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オレは魔族でも魔王でもねぇ!  作者: 結城ゆき
2章 次代の希望のために
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0話 プロローグ ~暗闇の一室にて~




 ――剣聖。

 それは、比類なき剣の名手であり、絶大な聖法気を有する者のこと。

 すなわち、人類最強の称号。

 

 だが、ほんの十数年前まで、人類は聖法気という力を持っていなかった。

 つまり、古来より魔族との戦争において、人類は『剣』をもって対抗してきた。

 火や水、風や雷といった自然の力を操る、異能力者――魔族――を相手に、自身の磨き上げた最強の『技』と『駆け引き』で立ち向かう。

 その姿は、(まぶ)しく、人々に勇気を、希望を与える。

 

 剣聖は、代々、英雄や勇者と(あが)められ、死してなお最強と言われている。

 それは、剣聖選抜の方法に由来していた。

 

 剣聖の選抜方法とは、八人の権力者(ロイヤルエイト)立ち合いの元、現剣聖に一騎打ちで勝利すること。

 または、現剣聖推薦と聖十字騎士団師団長の過半数の合意によって決められる。

 

 過去何度か行われた、剣聖との一騎打ち。

 しかし、聖十字騎士団創設より、これに勝利した者はいない。

 なぜなら、人類最強の人間が剣聖だから。

 最強に勝てる道理などない。

 

 だが、3年前にその常識を打ち破る天才が現れた。

 (わず)か15歳の少年が、歴戦の剣聖との一騎打ちに勝利。

 史上初、剣聖の称号を力ずくで奪い取った少年は、歴代最強の剣聖と言われるようになった。

 

 剣聖ジークフリート・シュナイダー。

 太陽のように輝く金髪と透き通った深紅の瞳の少年の容姿は、非常に整っていた。

 青と白を基調とした騎士団衣(バトルクロス)に身を包んだ様は、童話から飛び出した王子様。

 

 しかし、一度(ひとたび)戦場に立った彼は、絶大な聖法気と天才的な剣技で魔族軍を圧倒する。

 激しい戦場においても、彼の剣技は華麗に舞い、放たれる聖法気は美しさを(まと)っていた。

 

『戦場の貴公子(プリンス)』。

 

 いつからか人は、彼をそう呼ぶようになっていた。

 

 

 

 ダンッ、と男が壁を叩きつけると、小さなクレーターが出来る。

 

「何が貴公子(プリンス)だっ!」


 煉瓦(レンガ)に包まれた薄暗い部屋で一人、男は、大量の汗を流しながら息を切らす。

 筋肉の鎧を着ているかのように鍛え上げられた上半身。

 右手に握られた大剣(グラディウス)は、規格外の大きさを誇っている。

 

 悪態を一つ、男はまた姿勢を正し、暗闇にいる見えない相手に向かって正対に構える。

 しかし、男の目には、はっきりとその姿が映る。

 金の髪に深紅の瞳をした、貴公子然とした少年。

 自分よりも20センチ以上小さい相手は、だがしかし、その存在感は絶大無比。

 男は、歯噛(はが)みし、自身の紅い眼を釣り上げた。

 

「はああああああああぁぁぁぁあああっ!」


 しかし、そこへ、人を小ばかにしたような鼻声が、この緊迫した雰囲気をぶち壊す。


「おい、アレクサンドロス! 仕事だぞ」


 鍛錬の邪魔をされた男――アレクサンドロス――は、ギロリと声の主を(にら)みつける。

 (すご)みを効かされた小太りの男は、「うっ」と言葉を詰まらせ、うろたえる。


「何だ、その眼は! 僕の命令だぞッ!」


「申し訳ありません。すぐに準備致します」

 

 先ほどまでの激しい咆哮からは考えられないほど落ち着いた、武将然とした低い声で、アレクサンドロスが頭を下げる。

 

「まったく、これだから戦闘バカは......」


 首を振り、(きびす)を返す小太りの男は、「誰が拾ってやったと思ってる」などと小言を言いつつ、部屋を後にする。

 その背中を一通り眺めた終えたアレクサンドロスは、再び剣を握り直し、一閃。

 先ほど、自らが作った小さなクレーターに十字の傷が刻まれた。


「クソッたれ......」






最後まで読んでいただきありがとうございました。


長らく、大変長らくお待たせしました。

2章の幕開けです。


次話、レナの隠れ家に戻ったユウとエリシアは!?


次のページでお会いできることを祈りつつ......。


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