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オレは魔族でも魔王でもねぇ!  作者: 結城ゆき
1章 金黒眼の少年と魔法少女
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25話 意外な決着




 ガレイは歯を食いしばり、皮膚に爪が食い込むほど手を握りしめて、【追尾式火炎電撃弾テラホーミングファイアボルト】をすべて撃ち落としたエリシアをにらみつける。

 今のエリシアには、自分が何をしても通用しないだろう。

 最大火力の魔道具(マジックアイテム)を、いとも簡単に撃破された。

 

 これまで幾度となく天才と呼ばれる者を倒してきたが、彼女は次元が違う。

 前魔王様(あの人)と同じ、真の天才。

 

「これが......これが才能の差とでも言うのかああああッ」


 いつもの穏やかな、人を舐めきった口調ではなく、ガレイは本性をむき出しに怒っていた。

 空中にいるエリシアを見上げるガレイは、この位置関係が、立ち位置が、持って生まれた者とそうでない者の違いだと言われているみたいに感じて咆哮する。


「いいだろう、ここまで来たら出し惜しみは無しだっ!」


 凡人にだって意地がある。

 ここまで上がってきたプライドがある。

 

 ガレイは、最後の魔道具(あがき)を手にする。

 エリシアの攻撃を無事に(しの)ぎきった、3つの白い小瓶。

 魔力を回復させる、ガレイの切り札。

 しかしその実態は、回復魔道具(アイテム)ではなく、再生魔道具(アイテム)

 

 魔力は、時間が経てば自然と回復する。

 

 例えば、人はケガをした時に細胞分裂を繰り返し、時間をかけて傷を再生する。

 魔力も同じで、消費した魔力は細胞分裂と共に作り出される。

 ガレイが手にしている魔道具(マジックアイテム)は、細胞分裂を超速に行い、傷や魔力を再生するというもの。

 しかし、人の細胞分裂回数というのは決まっている。

 それを早めるということは、自らを死に近づけているということ。

 

 ガレイは根っからの研究者気質だ。

 人体実験という他人の体を実験する前は、自らの体で実験していた。

 そして、彼は見つけた。

 凡人が天才を越える方法を。

 

 それが、魔力の超速再生。

 

 誰だって死ぬのは嫌だ。

 もちろんガレイだって、死にたいとは思っていない。

 

 出来れば使いたくなかった。

 自ら死に向かって走っていくような真似はしたくなかった。

 だが、それでも、そうまでしても倒さなければいけない天才(やつ)がいる。

 

「私は......天才が嫌いだッ!」


 ガレイは小瓶の液体をすべて飲み干した。

 全快まで回復した魔力は、回復を通り越してガレイの体を作り変える。


「うぅ、おあぁぁ、うおおおおおおおおおぉぉぉ」


 再生に次ぐ再生。

 再生を終えた後に新たな(・・・)細胞が、古い細胞を覆い隠すように増殖していく。

 ガレイの体は、ミルクレープのような何層もの細胞が重なっていた。

 

 自らが加工したアダマンタイト製のローブでも隠し切れないほどのオーラが、ガレイを包み込んでいく。

 本来、紫色になる雷属性のオーラは、色を失い、白く光っていた。


 【神への冒涜(ドーピング)

 

 彼もまた物理を超越した存在になる。

 

 

 すべての【追尾式火炎電撃弾テラホーミングファイアボルト】を斬り落とし、爆風の中から姿を見せたエリシアは、ガレイの姿を見て握りしめた長剣(バスタードソード)を強く握り直す。

 

 互いが全力。

 この勝負は、一撃で勝敗が決する。


 ガレイは白く発光した雷を右手に集約して、自身の腕を雷を斬り裂く雷に変化させた。


 【雷神の怒りラムウ・ジャッジメント


 彼は、エリシアへと超速(ばく)進する。

   

 エリシアもまた、空間を爆発させてガレイへと向かって超加速する。

 上段に刺突の構えで、その長剣(バスタードソード)には、ゆらゆらと炎を連想させる白き聖法気を(まと)って。

 

 【聖火女神の慈悲(エレオス・ウェスタ)


 互いに持つすべての力を込めて、最後の攻撃にすべてを賭ける。


「うおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」

「はああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 ボゴオオオオオオオォォォン!!!

