ミッション 魔法訓練をしろ
サブタイトルをミッション風に変更しました。
カレンのマリリさんの呼びかたを統一しました。
マリリ→マリリさん
ここは宿屋の裏庭だ、先程始まった魔法の特訓がもう終わりそうだ。
「だ.か.ら、精霊に敵に火の玉を当ててとお願いするの!それでファイアって合図だして終わり。」
これは聞いた記憶がある。
「カケルさんは私達の力で魔法を行使していると思われているんですわね。それで、マナとか魔力の操作といろいろと不思議な事を口にされているんですわね。」
マリリさんは胸の前で組み、左手のひらを頰に当て少し考えたそぶりをする。
「私の地の魔法アースウォールでは、先ずは場所をタリリの前と指定します。その次に石の壁が通過を塞ぐ感じを思い浮かべます。」
「ここまでは心の中、若しくは口に出して精霊に伝えるだけです。ですから、タリリに石壁作ってくださいと言っているのとなんら変わりは有りませんわ。」
「そしてタリリに今から作って下さいと、合図をします。するとタリリがタリリの財布から材料を購入して壁を作ってくれます。」
「術者には負担がないのか。」
「有りませんですわね。疲れたり、怠くなる事もないですわ。」
なるほど術者負担ではないのなら、精霊が負担しているのか?
「光の精霊さん?マナとか魔力ってあるの?」
「魔法の力の源は周りの状況や環境よー。」
「魔法を使い過ぎたら、力の源がなくなったりしないのか?」
「しないわ。息をしているから風、温かいから火ー。
「妖精も特に何か消費してる訳じゃないんだな。」
「詠唱もMP管理も必要ない。こんなに簡単ならみんな魔法使いに成れるな。デメリット無いし。」
「アンタは簡単に成れたから、そう言うけどね。普通は精霊がいるのが感じられる様になり、話が出来るようなり、ようやく見えるようになって、精霊にお願いできるようになるのよ。」
「あと、精霊は私達との契約があるから余程の事がない限りいなくなってしまう事はないけど、精霊が嫌がることをしない事ね。怒ったら口を聞いてくれなくなるわ。」
しばらく俺を見た後、カレンは言葉を続ける。
「例え、魔法を使わないとアンタが死んじゃう場面でもね…。怒ると怖いのよ。特にアンタは常識がないんだから注意しなさいよ。光の精霊さんを大事にね。」
光の精霊さん、ありがとう!カレン後で光の精霊の嫌がる事を教えて欲しい。頼むから。
「とりあえずやってみるか。カレン、光の魔法って何?」
「さあ、知らないわよ、光の精霊なんて見たことなかったし。」
とカレンは知らないと言う。ではアニメやゲームの知識を動員するか。
「光って言えば、レーザーとライトサーベルか。」
俺の独り言をカレンは訝しむが、黙って様子を見ている。レーザーって増幅と共振だっけ?よく分からないな。
「光の精霊さん、光を強くして、波を合わせられる?であの石に照射できる?」
「それお願い?いいの?やっていいの?」
「ああ、頼む。」
「合図はー?」
イメージは銃でいくか。先ずは人差し指を伸ばした銃のイメージで
「合図はじゃあ。バンで。」
その瞬間、30センチぐらいの石に1センチぐらいの穴が貫通した。光の線が軌跡になって見えるかと思ったら甘かった。何も見えなかった。ヤバイ?どうやら、原理をイメージする事で再現出来そうだ。出力時のイメージは無視されたと思われる。
「え!穴が空いてるわ?いつ?」
「バンって言ったら空いたです。バンバンです。」
お?ミカンちゃんのがカレンよりも早く気づいたようだ。流石ミカンちゃん。
それからが大変だった。俺の特訓の筈なのに俺が教える側になるとは。
