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オレは魔族でも魔王でもねぇ!  作者: 結城ゆき
2章 次代の希望のために
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22話 早すぎた目覚め




「先生、どういうことなんだ?」


「そうだよ。どうしてこんなことを?」


「お姉ちゃん?」


 フィリアの必至な形相で、仕方なくエリシアたちを捕らえたロイとリューズがフィリアに詰め寄る。

 あまりにも目まぐるしい状況の変化に取り残されていたフィアナが、何とか声を絞り出す。

 他の子供たちも、何が起きたのかよくわからないといった状態だった。

 そこで、フィリアは一枚の羊皮紙を取り出す。


「昨日の夜、この手紙が届きました」


 言って、フィリアは手紙の内容と自身の考えを話す。

 この孤児院が国に乗っ取られるかもしれないということ。

 そして、その刺客として聖十字騎士団であるエリシアたちが派遣されて来たであろうということ。

 また、この国――淵土(テラブルーノ)王国――は、孤児院兼学校の希望の星に魔族がいることを認識しているということ。

 

 ここまで説明されて子供たちは、その表情を硬くする。

 当然だろう、一国が、たかが孤児院の子供たちを相手に『聖剣姫』という7ヵ国で切れる最高峰の(カード)を切って来たのだ。

 自分たちを油断させるために、魔族を引き連れて。


「もう私たちの居場所は、この国にはないッ!」


 フィリアの目には涙が浮かんでいて、その手は爪が食い込むほど強く握りしめられていた。

 自分の至らなさ、無力さ、子供たちへの申し訳なさから、肩を震わせ子供たちに頭を下げた。


「ごめんなさいね。私の至らなさのせいで......」


「そんなことない」


 そんなフィリアに向かって、ロイは声を荒げて否定した。

 力強く握られた拳を震えさせて、首を横に振る。


「ロイの言う通りさ。先生は、魔族の僕にも分け隔てなく優しくしてくれるじゃないか」


「そうよ。そんなに自分を責めないで、お姉ちゃん」


 ロイに続き、リューズとフィアナがフィリアを労わる。

 そして、希望の星すべての子供たちがフィリアに駆け寄った。


「ありがとう。これからはもっと大変になるけど、先生頑張るから。だから、みんなも頑張ろうね」


「「「うん!!」」」


 孤児院の子供たちが意気統合したところで、フィリアは早速、皆に指揮を飛ばした。

 子供たちを守るために、孤児院を守るために、フィリアが、子供たちが動き出す。




 ズルズル、ズルズルズルズル――。

 

 誰かに引きずられる感覚に、オレの意識は覚醒を始めた。

 目を開けると子供たちがエリシアとレナ、ルミナを引きずってどこかに運んでいるようだ。

 さすがに10歳ほどの子供たちには重すぎるのか、一人を運ぶのに3人がかりで引きずっている。

 エリシアたちはぐるぐるとロープで縛られて、意識を完全に落としているみたいだ。


「ねぇ、本当にユウお兄ちゃんたちは、悪い人なの?」


「わかんないよ。でも、先生が言うんだから、そうなんじゃないの?」


 聞こえてきた話を聞く限り、今回の騒動は、フィリアさんが首謀しているのだろう。


(まぁ、意識を失う前に見たあの人の必至な表情(かお)を見れば、何となくわかるが)


 しかし、自分たちが悪い人たちという見解は、どういうことなのかと頭をひねる。

 オレもそうだが、エリシアたちも、彼らに何かした覚えはない。

 それに、オレだけ目を覚ましたということは、もしかしたらエリシアたちもすぐに目を覚ますかもしれない。


 オレは、もぞもぞと子供たちに気づかれないように、縛られたロープから抜け出そうとするが、解ける気配がない。

 対格差があるとはいえ、両手両足を縛られた状態では、子供たちに気付かれるわけにはいかない。

 大人しく寝たる振りをしていると、やがて一つの部屋に辿りついた。


(ここは......)


