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オレは魔族でも魔王でもねぇ!  作者: 結城ゆき
2章 次代の希望のために
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11話 戦争がもたらすもの




 この世界に来てここまで群がれるのは、これで2度目だ。

 1度目は、ルミナを助ける際に奴隷として幽閉されていたサイモンさんたち(全裸)。

 あれは、記憶から消してしまいたいほどの衝撃だった。

 そして、今回は――。


「ねぇねぇ、ホントに人間なの?」


「魔法は? リューズみたいに魔法は使えないの?」


「黒い眼って初めて見たー」


前髪(ここ)だけ白くなってるのなんで?」


 たくさんの小さい子供たちの波に呑まれる。

 魔族でもなく人間とも言い難いオレに、ロイと呼ばれた勝気な男の子を筆頭に形成される好奇心の包囲網。

 フィアナが必死に止めに入っているが、黒い髪や黒い眼が珍しいらしく小学生にも満たない子供たちの手が次々とオレに伸びてくる。

 小さな子相手に本気で振り払うわけにもいかず、オレはされるがままに腕や足、髪の毛などを引っ張り回された。


「痛っ、痛たたたたたたああああああああああああああああぁ」


 背中から豪快に倒れこむオレに、フィアナが「ユウお兄ちゃあああああああん」という悲鳴を上げていた。


「ユウは人気者ね」


「人間はレナたちが怖いものだと思ってたっすけど」


「ふふふっ、こんな光景を見れるなんて思わなかったですわ」


 エリシア、レナ、ルミナが遠目で微笑んでいる。


(笑ってないで、助けてくれよ~~~~)


 髪やら何やら引っ張られる情けないオレは、苦笑いを浮かべるしかなかった。




「まったく、ロイまで一緒になってはしゃぐなんて。ロイは年長組なんだから、みんなを止めないとダメでしょッ!」


「だって、こんな面白い奴は初めてだったんだぜ」


「だってじゃない。お姉ちゃんに言うよ?」


「うっ......わ、わかったよ。ユウ、悪かったな」


 ばしんっとロイの頭を叩くフィアナは「ユウじゃなくて、ユウお兄ちゃんでしょ」と怒っていた。

 ロイは叩かれた頭をさすりながら、ぶつぶつとフィアナに文句を言っているが、しぶしぶオレに謝罪をする。

 

「ごめんなさい、ユウお兄ちゃん」


 出会った頃は大人しそうな性格だと思っていたフィアナは、意外としっかり者のお姉ちゃんをやっているようだ。

 そんなフィアナにやり込められたロイに苦笑しつつも、彼らと楽しい時間を過ごした。

 かくれんぼや追いかけっこ、昔よくやっていた遊びをこの歳になってやるとは思わなかったが、久しぶりに遊びに夢中になった。

 

 

 

 フィリアさんの「ご飯ができましたよ」という声で、オレたちは今、食堂でおむすびに舌鼓を打っていた。


「んめぇええええええええ!」


 ロイがおむすびを片手にはしゃいでいる。

 色鮮やかな爆弾(おむすび)をフィリアさんは、見事に頬っぺたも落ちる程の美味しいおむすびに昇華させたみたいだ。

 リンとの一件でおむすびに軽いトラウマを覚えていたが、勇気を振り絞って一口食べると。


「うっ、うまい。めちゃくちゃうまい」


「ホント、こんなにもおいしいなんて思わなかったわ」


「ご飯は久しぶりに食べましたけど、ここまでおいしいのは初めてですわ」


「な、何なんっすか、この味は......頬っぺたが落ちそうっす」


 オレに続きエリシア、ルミナ、レナがおむすびの美味しさに感嘆する。

 リンからもらった大量のおむすびが、その美味しさも相まってものの数分で完売した。

 フィアナさんにどうやったのか聞いたところ、「内緒です♡」と微笑んでいた。

 

「あー、今度はお姉ちゃんに見とれてる」


「は、はぁ? み、見とれてなんかないし。さっきからフィアナは何を言ってるんだか......」


 目ざといフィアナの口撃で体の温度がぐんと熱くなったオレは、複数の冷たい視線を感じた。

 キョロキョロするオレは、右斜め前に座るレナと目が合った。

 そう思った矢先、レナはプイっとそっぽを向いてしまう。

 何か気に障ることでもしたのかと考えるも、思い当たる節はなく首をかしげる。

 そして、もう一方から感じた視線に目をやると、勝気な紅榴石(ガーネット)の瞳を持ち、灰色の短髪をした少年、ロイがじぃっとオレを見ていた。

 彼もレナと同じくオレから目を逸らす。


(オレ、何かしたっけ?)


