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オレは魔族でも魔王でもねぇ!  作者: 結城ゆき
1章 金黒眼の少年と魔法少女
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2話 迷子のオレと路地裏の魔法少女




 いったいどれだけ走っただろうか。

 エリシアから無我夢中で逃げていたら、いつの間にか独りぼっちになっていた。


「どこだ、ここ...」


 道幅が狭く人通りも少ない、いわゆる路地裏と呼ばれる所だろう。

 まだ昼間なのに辺りは薄暗く、時々見かける人達は何やら怪しげな笑を浮かべている。

 そして、身なりも大通りの人達と比べるとみすぼらしい。


「貧民街......?」


 ここにはあまり長居するべきではないと、オレのゲーマーとしての感が訴えてくる。

 異世界召喚、貧民街、路地裏というパターンは、トラブルに巻き込まれるというフラグが乱立してる。


 もう遅いかもしれないが、とにかく大通りの方へ戻ろうと歩き出した。

 すると。


 ドタバタドタバタ。


 嫌な音がする。

 これからトラブルに巻き込まれるという音がする。

 このまま進むと確実にマズイことになる。


 アニメやラノベで主人公がトラブルに巻き込まれてイベント発生は、見ていてワクワクするが、いざ自分がトラブルに巻き込まれるとなるとワクワクしない。

 むしろ憂うつになる。


「せっかくのフラグだが、オレは回収しない」


 そう独り言を言って回れ右をし、進路を180度変えて足早に歩き出した。

 少し進んだ曲がり角を曲がろうとしたら、オレの体にものすごい衝撃が走った。


 ドスッ!


「ぐはっ」


「ぐへっ」


 どうやら誰かとぶつかったみたいだ。


 目の前には、オレと同じようなローブを着ている小学生くらいの女の子が「痛たたた」と片手で顔を押さえながら尻もちをついていた。

 ぶつかった衝撃で被っていたフードが半分ズレており、そこから見える白銀の髪は思わず見とれてしまうほどキレイだった。

 そして、最も目を引いたのがオレの右眼と同じ色をした金色の瞳だ。


「うぅぅ、なっ、人間! ちぃっ、ツイてないっすね」


 彼女はオレを見るなり何か小声で言うと、素早く起き上がり自分が走ってきた方向を見やる。

 オレも彼女の視線をたどると、4つくらい先の曲がり角から「我こそは悪党でござい」と言わんばかりの人相をした2人組の男が「いたぞー、こっちだー」と叫びながらこちらを目指して走ってくるではないか。


 オレはトラブルを回避するために音のする方とは逆方向へ向かったのに。

 フラグとは絶対不可避の運命(さだめ)なのか。

 そんなことを思っているオレに向かって彼女は、金の瞳を細めて忠告し、2人組に向かって片腕を伸ばす。


「そこの人間、そんなとこにいたらケガするっすよ」


「はぁ?」


火球(ファイアーボール)


 オレにもかろうじて聞こえる呪文らしきものを唱えた彼女の右腕から、彼女の体と同等の大きさをした緋色の球体が男たちに向かって飛翔していく。


 魔法!? すげぇ。


「うがあああぁ」


 先頭を走っていた男が火の玉に飲み込まれた。

 そして、火の玉の勢いが衰えることはなく後方にいたもう1人を飲み込もうと爆進するが。


「チィッ、やっぱダメっすね」


 彼女が悪態をつくと先程までの大きな炎がみるみると小さくなっていく。

 もう1人の男は水晶のようなものを突き出してニヤッと口元を釣り上げていた。

 すると今度は、男が手にしている水晶から、先程彼女が放った火の玉と同じものがこちらに向かって放たれた。


 突然巻き込まれた騒動に半ば呆然と、まるでアニメのワンシーンを見ているかのように思っていたが、目の前に迫り来る炎の熱気がオレを現実へと引き戻した。


「こっちいいい」


 気づけばオレはそう叫んで彼女の腕を引っ張って、元来た道へと引き寄せていた。

 その直後、目の前を炎球が通り過ぎて、すぐ横の壁に直撃して爆散する。

 熱風と火の粉が辺りを覆い尽くす。


「熱っ熱っ、ってか、壁溶けてるしいい!」


「えっ? えっ?」


「おい、あそこまで走れるか?」


「はっ? えっ、ええ」


 オレが指を指した先には、これまた「ここに隠れることが出来ますぜ」的な、人が1人は入れる大きさの木製のゴミ箱っぽいやつだった。

 彼女は何か戸惑っているようだったが、そんなことをかまっている暇はない。

 ここはあそこに隠れてやり過ごすしかない。

 このままでは死ぬ、確実に死ぬ、と言うか燃やされる。

 オレは、この世界に来て何回死ぬ思いをしないといけないんだ!

 彼女の手を引っ張って、走り出した。


「ああもう、なんなんだよ」


「おっ、おい、人間! 何するっすか!」


「うっせーよ、このままじゃ死ぬだろ! 隠れるんだよ!」


「えっ、はっ? えっ?」


 箱の中はやはりゴミ箱だった。

 しかし、汚いだの臭いだのと言ってられる状況じゃない。

 とりあえず、ここは安全なはずだ。

 ファンタジー世界のお約束的に大丈夫なはずだ。


「オレはこの世界に賭けるっ!」


 そう言って、オレと彼女はゴミ箱の中に隠れた。


 ドスドスドスドス。


「くそっ、逃したか、おい、そっちはどうだ?」


「こっちには来てないぞ」


「あっちを探すぞ」


 

 

 2人してゴミ箱の蓋を少し開けて辺りを確認する。

 どうやら男たちはどこかへ行ってしまったみたいだ。

 この世界マジGJ(グッジョブ)


 というか、オレが進もうとしていた方から、男の仲間がもう1人来たみたいだった。

 あのまま進んでいたら、もっととんでもないことになっていたかもしれない。

 オレ、マジファインプレー。

 危機を乗り切ったという感動の余韻に浸っていると、横からトゲトゲしい声がかかる。


「おい人間、どういうつもりっすか?」


「ん? なにが?」


「レ......ウチは魔族っすよ」


「? みたいだね」


「......怖くないんっすか?」


「うーん、魔法を見たときはすげぇって思っただけで、怖くはないかな」


「変なヤツっすね」


「あはは......」


 助けた女の子から変なやつ扱いとは。

 幸いにもオレはフードがズレなかったのか、オレの右眼には気づかれなかったみたいでよかった。

 魔法を見たときや全力で魔法と男から逃げてたときなんて、両眼はぱっちりと開いていたからな。

 彼女の反応を見る限り、オレは魔族を助ける変な人間と思われているだろう。


 さて、これからどうするか。






最後まで読んでいただいてありがとうございます。


魔法って一度でいいから使ってみたいですよね?

自分の体から火とか雷とか出せたら、人生もっと楽しくなります。

この歳でまだ、かめはめ波が出せると信じている28歳です。


次話、ユウは明らかに厄介ごとに巻き込まれているかもしれない魔法少女を見捨てる......!?


次のページでお会いできることを祈りつつ......。

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