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オレは魔族でも魔王でもねぇ!  作者: 結城ゆき
2章 次代の希望のために
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10話 郊外の孤児院にて




 オレもフィアナの視線を辿(たど)ってエリシアを見る。

 レナやルミナと楽しそうに話しているが、別段変わった様子はない。

 それに、フィリアさんたちがエリシアに会うのは、今日が初めてのはずだ。

 この短時間でエリシアと交わしたやり取りの中で、フィリアさんたちが不快になることでもあったのか?

 そう思うも、軽く自己紹介をしただけだ。

 それで、気分を悪くしたということはないだろう。


「エリシアが何か気に障ることでもしたのか?」


 思い当たる節はないが、一応訊ねてみる。

 

「そんなことはないんだよ。ただね......」


 フィアナから、それ以降の言葉を聞くことはなかった。

 どういうことのなのかと、フィリアさんを見るが、彼女もまた暗い顔で(うつむ)くだけだった。

 そんなオレたちの様子に気付いた当の本人が近づいてくる。


「ねぇ、どうしたのよ?」


「あっ、いや~」


 曖昧な返事しか返せないでいた。

 本人に直接「エリシアが付いて来るのは困る」なんて言えるわけがない。

 何て応えようか迷っていると、エリシアが口を開く。


「もしかして今から行く孤児院って、街外れにある教会の?」


「えっ!? ええ、そうです。どうしてそれを?」


「それで様子がおかしかったのね。フィリアさん、フィアナちゃん、大丈夫よ」


 エリシアは一人納得したように微笑(ほほえ)み、手を口に持っていき2人にひそひそと何かを(ささや)く。

 すると、2人の顔が驚愕に染められた。


「聖剣姫のお姉ちゃん、本当に本当?」


「うん。大丈夫よ、連れて行ったりしないわ」


「ありがとう」


「ありがとうございます」


 先ほどとは打って変わって、フィリアさんとフィアナは(まぶ)しい笑顔でエリシアに頭を下げていた。

 足取りも軽やかで、フィアナに至ってはオレの腕を引っ張る始末。

 エリシアはいったい何を言ったんだか。

 聞いても「着いてからのお楽しみよ」の一点張りで、教えてくれないし。

 

 

 

 長い大通り(メインストリート)が続く先、街の外れ、まばらに建物が点在しているその中の一つに、元の世界で見たことのある形をした建物が目に入った。

 外壁は白を基調としていて、屋根は(すい)状になっている。

 屋根の天辺には十字を(かたど)った彫刻が装飾されていた。


(こっちの教会も同じような形をしてるんだなぁ)


