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オレは魔族でも魔王でもねぇ!  作者: 結城ゆき
1章 金黒眼の少年と魔法少女
33/68

27話 再会×再会




 レナが(つまづ)いたものは――人は、一人でも大丈夫と無理して笑いながら去っていった彼だった。


「ユ...ウ......?」


 部屋のど真ん中に鎮座する壮大な祭壇と、それらを鎖で繋ぐいくつもの石碑。

 その中央に縛られているルミナに気を取られて、足元が全くおろそかになっていたレナたちは、そこでうつ伏せになっているユウの存在を始めて認識した。

 しかし、こんなところで横になってるなんておかしい。

 レナがその体をゆさゆさとして起こそうとすると。

 

 べちゃ。


「ん?...なんっすか、これ?」


 ヌルっとしたものを触ったレナは、自分の手を見て、少しの間固まっていた。

 そして、ユウへと視線を移すと、体の周りには、まるで赤いペンキを大量にぶちまけたような水溜りができていた。

 

「うそ......」


「い...ゃ......」


 エリシアは口に手を当てて、透き通るような(あか)い眼をいっぱいに開いていた。

 レナもまた、まるで現実ではないという感覚に陥っていた。

 その手にべっとりと塗られた血を見て、そんなはずはないとユウの体を強くゆする。


「ユウ、何寝てるっすか? こんなところで寝てると風邪ひくっすよ......ねえ、ユウ。起きるっすよ、ユウ、ユウ」


「レナちゃん」


「ははっ、いつまでそうしてるっすか。ユウ、起きるっすよ」


「レナちゃんッ!」


「! なんっすか。ユウは......ただ寝ぼけてるだけっす」


「......レナちゃん...」


「ユウは、うぅ、ただ...寝ぼけて......」


 現実を受け止められないレナに、後ろからがばっとエリシアが抱きつく。

 後ろから伝わるエリシアの温もりが、痛いくらい抱きしめてくる腕が、震える吐息が、レナを現実へと引き戻していく。

 

「レナ、ちゃん......」


「うぅぅ、うわああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁん」


 レナは血で汚れることなどお構いなしに、ユウへと抱きついた。

 真っ赤に染まった服を強く握りしめて、何度もユウの名前を叫び続ける。

 

「どうしてっすかッ! 大丈夫って言ったっす。戦いになったら逃げるって......言ったっすよッ! どうして...うぅ、どうして...っすかぁ」


 そんなレナを見ていられなくて、エリシアは目を伏せる。

 それと同時に、ある疑問が頭をよぎる。

 

 いったい誰が、どんな方法で、ユウを殺したのか?

 

 ユウの体は、大量の吐血こそしているものの、目立った外傷は一切ない(・・・・)

 それなのに、この血の量はおかしい。

 これではまるで、体の内側(・・)を攻撃されたとしか思えない。

 そんなことができるのは......。

 

 エリシアは、今もわんわんと涙を流すレナをちらりと見る。

 しかし、その考えは違うと首を横に振る。

 

 そもそも、暴走状態のレナが現れた部屋はこちら側ではなかった。

 自我を失った状態で、私の前に現れる部屋をいちいち変えるだろうか、と自分の考えを改める。

 いや、そもそも自我を失っていなかった、ということも......。



 良くも悪くも、彼女は騎士団で数えきれないほどの魔族軍を(ほふ)ってきた歴戦の猛者だ。

 魔族の脅威を誰よりも知っている。

 成り行きで手を組むことになったとはいえ、魔族(レナ)は魔族だ。

 

 エリシアは、吐き気を催した。

 仲間を疑うという愚考に、小さく握った拳に力が入る。

 短い時間だったが、レナと共に過ごしてきて彼女がそんなことをする魔族じゃないことは、エリシア自身十分にわかっていたことだ。

 

 状況が状況なだけに冷静な判断ができなかったエリシアを責めるのは、酷というものだろう。

 しかし、他人にも自分にも厳しいエリシアが、そんな自分を許せるはずもなく。

 ダンッと片足で地面を蹴りつけ、苛立ちを見せる。

 

