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ミッション 調査隊出発

駄目かもしれない、パーティの存続がかかっている重要な仕事なのに非常に眠い。俺たちはアザレアダンジョンの前の広場にて騎士団からポーターとして運ぶ荷物の受け取りと背負い袋への詰め込み作業を行なっている途中だ。

カレンはあの後、他人様のベッドで熟睡したみたいで、絶好調らしい。あの時のアイツに「寝たいので、退いてくれ」なんて言える訳も無い。

ベッドの片隅で寝ようとしたのだが、あんな話を聞かされた後なので、目を瞑るとカレンの泣きながら微笑む姿が浮かぶ、そうなると色々と考えてしまう訳で眠れやしなかった。

ただ、朝近くには少し寝てたようで起きた時にはカレンは既にいなくなっており、布団を被っていた。

そんな訳で襲い来る眠気と戦いながら、ポーターの準備をすすめていく。


「アンタ寝てないで、詰めないと終わらないわよ。」


(コイツは誰のせいだと思ってるんだ。)


王国騎士団の団長が鞘に入ったショートソードを体の前に立て、扉の前で声を張り上げる。

「これから王国騎士団 騎士30名、ポーター10名、調査研究員 3名。総勢33名。アザレアダンジョン 第10階層 魔物の異常発生調査を開始する。各人十分注意する様に。」


「私達も行くわよ。みんな遅れないでついてくるのよ。出発よ!」


ここはアザレアダンジョンだ。騎士団の隊列に組み込まれて俺たちは歩いている。

隊の中央やや後ろがこのパーティの位置だ。戦闘する音がするが、目視する事は無い。前に20人の騎士がいて10人の班が交代しながらモンスターを袋叩きにして進んでいくらしい。俺達は班交代時にアイテムの補充を補助するぐらいで、あとはただただ歩いているだけだ。想像以上にやる事がない。これは作戦実行のタイミングがないんじゃないかな。どうするか。


「ちょっと、どうするのよ?」


小声でカレンが聞いてくる。俺もそう思ってたところだ。


「まだ5階層だ、焦る必要は無い。」

「そう?けどもう5階層なのよね。感動が無いわ。」

「歩いてるだけだしな。モンスターとの戦闘も見られないから、今後の参考にもならないしな。」

「マリリさん、先に入った教会の騎士団はまだいるですか。何か知ってます?」

「今朝準備の時に、王国騎士団の方々に聞いてみましたが、戻って来てはいないようでしたわ。」

「どこかで鉢合わせしそうだな。仲良くしてくれればいいけどな。」

「教会のが上よ、今回の出発順でも分かるでしょ?」

「そうだったな。」


その後何回かの休憩を挟み、7階層まで降りて来た。今日はこの場所で夜を明かす。騎士団もポーターも班単位で交代で寝る。ポーターに寝ずの番をさせる事は無いようで安心した。



現在8階層だ。依然散歩だ。ミカンちゃんが大きな鞄を背負って歩いている健気な姿を見る。

ミカンちゃん頑張れ。


「ぴろりろーん! 」


(ミッション 下を見ろ。)


「きゃ!」

「うあ?」

「ぴろりろーん!ぴろりろーん!」

「あら?」

「なんだ?」


突然で驚く。他班のポーターからは奇妙な物を見る目を向けられが、構わずに下を向き、コインが落ちているのを発見し拾い集めた。


「下を見ろって。制限時間の記載なし。そしたらコレ。」


俺は拾ったコインを見せる。


「倒したモンスターからの採掘忘れね。ほらそこの。」


通路脇に積み上げられた、細く折れそうな脚が20〜30生えた丸い体の虫を指差した。変な声が出そうになる。コイン取り忘れも納得だ、騎士も気持ち悪いんだろう。


「私達だけの様ね。音も文字も。」

「良かったですわ、誤魔化せない時はカケルさんが異常発生の犯人扱いでしたわね。」

「そうよ、アンタ変なんだから、色々と。」

「悪かったな。」

「カケル変、変。」


8階層のボス部屋を通過して、9階層への階段をおりようとした時だった。階段への扉が湧いて出たかの様に出現し行く手を遮られた。よって俺たちはボス部屋に取り残された。先陣の騎士団20名は既に降りていない。部屋の中央には魔法陣が光輝いている。

