058 聖剣
モノローグ長いですが使徒同士の会話です。
この世界の勇者は聖剣を鞘から抜いた者。何か偉業を成し遂げた者では無く、聖剣に認められた者こそ勇者なのだ。
聖剣に意思があるのか?または何かしらのプログラムがあるのか、歴代勇者からは語られることは無かった。
現在最期の勇者も100年前、事故で亡くなって以来新しい勇者が現れることは無かった。一時期カーツ教会の聖職者達は、体のいずれかに聖痕のある者を聖剣チャレンジなる儀式を行って、勇者早期発見に乗り出していた。が、聖剣を抜く者は未だ現れない。
そもそも何のための勇者なのか。今の世界は概ね平和と言ってもいいだろう。魔族もユキの牽制でおとなしく、自分達から人族への侵攻はしないと誓っているし、理不尽な戦争も大体ユキが収めてしまう。軍人はともかく、民草に被害はほとんどない。
もっともカッツネラ教国に限っては世界の敵のユキを打倒するため勇者出現を望んでいるが…。
もし勇者が現れても何を倒す為の勇者なのだろう?
ユキを倒したところで喜ぶのはカッツネラ教国だけで、ほとんどの国は多くの問題を抱えることになるだけなのに…
とりあえず、こういう事は当事者に聞くことが一番早く確実だろう。
現在光の塔が破壊されていて本来宝物庫に保管されている聖剣はカーツ教会の第2聖堂に保管されている。
もちろん宝物庫にだ。通常信者よりせしめ…信者からの善良な寄付を保管する場所なのだが今は聖剣のみ保管されている。当然周囲に人はいない。
一瞬聖剣が眩く光ると…。
「この波動は…、噂に名高い『アオ』様ですね!」
「はーい、こんばんは、あなたが聖剣ね」
アオは意識のみ宝物庫へ飛ばしていた。
「お初っす!聖剣をやっているサクセサリーっていいます!『成功する者』って意味だったんですが、訛ってこう呼ばれてるっす!よろしくっす!」
「なんか軽いわね」
「そうなんすよ!俺っち剣の重さは感じさせないっす!」
「いや、そうじゃなしに…、まっいっか」
「?」
いまいちやりにくい相手のようだ。
「それよりも、あなた『∝®︎⌒⌘←』って事でいいのよね?」
「そうっす!2000年前くらいからコッチで出現したっす!」
やはりアオの睨んだとおり高次元の『使徒』のようである。タイミング的にはユキと出会う前だが、高次元では時間など関係ない…。つまりある程度戦闘を経験させて、ユキの手に渡るように作られたという事だろう。
一応確認はしてみる。
「あなた最近鞘から出てこないけど、どうしたの?飽きちゃった?」
「いやー、実は500年くらい前に真の持ち主っぽい人と出会ったんすけど、当時は敵味方の関係で手にしてはもらえずにいたんす。けどビックリしたのが150年前にまた同じ人がいたんすよ!人族なのにまんま変わらない姿で!これは運命って思ったらその時も敵味方で…。こうなったらその人に手にしてもらわないと納得できねーってその後、鞘から抜けないようにしてるっす!」
やっぱりユキ狙いの使徒のようだ。
「なるほどね…。その人は今、私と一緒に住んでる人よ」
「マジっすか!…、アオの姉さん、お願いがあるっす!」
「わかったわよ」
「へ?まだ何も言ってないっすよ?」
「どうせユキちゃんに持ち主になってもらいたいっていうんでしょ?」
「その通りっす!さすが姉さん!」
「ただし、ユキちゃんがイイって言ってからよ?」
「もちろんっす!アオの姉さん!待ってますんでよろしくお願いします!」
こうして使徒同士の会話は終わった。
果たしてどうなる?
ユキ様が勇者?




