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オレは魔族でも魔王でもねぇ!  作者: 結城ゆき
1章 金黒眼の少年と魔法少女
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3話 魔法少女の隠れ家




 ゴミまみれになったオレと魔法少女は、辺りに誰もいないのを確認してゴミ箱から脱出した。

 これからどうするかが問題だったが、これ以上この()に関わるとろくな目に合わないことは何となくわかるので、ここでバイバイしようと切り出した。


「じゃあな、道中気をつけろよ」


「えっ、どこ行くんっすか?」


 彼女は不思議そうな顔で尋ねてきた。


「はぁ? 大通りに戻るんだよ」


「そっちは逆方向っすよ?」


 オレは盛大に作った笑顔で体を180度回転させて進もうとするが。


「あははは~間違えた間違えた」


「そっちも違うっす」


 彼女に関わらないと、ここから出ることができないのか。

 もう、どうにでもなれ。


「あの~、この辺りの道を教えてもらえませんか?」


「......迷子っすか?」


「いやいやいやいや、オレは今日(・・)この街に初めて(・・・)来たんだ。だから道を知らないだけだ。迷子ではない、断じて違うぞ」


「そっすか、まぁ、このラビリンス通りは住民ですら迷う時があるっすからね。いいっすよ、助けてもらった恩もあるっすから」


「ありがとう、助かるよ」


 オレは、素直に彼女の道案内を受けることにした。

 彼女は、申し訳なさそうにオレを見てきた。


「人目のつくところには案内できないっすけど......」


「そうかぁ、キミって魔族だったな。う~ん、正直言ってオレもどこに行けばいいかわかんないんだよね~」


「なんっすかそれ」


「いや~、一緒に来たやつとはぐれちゃってさ。あははは」


「それは、大丈夫なんっすか?」


「多分大丈夫だと思うぞ(お約束的に)」


「なんか自信ありげっすね」


 とにかくオレは行くあてがない。

 どうしようか困っていると、彼女から提案があった。


「人が少なくなる夜ならこの街の案内とかできるっすよ?」


「えっ、案内してくれんの?」


「助けてもらったお礼っす」


「ありがとう、助かるよ」


 笑顔で街の案内をしてくれるという魔族の女の子に、オレも笑顔で返した。


「人間領に魔族がいるとか言いふらされても困るっす、私の目の届くとこにいてもらわないと困るっす。それに、ちょっと抜けてるヤツっす」


 魔族の女の子が何かぶつぶつ独り言を言っているが、他のことを考えていたオレの耳に届くことはなかった。

 なんだよエリシアのやつ、魔族は滅ぼす敵とか言ってたけど、全然いいやつじゃんか。


 それからオレたちは夜まで彼女の隠れ家で過ごす事にした。

 ここにいても、またあの男たちに出くわすかもしれないし、お互いに全身をローブで身を包みフードを被っていれば、嫌でも目立つからな。




 彼女は軽快な足取りで先を進んでいき、隠れ家へと向かう。

 もちろん、先程の男たちがいないか警戒をしながら。

 どこをどうやって進んだのか、もうわからなくなっていて、気づけば目的地に着いていた。


「ここ、なのか?」


「そうっす」


 そこは、ただの裏通りでこれといった入り口も無い。

 オレたちの目の前には壁があるだけだった。


「......解除(リムーブ)


 彼女が手をかざして何かをつぶやくと、目の前の景色がゆらりと(ゆが)んでドアが現れた。

 

