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オレは魔族でも魔王でもねぇ!  作者: 結城ゆき
1章 金黒眼の少年と魔法少女
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35話 夢の夢




 あ、あれ?

 ここは......また夢か?

 

 あたり一面は木々に覆われており、オレが異世界召喚された森によく似ている。

 そして、そこには召喚されたときにはいなかった小学生にも満たない白髪の少年がいた。

 服はボロボロなのにその肌には傷ひとつない不自然な格好で(たたず)む見覚えのない少年。

 だが、どこかあの夢? 深層心理? に出てきた白髪の青年に似ている。

 その少年は輝く金の瞳をこちらに向けている。

 

(魔族? ――ッ!? 声が出ない??)


 そして白髪の少年はこちらに手をかざし、その先には赤い魔法陣が描かれる。

 お、おい、あれは...レナの......。


火球(ファイアーボール)


(うわあああああああぁぁ......って、あれ?)


 オレをめがけて放たれた【火球(ファイアーボール)】は、その熱を感じることなくオレをすり抜けていった。

 【火球(ファイアーボール)】を追って、視線を後ろへと向けると大きな木に着弾する。

 その火の粉は木々に飛び移り、たちまち森は大火事に見舞われた。

 

 まじかで起こる大火災に驚くが、熱気や木々が焦げる匂いがしない。

 まるで、3Ⅾ映画を観ているかのようだ。

 

「火事だーッ!」


「いたぞー、ヤツだッ! ヤツが森に火を」


「やはり悪魔だッ! 悪魔を殺せーッ!」


 炎の向こうに大勢の大人が血相を変えて何やら怒鳴り散らしている。

 その手にはそれぞれ(くわ)や包丁、(なた)といった使い方を間違えれば凶器とされるものを持っていた。

 彼らの姿を見た白髪の少年は、盛大に顔をしかめて逃げ出すように走り出す。

 

 彼らがまだ火の回っていない場所を探すのに苦労している間に、白髪の少年は随分と遠くまで走ったようだ。

 彼らの姿は小さくなり、向こうからはもう見えないだろう。

 それにしても少年は足が速いな。

 

 よく見ると、その足には緑の気流が(まと)っていた。

 確かレナも使っていた魔法だな。

 風魔法だっけか?

 

 なぜか白髪の少年を追う形で事が進んでいく。


(まじで3Ⅾ映画みたいだな......)


 しばらく走った先で一人の少女が少年を手招きしている。


「こっちーこっちー、はやくぅー」


 肩まで伸びた砂金色の髪、めいっぱいに開かれ少し潤みを帯びた紅い瞳。


(エリシア!? 小さい頃のエリシアだ。うわぁ、子供のころから可愛かったんだな......)

 

 白髪の少年は少女の元へと駆け寄り一喝する。


「なんで来たんだよッ!」


 少女はビクッと肩を震わせて、元々潤んでいた紅眼が光沢を塗ったように光だし、遂には雫として頬を走らせる。


「だって、だって...うぅ、わたしのせいでクロくんが...クロくんが、ぐすん」


「な、泣くなよ。それにお前のせいじゃないだろ、人間はみんな魔族がきらいなんだ」


「わたしはきらいじゃないよ。クロくんのこと好きだもん」


「うぅっ......うん...」


 突然の告白にクロくんと呼ばれた白髪の少年は、顔を真っ赤にさせている。

 っていうか、この歳でもうモテてるのかよ。

 さすがはイケメン。

 エリシアも今とはだいぶ違ってすごい感情的だなぁ。

 そんなことを思っていると、先ほどの大人たちが白髪の少年――クロくんを見つけたようだ。

 

「いたぞーー! やつめ、女の子を襲ってやがるッ!」


「何て卑劣なッ!」


 遠目にしか見えない彼らには魔族の少年が人間の女の子を泣かしているようにしか見えないのだろう。

 まさか、告白されているなんて夢にも思わないだろうな。

 それにしても、エリシアに聞いてた通り人間と魔族の溝は深そうだな。


 彼らの声を耳にしたクロくんは、突然幼いエリシアの身体に手を回し、まるで人質を取るような格好になる。


(何してんだよッ!?)


「な、何するの!? クロくん?」

 

「いいから、じっとしてろッ!」


「で、でも、このままじゃクロくんがわるものになっちゃうよ」


「いいんだよ、それで。ここで俺と仲良くしてたら、キューちゃんまであいつらにひどい目にあわされるだろ」


(キューちゃん?......エリシアじゃないのか?)


