031 怒り
今話は過激な表現があります。お気をつけください。
「ガーハハハハっ!」
野蛮な笑い声が渓谷に響く。
以前討伐したバンパイヤの根城が今度は山賊の根城になっていると苦情が来たのでやって来たのだが…。
迂闊にもマールが人質となっている。まぁ、ミクが近くに貼り付けているので心配はしていないが…、不快は不快である。
「おっと、天魔の魔女っ!動いたり変な動きをすれば人質はどうなるか分かってるんだろうなぁ!」
「ボスっ!切り刻んでもいいっすか!」
「まぁ待て!腐っても魔女だ。どんな反撃があるかわからねぇっ!人質から目を離すんじゃねえぞっ」
「コッチにも魔術師がいる。魔力の動きがあれば人質の首をハネろ!」
野蛮な割には用心深いことこの上ない。
さて、とりあえず全体に『停止』でもかけるか…と思っていると、森からガサガサっと音がする。
「なんだ!」
「魔女の伏兵かっ!」
不穏な空気に当てられたのか、森からキツネが飛び出して来た。最悪のタイミングでの闖入者だ!
「ひぃぃぃっ!」
「落ち着けっ!ただの獣だっ!」
ザシュッ
マールの首にククリを押してけていた山賊がキツネの出現にビビりマールの首に大きなキズをつけた!
「ッ!」
あの位置では頸動脈が傷ついたか?慌てて『時間操作』を行おうとすると…!
マールの傷はまるで巻き戻すかのように再生していく!マールの表情から痛みもないようだが…。
「ミク!マールを連れて先に帰還していろ!私もすぐに行く!」
「ハイナノデス!」
シュっとマールとミクの姿は消え失せた。
「なっ!なんだ今のは⁈魔力の動きは一切無かったぞっ!」
「なんだあのガキっ!なぜ傷が治ったんだ!」
山賊は混乱しているようだが、誤ってとはいえマールを私の前で傷つけたのだ!私の怒りは収まらない!
「…お前らタダで死ねると思うなよ?」
私は4つの魔方陣を展開して呪文を唱える!普段使わない呪文をだ‼︎
私の場合呪文は補助ではなく強制力の強化だったりする。
「ユキの名において命ず。永遠の時を空腹で過ごす者よ、我が導きにて現世への帰還を許す。汝等が名は餓鬼!我が意に応えよ!かの者共喰らい尽くせ‼︎」
私は山賊達を『重力』で地面に貼り付けて、結界を3重に張り、結界内に『再生』と『鎮静』を施し、地獄の1つである飢餓界より100体の『餓鬼』を召喚した。この世界に身体ごと召喚したので寿命まで生きることができる。餌は無限に再生するのだ。しばらくはこの結界内は阿鼻叫喚となるだろう。
私を本気で怒らせた罪は重い!精々餓鬼が食うことに飽きるのを期待するのだな!
私もすぐに帰還する。
後にこの場所は50年に渡り絶叫の渓谷として誰も近づくコトは無かった。
ユキ様は怒らせてはいけません!
ちなみに鎮静の効果は気が触れても強制的に正気に戻すことです。




