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オレは魔族でも魔王でもねぇ!  作者: 結城ゆき
1章 金黒眼の少年と魔法少女
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1話 ドルベルの街




 森を抜けて丘の上に出ると、街が見えてきた。


「おおー、スゲーな」


 遠目から見ても、かなり立派な街だった。

 中世ヨーローッパのような、赤いレンガの屋根が大小さまざまにたくさん並んでいる。

 いかにもファンタジー世界という感じの街並みだ。

 ただ、ひとつ違うことがあるとすれば、街の周りに巨大な柵みたいなものが並んでいるところだろうか。


「なぁ、あの柵って......」


「ほら、今は戦争中でしょ。敵の攻撃に備えて作ったものよ」


「あぁ、なるほどね」


 初めてのファンタジー世界の街並みに感動しているオレには、エリシアの表情が険しくなったことに気づかなかった。


 颯爽(さっそう)と街まで歩こうとして一歩踏み出したオレに、エリシアは待ったをかける。

 意外なところからの一声に振り返ると、エリシアは手荷物の中から一着のローブを取り出した。


「これを着て」


「はへ?」


「ほら、その服じゃ目立つでしょ」


「あぁ、異世界で服が目立つのって定番だったな。忘れてた。」


 そう言って、手を伸ばしローブを(つか)もうとしたが。


 スカッ。

 

「えっ!?」


 エリシアは真剣な顔で人さし指を口に当ててオレに忠告する。


「あと、『違う世界から来た』とか他の人には絶対言っちゃダメだからね」


「ああ。わかったよ」


 もう一度ローブを(つか)もうとするが。


 スカッ。


「なんだよ、まだなんかあんのか?」


「あるわ。これが1番大切なことよ。」


「......」


 ゴクリと息を呑んでエリシアのことを見る。


「街にいる間は右眼を(つむ)ってなさい」


「マジで?」


「マジよ。金眼は魔族の証なの。あんたが何を言ったところで誰も信じちゃくれないわ」


「でも、エリシアは信じてくれたじゃん」


「それは......魔力が一切感じられないんだもん」


「え? 何て言ったの?」


「と、とにかく眼を隠すこと。わかった!」


「わ、わかったよ」


 口調とかは厳しいがオレのことを思って言ってくれてるんだろう。

 やっぱり優しい子だなぁ。


 幸いローブにフードが付いているので深く被っていれば、よほどの事がない限り、この眼を見られることもないだろう。

 オレたちは準備を整えて街を目指した。




 街に近づいてくると、先程見た大きな柵がより巨大に見える。

 入り口は1つしかなく、その前には定番のように2人の門兵がいた。

 最初は、オレたちの接近に警戒していたようだが、何やら慌てて姿勢を正して敬礼しだした。

 おそらくエリシアの軍服姿を捉えたからだろう。


「聖十字騎士団ってすごいんだな」


「うっさいわね。ほら、黙って下を向く」


「わかったよ」


 茶化すように言ってみたが、怒られてしまった。

 エリシアの背後に隠れるようにして小さくなっていると、門兵が話かけてきた。


「こ、これは聖剣姫様! ようこそドルベルへ」


「ええ、ここ、通してもらえるかしら?」


「は、はい! こちらへはどのようなご要件で?」


「軍務よ」


「では、魔族軍がこの街へ近づいてるのですか?」


「......」


 エリシアはキィっと門兵を睨むと。

「出過ぎた真似を」と言って頭を下げた。


 エリシアたんマジかっけー。

 クール過ぎるだろ。


 そんなことを思っていると、もう一人の門兵がオレの方を見つめていた。

 視線を感じたオレは顔を見せないように下を向いたが、その行動が不自然だったのか門兵が尋ねる。


「そちらの方は?」


 まぁ、全身ローブでおまけにフードを被って顔を隠してりゃ怪しむよな。

 チラッとエリシアの方を見ると若干目が泳いでいたが、少し大きな声で答える。


「......私の、部下よ」


「そう、ですか」


 オレのことを本当に部下なのか? と言った目で見てくる門兵にエリシアは少し強い口調で言い放った。


「通してもらえるかしら?」


「あっ、はい。どうぞお通り下さい」


「ありがとう」


「「はっ! ようこそドルベルへ」」


 門兵達は声をそろえて敬礼し、オレたちを迎え入れてくれた。

 オレたちが門兵の横を通り過ぎる際、門兵の1人がオレのことをじぃと見つめていたが下を向いてやり過ごせた。


 仮設の門をくぐり抜け正門を抜けると、夢にまで見たファンタジー世界の街が広がっていた。

 14世紀前後のヨーロッパを連想させる外観に荷車や馬車などが行き交い、露店からは活気のいい声が聞こえてくる。


 エリシア以外に初めて見るファンタジー世界の人々。

 服装も期待を裏切らずRPGでよく見る簡易的なもので、髪の色も茶色や赤色といった具合。


 オレはここに来てようやくファンタジー世界に来たんだなぁと実感できた。


「何とかやり過ごせたな」


「ええ、一時はどうなるのかと思ったわ」


「『通してもらえるかしら?』......すげぇかっこよかったぜ」


 オレはエリシアのモノマネをしてサムズアップで答えると、エリシアは顔を赤くしてぷるぷる震えだした。

 やっぱりかわいいなぁなどと思っていると、赤い顔のままキィっとオレをにらみつけて。


「あなたは自分の立場をわかってないみたいですね♪」


 そう言いながら抜刀して剣先を突き出してきた。

 ヤバい、やり過ぎた。


「ちょ、まっ......」


「うふふふふ♪」


「うわあああ」


 ものすごい笑顔で剣を振り回してくるエリシアから猛ダッシュで逃走した。






最後まで読んでいただいてありがとうございます。


ファンタジー世界といえば中世ヨーロッパをイメージするのではないでしょうか?

実際にヨーロッパに行ったことはないですが、というか、日本を出たことすらないですが(汗)

死ぬまでに一度は海外へ行ってみたいものです(切実)


次話、新たな登場人物が!?


次のページでお会いできることを祈りつつ......。

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