23話 聖剣姫vs魔族軍大元帥
ユウとレナが地下へと繋がる道を探していた頃、エリシアは少々厄介な敵と出くわしていた。
魔王に次ぐ力を持つ4人いる魔族軍大元帥の内の一人。
魔道具開発の第一人者でもある、ガレイ・アインツィッヒ。
「天使の羽衣」
エリシアは聖法気を纏い、腰から長剣を引き抜き、正対に構える。
一方ガレイは、懐に手を伸ばし何かを取り出そうとしていた。
先に動いたのはエリシアだ。
タンッ、と地を蹴りガレイの前から姿を消す。
光の速さを体現するエリシアの聖法気は、一瞬にしてガレイとの距離を詰める。
聖剣気を纏った長剣を大上段から振り下ろす。
光速の一閃がガレイの体を斬り裂く寸前に、サイドステップで回避された。
エリシアは、すれ違いざまに体を半回転して長剣に纏っていた聖法気を横薙ぎで放つ。
ボオオォォォン!!
舞い上がった土煙の中から、ローブを盾にしてエリシアの攻撃を防いだガレイが姿を現す。
「くっ」
エリシアが顔をしかめるも、ガレイは煙で出来た一瞬の隙に、懐から青、緑、紫色をした3つの小瓶を取り出して床へ投げた。
それぞれの液体が混ざり合い、大きな水溜りができる。
その水溜りからバチバチと音を立てて、無数の放電が生じる。
エリシアがそれを見た瞬間、ヒュン、と無数の電撃がエリシアを襲いだした。
「なっ!?」
エリシアは大きく右へジャンプして、無数の電撃を辛うじて躱す。
しかし、電撃はそのまま直進せずに、エリシアをめがけて方向転換した。
「えっ?」
予想と違う動きを見せる電撃に驚くエリシアは、まだ空中にいた。
電流の速さは光の速さとほぼ同じだ。
そんな光速で迫りくる電撃を空中で避けるすべは、ない。
その様子を見たガレイが薄く笑う。
しかし、エリシアも伊達に聖剣姫と呼ばれてはいない。
空中で身動きの取れないエリシアは、空間を蹴り、迫りくる無数の電撃を、二段ジャンプという物理法則を嘲笑う方法で回避した。
それでも、無数の電撃はエリシアの追撃をやめない。
二段、三段と空中を翔けるエリシアは、徐々に電撃との距離を離していった。
エリシアが電撃と追いかけっこをしている間に、ガレイは懐から赤、緑、黄色をした3つの小瓶を床へと投げつける。
また、それぞれの液体が混ざり合って、今度はその水溜りから、空中を走るエリシアに一筋の光が放たれた。
無数の電撃から逃げるエリシアの背後に、突然放たれた光に神がかり的に反応したエリシアは、宙返りの要領で光の射線から逃れる。
その直後、ボババババッと爆発の連鎖がエリシアを襲う。
もう一度宙返りで距離を取り、直撃を辛うじて回避するエリシアだが、それでも爆風は避けきれなかった。
大きく後ろへと飛ばされるエリシアに、追尾式性能を持った無数の電撃が、上下前後左右の全方位から襲い掛かる。
絶対的ピンチに追いやられたエリシアは、歯を食いしばりルビーのように輝く紅い瞳を閉じた。
「聖法剣乱舞」
エリシアは一瞬のうちに、唐竹、袈裟斬り、逆袈裟、右薙ぎ、左薙ぎ、左斬り上げ、右斬り上げ、逆風、刺突を繰り出す。
まるで小さな乱気流のようになり、彼女に襲い掛かるすべての電撃を斬り裂いた。
その神業ともいえる、エリシアの剣技を前にガレイの開いた口は塞がらない。
「何ぃ?」
スタッと着地し、肩で息をするエリシアは、それでもガレイから目を離さず、正対に構えた。
エリシアは魔道具がこれほどまで苦戦する代物とは、今の今まで全く考えもしなかった。
あらかじめ魔力を込めた道具を使用するので、ガレイの魔力は一切削れていないだろう。
それに引き換え、自分は体力と聖法気をかなり削られた。
早めに決着をつけなければ、敗色濃厚になってしまう。
