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オレは魔族でも魔王でもねぇ!  作者: 結城ゆき
2章 次代の希望のために
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9話 再会と握手




 オレたちの間に割って入った声の主は、どんな黄金財宝も見劣りする金の長髪に、透き通った白い柔肌。

 騎士団の衣装(バトルクロス)に身を包む彼女の瞳は、燃え盛る炎のように煌々と輝く深紅色(ルビライト)

 凛とした(たたず)まいの彼女には、腰に挿した長剣(バスタードソード)がよく映える。


「エリシア......?」


「せ、聖剣姫様だッ!?」


 大通り(メインストリート)でのオレたちのやり取りは、人を集めていたのか結構な騒ぎになっていたようだ。

 群衆が集まる中で、1人の市民がオレの声をかき消す勢いで声を上げる。

 その声と、発した言葉に群がっていたすべての人が、1人の少女へ視線を向ける。

 ミックたちも例にもれず、渦中の人物がいる方へと振り向いていた。

 そして、その横顔は、先ほどの恐ろしい形相から一転、引きつった笑みを浮かべていた。

 

「せ、聖剣姫だと!?」


「な、なぜこんなところに!?」


 ミックたちは、互いに顔を見合わせて、明らかに動揺している。

 ミックの先程まで放っていたどす黒いオーラは鳴りを潜め、いかつい顔をした褐色スキンヘッドに至っては、両手を口に持っていき乙女のように震えていた。

 見ていて気持ち悪い。

 ねずみ男風の双子は、弟の方が「兄者、兄者」と連呼しており、兄者の方はコクコクと頷くだけで開いた口が塞がっていない。


「あなた達、こんな人の行き交うところで聖法気を使うなんて何を考えているの?」


「い、いやぁ、これはこれは聖剣姫様。冗談ですよ冗談。コイツがあまりにもしつこいものですからね、ちょっと脅かしてやろうと思っただけですよ」


「はぁ? しつこいって、元々お前らが......」


 ()れのないことを言われて、反論しようとするも、ミックがオレの言葉にかぶせて続ける。

 その表情(かお)は、どこか余裕のない焦りすらうかがえるものだった。


「ですが、少し冗談が過ぎたようですね。君たち、行きますよ」


「「「は、はいっ!」」」


 ミックの号令に取り巻きたちも、そそくさとその場を後にした。

 まるで、見つかってはマズい者に見つかってしまったように。




「エ、エリシア......」


「もう、何やってるのよ。勝手に飛び出していったと思ったら、またトラブルに巻き込まれてるし。その顔だって......」


「うん、ごめん」


「うっ、ま、まぁいいわ」


 腕を組んでむすっとした顔のエリシアは、何やら慌ててそっぽを向いた。

 

(そう言えば、言い合いになって、というかオレの一方的な言いがかりでケンカしてたんだっけ)

 

