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オレは魔族でも魔王でもねぇ!  作者: 結城ゆき
2章 次代の希望のために
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3話 巫女服ミニスカ少女




「もうよいではないか。(くつ)なぞ洗えばよいじゃろ、それまでは、ほれ、これを使うがよい」


 巫女服ミニスカ少女は、懐から取り出した(ハンカチ)を小太りの男に差し出す。

 護衛の男が間に割って入る間もなく、小太りの男の前に(たたず)む巫女服ミニスカ少女は、(ハンカチ)を小太りの男の頭に乗せて、泣き出しそうな少女へと歩み寄る。

 

 完全に出鼻を(くじ)かれたオレは、しばらく動けないでいたが、小太りの男が頭に乗せられた(ハンカチ)を勢いよく取り、プルプルと震え出し、握った(ハンカチ)ごと巫女服ミニスカ少女へ殴りかかろうとするのを見た。

 咄嗟(とっさ)に、間に入ったオレの頬に二方向(・・・)から強烈な衝撃が走った。


「ぶへぇっ」

 

 被っていたフードも脱げて、盛大にその場に倒れたオレの意識は、暗闇に落ちる寸前だった。

 辛うじて開く左眼を開けると、小太りの男の反撃を察知したのか、巫女服ミニスカ少女は、反転して腰に挿してあった刀を刃を抜かず、柄の部分で反撃していた。

 一方、小太りの男が反撃されることを察知したのか、護衛の大男が小太りの男の前に出て、巫女服ミニスカ少女の反撃に対抗すべく、甲冑に包まれた拳を突き出していた。

 まぁ、両者の攻撃は、オレにクリティカルヒットしたわけだが。

 

 突然のオレの介入に、両者とも目を丸くしている。

 それに、巫女服ミニスカ少女の後ろにいた女の子も、突然の出来事に涙の浮かんだ目を大きく開いていた。

 地面から見える周りの人たちの反応は、手を口に持っていき驚く市場のおばちゃん、樽を抱えたガタイのいいおじさんがパカンと口を開けて(ほう)けている。

 

 オレは、何とか持ちこたえて、よろよろと立ち上がる。

 口からは鉄の味がする。

 殴られた衝撃で、口を切ったのだろう。

 それに、鼻からもたらたらと血が垂れてきている。

 不幸中の幸いと言うべきか、()眼は完全に開かなくなっていた。


「な、なぁ、もういいだろ? こ、この子も......悪気があったわけじゃ、ないんだしさ」


 両頬がおかしなくらい腫れ上がり、鼻と口からは血を垂れ流し、満足に声も出せなくなったオレの顔を見た小太りの男は、「ひいっ」と悲鳴を上げた。

 それでも、オレはしゃがれ声になりながらも、めげずに小太りの男へと迫る。


「お兄さん、身分が高いんだろ? なら、器の大きいところを見せておこうぜ?」


 そう言って、オレは周りを見るように促す。

 迷惑そうな顔をする露店のおじさんなど、人々が小太りの男に向ける眼差しは、決していいものではない。


「わ、わかった、わかったから、その顔をこれ以上近づけるな」


 オレの顔があまりにも(みにく)かったのか、人々の白い視線に耐え切れなかったのか、小太りの男は「ふんっ」と鼻を鳴らして、その場を離れていった。

 

 何とか丸く収まってよかった。

 そう思い、肩の力を抜き、泣いていた女の子を心配して振り返ると。

 

「............ぷっ」


(あっ、そういえばオレの顔って、今、悲惨な状態だったな。気持ち悪がられたか?)


「ぷ?」


「ぷっははははははははははははははは」


 女の子に大笑いされた。


「す、すまぬ。くっ、くくくくっ」


 巫女服ミニスカ少女も必死に笑いをこらえているが、肩が小刻みに震えている。

 カッコよく助けることはできなかったが、とにかく、女の子が泣かずに済んでよかった。

 そう思い込むことで、この恥ずかしい状況を自分に納得させた。

 

 

 

「すまなかった。わざとではないのじゃ」


 騒動が収まり、市場も平常運転に戻りだしたころ。

 巫女服ミニスカ少女は、頭を下げて謝罪してきた。

 

ああ(はは)わかってるさ(わはっへふさ)気にしないでくれ(ひひしないれふえ)


 ダメだ。

 頬の腫れが酷くなってきて、まともに喋れない。

 すると、巫女服ミニスカ少女は、オレの後ろにある広場を指して、歩いていく。


「こっちじゃ」


 オレと女の子は、「何だろう?」と顔を見合わせて、巫女服ミニスカ少女の後を追った。

 その広場には大きな噴水があり、子供から大人までワイワイと喧騒を見せる憩いの場が広がっていた。

 巫女服ミニスカ少女は、噴水の元まで行くと、持っていた(ハンカチ)を濡らして、オレの右頬へと押し当てる。

 あまりにも自然な動きだったので、されるがままになっていたが、右頬から感じた冷たさで今の状況に驚く。

 

 目の前には、桜色に染めた長髪を揺らしながら、オレの頬を心配そうに撫でる美少女がいた。

 月下の夜を連想させる紫紺の双眸(そうぼう)は、どこまでも澄んでいて、髪の色より少し淡い唇が、今は少し尖っていて、いわゆるアヒル口になっている。

 自分のせいで怪我をさせてしまったオレのことを心配しているのがよくわかる。

 雪花石膏(アラバスター)の柔肌を包むのは、元の世界では巫女装束と呼ばれる衣装ではあるが、肩から二の腕部分は生地がなく、いわゆるノースリーブ型で着物の亜種といったところか。

 また、肘の少し上辺りから伸びる袖丈は長く、一目で上質とわかる生地が太もも辺りまである。

 

