008 空中庭園
ダンジョン探索です。
空中庭園…
100年毎に南の世界樹の近くに出現する空飛ぶ島だ。
ちょうどエルフの集落に近いためエルフ達は以前から独自の調査をしている様だ。
しかし300年前から共同調査の打診があった。
私達は今回もエルフに同行する為、エルフの集落を訪れていた。
エルフという種族は総じて高潔だ。しかし、それが行き過ぎると『コウマンチキ』となる…、この若者の様に…。
「なぜエルフの民がわざわざ人族の…、しかも年端も行かない子供と行動を共にしなければならないのですか!」
「ディッチっ!お客人の前で失礼だぞっ!」
長老の家で今回の探索ルートの確認をしていた時に当初から不機嫌そうだったエルフの若者が私達を指差して怒鳴っていた。
…、おそらくだがマールの方が年上な気がする…。エルフは年齢が読みにくいからなー。
「先生、何か失礼なコト考えてません?」
「ん、気のせいだ」
相変わらず鋭い弟子である。私が次のセリフを言う前にエルフの長老が口を開いた。
「ディッチ、お主がララファとの婚儀に向けて手柄を欲しているのはわからないでは無いが、このお方達はこう見えてもお主よりも長く生きておられるのだぞ?失礼をするで無い」
「ハっ!人族が200歳の私よりですか?」
…やはり年下か。
「長老、今回の探索は別々に行いませんか?そちらの受け入れができていない以上、後ろに警戒しながら進むのは好ましく無いのだが?」
「なっ!」
「我らエルフはそんな闇討ちの様な真似をするわけが無い!」
ふむ…、不満を抱えているのは1人2人では無さそうだ。
最近おとなしくしていたからなー。私のネームバリューも廃れてきたか…。
「ユキ様、そう煽ってくれるな…。それにお主が言っていた「次元航行』の可能性もある…」
「そう、故に時間は限られている。此度の調査では特殊な作業もあるので些末なことに時間はかけたく無い」
長老と私を除いた皆が聞きなれない言葉を聞いてキョトンとしていた。
結局エルフ達とは別のルートでマールと2人で空中庭園の地下にいた。
「先生、先程の『次元航行』とは何のことですか?」
「うん、現段階では仮説なのだが、おそらくこの空中庭園は異次元を渡る船だと思う」
そう、『次元航行』。コレは下手すると時間軸をも操作できてしまう可能性がある。無論、そうなら創造は高次元の存在だと思われる。
「それを証明するためにある種の観測装置の設置が今回の目的でもある」
「あぁ、それでエルフ達を遠ざけたのですね」
「うん、彼らはこの空中庭園を神聖視するきらいがあるから同行はしたくなかったんだよ」
一番良いのはこのまま100年間、船の中で漂流しての観測なのだが流石にそれを実行しようとは思わない。
次の出現場所が宇宙空間くらいならかわいいものだが、予期せぬ神との対峙とか考えるだけでおそろしい…。
なので各種観測装置を設置して次回の出現まで待つのだ。
「それにしても、手つかずの遺跡というのは胸が高鳴りますね!」
「マール、小説じゃあるまいし、そんな都合よくレアアイテムとか手に入らないからね」
「あうぅ」
残念ながら現実とはそういうものである。
例えばダンジョンなどで宝箱に装備品があるとしても、大方以前にダンジョンを探索した冒険者の遺品をゴブリン等が入れていただけの話だったりする。人とモンスターではサイズが違うし…。
ダンジョンや遺跡など元を正せば居住区だったり、職場だったりする。
そんなところに各階層毎に貴重品を保管したりするだろうか?
普通に考えれば武器なら武器庫に、貴重品なら金庫にまとめて保管するだろう。
もちろん長い時間の間にモンスターが移動させる可能性もあるかもしれないが…。
特にこの空中庭園の場合、創ったのは高次元存在の可能性が高い。
通路の途中にアイテムを放置することはまずないだろう。
マールは私のセリフで意気消沈状態である。
---仕方ないなぁ…。
とりあえず半径200mには生体反応は無いから大丈夫…か?
「あるとすれば…ココかな?」
「へっ?」
壁に向かって立ち止まると…、シュッと音がして壁が無くなる。
壁の上部に緑色の発光体があったので調べようとしたら大当たりである。
その先は部屋の様で中にはいくつかの置物?の様な物があった。
「コレくらいなら大丈夫…かな?」
置いてある置物とクリスタルの様なものを手にとる。
置物の方は不明だが、クリスタルの方はおそらく情報媒体か何かだろう。
「この2つは今後の調査のために持ち帰ろう。マールもコレらの解読に付き合う様に!」
そう言うとマールは嬉しそうに
「わかりました!」
と元気よく答えた。
私も甘いなぁー。
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