「だから、ただ光を飛ばすだけじゃなくて、飛ばす光を具体的に指定したんだ。例えば火の魔法なら、火と言っても色々あるだろ?焚き火や料理に使う火から、鍛冶屋の使う炉や山火事など恐怖を感じる様な炎まで。」
「確かに、色々あるわね。」
「また、火は全部熱いから、温度なんて関係ないと思ってないか?」
「炎の色によって実は温度は違っているんだ。燃焼の仕組みの説明が必要なら後でするが、ただ術者はそこまで理解しなくても現象をイメージ出来れば良いらしい。あとは精霊が勝手にやってくれた。」
「まあ、現象を詳しく知れば、イメージも細部まで可能になるから、より自分の希望する魔法に近づいていくと思われるな。」
「それじゃあカレンが今までは(燃やして)って頼んだのを、(燃やし尽くして)とか(青白い炎で燃やして)って頼んでみて。」
そう言いながら、庭の中央に落ちていた薪を縦に置く。
「火の精霊さん、あの木を燃やし尽くして、灰も残さずに、お願い。」
カレンは杖先を木に向けて願いを口にした。
灰も残さずとか怖いよ。アドリブ怖い
「いくわよ、ファイア!?」
「きゃあ!」
「うわお!」
「カレン!」
「カレンちゃん!」
「カレンさん!」
言い終わる前に薪を中心に直径30センチ程で高さ2メートルの青白い炎が一瞬だけ上がった。
熱風の余波で熱い。本人が1番その威力に驚いている。おい?土が溶けてるぞ。あの一瞬で何℃になったんだ。オーク死ぬだろ、絶対。
「カケル!風はどうするんだ。あるんだろ!」
肩を持って前後に揺するのはやめて欲しい。
むち打ちになるぞ。気持ち悪いし。
「風か。攻撃なら、風を剣に纏わせて振り抜くと風の刃で離れてても切れるとか。身体に纏わせ、速く走るとかかな。」
「地といえば、硬い岩のような防御と母なる大地の再生力。火事になり、荒れ果てても、やがて息吹く草木の生命力とか。」
「水は全てを飲み込む濁流の力強さとか、湧き出ずる清水の如くに清らかさとか。恵みの雨ってのもあるな。」
「闇はそのまま暗闇での視界妨害、あとはジメジメした所のイメージでカビや菌による発酵、腐食、腐敗なんてのもある。」
ミカンちゃんはずっと右に頭を傾けたままだ。その姿勢で聞いてくれている。大丈夫かな?
「カケル。ゼンゼンだめ。ジメジメ腐食、腐敗何?水、地もゼンゼンだめ。教えて。」
やっぱりか駄目だったか、抽象的すぎるか。ミカンちゃんの為に考えるんだ、俺。
掴みかかってくるタリリを退け、腐敗の説明を繰り返すが
「こう、ぐちゃーって、ボロボロってなって。」
自分では分かってはいるんだ、だけど説明できない。擬態語しかでてこないぞ、ミカンちゃんか俺は。
言葉での説明を諦め、実際にやって見せれば理解も早いんじゃないかと、光の精霊さんに頼んでみた。
光の精霊は直ぐに「いいよ。」と協力してくれた。
しかし見本を見せようとしても、光では再現できず。不発に終わった。「あれれ?」って光の精霊さんは不思議そうにしてたけれど、できる自信があったのか?精霊ってできる事、出来ない事分かってないのか?とても心配です。
それならばと、腐食として剣に着いた錆びを、発酵として納豆やチーズの絵を描いて説明しようとしたが、いざ描こうとしたら結果だけしか描けない事が判明した。糸を引いた豆や三角形のチーズを見せられて理解できる方がオカシイ。ミカンちゃんは
「ん?ん?」
って首をひねっている。説明しきれないので申し訳ないが、仕草が天使だ。
頭上から降りかかるカレンによる俺の絵に対する酷評に耐えながら、何回か描き直すが、残念ながらミカンちゃんに理解してもらう事は出来なかった。