 ロイとリューズの部屋だった。

 いや、正確には、その手前の部屋。

 この孤児院で唯一の戦闘力を持つ2人に与えられた部屋は、木造建築の教会では異様な鉄製の扉を開けた先にある。

 何でも、聖法気使いの魔力探知能力は、障害物があればあるほど探知しずらくなるらしく、万が一のために作ったそうだ。

 子供たちは、その鉄扉の前にオレたちを寝かせた。


「じゃあ僕は、フィアナお姉ちゃんから薬もらってくるから」


「早くしてよ」


「起きちゃうか心配だよ」


 一人が部屋を出て行くと、子供たちは一か所に固まって、突然オレちが起きてこないかとそわそわしている。


「怖いよ」


「大丈夫だよ。ちゃんとロープで結んであるし」


 元の世界では高校生のオレたちは、7、8歳の子供たちからすれば大人とさして変わらないはずだ。

 その上、オレ以外は聖法気使いや魔族といった異能力者たち。

 怖いのは当然だろう。

 

 それにしても、エリシアたちは一向に起きる気配がない。

 規則正しいリズムで寝息を立てている。


(何でオレだけ?)


 薬の量を間違えたのだろうかと、疑問に思うも答える者はいない。

 これからオレはどうすべきかと考えるが、なかなかいい案が出てこない。

 そうこうしている内に、先ほど出て行った子供が帰ってきた。

 1人の少女を連れて。


(フィアナッ!)


「みんな、よく頑張ったわね。あとは私に任せてみんなは逃げる準備をして」


 フィアナの言葉で、オレたちを運んできた子供たちが部屋を後にする。

 そして、フィアナは真っすぐこちらに歩いてい来た。


「ユウお兄ちゃん、最初から全部ウソだったの。私を助けてくれたのも、みんなと遊んでくれたのも。全部、全部、私たちを捕らえるためだったの?」


 眠っているはずのオレに、フィアナは悲しげ声音で問いかける。

 返ってくるはずのない問い。

 ――のはずだった。


「捕らえるって何のことだよ」


 オレは、身に覚えのないことに思わず反応してしまった。


「ゥキャッ!?」


 覗き込むようにしていたフィアナは突然のことで、尻もちをついてその顔を恐怖に染める。


「なっ、どうして、何で起きてるのよ!」


 フィアナはそのままの体勢で後退りをする。

 だが、オレはそんなことは構わず続ける。

 こうなってしまっては、ここでフィアナを説得するしかない。

 

「オレはこんなことされるようなことしてない。フィアナ、何があったんだ?」


「うるさいうるさいうるさい。ユウお兄ちゃんのウソつき。私もお姉ちゃんもみんなも信じてたのに、信じてたのに......」


「お、落ち着けって。オレはウソなんて」


「お姉ちゃんが言ってたもん。この学校を乗っ取るために派遣された聖十字騎士団の人たちだって。私たちを油断させるために魔族や人間を連れて来たんだって」


「いや、たしかにエリシアは聖十字騎士団だけど、オレやレナ、ルミナは違うぞ。そもそも魔族と対立してる騎士団が魔族なんて仲間に入れるわけねぇだろ」


「でも、だってお姉ちゃんが......」


「そりゃ勘違いだろ。オレたちはたまたま、本当に偶然ここに来たんだぞ? それにエリシアも言ってたじゃないか。ここにリューズ、魔族がいるのは最初から知ってたって」


 エリシアがここに来てから発した言葉を思い出しながら、オレは説得を続ける。

 

「じゃあ、何ですぐにフィアナたちを捕まえなかったんだよ。同じ聖法気使いのロイにだって圧倒的な力の差があったじゃないか。別にフィアナたちを油断させる必要すらないだろ」


「......」


「それに、昨日の夜だってそうだ。他の聖法気使いが近くに来たって、警告して希望の星(ここ)を守ろうとしたじゃないか」


 リューズの寝ている場所がみんなと同じと思ったルミナは、2階の大広間に飛び込んで、寝ている皆を起こしてしまったのだ。

 それを思い出し、フィアナをたたみかける。


「いったい何があったんだよ。教えてくれなきゃわかんねぇよ。それにただ眠らせただけじゃ、こいつ等を取り押さえとくなんてできないぞ? 別に縄をほどかなくてもいいから、だから、フィアナたちにいったい何があったのか教えてほしい」


