38話 エピローグ ~魔王帰還~
ガチャリと扉を開ける音がすると、その場にいた者たちが一斉に扉の方へ視線を飛ばす。
「ま、魔王様ッ!?」
黒衣のローブはボロボロに破け、中から覗かせる体にも無数の傷が見受けられる。
扉の柱にもたれかかるように帰還した魔王リベラル・アルシエルに、従者たちは一瞥をくれる。
クロスとの激闘から数時間、リベラル・アルシエルは【転移】を繰り返し、自身のアジトへと帰還した。
豪華絢爛な魔王城とは異なり、質素な一室。
しかし、その広さは魔王城の一室にも匹敵するもので、数少なく並ぶ家具は、華やかさはないが一目で一級品とわかるものばかりだ。
その中央で横たわる人物は、魔王が現れるなり体の痛みを耐えながら起き上がり頭を下げる。
「魔王様、この度は誠に申し訳ございませんでした」
「過ぎたことはもういいです。それよりも......」
「はい。今回ですべてが揃いました。必ず完成させます」
「期待、していますよ? ガレイ君」
はい、と頭を下げるガレイは、そこで自分のいる場所と周りにいる人たちに抱いていた疑問を投げかける。
「あの、魔王様。彼らはいったい......?」
純白に染まる長椅子に、仰向けに行儀悪く寝転がる頬に傷を持つ青年。
部屋の隅で、細剣を手入れする貴公子然とした青年。
隣の部屋で、なぜだか大量のおにぎりを作っている少女。
そして、壁にもたれかかったまま瞑想でも行っているのか、微動だにしない腰に2丁の拳銃をホルスターに差し込む少年。
ガレイは、彼らにちらりと目を配るが、皆が皆、自分よりも圧倒的に格上だと、その纏う雰囲気から察してしまう。
今まで魔族の頂点に君臨する魔王リベラル・アルシエルに次ぐ実力者は、4人の魔族大元帥だと思っていた。
しかし、彼らが醸し出す空気は、魔族大元帥など足元にも及ばない。
それこそ、魔王にも引けをとならない程だ。
そして、何より驚くことは、目の前にいる人物。
――魔王リベラル・アルシエル。
魔道具製造工場で別れた時とは、比べ物にならない存在感。
魔族の王という器を超えた、世界の覇者と言っても過言ではない別次元の力を宿す王の中の王。
そして、その王が口元を釣り上げて応える。
「彼らは、暗部ですよ。」
「暗部、ですか?」
暗躍部隊、通称暗部。
裏という意味を持つその組織は、魔族大元帥ガレイ・アインツィッヒでも初めて知るものだった。
魔族軍の裏工作や後ろめたい事などは、魔族大元帥たちが全て引き受けてきた。
それは、軍としての組織を機能させるための必要悪だった。
しかし、この暗部は、魔族軍とは別に、魔王個人が見つけ出してきた真の配下。
信用も、信頼も、実力もすべてがガレイの上をいく者たち。
ガレイは、その事実に愕然と肩を落とす。
その様子にリベラルが気づいたのか、ガレイの肩に手を置く。
「ガレイ君。今、君にこのことを教えた理由、ここに連れてきた意味理由、わかりますよね?」
「――――!!」
目を見開くガレイに笑みを漏らした魔王は、4人の暗部中から1人の少女を呼びつける。
「リン君、あなたの出番です」
「魔王の命に従おう」
台所で大量のおにぎりを作っていたリンと呼ばれた少女は、短い返事をした後、魔王の横をすたすたと歩いていく。
桜色の長い髪を揺らし、極東式の戦闘衣から伸びた長帯をふわりと翻してアジトを後にする。
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
いやー、長かった。
これにて1章終章になります。
序盤からラスボスキャラ(暫定)を出していいものか、ずっと迷っていましたが、これはこれでよかったのではないかと思います。
ここまで、楽しんでいただけたのなら幸いです。
そして、大変申し訳ないのですが、前話でもお伝えした通り、2章の更新まで少しお時間をいただきたいと思います。
初めての小説連載は、ストーリーに困ったり、パソコンが壊れたり、転職活動だったりで、思うように執筆が進まない時が多分にありました。
しかし、その度に、読者様の心温まる感想や励ましの言葉。
また、今も使わせていただいてる、このパソコンを譲っていただいた大恩人の神様。
彼らがいたからこそ、そして、今ここまで読んでくださるあなたがいるからこそ、ここまで来ることができました。
本当に、本当~~~~~~に、ありがとうございました。
これからもお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。
次のページでお会いできることを祈りつつ......。




