007 弟子入り
今回はマール視点です。
また、今話は過激な描写がありますのでご注意下さい。
燃えている…私が育った街が燃えている。
私のウチは宿屋兼食堂だった。
お父さん、お母さんと下働きのミルダ姉さんと4人で切り盛りしていた。
裕福では無いが、私を小塾に通わせてもらえるくらいは余裕があったようだ。
もちろん私も料理を運ぶくらいのお手伝いはさせられていたが…。
1年前くらいからミッド王国とバーン帝国で戦争が始まって以来、物価が高くなったとお父さんはぼやいていた…。
そんなある日、街の中心にある教会から煙が上がっていた。
街のみんなや騎士の人が集まって消火しているとミルダ姉さんに聞いているその時、西門から悲鳴が聞こえてきた。
10人、50人…100人以上の見たこともない騎士の騎馬がこちらへ駆けてくる。
「3番隊は中央へっ!4番隊は直進せよっ!」
綺麗な鎧を着た騎士の人は馬上から指示を出している。
歩兵の1人が私達を見つけ、馬上の騎士に問いかけている。
「隊長!確かこの作戦では捕虜は不要なんでしたよねっ!」
「うむ、この街は城壁は帝国方向にしか無く、拠点には向かないので食料を運び出し次第蹂躙せよとのお達しだ」
「じゃあっ!」
「…30分だけだぞっ」
兵士達は目をギラつかせて逃げる私達や、近所のおばさんたちを追いかけてきた。
私は兵士の拳で殴り飛ばされ気絶しかけた…。
駆け寄ってくるミルダ姉さん…。
「そんなガキは相手にするなっ!流石に我が娘と同じくらいのガキを犯すのは忍びない…。となりの娘にしろっ」
「しかし…せっかくの銀髪ですぜっ」
気が遠くなる…。最後に聞いたのはそんなセリフだった。
ズキンっ!
頭が痛い…。
目を開けると、、、燃えていた。何もかもが燃えていた。
いつまで見ていたのだろう…。
痛みのせいか、何故か危険なのに動けなかった。
ガタンっ…ウチの宿の裏手から1人の兵士が何かボヤき、ベルトを締めながらこちらへ向かって来た。
「やっぱりこの作戦に参加して正解だったぜっ!…ん、このガキまだ生きてやがったか…。せっかくだし土産にするか?」
私は再び絶望した。
男がこちらへ手を伸ばしたその時、目の前が爆発した。
ゴガンっ!
男の上半身が岩に埋まっている。
この岩はどこから…?と思っているとその上から声がした。
「やれやれ、バーン帝国の兵士が野蛮なのは変わらんか…。確か…盗み、犯し、殺す、だったか?下衆がっ!」
言っているコトはアレだが、綺麗な声だった。いや、綺麗なのは声だけで無く容姿も街では見たこともないくらい綺麗だった。見た目20歳前半だろうか?腰まで届く黒髪に端麗な顔。身長は170くらいで高めだが、痩せていてなお出ているところは出ている。
異性、いや同性から見ても目を奪われる美貌だった。
ボーッと見ていると向こうから2騎の騎馬が駆けて来た。
「何事かっ!ムっ、まだ生き残りがいたか?ふむ、美しすぎるが…お前は…?」
「なんでもいいじゃないですか。もうこの街には用はないですし、火も放ち済みですぜっ!この女は生け捕りにしましょう!」
「…、1つ尋ねるが、この街で生きている住民はこの子だけか?」
彼女は私を見ながら騎士に問う。
「ふん、おそらくなっ。男も女も、既に生きちゃいないだろうさっ!」
「もし生きていても昇天している最中かもなっ!ギャハハッハ!」
「そうか…友人の安否が気になって来たのだが…」
「お前は人の心配よりもこっちにおとなしく来るんだっ!」
馬上から手を伸ばした騎士は、上半身から崩れていた。
見ると女性の手にはいつのまにか剣が握られていた。
「なっ…!きっ、貴様ァっ!」
馬上の騎士が動こうとしたが、馬も人も動けないようだった。
「なっ…、魔法障壁だとっ?貴様は一体っ?魔方陣が、、4つ⁈あり得んっ!」
「残念っ、6つだ…」
無音---、目の前が真っ白な光に溢れて…。
一瞬後には私の10m前から街が、街が無くなっていた。
あるのは巨大なクレーターの様な大きな穴だけだった。
「少しキレてしまったが…、街の者には餞になっただろうか?さて、お前はどうする?」
私に向けられているのだが、腰が抜けて上半身は痙攣している。うまく話せない。
「…まあいい。身の振り方は後でもいいか。だがこの後ココに、ミッド、バーンどちらの軍が来てもろくなことにはならんだろう」
と彼女は私を抱きかかえ、
「今はとりあえず眠るといい」
彼女の腕の中はいい匂いがした。
それが私の故郷の最後の思い出だった。
後日、両国では平和条約が結ばれて戦争は終結した。
噂によると両国の王、皇帝の後宮や王宮で何やら事件があったらしい。同じ日に爆発事故があったとかなんとか…。
詳細は不明である。
騎士さんの1人は魔法騎士でエリートの様でしたが瞬殺でした。
また、マール視点でわからないと思いますが、ユキは街の住人の生存がほぼ無いコトは確認済みでした。