「なら、いったい誰だッ!」


「エリ、シア...!?」


 突然の怒鳴り声に、ユウに抱きついていたレナが顔をあげて、赤く腫れあがった金の瞳をエリシアに向ける。

 そしてもう一つ、エリシアへと向けられた視線が。

 

「いやー、何やら盛り上がってますな」


「「!!!」」


 透き通るような、しかし、どこか怪しげな男の声が、上の方から聞こえてきた。

 その声に敏感に反応した二人は、祭壇に縛られているルミナの方を見上げる。

 

 いつからそこにいたのか、ルミナの足元に不気味に(たたず)む、全身を黒のローブで包んだ男がいた。

 目深にかぶったフードから覗かせた怪しく光る2つの金の瞳が、魔族であることを主張している。


「なっ!?」


 その事実に、エリシアの顔は驚愕の色を隠せないでいた。

 他ならない魔力探知スキルを保有する聖法気使いという身でありながら、一切の魔力を感じることができなかった。

 いや、『できないでいる』と言った方が正確だろう。

 それでも、あの魔族が味方であるはずがないと断定して、腰に差した長剣(バスタードソード)に手をかける。

 

「......えっすか?」


 エリシアが長剣(バスタードソード)を抜くより早く、レナは動き出していた。

 

「お前っすかああああああああああぁぁぁぁぁっ!」


 怒りに満ちた金の瞳を宿すレナからは、キラリと光る水滴が流れている。

 大切な人を奪った黒衣の男への怒りを魔力に乗せて、レナは駆けた。


疾風の飛翔(デア・フルーグ)真空の斬撃波(エアウィザード)


 亜音速の速さで黒衣の男へと接近したレナは、ゼロ距離から風魔法を放つ。

 しかし、いつ移動したのか、黒衣の男はレナの真上の天井にいた。

 当然、【真空の衝撃波(エアウィザード)】が、黒衣の男に当たることはなかった。

 それでも、レナの魔法は、ルミナが繋がれている鎖のいくつかを細切れにする。

 両足に繋がれた鎖がなくなり、全体重が両腕にかかり、まるで聖女が生贄に捧げられるような格好になる。

 見る見るうちに両手首から先が変色していき、このままの状態が続けば、両手首を切断しなくてはならなくなるだろう。

 レナから遅れること数秒、エリシアは、ルミナが繋がれている残りの鎖を断ち切り、その身を祭壇の床に寝かす。

 

「んん、避けたのは失敗でしたな」

 

 どういう魔法を使っているのか黒衣の男は、天井に立ち(・・)、あごをさすっている。

 

 一瞬見失った黒衣の男の声が天井から聞こえたレナは、すかさず翔ける。

 今度は、誰に気を使う必要もない全力。


火風土三属性結合魔法(トライデントコネクト)惨劇の爆裂風(エクスプロージョン)


「遅い......ですな」


 亜音速に匹敵するレナのスピードを軽々ととらえて、あまつさえ、魔法を放とうとしている腕をつかみ、体を半回転させて【惨劇の爆裂風(エクスプロージョン)】をエリシアとルミナのいる方へと放たせた。

 

 ズドオオオオオオオオオオォォォォン!

 

 エリシアたちを巻き添えに巨大祭壇が崩壊する。

 その光景にレナは、呆然と立ち尽くしていた。


「大丈夫よ、レナちゃん」


 いつ移動したのか、祭壇上空で4枚の翼をはためかせて、ルミナを横抱きにしたエリシアが無事を告げる。

 それを見たレナは安堵するも、すぐに黒衣の男から腕を振りほどき、距離をとる。


「いやー、ひどいですな。いきなり襲ってくるなんて。同じ魔族じゃないですか」


「くっ、同じ魔族ならどうして魔族を奴隷にするっすかッ!」


「これは必要なことなのですよ」


「ルミナをこんなにするのが必要なことっすかッ! それに......」


 いまだにエリシアの腕の中で目を覚まさないルミナを指さして、レナが吠える。

 そして、少しうつむいて、もう動かなくなった少年を見つめる。

 レナは、意を決したように黒衣の男をにらみつけ。


「ユウを、あの少年をどうしてッ、どうして殺したっすかッ!」


「ネズミを殺すのに理由がいりますかね? それよりその若さで三属性結合魔法(トライデントコネクト)を容易く扱うとは、どうです? そんな聖剣姫(人間)などじゃなく、私の元へ来ませんか? 歓迎しますよ」


