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ミッション ドールのダンジョン19階層を攻略せよ。

おはようございます。


聖女様への報告と元奴隷たちの引き渡しを完了させて、自宅へと戻る道半ばと言ったところで、フランシスカさんとカレンは公爵様の件で話し込んでいる。


「カレンさん、お父様の内密なお話ってなんでしょうか?」


「私の腕輪は話したわよね。精霊銀はどうだったかしら?」


「そうでした。このような目立つ物を全員が着けているのに、知らぬでは通りませんか。」


それぞれが手元の指輪をしみじみと見つめて溜息をつく。


「フランシスカさんカレンさん、どの様にして人影を退けたのかをお聞きになりたいとか、またはどうして今頃領主邸の奴隷の解放などを思い至ったのかと言う事かも知れませんわ。」


2人の会話にマリリさんも自らの予想を提示していくが、結局のところ帰り着くまでには考えが纏まる事は無かった。


「フランシスカ、私は許可なぞだして無いぞ。」


公爵様の第一声はそれだった。予想だにしなかった内容でフランシスカさんは思わずホゥと溜息をついてしまい慌てて、手で隠したが公爵様の鋭い視線からは逃れられなかった。


「お父様、申し訳ありません。緊急事態でしたのでお父様に許可を頂いたと嘘を申しました。」


「フランシスカよ、公爵の名を騙るのは本来なら死罪もあり得るのだぞ。」


途端パーティに緊張が走る、俺たちは慌てるあまりにテレパシーを飛ばすのを忘れひたすら視線と表情だけでどうするかと会話をしていた。


しかし、フランシスカさんはニッコリと笑顔を公爵様に返した。


「はい、承知しております。わたくしは大好きなお父様に許可を得たとしか申しておりません。公爵の名など一切だしておりませんわ。」


「ん、そうか?そうか。」


公爵様は不在だったようだ、騎士も同席しないこの場ではフランシスカさんの大好きなお父様だけがいた。


「もうお父様、てっきりわたくしはこの指輪の事かと思いましたわ。」


そう言ってフランシスカさんは左手の甲側をお父様に見せた。


「ん、銀の指輪か?ミスリル銀では無いのか。それがどうした?まさか王子からの贈り物か!」


お父様は最初は興味なさげだったが、自分の言葉で段々とヒートアップしてテーブルに手をついて身を乗り出してきた。


「あら、失敗しましたわ。お気付きになっていなかったですね。」


「い、いや、指輪をしていたのは気付いていたぞ。最近はずっと同じのを着けているから、気に入っているのかとは思っていたぞ。」


「カレンさん、マリリさん。」


フランシスカさんはカレン達にも指輪を見せる様にお願いすると、2人もお父様に指輪をかざした。ついでにミカンちゃんとヨナーちゃんもトコトコと走ってきてお父様の前に手を出している。


「お、おう、パーティでのお揃いか。なるほどな。」


「違いますわ。よくご覧になって下さいませ。この溝の辺りを。」


「ん、どれ?」


お父様はフランシスカさんの手をとり、顔を近づけて行くとハッと顔をあげフランシスカさんたちを見回して行く。その口は精霊銀か?とはっきり呟いていたのが聞き取れた。


「まさか全部か?」


「はい、そうですわ。」


「あ、この子はまだ貰えていないわ。恐らくもうすぐとは思うけど。」


「では、7個もか?」


お父様の興奮冷めやらぬ内に、フランシスカさんは

怒涛のラッシュを決め完全に有耶無耶にするつもりだ。けれども俺としては蛇足にしか思えない。


「いいえ、8個です。この際ですから、いいですよね?」


「もう、8個って言っちゃったじゃない。ほらアンタ、スマホ出して。ジェシカさん良いわよね?」


「はーい。」


スマホを取り出し画面をお父様に見える様にして、カメラアプリを立ち上げ、お辞儀をしているジェシカさんの8個目の指輪を写し出した。


「そこに、目に見えぬ者がいるのか?」


「いいえ、指輪を持つ、わたくし達には見えております。」


「こんな事があるのか、いやあるのか。」


お父様は腕を組み唸っている。精霊銀はもう良いのだろうか。


「もう、疲れた。フランシスカがどんどんと遠くへ行ってしまう。」


「あらお父様、わたくし達のパーティを辺境伯に貸し出したのが誰か、お忘れでは無いですか。」


「ああ、こんな非常識とは思っておらなんだ。」


「ふふ、お父様それはわたくしも同意見ですわ。毎日が疲れますわ。」


フランシスカさんとお父様は2人して楽しそうに笑っているが、カレンも俺も一緒に笑うべきなのか、判断がつかずに微妙な笑みを浮かべていた。


公爵様がとっくに起床して、迎えの馬車に乗っていっても俺たちは起きる事が出来ずに、結局は翌日の昼まで俺たちは寝ていた。1番早く起きたのはマリリさんでそれでも11時だと言っていた。そして朝昼兼用の食事を取っている時に、カレンが俺の脇腹を肘で突いて来た。