 (うつむ)くフィアナにオレは、誠心誠意頼み込む。

 こんなことをされる理由(わけ)が、全く持ってわからない。

 レナの時もそうだったが、この世界の人たちは早とちりが過ぎるのではないかと疑いたくなるほどだ。

 沈黙を続けるフィアナに、オレは自分の正直な気持ちを伝える。

 

「まだ出会ってそれほど経ってないけどさ、オレは希望の星(ここ)が好きだ。魔族だとか人間だとかそんなの関係なしにみんな笑っててさ。ほら、オレって金黒(こんな)眼してるからさ、ずっと独りだったんだよ。でも、ここのみんなはこんなオレのことを『お兄ちゃん、お兄ちゃん』って慕ってくれて、すっげぇ嬉しかったんだ。だから、何か困ってることがあるなら手伝いたい。フィアナたちの力になりたいんだよ」


「......わかった」


 フィアナの口から、フィリアさんが今日行ったこと、これからやろうとしていることを聞かされた。

 中でも気になるのが、フィリアさんの元に送られてきた手紙だ。


「フィアナ、話してくれてありがとう。オレ、気になったんだけど、この孤児院に送られてきた手紙ってのをエリシアに見せてみればいいんじゃないかな。あいつは、聖十字騎士団なんだし、何かわかるかもしれない」


「それは、そうかもしれないけど......」


 フィアナがためらうのも無理はないだろう。

 まだオレたちが、国から派遣された聖十字騎士団ではないという証明は出来ていないのだから。


「ところで、エリシアたちはいつまで寝てるんだよ」


「えっ、えっと、少なくとも昼過ぎまでは起きないと思うよ」


「はぁ!?」


 オレの独り言に律儀にフィアナが答えてくれたが、その内容は驚くべきものだった。


「だから、どうしてユウお兄ちゃんが目を覚ましてるのか、わかんないんだよねぇ」


 フィアナは首を傾げながら続ける。

 

「フィリアお姉ちゃんは先生(ティーチャー)だよ? 軍事戦略からおばあちゃんの知恵まで網羅するほど頭がいいんだよ? 眠り薬やしびれ薬なんて、そこらの薬師が調合するよりもずっと効果が高いんだよ? なのにどうしてユウお兄ちゃんには効かないの?」


「いやぁ、こればっかりは、わからん。フィリアさんが分量を間違えたとかじゃないのか?」


 フィアナは「そんなはずないんだけどなぁ」と続けて、世にも奇妙な光景にうんうん唸っている。

 それを見たオレは、なんだか悪い気がして苦笑いを浮かべることしかできなかった。


(さて、これからどうしようか......)


 オレはこれからどうすべきかと思考を巡らせる。






最後まで読んでいただいてありがとうございます。


あなたは思い込みによる勘違いをしたことがありますか?

少し汚い話になりますが、これ以降は自己責任でお願いします。


小学生の時に道にバナナが落ちてたんですよ。

バナナって時間が経つにつれて黒く変色するじゃないですか。

あれは実が熟している証拠なのですが、僕はあまり熟熟バナナは好きじゃないんです。

どちらかというと、黄色くてしっかりとした歯ごたえのあるバナナが好きです。

まぁ、僕の好みは置いといて、道に落ちてたバナナを何を思ったのか拾い上げたんです。

すると、ボテっと音を立てて崩れていくではありませんか。

どれだけ熟しているんだよ!と思いつつも次に感じたのは、明らかにバナナではない匂いでした。

ま、まま、まさか、これって......!

「うわあああああぁぁぁぁぁぁっ!!! くさいくさいくさいくさいくさいくさいくさいくさい」

と走り回った記憶が......


次話、フィリアが指定された場所へと向かう!


次のページでお会いできることを祈りつつ......。


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