 そんな彼女の後ろから2人のフーデッドローブに身を包んだ人物が現れる。

 そのうちの小柄な人物が、目の前に立ちオレを見上げてくる。

 太陽のように輝く金の瞳をした少女は、怒っていた。

 眉間にしわを寄せ、口をとがらせて、ずいぃとオレに顔に指を押し付けてくる。


「突然いなくなって、すっごく心配したんすよッ!」


「あ、ああ、悪い、レナ」


 だが、レナがそんな言葉で許してくれるわけもなく。

 どこか、そわそわしながら続ける。


「と、ところで、さっき言ってたことは、ど、どういうことっすか?」


「さっき?」


「オ、オレの女だとかなんとか......」


「ん? 何て?」


 ごにょごにょと口ごもるレナに聞き直すが、トマトのように真っ赤になってうつむいてしまった。


「あ、あのぉ......」


 聖剣姫に謎のフーデッドローブ2人、そして、なぜだが自分の妹と関わりのある見知らぬ男。

 フィリアさんもこの面子を前に声をかけるのは、相当勇気がいっただろう。

 ミックたちから無事に解放されたフィリアさに寄り添うようなフィアナと、手を繋ぎながら声をかける。


「あなた方はいったい......」


「えっと、どこから説明しようかな」


 オレにも状況がいまいちつかめていないが、おそらくオレを探しに来てくれたエリシアたちは、オレがトラブルに巻き込まれているのを見て、助けてくれたのだろう。

 すると、フィリアの隣から声が上がった。


「あのお兄ちゃんは、ユウお兄ちゃんだよ」


「ユウお兄ちゃん?」


 突然、フィアナに紹介されたオレは、フィアナと出会ってからの経緯と、たまたま見かけたフィリアさんを、ナンパ男たちから助けようとしたことを話した。

 話し終えると、レナの方から「あんな美人の女となんて、おかしいと思ったっす」などという失礼なつぶやきが聞こえてきたが、フィリアさんは、状況を理解してくれたみたいだ。


「ありがとうございました」


 フィリアさんは、オレに、そして、エリシアたちに頭を下げる。

 助けに入ったのに、結局エリシアに助けられたので、何とも格好の付かない感じになってしまったが。

 フィアナが「ユウお兄ちゃんと一緒にホームに帰っていいでしょ?」と言うことで、オレは予定通り孤児院『希望の星』へ行く旨をエリシアたちに伝える。

 すると、ルミナが手をあげて、自分たちも同行すると言ってきた。


「ほら、エリシアさん。ユウさんに謝るのではないんですの?」


「そ、そうなんだけど。心の準備というものが......」


「さっきの言葉はウソでしたの? 残念ですわ、エリシアさんがそんな御方だったなんて」


「あぁもう、わかったわよ。自分の言ったことくらい守るわよ」


 何やらエリシアとルミナがごにょごにょと言い合っていたと思えば、エリシアがキリッとオレの方へ向き直る。

 ずかずかと音を立ててオレに近づいてくる。


(な、何だ!?)


 オレの一方的な言いがかりで、勝手に隠れ家を飛び出したオレに腹を立ててるのだろうか。

 眉を吊り上げて、真一文字に結んだ口からもわかるように、お世辞にも機嫌がいいとは言えない。


「......ごめん」


「へ?」


「ユウの気持ちも考えずに、自分のことばっかりで。だから、その、嫌な気持ちにさせてごめんなさい」


「は? えっ、その、えっと」


 怒られるものだと思っていたのに、突然の謝罪にひどく狼狽(ろうばい)した。

 だが、すぐにオレも頭を下げる。


「いや、オレの方こそ悪かった。エリシアは何にも悪くないのに、自分の不甲斐なさに嫌気がさして、エリシアに当たって。本当にごめん」


 そう、悪いのはオレだ。

 それなのに、エリシアに罪悪感を覚えさせて、その上、相手から先に謝らせるなんて。


(ますますダメなヤツだな、オレは)