 オレの身長よりも少し高い塀が、教会を囲むように建てられている。

 元の世界のようにアーチ状になった入り口ではなく、塀と塀の間に空間があるだけの簡易的なものだった。

 敷地内に足を踏み入れたオレたちの目に飛び込んできたのは、建物の本館まで続く大きな畑に咲いたキュウリやナスといった野菜の数々。

 また、余った敷地に作られた、木製のブランコやアスレチックスで遊ぶたくさんの子供たち。


「あっ、先生だ」


「「「おかえりなさい、先生ー!」」


「ただいま、みんないい子にしてましたか?」


 フィリアさんが穏やかな笑みで子供たちの元へ行くと、遊んでいた子供たちがわらわらとフィリアさんの周りに集まってくる。

 みんな顔や服に泥をつけて、元気に遊んでいたことがわかる。

 そして、みんなフィリアさんの後ろに隠れて、オレたちのことをじぃと見ていた。


「先生、あのお姉ちゃんたちは誰?」


「紹介するわね。この方たちは......」


「帰れッ!」


 突然投げかけられた怒りの声。

 声のした方を見ると、木製のジャングルジムの一番上に腕を組んで(たたず)む少年がいた。

 灰色の短髪に勝気な紅榴石(ガーネット)の眼、頬にはやんちゃな証ともいえる無数の擦り傷が刻まれている。

 年の頃は、フィアナと大して変わらず、子供たちの中では一番年上だろう。


「知ってるぞ、その女は聖剣姫だろ。こんなところに何しに来たッ!」


「ロイ、違うのよ」


「何が違うんだよ。先生もどうしてこんなヤツらを連れてきたんだよ」


 ロイと呼ばれた少年は、必死の形相でオレたちのことを拒んでいる。

 先ほどフィリアさんたちが、エリシアのことを拒んでいたことと何か関係がありそうだ。

 そこへ、フィアナがロイへ向かって叫ぶ。


「聖剣姫のお姉ちゃんは、リューズのこと知ってるんだよ」


「なっ!?」


(リューズ?)


 オレの知らない名前に首をかしげていると、ロイはジャングルジムから飛び降りてフィアナの胸ぐらをつかむ。

 

「なら、どうして連れてきたんだ。どうにかしてでも止めるべきだっただろ」


 ロイは今にもフィアナを殴りそうな勢いで吠えている。

 いつフィアナに近づいたのか全く見えなかったが、これは止めないとダメだとオレが動こうとすると。

 

 ――金色(こんじき)の風が吹き抜けた。


「女の子に手をあげるなんて、カッコ悪いわよ」


「いっ、痛てぇぇぇぇぇ」


 見ると、エリシアがロイの腕をつかんで、関節技を決めていて、ロイは目に涙を浮かべて「ギブギブ」叫んでいる。

 子供相手にやり過ぎじゃないのか、と思っていると。

 そこはわかっているのか、エリシアもロイが反省したと見るやすぐに手を放していた。


「キミねぇ、分からなくはないけど、女の子相手に()を使うなんてダメでしょ?」


「うっ!」


「それに、話は最後までちゃんと聞きなさい」


 大人しくなったロイにフィアナが事情を説明する。

 リンゴ(ポム)をダメにしてしまったこと。

 代わりにおむすびを持ってきたこと。

 オレたちとの関係などなど。

 そして、オレがエリシアに「お楽しみ」と言われていたことを語り始める。


「聖剣姫のお姉ちゃんはね、お仕事で前にここに来たことがあるんだって」


「なっ!?」


「でも、リューズはお姉ちゃんのお仕事とは関係なくて、子供だったから見逃してくれたんだよ。それに、お姉ちゃん言ってくれたんだ。リューズのことは黙っててくれるって」


 フィアナはエリシアに向き直り「そうだよね?」と目配せし、それを受けたエリシアもこくりと笑顔で頷く。

 それを見たロイは、「本当か? 本当に本当か?」と何度も確認している。

 話が全く見えないオレは、事情を知ってそうなレナたちにどういうことか聞いてみるも、レナもルミナも首を横に振るだけだった。

 

「なあエリシア、どういうことなんだ? まったく話に付いて行けてねぇんだが」


 コクコクとオレの隣で首を振るレナたちも説明を求めているようだ。

 そこで、エリシアは、オレたちにわかりやすく話してくれた。


「じゃあ、ここに魔族の子供がいるって言うのか?」


「そうよ」


「エリシアってこの街は始めて来るんっすよね? いつこの場所のことを知ったんっすか?」


 オレの確認にエリシアが頷き、レナが首をかしげている。

 レナの疑問にオレも同意する。

 ルミナも同感らしく、エリシアの答えを待っているようだ。


「レナちゃんと出会った次の日よ」


「その日はずっと家にいたよな?」


「そうっすね......あっ!」


「ふふっ、レナちゃんは気づいたみたいね。あの日私は買い出しに出かけだでしょ? 事前にレナちゃんから敵アジトの居場所を聞いてたけど、買い出しの時にこの近くを通ってね。聞いていた場所と違うところから魔力反応があったから、確認しにここに来たのよ」