ただ俺たちの後方には騎士団が10名も控えているので俺たちは慌てず、騒がすに場所を開ける。


「ボスのリポップよ。私達は壁際に」

「8階層のボスはタイニーオークメイジ 3匹だ。それぞれが火、風、地の魔法を使ってくるから気をつけろ。今回は流れ弾に注意だ。カレン、マリリは私の背後へ。」


カレンとタリリの指示が飛ぶ。


魔方陣の光が最高潮に達すると、タイニーオークメイジ が姿を現わす。4足歩行のピンクの赤ちゃんぶたが3匹だ。まだ柔らかそうな白い毛が全身を覆っている。装備は頭にトンガリ帽子のみだ。オークはやっぱりブタだった。イノシシでは無いようだ。


「かわいいです。こぶたさんです。ふわわ。」

「きゃあー!? 何あれ! 可愛いすぎる」

「え?そ、そうか?だか私には、可愛いくは」

「タリリ、可愛いわ。卑怯ですわ。」

「子豚ならまだしも、赤ちゃんぶたは可愛いな、2足歩行してないから、普通の赤ちゃんぶただな。」

「え、マリリ。私も可愛いと思うぞ。」


若干1名の意見が揺れている奴に、今日は頼もう。


「タリリ、俺たち後ろ向いてるから、流れ弾頼むな。」

「さ、ミカンちゃん、こっちよ。」

「お前ら、戦闘中だぞ。ボスだぞ!」

「タリリ、私も見ていられませんわ、可哀想で。わたしからもお願いしますわ。」

「あ、ああ、わかった。マリリ。」


そして騎士団とタイニーオークメイジとの戦いが始まった。カレン、ミカンちゃん、マリリは耳まで押さえている。戦闘音すら聞きたくないようだ。


「うあああ。駄目だ。これは私も駄目かも知れない。どっちが悪か分からないぞ。これは。」

「そんなつぶらな瞳で、こっちを見るな。やめろ。」

「カ、カレン、ポーション使っていいいいか?」

「アホ、落ち着け、タリリ。いい訳ないだろ。」


騎士団の活躍で俺たちは無事に、9階層に降り立つ事が出来た。若干1名が精神的なダメージを受けた様ではあるが。


9階層は灼熱の溶岩をイメージした階層らしい。あくまでもイメージだ。実際には熱くはない。通路も相変わらずの石造りだ、ただ溶岩らしく赤黒いカラーリングにはなっている。


「なんか、少し熱くなってないか?」

「ええ、熱いわね。」


額の汗を拭いながら、カレンは返事を返して来た。


「それはこの階層が溶岩ステージと言われている、原因のモンスターがいる証拠だな。しかし熱いな。」

「熱いですわね。ふう。」


マリリさんは薄っすらと汗ばみ、ローブの胸元をパタパタとさせる。ダメ、それ以上いけない!

しばらく歩くと、通路脇に真っ赤なワームが横たわっていた。熱気で通路がぼやけて見える。ヒーターワームと言うモンスターで、高熱を周りに出し続けるモンスターで囲まれると危ないらしい。


また途中で溶岩スネークと言うヘビがいたが、本来なら溶岩に擬態して獲物を襲うモンスターだが、溶岩をイメージしただけの通路なので、その死体はわりと周りから浮いていた。


いよいよ9階層も終え、10階層への階段を降りている。ここまで教会騎士団には会ってない。もちろん今回の調査目的の異常発生についても収穫は無いようだ。


「アンタ10階層よ。どうするのよ?」


「まだ10階層だ、慌てる時間じゃない。」


「バカ、最下層よ。慌てなさいよ。」


痛い蹴るな、いざと言う時に逃げ遅れるだろ。俺だって慌ててるぞ。先生トイレ作戦で列を抜けだすタイミングを計ってるうちに、豪華な扉の前に着いた。少し休憩を取った後に最下層ボス部屋に突入する事になってしまった。その為の準備作業で列を抜け出す事が出来なかった。いよいよ、ピンチだ。