 クロくんのやろうしていることはわかる。

 おそらく、人間であるエリ...じゃない、キューちゃんを彼らから守ろうとしているのだろう。

 自分一人が悪者になることで。

 

 まだ、小学生にも満たないだろうクロくんに男らしさを感じると同時に、心苦しさも抱いた。

 なんでこんな子供を寄ってたかって追い詰めるのか。

 魔族と言っても、ただ魔法が使えるだけで人間と変わらないじゃないか。

 それに、白髪の少年――クロくんはその魔法であの大人たちを殺すこともできたのに、森に火をつけるだけにとどまった。

 魔族は本当に彼らが言う悪魔の手先なのだろうか?

 少なくとも、オレにはそうは見えない。

 クロくんは一人の女の子を守ろうとする優しい男の子だ。


(クソッ、なんでオレは見てるだけしか出来ないんだよッ! 胸糞悪い光景だ)


 体を動かそうとしても言う事を聞かず、目の前の出来事をただ見てることしかできない。

 それに、誰もオレの存在に気付いていない。

 夢というなら、本当に嫌な夢だ。

 

 クロくんがキューちゃんを人質にしてしばらくたつと、わらわらと様々な武器を手にした村人(?) 男たちが集まってきた。

 彼らはクロくんたちを半円状に取り囲み、それぞれが魔族であるクロくんを罵倒し始める。


「おい魔族のガキ、その子を放せ」


「もう逃げられないぞ、観念しやがれ」


「村を襲うだけでは飽き足らず、村長の娘にまで手を出すとは、やはり悪魔の手先だな」


「魔族なんてみんな死んじまえばいいんだ」


「そうだ、死ね」


「「「死ね、死ね、死ね......」」」


 彼らがクロくんに言葉の暴力を振るうたびに彼の顔は悲壮に沈む。

 そして、どこにぶつけていいのかわからない怒りをその内側に抱えているのか、ぷるぷるとキューちゃんに回した手が震えている。

 

「だまれええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」


 大人たちの罵倒を泣き叫ぶように大声でさえぎったのは、クロくんではなく、キューちゃんだった。


「クロくんは悪魔なんかじゃないもんッ! クロくんは優しいもんッ! クロくんはクロくんは、んむうぅ......」


 彼女の叫びにみな一様に驚く。

 もちろんオレもその一人だ。

 そして、最も驚いているのがクロくんみたいだ。

 

 そのクロくんがキューちゃんのこれ位以上の発言を口に手を当てて強制終了させた。

 もごもごと暴れるキューちゃんの耳元で必死に説得する。


「なに言ってんだよッ! そんなこと言ったらキューちゃんまでひどい目にあわされるかもしれないだろ」


「でも、みんなクロくんのことよく知りもしいないで...ひどいよ.....」


「わっ、な、泣くなよ」


「うん。ずずぅっ」


「やっぱお前はへんなやつだよ。魔族のおれをかばうなんて......でも、みんなキューちゃんみたいだったらよかったのに」


「えっ!?」


「いつか人間も魔族もなかよくできる日がくるといいのになぁ......キューちゃん、ごめんね。いままでありがとう」


「クロ...くん?」


「いいか、あいつらになんか言われたら、おれに言わされたって言えよ」


 クロくんはキューちゃんに有無を言わさず、大人たちに向けて叫び、掲げていた手の先に魔法陣を展開させる。

 

「お前らぁッ! それ以上近づくなよッ!」


「小癪なッ!」


火球(ファイアーボール)火球(ファイアーボール)火球(ファイアーボール)火球(ファイアーボール)......」


 無数の火の玉が辺り一面の森を焼き尽くす。

 煌々と燃え上がる炎に村人たちはなす術がない。

 その炎はクロくんたちをも巻き込む勢いだ。

 

「――――!」


 クロくんが何かを言うとキューちゃんの周りだけ炎が(さえぎ)られた。

 

「さよなら」


「クロくんッ!」


 キューちゃんが動こうとするが、なぜか体が動かないようだ。

 走り去るクロくんを追いかけることができない。

 

「クロくーーーーーーーーーーーーーんッ! うぅっ、わだじ、強ぐなるからあああぁぁッ! 強くなっで、クロぐんが笑ってくらせるぜかいにずるからあああぁぁぁ。だから、そのときは......」


 小さくなっていくキューちゃんの言葉がよく聞き取れなくなっていく。

 クロくんを見ると、ごしごしと顔を拭いながら小さくつぶやいていた。


「......ありがとう、ラキュラス(・・・・・)




「―――――――――ッ!」


(?? これは......)


