001 グランのワイン
小説初投稿です。
ヌルい目で見てください。
「私達の村をお救いくださいっ!」
のっけからいきなり何を言っているんだ?
アポ無しで人の住処に来て早々こんなセリフを言われたら普通に引くんですけど…。
とりあえず、このままではラチがあかないので、事態を収拾しますか…。
「なんで私が?」
おおぅ、彼等の目が点になってるし…。
そもそもウチの周りには結界が張られていて基本入れない。この村人は結界の外で立ち往生しているところを弟子が連れてきたのだ。
「あなた様は『天魔の魔女』様ではないのですか?」
「そう呼ばれる事もあるけど自分で名乗っているわけじゃ無いし…」
まぁ、今までもこういう遣り取りが無かった訳でも無いが、人助けが趣味というわけでは無いし。
「我が村はかつて天魔の魔女様に救われたと聞いてここまで来たのに…」
「そう言われてもなー。覚えてないし…。お前何かわかるかい?」
私の側で控えている弟子兼付き人のマールに聞いてみた。
銀髪の綺麗なショートカットで見た目10代前半のカワイイ少女である。
「ムートン村ならば確か---、150年前に訪れた事があったかと…」
「よく覚えているなー、まあいい。…で?いくら出せる?」
「えっ?お金をとるんですかっ?」
当たり前である。てか、タダで辺境の村まで行かせる気だったのか?
「とりあえず、金貨で500枚。即金でなら詳細を聞こう」
金に困っている訳では無いが、交渉はふっかけが基本だ。
「そんなっ!払えるわけないでしょう?」
村人達は総じて項を垂れる…。
まぁ仕方ないか…。辺境の村では国の騎士団も動くまい。
「我が村はもうおしまいだ…」
「よろしいでしょうか?」
マールが意味ありげにこちらを伺う…。
「確かムートン村では、希少のワインを作っている村だったかと…」
「っ!思い出したぞ?グランのワインかっ!」
アレはいい酒だった。最近飲んでいない…。
「確かに、村ではワイン作りが盛んですっ!」
「ふむ、ならば今年出荷分のうち、半分…、いや、1/3を報酬にすれば助けてやろう」
「…、なぜ1/3なのでしょう?」
「半分を納めては村の経済が成り立たんだろう?今年が良くても来年のワイン作りに支障をきたそう。1/3ならなんとかなるだろう?」
「成る程っ!わかりました。お願いいたします」
うみゅ、久しぶりにグランのワインが飲めるぜ♪
「さてと、ならば詳細を聞こう」
「はい!実は村の水源近くに飛竜が…」
何のことはない。ちょこっと強めのモンスターが巣を作っただけだった。
が、戦闘をした事のない村人には脅威となっている話だ。
「ん、わかった。では今すぐ行こうか」
「しかし…、既に日も暮れようかという時間です。夜道の移動は…」
旅慣れない村人は野盗やモンスターの襲来を危惧しているようだが。
「問題無い。マールっ、村の場所は?」
「はい!先生。この位置より南西に122km、ひらけた盆地になります」
マールは卓上に大きな地図を開き指差す。
「うむ、行くぞ!」
私は『転移』魔法を無詠唱で発動した。
一瞬で村人3名とマールと私はムートン村の外れにいた。
「なっ?アレは村じゃないかっ!」
「なんで?」
「あー、そんなことより飛竜はどの辺にいるんだ?」
『転移』に、いや、魔法に不慣れな村人は混乱しているようだが放っておこう。
「あっ、あの川の奥にいるはずです」
「よし、マール、行くぞ。」
「装備が無いですがよろしいので?」
「飛竜ごときに?要らんわっ」
といっても、流石に村の地形を変えるとマズイかな?
ワインに肉があるといいし…
などと歩きながら考えていると…
「GRRRR…」
うわぁケモノ臭っ!
肉食のモンスターは臭うなぁ…、ならばっ!
私は巣ごと焼き払うのを決めた。
外皮の厚さから800度くらいでいいか?
「マール、この魔方陣はわかるか?」
「コレは…『業炎』、いや、『業火』でしょうか?」
「アタリだ」
この世界の魔法の場合まず魔方陣を魔力で書き上げ、呪文を補助で読み上げる。魔力放出が多い場合呪文を省略、無詠唱する事ができる。
ゴオオオオ!!!
飛竜の巣あたりが大火事である。
飛竜はプスプスと煙をあげている。
つがいの2匹でまだ卵は無い様なので殲滅終了!
「先生、たまには呪文を唱えてください。勉強になりません」
「んー、なんか厨二ぽくって嫌いなんだよね」
見た目年齢が合ってるマールなら唱えても違和感がない気がするが…。
「今、すごく失礼なコト考えてません?」
「うみゅ、気のせい、気のせい。そんな事より、飛竜の肉を取って、ワインを土産に帰るぞ!」
村では遠巻きにコチラを伺っているが貰うものを貰えば用は無い。無駄に歓迎されるよりウチでゆっくりワインを堪能する方がいい。
…変な依頼とか頼み事とかフラグ立てたく無いし…。
7/16に修正致しました。