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オレは魔族でも魔王でもねぇ!  作者: 結城ゆき
2章 次代の希望のために
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1話 喧嘩




 オレがレナの隠れ家へと運ばれて3日目の朝。


「もう寝れん」


 ルミナとのやり取りの後、オレは寝ようと試みたが、結局明け方まで寝付くことができなかった。

 気づけば、(つぶ)された内臓も全快している。

 ルミナが言ってた魔法の効果だろうか?

 そんな疑問を抱きながら、オレはベッドから起き上がり、全身に広がる痛み――久しぶりに動きまくったので筋肉痛――を堪え部屋を後にする。

 

 何か飲み物はないかと、台所(キッチン)にやってきたオレは、ドアが開けっぱなしになっている隣の部屋を覗いてみる。

 先ほどは、なぜだか怒っていたレナも規則正しいリズムですぅすぅと眠っていた。

 隣には、仲良さげにレナの手を繋いで寝息を立てているルミナの姿も見える。

 レナの安心しきった顔を見ると、自然と笑みが漏れ出た。

 

「ははっ、よかったな。」


 そして、さらに奥に目をやると、まだ日も昇らない早朝だというのに窓の外を眺める金の少女がいた。

 エリシアはオレの視線に気づき、台所(キッチン)へと足を運ぶ。


 レナが住み着く前は大家族が住んでいたのか、6人は座れるダイニングテーブルにエリシアと向かい合って座る。


「もう体は大丈夫なの?」


「ああ、全身は痛いけど、たぶん筋肉痛だと思うし」


 ならよかったわ、と笑みを浮かべるエリシアは、一拍おいて雰囲気を(まと)い直す。


「あんたは、何者なの?」


「......」


 エリシアの真剣な眼差しにたじろぐユウは、考え込むようにうつむく。

 オレ自身今回の騒動は、わからないことだらけなのだ。

 気づいたときには、致命傷を負わされてぶっ倒れているわ、かと思えば、ルミナは助け出されているわで、自分の知らないところで事件が勝手に解決していたというのが本音だ。

 エリシアたちが必死にルミナを助け出そうとしていた中、オレはというと、夢を見ていただけ。

 それも、かなり現実味のある夢とは思えない夢。

 そして、先ほどルミナに言われたことが脳裏をよぎる。

 

 ――魔法を使っている。

 

「オレは......人間、じゃないのか?」


「それは......」


 しばらく経ってオレは、エリシアの質問には答えず――答えられず――逆に問い返す。

 しかし、エリシアも返答に困っている。

 どう答えていいのかわからない、といった表情でうつむく。


 エリシアは言った、片方だけだが魔族と同じ瞳の色をしているけど、魔力を持っていない、だから人間だと。

 レナは言った、魔法が使えないなら魔族じゃないと。

 オレ自身、16年間自分は人間として生きてきた。

 しかし、ルミナだけは違った。

 彼女だけは、オレのことを人間じゃないと主張した。

 そして、夢に出てきたあの男(・・・)もオレの()を借りたと言っていた。

 

(オレは、何者なんだ?)


 エリシアの問いと同じことをもう一度自分に問いかける。

 それから2人は静寂の時を過ごした。

 

「ところでさ、オレが気を失ってた時に起きたことを教えてくれないか?」


 オレはしんみりした空気を吹き飛ばしたい一心で、気になっていたことを聞いてみた。

 だが、エリシアは今日一番の気まずい表情で黙り込む。

 

「えっと、エリシア?」


「ああ、うん。ごめん。ユウが気を失ってからのことだったよね」


 しかし、エリシアの言葉がこれ以上続かない。

 まるで話してもいいものなのかと迷っているようだ。

 オレが寝ている間に何かあったとは予想していたが、そんなに話しにくいことなのだろうか。

 そこで、オレに起きた不思議な体験を話すことにした。

 