 それから、オレたちはフィアナさんにこの孤児院についての話を聞いた。

 捨てられて空き家となっていたこの教会を利用し、フィアナさんと今食堂にいるすべての子供たちはもう長い間住み着いているらしい。

 経営などはしておらず、畑で採れた野菜や果物を市場や店に持って行き収入を得ているのだとか。

 ただ毎日子供たちと賑やかに、慎ましく暮らしているという。


「孤児院か......」


「ユウさん、この世界では、こういった場所が少なからず存在しますわ」


 あまりなじみのない言葉に空気を重くするオレに、レナの隣に座るルミナが説明してくれた。

 人間と魔族の戦争で、数多くの人が魔族が帰らぬ人となる。

 戦争が激化するにつれて、徴兵される年齢は下がり、これまでは男だけだった兵士は、女性の姿も多数見られるようになってきたそうだ。

 始めは父親が、次に母親が軍に徴兵される。

 そして、両親が戦争で亡くなり、子供だけが取り残される。

 

 また、戦場となるのは必ずしも平野や荒野というわけではなく、郊外の村や集落の付近になることもあり、そこに居合わせた村人は少なくない被害を(こうむ)る。

 両親が流れ弾から子供を(かば)い、そのまま帰らぬ人となる。

 あるいは、自分たちの村を守るために敵陣へと特攻し、家族を残して先に()く者。

 とにかく、戦争が激化するこの時代、ありとあらゆる方法で戦争孤児が作り出される。

 これが今、この世界で起きている現状なのだとか。

 

「そうか......」


「俺たちは先生やみんなといて幸せなんだぞ。だからそんな目で見るなよっ」


 オレの知らなかったこの世界の一端を目の当たりにしたオレは、この食堂に集まる子供たちを見回した。

 同情、いや違う。

 言葉では言い表せない思いを抱いていると、ロイが口を尖らせた。

 フィリアさんに「こらっ」と怒られているが、彼はむすっとしている。

 

「ご、ごめん」

 

 慌てて謝るオレは思い直す。

 ロイの言う通り、そういった目で見るのはやめよう。

 フィリアさんを先生と慕っている彼らは、自分たちのことを不幸だなんて思っていないのだから。


「ふぁああ~」


 隣から気の抜けるような声が聞こえてきた。

 見ると、リューズが目をこすりながらあくびをしている。

 お腹いっぱいになって眠たくなったのだろう。

 リューズを皮切りに、他の子供たちも目をこすり眠たそうにし始める。

 それから、子供たちは2階の一室でお昼寝をすることになった。

 

「寝ちゃった、っすね」


「そうだな」


 いつもはフィリアさん一人で寝かしつけているらしいが、今日はオレやエリシア、レナとルミナが順番に寝かしつけていた。

 と言っても、子供たちは相当眠たかったのか、ものの数秒で寝てしまったが。

 

「リューズ君とはどこで知り合ったんですか?」


 オレたちは今、食堂に集まっていた。

 子供たちを寝かせてから、お茶を飲むがてら、人間領には本来いないはずの魔族であるリューズ君についてエリシアが(たず)ねていた。

 

「そうですね、もう5年くらい前かしら」






最後まで読んでいただいてありがとうございます。


少しリアルがバタバタしていて更新が遅れました。

申し訳ありませんです<(_ _)>


今回のロイやユウの言う通り、傍から見れば不幸と感じる事でも、自分たちが不幸と感じていなければ、それはそれでいいのだと思います。

他人の目なんか気にしてたら、何にもできないですからね♪

刀剣〇舞の柄が思いっきり入ったちゃんちゃんこを着て、コンビニへ平気な顔して買い物に行ったりね(最近寒くなったので常時着用中)


次話、孤児院の子供たちの過去が明らかに!?


次のページでお会いできることを祈りつつ......。


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