003 水世界
しばらく不定期に投稿します。
ミッド王国の北西にあるヴァーミン湖。
その水面下には一部の人しか知らない街がある。基本魚人、人魚等が生活する場所だ。
その街から少し離れた所に『水草の森』がある。普段ならば小魚の楽園なのだが1月ほど前から異変があるという…。
今日はここの調査だ。
「先生、待ってください」
(マール、そんな物着ているから…)
マールが着ている『水ポンチョ』は私謹製である。効果は水の中でもポンチョ周辺に空気を纏って呼吸や会話ができる装備なのだが…、水の抵抗や成長した水草で動きが制限されてしまっている。
(せっかく新しい水着を用意してあげたのに…)
「アレはっ!なんか精神的に抵抗が…」
ワガママな弟子である。スク水(ネーム入り)の何が不満なのだろう?絶対似合うのに…。想像して欲しい。銀髪幼女の紺色のスク水…。コレは萌える!
「それに私は先生のように『水呼吸』や『念話』をマスターしてませんし、無詠唱ではまだ魔法の発動に時間がかかりますので」
水中での行動は人には制限がある。
基本喋れないので呪文を唱える事ができず、呼吸もできない。
『念話』の場合、一方的な通話になってしまうのでマールからは発言できなくなってしまうのだ。
また、四属性の相性も『火』や『風』は良くない。
(っと、そろそろ森の中心辺りか?)
「はい!辺りの生物の姿見当たりませんし…、何がいるやら…」
水草を抜けて姿を現したのは水竜だった。
水竜は大きさから300歳くらいの成竜でおそらく人語も理解できるだろう。
首をもたげこちらに気づいたようだ。
「っ!、この魔力の気配は、天魔の魔女かっ!」
(うーん、そうビビるな水竜。…会った事があるのか?)
なぜかすっごく警戒されている。
なんなんだか…。
「…以前、竜の谷で」
(ああ、黄金竜の手下か?しかし、あの時は…)
「ああ、もちろん我等の方が悪い。また、敗北した我等は其方に従うしか無い」
竜族というのは律儀というか…、300年も前の事を。
いい加減若気の至りなコトは忘れて欲しい。
「何があったのです?」
(ん、まぁ、以前チョットな…)
興味津々なマールだが、昔ドラゴンロード達をボコった黒歴史を紐解くのはいささか恥ずかしすぎる。
(ところで、私は水世界に異変があるというので調査に来たのだが、お前が元凶か?)
話題をすり替えると今度は水竜の方がビビってるし。
「確かにおそらく私が原因だと思いますっ」
なんだか語録がおかしい。
「しかしながら私も理由があって…」
(うん、怒らないから言ってみなさい)
「先生、逆効果なのでは?」
威圧しているわけでは無いんだが…。
「実は…」
水竜の話では新たな精霊がもうじき目を覚ますという事らしい。場合によってはこの水世界の主となるかもしれないという…。
生まれたての精霊は悪意害意でモンスター化する可能性もある。
水竜は守護者として周囲を守っているとのこと。
(そういう事なら私からも街に警告を発しておく。精霊が成長するまでここにいなさい)
水竜は明らかに安堵しこうべを垂れた。
うーん、新たな精霊か…、影の調査対象に追加しておくか…。
誤字脱字があれば教えてください。