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オレは魔族でも魔王でもねぇ!  作者: 結城ゆき
2章 次代の希望のために
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12話 リューズとの出会い




 フィリアさんとフィアナは、郊外の外れた村に住んでいたそうだ。

 戦争でフィアナが生まれてすぐ両親が亡くなり、姉妹で暮らしていたのだが、激化する戦争の影響で、村に戦争難民が訪れるようになってきた。

 人間を守るために戦ってくれている兵士の介抱は、8つある人間の国で定められた国民の義務なのだとか。

 村を訪れる負傷兵が日に日に増していき、人間サイドの敗色が濃厚になり始めていた。

 

 

 

 兵士という言葉に疑問を浮かべるオレにエリシアは、『権力者の私兵(ロイヤルソルジャー)』について教えてくれた。

 

 人間側の主戦力は聖十字騎士団。

 魔族側は魔族軍。

 しかし、必ずしも主戦力同士で戦うわけではないとのこと。

 魔族の強力な魔法に対抗するために、人間側は聖十字騎士団とは別に軍隊を持っているらしい。


権力者の私兵(ロイヤルソルジャー)


 8人の権力者(ロイヤルエイト)の過半数以上の決定がないと行動できない聖十字騎士団とは違い、8人全員が持つ個人の軍隊。

 その軍隊は様々な特徴があり、精鋭だけを集める王もいれば、とにかく人手を集めて訓練をさせ、物量にものを言わせる王もいるとか。

 ここ、ドルベルの街を含むレビジュ・ドルベル王の領土、淵土(テラブルーノ)王国は後者の男だろうと女だろうと、ある一定の年齢に達すると徴兵され、軍隊の訓練を施される。

 そこで使い物になれば、そのまま軍人となり、使い物にならなければ、落ちこぼれのレッテルを張られスラム街へ放り出されるのだとか。

 来年には、フィリアさんも徴兵されるそうだ。

 

 それを聞いたオレは、何ともやるせない表情(かお)をするが、フィリアさんは「気になさらないで下さい」と作ったような笑みを浮かべる。

 子供たちを残して、ここを離れるのが国の定めたこととはいえ、フィリアさんも納得できない部分もあるのだろう。

 気丈に振舞うフィリアさんは、リューズとの出会いの話の続きを話してくれた。

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 連日続く雨も、いよいよもって豪雨になり始めたある日。

 フィリアの村に雷が落ちた、いや、横向きに雷が走ったのだ。

 明らかに人為的な雷が村の人々を襲った。

 慌てて家を飛び出したフィリアとフィアナのマリアンナ姉妹は、村の入り口遠くに(たたず)む少年を見た。

 翡翠(ひすい)の髪が雨に濡れて顔に張り付き、止まない雨のせいで薄暗く見通しが悪いが、金色に怪しく光るその眼は虚ろに村を眺めている。

 見た感じ、フィアナと大して変わらない、まだ言葉を操り始めて少ししか経たない幼い子供だ。

 

(魔族? こんなに小さな子がどうして!?)

 

 フィリアの驚愕をよそに緩慢(かんまん)に手をかざす魔族の少年。

 バチバチその腕に稲妻を宿し振りかぶる。


「えっ!?」


 攻撃されると悟ったフィリアは、呆然とするフィアナを自身の身体で必死に抱き寄せた瞬間。

 雷がフィリアたちの横を通り抜けた。

 

「わああああああああああ」


「魔族だああああああああ」


「村を襲ってきたぞ! 逃げろおおおおおお」


 数軒の家屋を破壊した魔族を目の当たりにした村人たちは、それぞれに逃げ出した。

 ある者は愛するものを連れて。

 ある者は子供の手を引き連れて。

 ある者は我先にと。

 誰もマリアンナ姉妹を気にかける余裕などなかった。

 

