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ミッション 異世界に転移せよ

サブタイトルをミッション風に変更しました。


タイトルを変更しました。

今週もようやく仕事が終わり、時計の針は18時になろうとしているところだ。特に予定も無いが、明日からの土日休みを思うと気分も軽い。

丁度横の歩行者信号が赤になる。

横断歩道に歩行者がいない事を確認しつつも

信号を見据え「3.2.1」と数える。

ゼロの掛け声と共にアクセルを踏み込んだ。


「え?」


目の前には多くの人が行き交う縁日の様な光景が

広がっていた。

両手を見るが素手だ。ハンドルは無い。

振り返るが運転していた軽自動車は見当たらない。


不意に肩に衝撃があり、前のめりになる。

「道の真ん中で立ちどまんじゃねぇ!」

頭の中は「???」でいっぱいだが、怒声を浴びつつもとりあえず、道の端へ寄る。


「ま、まずは落ち着いて現状把握を」


内心全く落ち着いてはいないが、声に出してみた。

上は長袖トレーナー下はジーパン。ポケットにはスマホと財布。


行き交う人々を見ると黒髪がいないとは言わないが圧倒的に金髪が多い。中には銀、赤、水色なんて

派手なカラーも見られる。髪色だけみればかなりの都会だ。


「名前は山河 駆 。26歳。男性。身長170センチ、体重は70キロを超えてから不明。来月の会社での健康診断にて今年の貯蓄が判明する予定。良し、記憶はある。」


駆はそこまで呟くとゆっくりと周りを観察出来るようになってきた。

道の中央は石畳で馬車が2台すれ違いに行き交って

おり、その横に人の流れが出来ている。

一番多いのは金髪の男女で西洋風だ。ただオッサンの筋肉が凄くムキムキの割合が激高だ。

銀髪の女性に目を向ければ、胸には鎧をつけ腰には

細剣、そして凄く美人だ。完璧なエルフのコスプレだ。残念ながら耳までは見えない。

真っ赤な髪の小柄な少女の頭には猫耳がある。人の耳の位置は髪で隠れてよく分からない。猫耳少女は

ローブを身に纏い短めな杖を持っている。猫耳魔法少女も完成度がケタ違いだ。

テーマパーク丸ごとのコスプレ大会でなければ、

いわゆる異世界って奴だと思う。かなりの確率で。


「ぴろりろーん!」


突然頭の上の方で機械音が鳴り、目の前の空間に文字が浮かぶ。


(ミッション 3秒以内に手を伸ばせ!)


「ん?なんだこれ?」


目の前の文字を掴む為に右手をだすが、手は文字をすり抜けてしまう。


「きゃっ!」


駆の手にはローブのフードが握られており、フードの女性はバランスを崩し尻餅を着く。

直後鳴り響く破壊音。ローブの少女の前に馬車が横倒しになっており、周りでは悲鳴が上がっている。

ローブの少女は馬車とフードを掴んだままの俺を交互にボーゼンと眺めている。


「あっ、すみません。」


駆はフードから手を離し少女に誤り、頭を下げた。


「いえ、私こそ助けて頂いてありがとうございます。守りの護符が丁度切れていたので。危ない所でした。ありがとうございます。」


猫耳魔法少女も真っ赤な頭を何回も下げ、御礼の言葉を繰り返している。


「いえいえ。こちらこそ、すみません。突然引っ張ってしまって。え?!守りの護符?」


駆は気になった単語を口にした。


「守りの護符ですか?今日の採掘中に効果が切れしまいまして。まぁ安物なんですけどね。ハハハ」

猫耳魔法少女は頭を掻きながら説明してくれる。


(想像の域を出ないが馬車が倒れて来ても大丈夫な素晴らしいアイテムがある様だ。)


そんな会話中に馬車の扉が開き、中から1名の貴族っぽい格好をした貴族と1人の執事が出てきた。確かに傷1つ無い。執事は誰かの名前を叫んでいる、多分御者を探しているのだろう。腰の剣を既に抜いているのが物騒だ。自分が御者なら出ていかないだろう。猫耳魔法少女も執事の様子に気付いた様子だ。


「巻き込まれる前に、こっちに。」


猫耳魔法少女が俺の手を引き人混みを抜けていく。


「ここ私達の宿屋。さあ入って。」


木製の2階建の建物で2階だけで窓が4つは見える。

高級な感じでは無いが手入れが行き届いているようには見られる。その扉を潜る直前にある事を思い出し猫耳魔法少女の手を握り返し、ストップをかけた。


「ちょっと待って。お金ないんだ。円使える?日本円?」


「え?ローレンシウムコインじゃなくて日本円?聞いた事無いわね。この大陸の外から来たの?」


猫耳魔法少女が驚きながらも説明をくれる。

大陸で通貨は統一の様でローレンシウムコインと言うらしい。大陸には国は1つなのか、複数で共通の通貨を使用しているのかそこまでは分からないが。


「この大陸でも、地方の国や村で独自のお金は使って無いの?」


とりあえず疑問に思って聞いてみた。


「はあ?ローレンシウムはローレンシウムでしょ!