「第1階 ドールのダンジョン完全攻略会議ー。」


「パフパフー。」


俺の宣言にジェシカさんが効果音をつけてくるが、俺たち意外の盛り上がりに欠ける。


「なんだ、どんな会議なんだ。」


タリリは1人食い気味で質問してくるが、マリリさんに膝をポンポンと叩かれて窘められている。


「例の剣も魔法も効かない影に対抗する手段を増やす事が急務だと思うの。」


「確かにそうだな。当てはあるのか?」


あれ、タリリは分かって無いのか。マリリさんは気付いているから常時一緒のタリリも分かっているとは思っていたが。


「多分だけどね、しかもそれが武器になるかも怪しいけどね。」


「そうですわね、何を頂けるのかは天使様次第ですから。」


「万が一の可能性として、既に何処かの誰かさんが既に手に入れている可能性も無いわけではないわね。」



ここまで言った所で、タリリが椅子を倒して立ち上がった。


「アザリアの腕輪とエプロンか!」


「そうですわ、昨日説明したでは有りませんか。」


たった今自分で気付いたかのリアクションだったが、相変わらずタリリだった。


「今、私達の攻略階層は15階層までよ。まだ残りは35階層も有るわ。けどあの影が街に出る前に準備をしておきたいの。」


「あの灰色の果実からも危険な香りがしますわ。」


「そうよ、同じ灰色ってだけでも十分に注意が必要だわ。」


この部屋からは見えない果実を皆が見上げている。灰色で何かが引っ掛かっているが、はっきりと言葉にならない。


「アンタ、聞いてる?」


「あ、すまん。半分だけだ。」


灰色について想いふけっていたら、会話が進んでいたらしい。実際には半分も聴こえていなかったが。


「もう、アンタとジェシカさんで食料と水をお願いね。護符はマリリさんにお願いしたわ。残りの私達は武器と防具をまとめ買いにいくわ。」


「ああ、任せてくれ。」


こうしてドールのダンジョン完全攻略が幕を下ろした。影の侵攻が街へ及ぶ前までにとの期限付きの最速攻略が使命だ。



そして今はドールのダンジョンの16階層にいる。この階層のゴーレムは水属性ゴーレム。俺は実物を見るまで水が身体を構成しているゴーレムかと思っていたが違った。


「アンタ、本当に読んでる?そんなゴーレムある訳無いじゃない。火のゴーレムって何よ?風のゴーレムってどうなってるのよ!説明して見なさいよ。」


何故かカレンがめちゃくちゃ怒っている、理不尽だがきちんと説明を読んでいなかったのは確かだ。石、煉瓦、鉄と来て水なら水だろう。


「きゃあ!」


「冷た!」


鉄のブロックで身体を構成したゴーレムの前にふわふわと水の球体が浮かんだと思ったら、エイミーさんの盾に直撃し水飛沫を上げた。


ゴーレムが再び水球を召喚しているが、水球を貫通した鉄球が頭部の青い水の魔石に当たると、魔石が砕け散る。


「やりました!」


この鉄球はカレンが武器屋で見つけて来た物だ。本来はスリングショット用の鉄球らしいが、直径2センチの鉄球はエイミーさんが2個づつ握り込むには丁度良いらしい。エイミーさんが気に入ったのでカレンが箱買いをしたそうだ。


エイミーさんの投球とカレンのファイアの前にはボスの水属性ゴーレムも只の的だった。道中のゴーレムよりも倍ぐらい頭部の魔石が大きく、魔法の威力がその分強く危険との注意書きが有ったがエイミーさんにとっては的が大きくなって、より簡単になったと喜んでいた。


17階層は風の属性ゴーレム、18階層は火の属性ゴーレム、19階層は闇の属性ゴーレムだったが16階層の水属性ゴーレムと難易度は変わらないし、やる事も同じだった。そして俺たちは20階層の始まりの部屋で打ち合わせと言う名の休憩をしている。


既にボス部屋までの説明を終えた俺はビスケットをコップの水で流し込んで、攻略本を見返しておく。


「カレン行くぞ。」


待ちきれなくなったタリリが、カレンを急かし始めたのをキッカケに皆が立ち上がっていく。20階層の始まりの部屋を出ると足元に小さなゴーレムがいた。


それらは俺たちとは反対方向に走って逃げていく。その先にはもちろんボス部屋だ。始まりの部屋を出たらそこにボス部屋は見えていた。


小さなゴーレム達がボス部屋に近づくと、独りでに扉が開きゴーレム達を中に招き入れた。


一切の交戦もしないでボス部屋まで辿り着いた俺たちは、いつものフォーメーションを組んだ。俺も扉に手を掛けてカレンの合図を待っている。


「行くわよ!」


その声で扉を開けるとボス部屋の全貌が見えた。ボス部屋の中央部には白いお城が建っていた。その周りには城下町がひしめき合っている。そして城下町の外周には高さ1メートルの城壁が街を取り囲んでいた。


そうこれは直径10メートルのミニチュアサイズの城塞都市だ。


さっき逃げて行ったゴーレム達は俺たちが扉を開けるまで城塞都市の門の前で待っていたようで、俺たちが扉を開けた瞬間に慌てて門を潜って行った。


「ドラゴンにでもなった感じね。」


「しかも街を襲う悪いドラゴンだ。」


俺たちは壁の上に整列していく兵士の格好をした小さなゴーレム達が弓矢やバリスタを準備しているのを眺めながら、そう呟いた。

お読み頂き有難うございます。


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