 そして、何より目を引くのが、和布の上半身に対して、ミニスカートという洋服を着ているところだ。

 色こそ、白と赤を基調とした巫女服に合わせているのか、赤地のチェック柄だが、どうにも違和感があるように思えるかもしれない。

 しかし、彼女が着ると全く違和感など感じさせないものがある。

 彼女だからこそ着こなせる次世代型の服装(ファッション)なのだろう。

 それに、太もも辺りまで覆う白のハイソックスが、ミニスカートと合わさって作り出される絶対領域は、眼福極まりない。

 

 和服を着ると、どんなに胸の大きな人でも慎ましやかになる胸部だが、彼女は例に反して、巫女服の上からでもわかるたわわに実った双丘が備わっている。

 思わず見とれそうになるが、腰に挿してある二本の刀――おそらく日本刀――がキラリと光るのを見て、下手なことはできないと悟る。

 

「あ、ありがとう。あとは自分でやるよ」


 無理やり作った笑顔で、巫女服ミニスカ少女から(ハンカチ)を受け取る。

 

「もしかして、お兄ちゃん、今、お姉ちゃんに見とれてた?」


「ふぁあっ!? そ、そそそ、そんなことないぞ。何言ってんの?」


 オレの後ろから、突然、突拍子もないこと――正確には図星だが――を言い出してきたのは、先程、身分の高い小太りの男に因縁をつけられて、目に涙を浮かべていた女の子だ。

 今では、すっかり涙も消えて「本当かなぁ」などと、オレに疑いの眼差しを向けている。

 

 レナと同じくらいの身長で、140センチほどだろうか。

 肩まで届かない栗色のボブカットに髪色と同じ栗色の瞳。

 少し垂れ気味の目は、ぱっちりと大きく、可愛らしい顔立ちをより引き立てている。

 

 しかし、彼女が着ている服は、お世辞にも良い物とは言えない。

 クリーム色をした袖の部分が破けていて、水色(アクアブルー)のフレアスカートの端々には、土がこびり付いている。

 それに、せっかくのかわいい顔も所々汚れている。

 どこか、貧民街の子供を連想させる。

 

 そんな女の子は、雰囲気を新たにぺこりとお辞儀をした。


「お兄ちゃん、お姉ちゃん、助けてくれてありがとう」


(わらわ)は、何もしておらぬゆえ、礼ならこの者に......」


 巫女服ミニスカ少女の言葉に、女の子は、明らかに悲しそうな顔をする。

 

「いや、ほら。最初に助けに入ったのはキミじゃないか」


「そうじゃが、実際にあの男を追い払ったのは、(なんじ)ではないか」


 すぐにフォローをするも、巫女服ミニスカ少女は、女の子の表情に気付いていないようだ。

 オレが必死に目で女の子の方を向くよう合図するが。


(なんじ)、何じゃっ!」


 全然気づいてくれない。

 それに、何か怒ってるし。

 それでも、必死に目で訴えていると、ようやく気付いてくれたみたいだ。


「......ああ、うん。そのぉ、あれじゃ。(なんじ)は大丈夫じゃったか?」


 女の子の悲しそうな表情を見た巫女服ミニスカ少女は、あたふたし始めて、女の子に歩み寄っていた。

 だが、女の子の方は、何かを思い出したように目に涙を浮かべ始める。


「何じゃ? どこかケガでもしたのか?」


「ポムが、ポムが......」

 

 ポム?

 どこかで聞いたような。

 

 オレが頭を悩ませていると、巫女服ミニスカ少女は、先ほどオレたちがいた場所を一瞥(いちべつ)する。

 オレも彼女の視線をたどると。


(あぁ、思い出した! リンゴのことだ)


 先ほどの騒動があった場所に、無数のリンゴが散らばっていた。

 行き交う人が多いため、一つまた一つと無事だったリンゴも踏みつぶされていく。

 しかし、誰一人として足を止めることはなかった。

 

(あの小太りの男は、あんなに騒いでいたのに......?)


 だが、オレの疑問は、すぐに氷解した。

 見れば、通りを行く人すべてが自分の品物を売るのに必死だった。

 また、客たちも彼らに捕まったら買わされると察しているのか、速足で通り過ぎる。

 足元のリンゴを気にする余裕などなさそうだった。

 

 女の子に視線を戻すと、我慢してもあふれ出る涙をゴシゴシと手で(ぬぐ)っていた。

 巫女服ミニスカ少女も、どうしたものかと苦い表情を浮かべている。

 

「あれは、うぅ、みんなの、みんなのごはんだったのに......私、私...うぅ......」


 女の子は貧民街の子供といった感じだし、なけなしのお金で買った大切なリンゴだったのだろう。

 お金があれば、買い直してあげることもできるのだが、生憎(あいにく)とオレは一文無し。


(なんじ)に良いものをやろう。だから、もう泣くのはよすのじゃ」


 オレがどうしたものかと頭を悩ませていると、巫女服ミニスカ少女は、微笑みながらポンポンと頭をなでて女の子を泣き止ませていた。


(良いもの......何だろう?)


 女の子も涙をぬぐい、コクっと頷いて巫女服ミニスカ少女をじっと見つめる。

 巫女服ミニスカ少女は、背負っていた大きな風呂敷を下ろし、その結び目をほどいた。


「こ、これは......」






最後まで読んでくれてありがとうございます。


今回は、人物説明でほぼすべて終わってしまいましたね(笑

実は、彼女――巫女服ミニスカ少女――は、前々から出したかったキャラの1人です。


次話、風呂敷から出てきた中身が明らかに!?


次のページでお会いできることを祈りつつ......。


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