 またも頭の中に直接聞こえてきた音。

 振り向くとそこは、またしても白い世界。


「...う...ぼう......」


「んぁ?」


「おーい、起きろ相棒」


「...あれ? クロ...くん?」


「なんでその呼び方を...チィッ、やっぱりか......」


 オレには何のことかよくわからないが、白髪の青年は舌打ちひとつ、苦い顔で寝起きのオレを迎えてくれた。

 まるで夢とは思えないくらいのリアルな夢だったなぁなどと思っていると、白髪の青年は頭を()きながら目をそらせがちに。


「約束、守れなくて悪かった」


 一瞬オレは何のことを言っているのかわからず戸惑うが、すぐにある人物たちの顔が浮かび上がる。


「約束?...あっ! エリシアたちはッ!?」


 白髪の青年の胸ぐらをつかむように迫るが、彼はオレをなだめるように彼女たちは無事だと告げてくれた。

 なんだよ、脅かすなよと胸をなでおろすが、まだ安心するのは早いといった表情でこちらを見下ろす。


「まだ、何かあんのか?」


「ああ、相棒の、お前の身体を元通り返せなかった......」


「は? ど、どういうことだよ」


「いや、アイツがかなり手強くてな。相棒の力を少し借りちまった...はははっ」


「はははって、オレの身体はどうなるんだよ?」


「たぶん身体のどこかが少し変化してる程度だと思う」


「変化?」


「ああ、簡単に言えば、相棒が俺に少し取り込まれたって感じだな」


「だな。じゃねぇよ」


「だから悪いって言ってるだろ」


「それが謝る態度かよ。ったく......じゃあ、オレはお前になるのか?」


 あっけらかんとした態度の白髪の青年は、急に真剣な顔をしてオレとは対称の金黒眼(オッドアイ)の瞳を向けてきた。

 

「すぐに取り込まれるってことはないが、今後も俺の力を当てにするならそれもありえるからな。だから、自分で何とかしろよ」


「サラッと怖いこと言いやがるな。まぁ、わかったよ」


「ほら、早く目ぇ覚まして彼女たちを安心させてやんな」


 そういえば、ここはオレの深層心理――夢の世界(?)だったなぁと思い出す。

 

「ああ、わかったよ。よくわからんが世話になったな。ありがとな」


 白髪の青年はほのかに笑みを浮かべて、バイバイと手を振ってきた。

 そこで、オレは思い出したかのように問いかけた。


「オレはユウ、三舌悠(みしたゆう)だ。お前の名前は?」


 オレの意識が遠のいていく中、白髪の青年の口が小さく動くのが見えた。


 ―――クロスと。

 

 

 

 ■■■

 

 

 

「...と......ねぇ...ちょっとしっかりしなさいよ!」


 透き通ったキレイな声、しかし、必死になっている声に耳を傾け目を開けた先には。

 黄金財宝も嫉妬する輝きを放つサラサラとした金に染まった髪がオレの頬に垂れて優しくなでている。

 そして、真っすぐに見つめる紅玉(ルベライト)の瞳は不安に揺れていた。

 

「(エリシア)」


 口を動かすのがやっとで、音として相手には伝わっていないかもしれない。

 そして、口を動かしたことで、自分がどんな状況なのか思い出した。

 腹部からは強烈な痛みが走り、体が思うように動かない。

 舌に広がる鉄の味は、血だろうか。

 

 それでもオレは、エリシアが無事で心底安堵(あんど)した。


「よかったぁ、無事だったんだな......」


 何とかそれだけ伝えると、オレの意識は黒く染まっていった。

 遠くで、エリシアのキレイな声がオレの名前を呼んでいるみたいだが、それに応えてやれる気力はなかった。

 

 

 

 ■■■






最後まで読んでいただいてありがとうございます。


はじめに、更新が遅くなってすみません。

ちょっと、転職活動なるものをやっておりまして、しばらくは週1話の頻度になります。

それにもかからわらず、毎日たくさんのアクセスがあるのはすごい嬉しいことです。

Twitterなどで、いつも拡散していただいてる方々には感謝の念が尽きません。

そして、ここまで読んでくださったあなた様には、お手手をこすり合わせて頭を下げます。


さて、クロくんが見せたキューちゃんをかばうための自己犠牲。

一見カッコよく見えますが、僕は嫌いです。

誰かの犠牲で助かる人がいる。

じゃぁ、その犠牲になった人は?

自分がいない世界で誰かが幸せになることを本当に望んでいたんだろうか?


あなたならどう思いますか?


次話、ようやくひと段落した事件のその後、エリシアたちは!?


次のページでお会いできることを祈りつつ......。


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