 その時は遠目からだったけどね、と付け加えるエリシアは、魔王(リベラル)のアジトとは方向と距離が遠すぎたのと孤児院の様子からルミナの事件とは関係ないと結論付けたのだと。


「直接見たわけじゃないけど、魔力量からそこまで脅威ってわけじゃなかったしね」


 そして、エリシアはレナとルミナに耳打ちをする。

 2人は一瞬驚くも、すぐに笑って快諾する。

 いったい何を話しているのだろうか。

 

「フィリアさん、話からするとその魔族は孤児院の子どもでしょ?」


「ええ、そうです」


「私たちに紹介してもらえないかしら? こっちも紹介したい人たち(・・)がいるので」


 フィリアさんは、わかりましたと一礼をして施設の中へと入って数分後。

 1人の少女......少年(?)を連れて戻ってきた。

 

「大丈夫よ、ほら、皆さんに挨拶して」


 フィリアさんが優しく促すと、少女と少年のどちらとも言えない中世的な子は、何度かためらった後ぺこりと頭を下げて自己紹介を始めた。


「は、初めまして、リューズ・マイアスです。この度は、僕のことを見逃してくれて本当にありがとうございます」


 翡翠(ひすい)の髪を肩辺りまで伸ばし、瞳を隠しているのか長く垂れ下がった前髪。

 そこから見える瞳は、レナやルミナと同じ金色。

 きめ細かく白い肌と顔つきは、女の子と間違えそうなほどキレイで、将来は美少年になること間違いないだろう。

 声も中性的で、「僕」という自己紹介がなければ、男の子とわからないほどだ。

 

「いいのよ。それに私も君たちにに紹介人たちがいるから」


 エリシアはそう言って、レナとルミナに目配せをする。

 すると、レナとルミナの瞳の色が金色に戻った。

 孤児院にざわめきが起こる。


(わたくし)はルミナ・イリス。見ての通り魔族ですわ」


「レナっす。レナも魔族っす。こう見えてレナは君たちよりもお姉ちゃんっすよ」


 孤児院の子供たちとフィリアさんの驚く顔を見たエリシアは、いたずらが成功したように白い歯を見せてきた。

 そして、エリシアはオレに目配せをする。

 何の打ち合わせもしていないが、なんとなく察する。


「オレは三舌悠(みしたゆう)、ユウって呼んでくれ」


 両目を開けて子供たちの前に金黒眼を見せたオレに、今日一番のどよめきが走った。

 苦笑いを浮かべながら自己紹介を続ける。


「一応人間ってことにしておいてくれ」


 みんなにお土産があると言って、背負っていた風呂敷を見せる。

 戸惑いながらもオレに近づいてくる子供たちに、いい笑みを向けて紹介した。


「おむすびだッ!」


 みな一様に首をかしげている。

 

(あ、あれ? フィアナの話を聞く限り、超高級食材のはずだが......)


 あまりにも薄い反応に戸惑うオレに、フィアナがクスクスと笑っている。

 聞くと、あまりにも高級食材過ぎて馴染みがないのだとか。

 

 気を取り直して、フィリアさんにこの爆弾(おむすび)をみんなが食べれるように手を加えられないかと相談する。

 一口食べたフィリアさんは、顔を真っ青にしていたが「何とかやってみます」と1人施設の中へと入っていった。

 それからオレたちは、フィリアさんが爆弾(おむすび)を食べられるものに昇華するまでみんなで遊んだ。






最後まで読んでくれてありがとうございます。


2章に入り、登場人物がわらわらと増えてきましたが、どうでしょう?

名前と特徴、一致してま......せんよね~ww

出来るだけ特徴を含めて書くようにはしてるんですが、中々定着しませんよね?

絵とかあればいいんですが、自分のイメージと自分で描く絵がかけ離れすぎていて......草生える。


次話、リンお手製の爆弾、もとい、おむすびがフィリアの手によって......どうなる!?


次のページでお会いできることを祈りつつ......。


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