 

 二つの必殺がぶつかり合おうとした直前、両者の決闘に水を差すように爆音が鳴り響いた。

 

 互いの意識は必然的に、轟音の元へと吸い寄せられる。

 エリシアとガレイは、必殺を放つことなく、互いの位置を入れ替えるだけにとどまった。

 そして、2人が見た先には。

 

 砂塵の中からゆらりと姿を現した銀髪金眼の少女。

 少女の足元には、かろうじて人と認識出来るモノを携えていた。


 銀髪金眼少女の登場で、これまでの激しい戦いが嘘のように静寂に包まれる。

 ガレイには見覚えのない、しかし、エリシアにはよく見知った少女だった。


 

 エリシアの知る少女とは雰囲気が違う。

 それでも、彼女は少女の名前を呼んだ。

 

「レナ......ちゃん?」


 エリシアが声をかけると、うつむいていたレナは、むくりと顔をあげる。

 そして、にぃと感情のない瞳で笑うと、唐突に姿を消した。


「えっ!?」


 エリシアが呆気にとられていると、レナが目の前で拳を振り上げていた。

 油断していたとはいえ、レナの動きを見失ったエリシアは、迫りくる危機を全力で回避する。

 4枚の翼をはためかせ、超加速で後方へと移動する。

 その直後、ドォーンという轟音が鳴り響いて、エリシアがいた場所に大きなクレーターが出来上がっていた。

 

 土煙の中からふらふらと立ち上がる影が見える。

 そしてまた、フッと影が消えた。


「くっ!」


 エリシアは、光の速さを超越した【大天使の加護翼(ミシェルフェザー)】と同等の速度で襲って来るレナに、困惑と驚愕を露わにする。

 なぜ仲間であるはずの私を襲うのか?

 私が出せる最高速度にどうしてついてこられるのか?

 それに、このデタラメな力は何なのか?

 疑問は尽きないが、今はレナの攻撃を避けることで精一杯だ。

 

 しかし、エリシアの疑問は意外なところから答えが返ってきた。


「や、闇魔法、だぁね......」


「えっ!? 闇魔法ですって!?」


 突然発したガレイの言葉に、エリシアは驚きを隠せず叫んだ。

 ちょうどガレイと並ぶようにエリシアが隣に降り立つ。

 2人は砂塵の中から立ち上がるレナに注目する。


「ああ、間違いないのだぁよ。あの移動方法は......闇魔法【転移(テレポーテーション)】だぁね」


 言うや、ガレイはじりじりと後退しながらエリシアに忠告する。


「あれはまずいのだぁね。暴走しているのだぁよ」


「暴走?」


「そうだぁね。闇属性魔法は力が強すぎるのだぁよ。その力を制御できなければ、逆に力に取り込まれてしまうのだぁよ」


「そんな......」


「正常なら、あんな魔力の使い方はしないのだぁよ」


 そう言われて、エリシアはレナの魔力を探知する。

 ガレイの言う通り、魔力の減り方が異常だ。

 こんなのただ、魔力を垂れ流しているようなものだ。


「どうやったら止められるのよっ!」


「そんなの知るわけがないのだぁよ」


 ガレイは額に汗を浮かべながら、堂々と言ってのけた。


「私が研究しているのは魔道具(マジックアイテム)なのだぁよ。魔法属性の研究なんてやってないのだぁね」


 ガレイが言い終わるや、今度はガレイの目の前に【転移(テレポーテーション)】した。

 

「くぅっ! 本当に見境がないのだぁよっ!」


 必死に距離を取ろうと後退するも、レナの方が速い。

 ガレイは咄嗟(とっさ)にローブを盾にするが、レナの振り払った一撃は、アダマンタイト製のローブに亀裂を入れる威力だった。

 完全に衝撃をいなしきれなかったガレイは、よろよろと後ずさる。

 レナはその(すき)を見逃さずに、ガレイに向けて腕をかざす。


「!?」


黒の衝撃(ブラックインパクト)


