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オレは魔族でも魔王でもねぇ!  作者: 結城ゆき
1章 金黒眼の少年と魔法少女
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0話 プロローグ ~奴隷少女~




 奴隷。

 人間でありながら、人としての権利、自由などを一切認められず、他人の所有物として扱われる者。


「はははっ、ほら、目を開けろよ! おら、おら」


 (むち)で叩かれようが、腹に蹴りを入れられようが、物と扱いが同じ奴隷には、一切の救済はない。

 人が持つ負の感情を一身にぶつけられ、腕にはめられた手錠の冷たさが、より一層の闇を感じさせる。

 目の前の男は愉悦に浸り、殴ることをやめない。

 

「――ッ!」


 声を出せば、「勝手にしゃべるな」と蹴られ、防御しようと腕を体に持ってくると、「抵抗するな」と殴られる。

 物は、声を発してはいけない。

 物は、動いてはいけない。

 物は、何も感じてはいけない。

 

 魔力(・・)を無効化する手錠のせいで、魔法も使えない。

 少女にあらがう術は、もうない。

 

「ローガさん、ガレイの旦那がお呼びです」


 楽しみを邪魔された褐色肌で筋骨隆々の男は、舌打ちをして少女への暴力を中断する。

 少女にとって、ようやく訪れた安息の時間。

 しかし、すぐに口元に笑みを浮かべて部屋を出ていく男を見た彼女は、まだこれで終わりではないことを悟る。

 自分は、食後のデザートといったところだろうか。

 男が帰ってくると、また先ほどの続きが再開されるだけだ。

 

 だが、そうはさせまいと、別の男が褐色の男へ要求する。


「な、なぁ、ローガさん、いいか?」


「......」


「どうせ売り物にならねぇんだ。俺たちが楽しんでも(・・・・・)いいか?」


 少女は、最初、彼らが何を言っているのかわからなかった。

 だが、欲望をむき出しにする彼らの顔で理解すると同時、猛烈な吐き気を催すほどの生理的嫌悪が腹の底からこみ上げてきた。


「......物好きだな」


 下卑(げび)た笑みを浮かべる男たちと、そして震える少女を瞥見(べっけん)した褐色肌の男は、嘲笑(ちょうしょう)(あご)をくいっと振る仕草を見せ、その場を後にした。


「へへへっ......」


 荒い呼吸に醜悪(しゅうあく)な笑み。

 肌を舐め回すかのようなねっとりとした視線が、すべてを物語っていた。

 少女性的嗜好(ロリコン)の男たちだ。

 性愛対象として、少女や幼女を求める性癖。

 

 彼らは汚すつもりだ。

 人権も自由も奪われた少女が次に奪われるのは、彼女の尊厳。

 

 嫌だ、それだけは、嫌だッ!

 

 明らかに興奮した男たちが近づいてくる。

 それまで必死に痛みに耐え、無言無抵抗を貫いてきた少女は、ブルブルと震えだし、初めて声を上げた。


「や、やめ――ッ」


 男たちは、その表情こそがご馳走(ちそう)だと言わんばかりに、口元を釣り上げる。

 少女は、手首の痛みなどお構いなしに、ガチャガチャと繋がれた手錠から抜け出そうと試みる。

 だが、頑丈な鉄の鎖は、無情にも彼女を放しはしない。

 目の前に迫る男の一人が、ゴクリと生つばを呑む。

 

「お、俺から頂くぜ......」


 少女はもうなりふり構わず、遮二無二暴れる。

 これまで、散々いたぶられてきた少女を吊るす縄の方が限界を迎えた。

 自由に動けるようになった少女は、迫り来る男に体当たりをお見舞いし、その部屋から逃走を図る。


「クソッ、逃がすなあっ!」


 狂気の顔で追ってくる男たちから、必死に逃げる少女は、恐怖を脱した安堵(あんど)と彼らに対する認識を新たにする。

 

 人間とは、これほど恐ろしい生き物なのか。

 人間とは、これほど卑劣な生き物なのか。

 人間とは、これほど汚い生き物なのか。

 

 これが――人間ッ!






最後まで読んでいただいてありがとうございます。


元々、1章だったものを0章と1章に分けたので、急遽追加しました。

これで、1章に入り込みやすくなったのではないでしょうか。

え?自己満足?

はははっ、そんなバカなッ!?


次話、ユウとエリシアの始まりの冒険が!


次のページでお会いできることを祈りつつ......。


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