ノーベリウムはノーベリウム!」


なんか、だんだんと俺の扱いが雑になってきた気がする。


「その日本円ってのを見てあげるから、中に入りなさい。」


猫耳魔法少女はそう言って扉をくぐって行き、引き摺られるように俺もくぐった。

中は飲み屋のカウンターと10のテーブルがあり、何名かのグループいる。その内の1つのテーブルへ向かう。先客が2名おり、金髪碧眼のポニーテール美少女が1人とくりくりの濃い茶髪の小柄だがちょっとぽっちゃりなドワーフっぽい少女が猫耳魔法少女に気が付くと手を振ってくる。


「ごめんごめん。遅くなったわ。貴族の馬車の事故に巻き込まれてね。」


俺の記憶では巻き込まれてはいないし、それが原因で遅くなった訳ではないと思うが、合わせてうなづいておく。


「後ろの変わった格好の人、紹介してくれる?」


金髪ポニーテール美少女が猫耳魔法少女に問いかけるとくりくりドワーフも興味深げにこちらを見る。


「馬車の事故から助けてくれた。えーと名前は…。」


猫耳魔法少女はそこまで言うとこっちを見る。


「名前は山河 駆。助けたのはたまたまです。」


「私はカレン。このパーティのリーダーをしてるわ。カレンって呼んで。」


「私はタリリ、妹マリリの騎士だ。マリリに触れたら切る。」


「ミカンです。カレンちゃんガミガミさんだけど、本当はニコニコで優しいんです。」


そこまで話した所で外国人らしき3人と会話できている事に気付くが聴こえてくる言葉は考えなくとも

理解できることから英語やフランス語、ドイツ語などではないと思われるが日本語かと言うと自信が無い。


「とりあえず座って、命の恩人には変わりないから。」


猫耳魔法少女が俺に席を勧めてくるが、


「カレン?貴女が男を連れ込むのは初めてじゃない?珍しい!」


金髪ポニーテール美少女が猫耳魔法少女を茶化す。


「タリリだって1度もないじゃない。」


「私には男なんて不要だ」


猫耳魔法少女は金髪ポニーテール美少女に呆れながら


「そうよね、妹のマリリ一筋よね。」


「ああ。マリリだけだ。」


金髪ポニーテール美少女は何故か誇らしげだ。

あとは今日来ないらしいがタリリの双子の妹でシスターのマリリさんがいるらしい。



テーブルの上には4名分のエールと鶏肉らしき肉を焼いた物と煮た物、それとサラダが並んでいる。

どれも量が多く大皿に山盛りになっている。


「ローレンシウムに感謝を」


3人は声とグラスをあわせると喉を潤していった。

俺も感謝をと合わせて口にする。


「でカケルは日本円ってのを持ってるんだっけ?

見せてよ。ちなみにこれがローレンシウムコイン」


金髪ポニーテールのタリリがコインを投げて来たので、代わりに財布から1000円札と硬貨を何枚か渡す。


「これが日本円か、すぐに破れそうだ。」


とタリリは感想を言う。

ミカンちゃんは硬貨を見て彫刻が細かく、全部同じに出来上がっているのに驚いていた。

ローレンシウムコインはただの丸いコインで縁が1段厚くなっている10円玉の無地バージョンだ、もちろん裏表もない。

白金、金、銀、銅、鉄の価値の異なる5種類があるらしい。


「これはお金としては使えないな、ただ金持ちの中には物珍しさから欲しがる者がいると思われる。そんな店なら紹介するぞ。」


タリリが硬貨をミカンちゃんから受け取り、確認しながら言うとミカンちゃんは頷き


「コインだけでも結構な額になります、貴重です。」


と嬉しいフォローをくれる。これなら明日からの生活はなんとかなりそうだと安堵し他の気になる件を

聞いていく事にする。


「これだけじゃ、不安なんで冒険者ギルドとかって有ります?薬草採取とかならやれそうな気が。」


カレンを見ながら質問していく。


「冒険者ギルド?何それ?カケルはまた変な事を言うのね。」


「あれ?冒険者じゃない?ダンジョン無い?」


「ダンジョンは在るしモンスターもいるから危険が無いってことはないから、冒険っていえばそうよね。」


カレンそう言うと自らの胸に手を置き続けて


「私達はギフトマインナー。コイン採掘師とも言うわ、ローレンシウム教会アザレア支部所属のパーティよ。」


凄く誇らしげだ。



「えーとモンスターと戦いながら、ツルハシで採掘して鉱石を持ち帰ると。」


カレンの説明にお礼をしながら、相槌を打つ。


「はあ?コイン採掘師って言ってるでしょ?石なんか掘らないわよ!」


カレンが食い気味に否定してくる。石は掘らないらしい。更なる説明が欲しいがカレンの説明は終わりらしくミカンちゃんを見てみる。


「モンスターを倒すとコインが出来るんです。こうやって空中からホワホワーって、ダンジョンにも偶に落ちています。それを拾ってくるのが私達の仕事です。」


ミカンちゃんが両手の指先で雲を掴む仕草をしながら一生懸命説明してくれる。天使だ。

カレン見習えよ。


タリリが何かを思いついた様で


「カレン、前のポーター辞めさせてからそのままだけどさ。どうする?」


「あーあの男ね!最悪だったわね。臭いし、煩いし、すぐ触ってこようとする最低男ね!」


カレンはタリリの言葉を受けエールのジョッキを

テーブルに叩きつける様にしてヒートアップする。

ミカンちゃんはそれを見ながらもチラチラとこっちを見て言う。


「カケルは働きたいです。カレンちゃんはポーターを探してます。働きたいと雇いたいです。ピッタリピッタリです。」


カレンはミカンちゃんのナイスアシストで、タリリの言葉を理解したらしくこっちを見る。お互いに見ているので、なんか恥ずかしい。


「お2人さん、何見つめ合っちゃって!」


予想された野次がタリリから飛んでくる。


「見つめ合って無いわよ!カケル荷物持ちするわよね!明日マリリにも一応聞くわ。みんなそれでいいわよね。」


次の職が勝手に内定したらしい。こうして異世界初日は過ぎて行った。















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