「ぴろりろーん! ミッション カレン後は頼んだ。

制限時間 今すぐ。」


小声で呟きながら、カレンにスマホを渡そうとする。


「バカ、誰かに見られたらどうするのよ。」


手を叩くな、スマホ落とすだろ。仕方なくスマホを元に戻して言う。


「大丈夫だ、リーダーが何とかする。」


俺は皆んなに宣言した。


「アンタ、そこは俺に任せろじゃなくて?」

「いや、純正ポーターにそんな大それた事言えませんよ。リーダー。」

「おい、遅れてるぞ。他の班は突入したぞ。」


ヤバ、俺達は扉が閉まる前に飛び込んだ。

そこには異様な光景が広がっていた。

王国騎士団の皆も驚きからか、呆然と立ちすくんでいた。ボス部屋にはボスがいない代わりに、聖紅騎士団が背中を内側にして、3つの円を作り座っていた。


王国騎士団の団長が、聖紅騎士団に問いかけようとしたところ向かいから声が掛けられた。


「ようこそ、お待ちしておりました。聖紅騎士団の方々もこうしてお待ちしておりますよ。」


現れたのは、司祭の格好をした50歳ぐらいの男性だった。


「だれ?」

「司祭様の様ですか、存じ上げていませんわ。」


小声で確認する。王国騎士団の団長も同じようだ。


「司祭様とお見受けする、我々は王国騎士団 調査隊 隊長のコーワ シルバーだ。聖紅騎士団の方々は如何されているのか。原因究明の一環でしょか。」


「お疲れでしょう?王国騎士団の皆様もお座りくださいませ。もちろん説明させていただきます。」


俺は一足先に腰を降ろそうとしたが、周りはそうでは無い。団長は司祭を無視して聖紅騎士団に話しかける。その瞬間も王国騎士団は抜き身の剣を握り直し戦闘の準備を怠っていない。


「聖紅騎士団殿 貴殿らは何をしておられる。ご説明を頂けないか。」


しかし聖紅騎士団からは返事は無い。ただこちらを見る目は何かを訴えている。


「ぴろりろーん!」


(ミッション 部屋から出ろ。 制限時間 10)


パーティメンバーがこちらを見る。時間がない。


「部屋から出るぞ! あと9!! 急げ」


カレンとミカンちゃんの手を取り走り出す。マリリさん、タリリもついてきている。いい反応だ。

扉に体当たりして外に出ようとする。内側からでも開くはずだ。しかし無残にも開かない。


部屋の中央を見ると魔法陣が発光している。中からオークの姿が現れて来たところの様だ。なんてタイミングだ。


「おや、残念でしたね。扉は開きませんよ。」


畜生、笑ってやがる。だが、まだだ。


「カレン!」


俺が名前を呼ぶと既に、杖を向けた姿があり次の瞬間にはオークは炎に包まれ、跡形もなく消し飛んでいた。


「ナイス!」


そう言うと再びカレンの手を引き、走り出す。

順調に扉を抜け、通路に出ようとした瞬間に、脚に激痛が走り俺は堪らず倒れ込んだ。あまりの痛みに声も出ない。視界の先には


(ミッション 失敗)


の文字が広がっていた。俺は脚に暖かさを僅かに感じながらも意識を失った。俺の名前を呼ぶカレンの声が聞こえた気がした…。



突然腹部に強烈な痛みを感じて目が覚めた。クソ司祭が蹴ったのか。とりあえず、許さん。


「やっと、目が覚めましたか。みなさんお待ちですよ。」


文句も言いたいが先ずは現状把握が優先だ。奴を睨む感じで辺りを確認していく。俺達は5人で1つの輪を作らされている。手首は隣と革の紐で結ばれている。その中央には俺の布地のコイン袋がおかれている。


「貴方達のせいで、王国騎士団の方も少々、歯向かわれた方がいらっしゃいましたが、既に静かになられましたよ。」


司祭が視線で示す方角を見ると、首の無い騎士団が数名倒れていた。鎧から見て王国騎士団の団長もいるようだ。

騎士団30名いても勝てないなんて、どんな化け物だ。


「化け物司祭、説明してくれるんだろう。早くしろよ。」


カレンやタリリの挑発するなとの視線を無視して話しを続ける。


「アザレアのオークキングやサイリサスのオーガジャイアントもお前がやったんだろ。」


「それはそうだと、先程説明しましたよね。私が犯人です。それはそうですか、貴方は今まで寝てましたね。フフフ。」


腹立つ。説明済みかよ。すると左手を引かれるので、そちらにいるカレンを見る。


「黙ってなさいよ。目を付けられるでしょ?ミカンちゃんもいるのよ。」


あっそれはすまない、ミカンちゃんは死守する。


「それではテストを続けます。聖紅騎士団のこの方達と王国騎士団はこの方達にしましょう。奇跡を受ける栄誉ある方はだれでしょうね。」


「ローレンシウムの神よ、この者に力を与え給え。」


続いて聖句が読み上げられると、それぞれの人の輪に魔法陣が浮かびあがり発光を始めた。俺たちはその光景をただ黙って見つめるだけしか出来なかった。




















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