「うぉっ!?」


「さっ、入るっす」


 驚くオレに家に入るように促す彼女は、どこか急いでるようだった。

 魔法の使用が人目に付くと何かとマズイのだろう。

 オレは、言われるままに家へと足を踏み入れる。

 それを見届けた彼女が薄く笑うのをオレは気づかなかった。


 バタンッ。


「人間、もう出られないっすよ」


「ん? なんか言ったか?」


「いえ、なんでもないっす」


 彼女は扉に手にかざしていた手をおろして笑顔で答える。


 隠し扉の入り口からして秘密基地っぽいものを想像していたが、広さはそれなりにあるものすごい生活臭のする小部屋だった。

 ただ、ここ最近は誰もいなかったかのように所々にホコリがかぶっている。

 彼女はゴミまみれのローブを脱ぎ、大きなたらいの中に放り込んだ。


 初めて彼女の姿を見たオレは、思わず見とれてしまった。

 目の前にいる女の子は、紛れもなく美少女だった。

 透き通るような白銀の髪が肩のあたりまで伸びていて、ウェーブがかかっている。

 丸い顔と丸い(ほお)は幼さを体現している。

 少しつり上がった金の瞳はどんな黄金財宝よりも輝いていて、その整った容姿の中でも幻想的な雰囲気をかもし出していた。


「ローブを脱いだらどうっすか? 一緒に洗っとくっすよ」


「あー、えーと......」


 オレがローブを脱ぐのを渋っていると、彼女からの追及が来た。


「何か脱げないわけでもあるっすか?」


「いや、別にそういうわけじゃないんだが、じゃあ、お願いするよ」


 ローブを脱いだオレの姿を見た彼女は、そのキレイな金眼と可愛らしい口を大きく開いて、何か言いたそうに口を魚のようにパクパクとさせていた。

 まず、この世界ではお目にかかることがないであろう服装、TシャツにGパンという異質な格好。

 驚かれて当然だ。


「ど、どこの国の人間っすか?」


「えーと、わからないんだ」


「へっ?」


「記憶がなくってさ、自分がどこの生まれなのかとか全くわからないんだよ。記憶喪失ってやつだ」


「そう、っすか......」


 彼女に悲しい顔をさせてしまうのは非常に心苦しいが、記憶喪失になってるという設定が1番都合がいいのは異世界召喚物の様式美だろう。


「気にすんなって、オレは特に困ってないしな」


「いや、でも、お連れさんとはぐれて困ってるんじゃなかったっすか?」


「あっ! はははっ、痛いとこつくなキミは......」


「あっ、私っすか? 私はレナっす。見ての通り魔族っす」


「悪いな、オレも名乗ってなかった。オレはユウだ、よろしく。あと、助けてくれてありがとな」


「助けてもらったのはこっちっす、よろしくっす」


 オレたちはお互いぺこりと頭を下げて笑いあった。

 それから、レナはオレのローブもたらいに入れて水を汲み始めた。


「適当に座っててくださいっす」


「ああ、わかった」


 言われてオレは部屋の真ん中に、ででんと置いてあるソファーに腰掛けた。

 レナは、てきぱきと動きまわり「どうぞっす」と言って飲み物を出してくれた。

 ひと段落したのか、レナはオレと正対するようにソファーに腰を掛けた。


「飲まないっすか?」


「いや、いただくよ。ありがとう」


 勧められた飲み物を一口飲むと、ほのかなリンゴの香りと味がする紅茶だった。

 この世界にもアップルティーがあるのかと驚いた。


「おいしい! まさかアップルティーが飲めるなんて思わなかったよ」


「あっぷるてぃー? これはポムティーっすよ?」


「へっ、へぇ~そうなんだ~」


 やっべぇ、つい元の世界のことを口走ってしまった。


「まぁ、おいしいなら何よりっす」


 レナはそう言って、不敵な笑みを浮かべた。

 その笑みを見たオレは何か嫌な予感がしたが、もう遅かった。

 視界がぼやけ、持っていたカップを床に落とし、アップルティー(ポムティー)をぶちまけてそのまま倒れてしまう。

 意識はある、しかし、体が動かない。


「...なに、を......し、やが...った」


 見上げた先には、先ほどまでのヒマワリのようなレナの笑顔はなく、黒い感情に支配された少女がたたずんでいた。






最後まで読んでいただいてありがとうございます。


銀髪かわいいですよね!(異論は認めぬ)

しかも、ロリッ娘ですよロリッ娘。

ファンタジー世界には必要不可欠な存在、それがロリッ娘。

この小説でレナの特徴を説明するのが一番力入れた部分でもあります。


次話、銀髪ロリ娘はユウを〇す!?


次のページでお会いできることを祈りつつ......。

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