 闇属性の怖さをよく知るガレイは、レナに向けられた手を見てすぐさまその場を離れる。

 ドクンッと奇妙な音を鳴らして、ガレイが数舜前までいた場所が爆ぜる。

 

 雷を超えた速さで移動するガレイを追うように、空間爆発が続く。

 ガレイは、それから大きく距離を取ると、レナも攻撃の手を休めた。

 

 エリシアとの交戦で限界まで消耗しているガレイは、ぜぇはぁと肩を盛大に上下して呼吸を整えている。

 このままいけば、ガレイは間違いなくレナの魔法の餌食になるだろう。

 壁際に追い込まれたガレイは、そのことをわかっているのか、覚悟を決めた表情で右手に魔力を集め始めた。

 

 【雷神の怒りラムウ・ジャッジメント

 

 エリシアと対峙した時よりも、その手に白く光る雷の光量は明らかに輝きを失っていた。

 先ほどエリシアに放ちはしなかったが、それでもガレイの魔力が格段に削がれていたのだ。


「これでは......」


 レナはそんなガレイの様子を無機質な眼で見つめながら、両手を突き出した。


鮮血が躍る宴(ブラッディパーティ)


 グラグラとガレイの周囲が、まるで地震が起きたように揺れ始めた。

 その影響で、ガレイの後ろに立つ壁もボロボロと崩れ落ち、『儀式の間』へと繋がる手前の部屋が(あら)わになる。

 しかし、ガレイはそんなことは一切構わずに、レナに向かって突き進む。


「おおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ」


 向かってくるガレイにレナはにぃと口を釣り上げ、かざしていた両手の握りしめる。

 

 ぶしゃぶしゅ~~~~~~~~~ッ!

 

 突如ガレイの全身から、皮膚を貫いて真っ赤に染まった液体が、噴水のように噴出した。


「があぁはっ」


 ガレイの全身に亀裂が入り、そこから大量の血が流れ落ちている。

 それでも、これが自分の最期だと悟ったガレイは止まらない。

 先ほどの雷のような速さもなく、ただよたよたと足をおぼつかせながらレナへと向かう。

 

 聖剣姫を撃退できなかった自分をあの方(・・・)は、お許しにならないだろう。

 ならせめて、聖剣姫の仲間と思しき少女だけでも倒す。


 ガレイの覚悟の一撃をレナは一瞥(いちべつ)もくれず、【転移(テレポーテーション)】でガレイの懐に入り込み、一撃。

 ガレイは崩壊した壁を越えて、弾丸ライナーで飛ばされていく。

 意識がもうろうとする中でガレイは、最期の想いを胸に抱いた。

 

 あの方(・・・)に認められて、側においてもらって、私は......私は、幸せだった。

 だが、願はくは、天才に......なりたかった。

 

「も、うし...わけ......ござ、い、ま...せ......」


 ガレイはうまい具合に、ユウが扉を開けた『儀式の間』へと繋がる通路へと飛ばされていった。

 

 

 

 突然、ズシャ~~~ンと『儀式の間』へと姿を現した変わり果てた魔族大元帥に黒衣のローブを羽織った男は、ゆっくりと祭壇から降りてガレイへと膝を落とす。


「ガレイ君、情けないですね。しかし、君にはまだ役に立ってもらわないといけません」


 そう言って黒衣の男は、横たわるガレイに手をかざして天井を見上げた。

 

 

 

 エリシアとの戦いで疲弊していたとは言え、魔族軍大元帥を圧倒したレナを、呆然と眺める事しかできなかったエリシアに、レナの標的が移った。

 無機質にエリシアを見つめる金眼と、焦燥を隠せないエリシアの紅眼が交錯する。


「レナちゃん......」






最後まで読んでいただいてありがとうございます。


最近、必殺技を考えるのが楽しくてたまりません。

仕事中にぶつぶつと自分で考えた必殺技を口ずさんでいるのですが、はたから見るとただの変人ですね(汗

おかげで、僕に話しかけてくる同僚は...いません(悲

まぁ、30手前のおっさんが、ファイアインフェルノとかアトミックブラスターとか言ってたら、そりゃ気持ち悪いですわなww


次話、エリシアと暴走レナのバトル勃発!?


次のページでお会いできることを祈りつつ......。


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