結局威力がアップしたのはカレンだけだった。ミカンちゃんの好感度上げるチャンスだったのに俺の馬鹿、アホ、ヘタクソ。
その後は少し早めに夕食を取りながら、打ち合わせをし、早めに寝ることになった。
ただ、夜も更けた頃、中庭で火柱が上がりその明るさと音で宿屋中が騒然とした。しかしながら、危ない奴に刃物を渡した当人としては巻き込まれる訳にはいかないので、布団を頭から被り、知らん振りを決め込んだ。
そうした筈だったが、締めたはずの鍵が何故か解錠された。強盗の可能性もあり、布団の中から上半身を起こすと、不法侵入の放火犯が火の精霊に解錠の礼をする現場を目撃したので、俺は布団を頭から被り直した。
犯人はベッドまで来ると、端に腰掛けてきた。
「座れないじゃない、もっとそっちに行きなさいよ。」
ほっといてくれないらしい。
「私は何も見てないアル。放火犯のアジトなら隣アルネ。」
「馬鹿。何よそれ。ふふふ」
あれ?笑ってる?エセ中国人分かるのかよ。
「まあ、いいわ。犯人の独り言だから。」
「私ね。このパーティを最初はミカンちゃんと2人で作ったんだ。それが1年前、マリリさんとはその頃から教会で何度かあってたわ。」
「私達2人とも初心者で危なっかしく見えたんでしょうね。いろいろとシスターとして手助けしてくれていたわ。近づくと危ない場所や私達でもコイン採掘できる穴場の情報とかいろいろとね。軽い傷なんかもタダで癒してくれたりもね。」
「それからしばらくして、教会の奉仕としてコイン採掘があるらしくてね。マリリさんが一緒に行ってくれる事になってね。タリリもその時に入ってくれたの。」
「アンタはコインは神様からのギフトなのは知ってるでしょ?マリリさんぐらいのシスターなら、本当はもっとたくさんのギフトを採掘できる優秀なパーティにも入れるし、きっとノルマみたいなのもあると思う。」
「それで同期のシスターと比較されてイヤミ言われてたりしないのかなと思ったりね。ただ、今のは私の勝手な想像よ。マリリさんは私達にはそんな事言わないから。」
「だけどね、1年経ってもアザレアダンジョンの4階止まりなのよ。今思えば慎重過ぎだったんでしょうけど。マリリさんは今言った通りね。」
「それにねミカンちゃんは3属性持ちでしよ。アザレアの4階なんかにいちゃいけないのよ。本当はもっと凄いパーティに入って高ランクのダンジョンに行けるのよ。あの子の才能は桁違いなの、宮廷魔術師だって余裕なんだから。」
気丈にも我慢しているが、声が震え嗚咽が混じってきている。
「だからね、あの時パーティ解散しようか悩んでいてね、宿屋にも帰りづらくて、街をフラフラしてたの。うわのそらだったんだ、アンタが助けてくれた時に気がついたのよ。だからアンタがいなかったらきっと死んでた。でも最悪死んでも良いかなって思ってた。そうすればみんな...。」
涙を拭うと、背後の俺の方を見て微笑みながら
「アンタはみんなを家族みたいって言ったわよね。
私も同じみんなと別れたくないわ。一緒にいたい。
だけれど私はみんなの足手まといだった。」
「それなのに、めちゃくちゃなアンタの所為で、
なんなのよ!あれは。私が馬鹿みたいじゃない。
眠れる訳ないじゃない、元に戻ってないか心配になるわよ。」
「よかったな、元に戻ってなくて。だけどな、みんなお前が元に戻っても、変わらず一緒だと思うぞ。たぶん。」
「馬鹿!なによ、たぶんって。恥ずかしいからこっち見るな。バカ。」
言うなり布団をぶんどると横になり、頭から被り小さな声で言った。
「ありがとう。」
「どういたしまして。これからもよろしくな。」