 一歩、また一歩と近づいてくる魔族の少年に怯えるフィリアは、フィアナを抱きしめる力を強める。


「...げ......て...」


「えっ!?」


 自身に手をかざす少年の言葉に、フィリアは思わず振り向くと。

 そこには、涙を浮かべ、必死に何かと戦っている少年がいた。


「いたぞ!」


「まだ子供か、それなら今の俺たちでも」


「おい、村人が襲われているぞ」


 そこへ、負傷して休養していた兵士たちがやってきた。

 誰もが聖法気の使い手ではなかったが、軍の訓練を受けた兵士たちは、各々武器を手に魔族の少年へと駆け出した。

 6人いた兵士のうち2人は、真っ直ぐフィリアたちの元へ、残りの兵士たちは左右に展開する。

 

 魔族の少年は視線をフィリアたちから離し、自身を取り囲む兵士たちに向ける。


「ぐっ...があぁ......」


 苦悶の表情を浮かべる少年は、両手を広げ雷を放つ。

 左右に展開した兵士たちに雷が届こうという時。

  

「はっ」


 兵士たちは、大きくサイドステップをしてその雷を躱す。

 だが――。


「ぐおおおおっ」


「がああああっ」


 地を這っていた雷が兵士たちを捉える。

 直進する2人の兵士は、たった一撃で4人の仲間を撃退した魔族の少年に戦慄した。


「くそっ、放った雷は(フェイク)で、本命は地面を()わせていたのか」


「ガキのくせに、味な真似をしてくれる」


 しかし、4人がやられている間に2人の兵士は、フィリアたちの元へたどり着く。

 

「君たち、ここは危ない。早く逃げるんだ」

 

「ぐあああっ」


 1人で果敢に少年へと突っ込んだ兵士が、電気を帯びる両手に顔を鷲掴(わしづか)みされた。

 そのまま全身に電流を流し込まれた兵士は、悲鳴と共に痙攣(けいれん)を起こし動かなくなる。


「くそっ、バケモノめ」


 最後に残った兵士が悪態をつき、フィリアたちにかまう暇もなく雄たけびを上げながら剣を片手に突っ込む。


「うおおおおおおおおお」


「がっ、ああああああああっ」


 突如苦しみだした魔族の少年は、自身を(まと)う雷をさらに大きくさせる。


(苦しんでるの......?)


「お姉ちゃん、あの子苦しんでるよ?」

 

 フィリアに抱き寄せられる中、フィアナは魔族の少年を心配していた。

 こくりと頷くフィリアも何故か人間である兵士よりも、魔族少年の方が気になっていた。


「がああああああああああ」


 聖法気を持たない兵士になす術はなく、少年の放った雷に全身を焼かれていた。


「うっ、うわあああああああああああっ!」


 敵を倒したというのに、少年は叫び続ける。

 フィリアにはその叫びが悲鳴のようにも聞こえた。

 

 そして、辺りを見回すと、ものの数秒で倒された兵士たちが転がっていた。

 だが、皆辛うじて息をしており、死んではいない。

 少年は先ほどからしきりに、何かを訴えてきている。

 殺そうと思えば簡単なのに、少年はそうはしなかった。

 

 頭を抱えながらフィリアたちの前に立つ魔族の少年は、全身に(まと)う雷を発光させる。

 その電光が掲げる片腕に集約していき、やがて、片手に収まるほどの丸い球状に変形する。


「...げて......」


(またその言葉?)


 微かに聞き取った2度目の言葉にフィリアは疑問を浮かべる。

 どうして魔族が人間にその言葉を使うのか?

