005 愛刀
主人公は結構何でも屋気質で、色々な知識もあります。
「先生、この剣って確か昔使っていた物ですよね?」
「おおっ、懐かしいなぁー。ちなみにそれは剣で無く刀だよ」
「…?」
前に旅をしていた時に腰に佩いていたヤツだ…。
「『剣』の場合、押し斬ったり、叩き斬ったりするブロートソードやバスタードソードがあるけど、『刀』は刀身を引いて斬るコトに特化した武器なんだよ」
もちろん作り方も鋳造の剣より遥かにめんどくさい『折り返し』である。
…以前、一人で旅をしていた時に作った刀である。
希少金属のアダマンタイト鉱山で行方不明になった鉱夫を探索していた時にあった事件だ。
結果から言えば鉱夫は無事発見に至った。
だが、コトは単純じゃ無かった。
アダマンタイトと言えば硬さもさる事ながら、価格も高い。当然国の管理である。しかしこの鉱夫は親類を使い横流しをしていた。
当然告発すれば死罪は免れず国も有能な鉱夫を失うのだが、私は報告はしなかった。
私が受けた依頼は『鉱夫の発見』であり『鉱夫の告発』では無いのだ。
誰も知らない事件など公にしたところで、誰も得はしないのだ…。
鉱夫は私に拳大の結晶をお礼にくれた。
決して脅し取ったのでは無い…。
だが、結晶となると売れば足がつく…。
なので以前ドワーフに聞いた刀を打ってみるコトにした。
失敗したとて溶かして売ればいいし。
ドワーフは『玉鋼』という良質な鋼を使うというが私の使うのはアダマンタイト。
通常溶かすのは容易で無い金属なので火上位精霊のサラマンダーを召喚しその魔力を含む炎を使い金槌で叩いては折り返し、叩いては折り返し…、刀の形にして
熱しては冷まし焼き入れを完了し、最後は粉状のアダマンタイトで磨いて美しい刀に仕上げた…。
流石に職人では無いので本物と比べるコトはできないが、アダマンタイト製の刀は他ではみた事がない。
折り返しをする事で金属の硬さと柔軟さを一体とした刀の斬れ味は逸品だ。芯には魔力が伝わり易いミスリルを使用しているので杖がわりにもなる。
しばらくはこの刀を佩刀として『居合い』や『一刀流』を修行しまくったのはいい思い出だ…。
久しぶりに手に取った刀は…錆びていた…。
「うわー、これはヒドイですね」
「うーん、、、今度ドワーフの村に行く時研いでもらうか…」
もうあんな苦労はしたくないし…。
誤字脱字があればご指摘ください。