「誰がッ! 誰がお前なんかのところへ行くっすかッ。ユウを...ユウをネズミだなんて、絶対許さないっすッ!」


 ゴオオオオオオオオオォォォ!

 

 レナが再び臨戦態勢入った直後、白い光が黒衣の男を飲み込み去った。

 レナは、突然の出来事に目をむいて光の出所に視線をやると、どんな怪力なのか片腕でルミナを抱いたまま、長剣(バスタードソード)を振り下ろしているエリシアがいた。

 そして、その顔は怒りに満ちている。

 

「ごちゃごちゃとうっさいわねッ! あんたみたいなやつのところに、レナちゃんをやってたまるもんか」


「エリシア......」


「レナちゃん! あんな奴の言う事聞いちゃだめよ」


 レナは、「はいっす」と相好(そうごう)を崩す。

 それを見たエリシアは、ニカッと口を釣り上げてウインクをした。

 そして次には、表情厳しく土煙の中をにらみつける。

 

「レナちゃん、この娘をお願い」


 エリシアもまた、いつ移動したのか、レナの隣に来てルミナを手渡す。

 

 ルミナを任されたレナは、心底思い知った。

 黒衣の男もそうだが、エリシアもまた次元違いのバケモノだと。

 自分が出しゃばっても、足手まといにしかならないと。

 今、初めてユウの気持ちをわかった気がした。


 魔法が使えるのに自分の力じゃ何の役にも立たない。

 力のない自分にこれほど嫌気がさしたことはない。

 大切な人の力になることができない。

 

(ユウはずっとこんな思いをしてたっすか?)


 それでも、ユウは自分がやるべきことをやろうと、笑ってレナに(たく)してくれた。

 レナならできると信じて。

 それならレナもエリシアに。


「任されたっす。その代わり、ユウの......」


「わかってるわ。必ず......」


 必死に笑顔を作って頭を下げるレナに、エリシアは真剣な眼差しで応える。


「さあ、行ってッ」


 ルミナを抱えたレナがエリシアの元から音速で飛び出し、通路へと差し掛かろうとしたその時。


「私の勧誘を断って、簡単に逃げられるとお思いですかな?」


「「!!!」」


 いつからそこにいたのか、黒衣の男は通路へとつながる道の壁にもたれかかっていた。

 そして、レナがフードの奥に光る2つの怪しげな金の輝きを感じた次の瞬間には、レナの背後に回り耳元で小さくつぶやく。


「残念です。さようなら」


黒の衝撃(ブラックインパクト)


「がぁはっ」


 レナは口から大量の赤い花を咲かせて、その場に倒れる。

 しかし、最後の意地なのか、抱えていたルミナをかばうように自身を下敷きにして横たわった。






最後まで読んでいただいてありがとうございます。


タイトル、某週刊雑誌で活躍する(?)休載を繰り返すマンガに似てなくね?

という疑問は、あなたの心の中でとどめていただけると助かります(汗

最近、見るアニメ見るアニメが「ひとまぞ」=「1つ言っておくが、オレは魔族じゃねぇ!」で描きたいなぁと思っているものと被り過ぎて、この先話がパクリになるんじゃね?と不安を感じる今日この頃です。

でも、まぁ王道の物語なので多少は仕方ないのかなぁと。

もし、どこかで見た内容だったとしても、これからも温かい目で見ていただけると幸いです。


ここ1ヵ月以内に視聴したアニメ「伝説の勇者の伝説」「ゼロから始める魔法の書」「魔法戦争」「空戦魔導士候補生の教官」「ヴァイオレットエヴァーガーデン」


次のページでお会いできることを祈りつつ......。

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