 

「逃げてえええええええええええええっ!」


 先ほどは恐怖でフィアナを(かば)うことに精一杯だったが、フィリアはそっと魔族の少年を抱きしめた。

 少年を(まと)う電流がフィリアにも伝わり、激痛が走る。

 しかし、それに構わず少年を強く抱きしめる。


「大丈夫よ。うっ、痛っ、だ、大丈夫だから」


「ああああああああああああああああああああっ」


 すぅっとフィリアの身体から放電による痛みが引く。

 それと同時に、後方ですさまじい轟音が(とどろ)いた。

 抱きしめていた少年から身を放すと、彼はフィリアたちに放つはずだった雷撃を村の方へと放った格好のまま固まっていた。

 その黄金に輝く眼からは、大量の涙を流した後があった。

 

 

 

 村を破壊され、帰る場所がなくなった村人たちは、王都を目指して出発する。

 しかし、フィリアとフィアナの2人は、この中に混ざることはなかった。

 彼女たちが目指したのは、王都近くにある大森林。

 

 森に入り、少し開けた場所でフィリアとフィアナともう1人。

 フィリアたちの村を壊滅させたフィアナと大して変わらない幼い魔族の少年が、輪になって木陰に腰を下ろしていた。


「じゃあ、リューズ君は知らない間にここに来たの?」


「うん」


 話を聞く限り、魔族の少年、リューズ・マイアスは街で一人でいたところ、黒い服の魔族に「消えた両親の居場所を知ってる」と言われ付いていったところで記憶が途切れているみたいだ。

 おそらく、その黒い服の魔族に何かをされたのだろう。

 あの時のリューズの眼は焦点が合っていなかった。

 そこまで魔法についてそこまで詳しくはないが、フィリアは先生(ティーチャー)として勉強していたので、精神操作系の魔法だろうと当たりをつける。


 聞けば、リューズの父親は彼が生まれてすぐに魔族軍に入隊したそうだ。

 父の仕送りで母と2人で(つつ)ましく暮らしていたが、ある日を境に母が働き始めたそうだ。

 そして、そんなある日、リューズの暮らす街の近くにある平原で魔族軍と聖十字騎士団との大規模な戦闘が行われた。

 戦火は街にも及び、母親は街に降ってきた砲弾に当たり亡くなったそうだ。

 

 母親は亡くなり、軍にいるという父は一向に連絡がなく、家にあった食べ物もいよいよ底が尽き、食べ物を求めてふらふらと街を歩いていたところ、例の黒い服の魔族に出会ったそうだ。

 それからは、あふれ出る力を解き放ちたいという欲望に()まれていったという。

 必死に抗おうとするが、抵抗空しく所かまわず魔法を撃ちまくったらしい。

 特に、自分に襲い掛かってくる相手には躊躇(ちゅうちょ)なく、全力で魔法を放った。

 そして、理性を取り戻すと自分のしたことに対する罪の意識に苛まれて涙を流す。

 そんな日々を送り続け、気づけば、フィリアたちを襲っていたのだとか。


 歳もフィアナと同じで6歳になったばかりだったので、聞きだすのに苦労したが、リューズは心優しい男の子だった。

 今まで魔族は怖いというイメージしかなかったフィリアにとっては、軽い衝撃だったが、優しい魔族もいるのだと、この日初めて知った。

 また、力を使い果たした為か、もうあふれ出る力を解き放ちたいという欲望はなくなったのだとか。

 同じ年ということで、フィアナはリューズにあれこれと質問したりお話したりしている。

 時折リューズの頬が赤くなる場面もあるが、こうして見ると魔族も人間も大して変わらないものだと、フィリアは2人の楽しく話す様子を見て思う。

 

「お前ら何者(なにもん)だ!」


 突如上空から幼い子供の声が、フィリアたちに降り注いだ。

 声のする方を見ると、大きな木の上にしゃがみ、こちらを(いぶか)しく見つめている幼い男の子がいた。






最後まで読んでいただいてありがとうございます。


1話にまとめるつもりが、2話構成になってしまいました(汗

間延びしてる感は否めませんが、この章の主役たちなのでどうかお許しを<(_ _)>

個人的にロイ少年が好きですw


次話、幼き日の彼が登場する!?


次のページでお会いできることを祈りつつ......。


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