038 バーン帝国
37話の続きです。
「…ユキ様、バーン帝国より告訴状が届いてます」
「告訴?」
「ええ、内容は自国民の大量虐殺に対する賠償とか…、身勝手ですねー」
「世界の管理者としてはどうするのだ?ムスターファ」
「捨て置きます」
だろうな。今回の件、どう見てもバーン帝国に非がある。とはいえ放置すれば私に火の粉がかかる。こういうことはさっさと解決すべきだ。
「しょうがない。私が出頭しよう」
「ユキ様…、できればバーン帝国滅亡は許してあげてくださいね」
「…、善処はしよう」
「お願いします。あの辺りに難民が溢れると今後が大変です」
一応建国600年の大国だ。馬鹿ばかりではなかろう…。
今回の件はマールには一切関わらせないつもりだ。私は単身バーン帝国に乗り込む。
城に入ると城門から兵士が襲って…来なかった。おそらく生き延びた兵士から私のコトは伝わっているのだろう。命を捨てる者はいなかった。
が、やはりというか、なんというか…。
「貴様!一般人がなにを城の中をうろちょろしている?衛兵は何をしている!即刻つまみ出せっ!」
帝国貴族が私に向かって怒鳴っている。
「ギシュワーズ伯爵、アレは天魔の魔女です!」
「天魔の魔女?ああ、賠償金を持ってきたのか。うん?よく見れば…、貴様!今宵は我が褥に侍ることを許す!身を綺麗にして来るがいい!」
やはり城の貴族や皇帝には戦場の恐怖は伝わっていないらしい。しかも馬鹿。
「やれやれ」
私は『昏睡』を貴族に放つとその場に倒れる。
「ギシュワーズ伯爵!」
「死んではいない。が私がここで暴れるのは嫌だろう?早く皇帝の元に案内してもらいたいのだが?」
「できるわけ無いだろう!」
「ならば最後の忠告だ。一刻も早くこの城から逃げることを勧める」
私は奥へ歩いていく。止める者は誰一人いなかった。
長い廊下になると赤色の鎧を着た兵士が襲って来る。近衛兵か?私は『重力波』を放ち兵士を吹き飛ばす。うち3人が扉に当たり大きな扉が開く。
「何事だ!」
「皇帝の御前なるぞっ!」
皇帝の間についたようだ。
「さて、お前が皇帝か?」
「無礼なっ!控えよ!」
「そうか!お前が天魔の魔女だな?卑しい田舎者がっ!誰の許しを得て頭をあげるか!」
やはり皇帝も大臣も馬鹿だった。250年前の事件も誰も知らないらしい。お前の座ってる椅子もその時新調している物なのだが…。とりあえず『重力』を放つと皇帝の間にいる者は私以外床に崩れ落ちる。
「私に権力は通じない。知らなかったのか?」
例の500年前の件から私はどの国を訪れるのも自由で、あまりやらないが国の代表は私にひれ伏さねばならない。それを今回強制的に実行して見たのだが…。
「何を!朕は帝国の皇帝ぞ!たかだか魔女ごときが無礼であろう!」
「そもそもお前は我が国民を虐殺した犯罪者だ!賠償金はどうした!」
うむ、全然反省は無いらしい。
「そもそもドワーフ王国に戦争を仕掛けたのはお前たちだろう?戦争で死んだ人間を被害者にするのなら最初から戦争などしなければいいのに何故戦争を望んだ?」
「フン、ドワーフがおとなしく財を納めれば良いものを抵抗するのが悪い!」
「ドワーフ王国はお前の国でも属国でも無いのだが?」
「ドワーフ風情が国だと?人族の真似をしているだけあろう!
「大体、我が国の法律を侵し、勝手に武器の売買を行ったドワーフが悪い」
ダメだ、コイツら自分のコトしか考えられないらしい。もっとも理解できる頭があれば戦争などにはならなかっただろう。
「もういいや、この国はダメだ」
私は魔力を収束すると…。
(ユキ様!短慮はおやめ下さいとアレほど…)
ムスターファからの念話である。
やはり聞いていたか。
「だったらお前もこちらに来てから文句を言え」
(…、わかりました。)
空間が歪みムスターファが現れる。
「この国は皇帝、大臣、貴族に至るまで腐っているぞ?放置してもいいコトはない。クーデターが起きるまで時間がかかるし、内乱もいつ収まるかわからんぞ?」
「しかし、今この城を破壊して王、大臣を倒したとしても国の機能は失って何万もの難民が出るのもどうかと思いますが…」
「貴様ら!何を勝手に…、…!」
うるさいので「静寂』を放つ。
「しばらくお前が管理すれば良いのでは?」
「世界管理者は直接手を下さない盟約になっているのですよ。各国への面目が立ちいかなくなります。そこでご相談なのですが…」
「イヤ!」
「まだ何も…」
「絶対イヤ!」
こんな国の面倒など誰が見るか!
「…、100年王国ではナイスなプロデュースをしていたじゃ無いですか!」
やはり知っていやがった。
「アレとコレとでは内容が違うだろう!」
「同じですよ。ユキ様の指針が国を動かすだけですよー」
…、このまま放置はできないし、かと言ってこの戦争でこれ以上の死者は出したくない。
うーん…なんかめんどくさくなってきた…。
長いので次話に持ち越します。