 下げた頭を上げられずにいると、不意にオレの手をつかまれる。

 見ると、フードを目深にかぶったルミナがエリシアの手を引き連れて目の前にいた。


「ほら、これで仲直りですの」


 そう言って、オレとエリシアに握手をさせた。

 握ってしまえば折れてしまいそうなほどにか細く、少し暖かな柔い感触に、オレは体が熱くなった。

 エリシアもそっぽをむいてはいるが、頬が赤らんでいる。


「せいやーッ!」


 唐突にオレたちの手に手刀を繰り出した小柄なフーデッドローブの少女、レナは張り付けたような笑顔でオレの手を握ってきた。


「レナは悲しいっす。女の子の手を握ってデレデレするように育てた覚えはないっすよ」


「はっ? はぁあ!? べ、別にデレデレなんてしてないし。それに、レナに育てられた覚えもねぇし」


「......心配、したんすよ?」


 お茶らけた感じから、急に真剣な眼差しを向けてくるレナ。

 本気でオレのことを心配してくれたのだろう、もう勝手にどこにもいかないでと訴えてくる眼と強く握られた手から、レナの気持ちを感じ取る。


「ごめん」


 オレが本気で反省してると分かったのか、レナは満開に咲く花のような笑顔で許してくれた。


「はいっす」




 オレたちのやり取りを優しく見守っていくれていたフィリアさんたちと軽く自己紹介を済ませ、皆で孤児院――希望の星――へ向かうことになったのだが。

 その際、レナとルミナが意気揚々と被っていたフードを脱ぎ、その素顔を見せた。

 魔族である2人は、ここ人間領では混乱の火種にしかならない。

 そんな彼女たちが軽率にも、人が大勢行き交う大通り(メインストリート)でだ。

 しかし、オレの驚きはそんなことにではなかった。

 レナとルミナの瞳の色が金色ではなかったのだ。

 

 2人とも自分の髪と色と同じで、レナは銀の瞳、ルミナは紫水晶(アメジスト)の瞳。

 宵闇に輝く月のような金の瞳は、神秘的でどこか魅了されるような感覚を覚えたが、これはこれで中々に魅力的だった。

 レナが見せる銀色に輝く瞳は、その幼い容姿とは真逆の大人びた印象を与え、ルミナの紫水晶(アメジスト)の瞳は、どこか子供っぽく、親しみやすさを感じた。

 

 何でもルミナの持つ魔法の一種で、ある程度魔力コントロールができる魔族なら誰でも使えるという、ご都合主義極まりないものだった。

 ルミナに「ユウさんも魔族ですわよね」と確信した口調で、魔法をかけてもらったが、どうやらオレには効かなかった。

 エリシアが「片眼を閉じてなさい」と目で訴えてくる。

 ルミナは、うんうんと(うな)っていたが、やはりオレは、エリシアやレナが言う通り人間なんだと思う。

 というか、そもそも魔力コントロールなんてどうやるかも知らねぇし。


 そんなことを思いっていると、ふとある事に気付く。

 フィアナとフィリアさんの表情が優れない。


「2人ともどうしたの? 何だか顔色悪いみたいだけど」


「あっ、いえ、大丈夫ですよ」


「そうそう、何でもないよー」


 フィリアさんもフィアナも笑顔で応えてくれるものの、その笑みは、どこか作り物めいている。

 オレは、あの笑顔に覚えがある。

 昔、(この)眼のせいで、いじめに()っていた時、当時、仲の良かったヤツの1人が見せたことのある笑みと一緒だった。

 オレが近づくと、本心では迷惑に思っているのに、無理して笑みを作っていた時のあの表情(えみ)


「どうするのよ、聖剣姫様まで付いて来たら、リューズが......」


「わかってるわ。でも、助けてもらっておいて何もしないっていうのは......」


「でもそれじゃあ、リューズが連れてかれちゃうよ」


「あのー、もしかして、オレたち行かない方がいいのかな?」


 何を言っているのかよく聞こえなかったが、オレたちが行くとマズいみたいだったので、フィリアさんたちのひそひそ話に割って入った。

 急に話に参入してきたオレに驚く2人は、困った笑みを浮かべる。


「ユウお兄ちゃんが嫌ってわけじゃないんだよ。ただね......」


 フィアナは、申し訳なさそうにエリシアを見つめる。

 オレは、まさかの人物に驚きを隠せない。


(どうして、エリシアが!?)






最後まで読んでくれてありがとうございます。


仲直りって簡単なように見えて意外と難しいんですよね。

素直になればいいだけなのに、中々それが難しかったり。

一番の方法は、相手に期待しないことですね。ケンカすらなくなりますぜ(身も蓋もねぇ)


次話、フィリアたちがエリシアを拒む理由とは、いったい!?


次のページでお会いできることを祈りつつ......。


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