「えーと、オレもさ変な夢を見て......」




「クロスですって!?」


 話の終盤に来てエリシアは、椅子(イス)を蹴り飛ばして立ち上がり叫ぶ。

 エリシアのすさまじい剣幕にオレは体をのけぞらせ、「確かにそういってたぞ」と何とか言葉にした。


「そうね、ここまで聞いて話さないわけにはいかないわね」


 エリシアは何度か逡巡(しゅんじゅん)した後、ルミナ救出での出来事を話してくれた。




「アイツが、魔王......」


 クロスが魔王などと言われても違和感しかない。

 そもそも、魔王と言えば、人類に悪逆非道を働き世界を混沌に陥れる存在。

 存在するだけで邪悪と威圧を放つ魔族の中の魔族、王だ。

 あの軽い感じの男が、王?

 とてもそうは見えない。

 そもそも、世界を混沌にとか人類の支配とか、そんな大それたことを考えるとは思いえない。

 

「本当にアイツは、クロスは魔王なのか?」


「彼が本当のクロス・サタンなら魔王よ。正確には前魔王ね」


「前、魔王?」


「そうよ、前魔王クロス・サタン。歴代魔王の中でも最強と言われた魔王よ」


「ははっ、アイツが最強......」


 見えねぇ。

 最強とは程遠い感じに見えたけどな。

 強いとか弱いとかそういったものとは無縁の存在。

 

 と、そこまで考えたオレは一つの考えに至る。

 そういえば、ラノベやアニメなんかではそういった飄々(ひょうひょう)としたヤツが反則(チート)級に強かったりするんだよなぁ。

 じゃあ、オレの中には元魔王がいるってことか。


「テンプレ展開かよ......」


「てんぷら? 何それ?」


 思わず出てしまった言葉にエリシアはボケですか? という反応を示すが、もう笑うしかなかった。

 オレの反応にエリシアは、「何笑ってるのよッ!」と怒ってくるが、オレは笑い続けた。

 

 だってそうだろう?

 今回は、ただただ寝ているだけしかできなかった。

 何の役にも立たず、あっさりと敵にやられるだけだった。

 力もないのに、ただ強がって空回りして。

 エリシアをレナを、そしてルミナを救ったのは......。

 

 ――オレじゃない。

 

 ラノベやアニメの主人公なら、こんな気持ちにはならないだろうな。

 きっと、自分の意志を強く持って前へと進んでいくはずだ。

 

 でもオレは――。

 

 無力、無能、無価値......。

 自分を卑下する言葉が次々と浮かび上がる。

 ひどいいじめに遇い、何事も卑屈に考えるようになってしまったオレは、オレの憧れた主人公たちとは真逆。

 出来ないことを言い訳にして、努力をしようともせず、それでいてプライドだけは捨てられない。

 今だって、オレの中にいるクロスが彼女たちを助けてくれたというのに、素直に喜べない自分がいる。

 

 よほどひどい顔をしていたのか、オレの心を読んだのか、エリシアが励ますように声をかけてくれる。

 だが......。


「エリシアにはわからねぇよッ!」


「――ッ!?」


「剣だって武術だって魔法だって......何でも持ってるお前にはわからねぇよッ!」


 エリシアの優しさも卑屈にとらえたオレは、思ってもないことを叫び散らす。

 そこで、エリシアの表情に気付く。

 

「......!」


 今にも泣きだしそうな、それでいて何かを堪えるような顔に、オレは我に返った。


「くそっ」


 オレは、何か言いたげなエリシアの視線を背に感じながら、その場から逃げるように部屋へと向かった。

 

(チィッ、カッコ悪りぃ)






最後まで読んでくれてありがとうございます。


最近、ケンカってしました?

僕は、ケンカする相手すらいません(泣)

え? 嫁?

はははははっ、期待すらしていない相手にケンカとかないよ?


次話、ユウに新らなる出会いが!?


次のページでお会いできることを祈りつつ......。


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