そう考え、ガレイの魔力残量を探知すると。
「へっ!?」
何故だかわからないが、ガレイの魔力も随分と減っていた。
ガレイはエリシアの様子から、自分の魔力が減っていることに気付かれたと、苦笑いをする。
それでも対抗策はしっかりとあるので、それほど困ることでもない。
そう思い、懐から白い小瓶を取り出し、今度はその液体を飲み干した。
取り出された小瓶に警戒を強めていたエリシアも、ガレイの行動の意味が分からず、困惑する。
しかし、次の瞬間、彼女は自分が攻勢に打って出なかったことを後悔した。
およそ3分の1ほど削れていたガレイの魔力が、全快したのだ。
「ひょっひょっひょっ、さすがは聖剣姫様だぁね。強い強い」
「そっちこそ、余裕じゃない。」
「ひょっひょっ、そんなことはないさ。三種属性結合魔法二発を軽々と躱して、そのすべてを斬り裂いてしまったんだからぁね」
「あれは魔法じゃないでしょ? 魔法陣が見えなかったんだから。あんた、いつ魔法を使ったのかしら?」
「ひょっひょっひょっ、やはり聖法気使いは目が良いのだぁね。なら、さっきので私の魔力が全快したのもお見通しだぁね?」
「......」
エリシアの無言を肯定と受け取ったガレイは、フフッと笑い彼女の問いに応える。
「そうだぁね。あれは厳密には三種属性結合魔法じゃないのだぁね。魔道具合成魔法、魔道具同士の合成で発動する魔法だぁね。」
「合成?」
「まぁ、キミに詳しく言ってもわからないだろうけどぉね。簡単に言うと、これを使えば誰でも簡単に結合魔法を使えるってことさぁね。ひょっひょっひょっ」
ガレイは自分の作った魔道具の説明という名の、自慢をひけらかしてきた。
エリシアはうざいと思いつつも、これは相手から情報を引き出す好機と思い、話を続ける。
「それじゃあ、あんたの魔力は、なぜ減ってたのかしらね? 今まですべてあんたの作った魔道具で戦ってたんでしょ?」
「ひょっひょっひょっ、目が良いのは本当に厄介だぁね」
ガレイにうまく話をはぐらかされた。
しかし、エリシアは諦めず話を続ける。
「それに、私のスピードを難なく避けたのも納得いかないわね。あんたはバリバリの戦闘タイプじゃないでしょ?」
まぁ、魔族軍大元帥の地位を得ているということは、戦闘力も桁外れにあるのでしょうけど、ということは心の中でつぶやいた。
「確かに私は戦闘よりも研究に身を置く者だぁね。だからと言って、全く戦えないわけじゃないのだぁよ。それに、そっちこそかなりの聖法気を使ったみたいだぁね?」
「なっ!? どうして......」
「ひょっひょっひょっ、魔力や聖法気を見る力は、何も聖法気使いだけじゃないのだぁよ」
魔族に聖法気や魔力を探知する能力はないが、そこは魔道具の第一人者であるガレイ・アインツィッヒ。
彼の片目に掛けているモノクルが解決してくれていた。
【達人の隻眼鏡】
ガレイが開発した魔力・聖法気の数値を測る魔道具。
ただ装備するだけで、相手の魔力量・聖法気量を視覚化してくれる画期的なものだ。
そして、ガレイが装着する【達人の隻眼鏡】には、もう一つ、とっておきが仕込まれている。
「そうなの......」
ガレイの自慢に対して、意味ありげに答えるエリシアは、内心微笑んでいた。
対人戦闘において最も重要なことは、いかに相手の情報を多く得ることができるかという事。
正確な情報が多ければ多いほど、勝利への道が近くなる。
幼いころから戦場に立ち、戦いに明け暮れてきた彼女は、そのことを誰よりも知っている。
だからこそエリシアは、話を続ける。
敵が垂れ流してくれる情報を得るために。
「そのローブは、もしかしてアダマンタイト製かしら?」
「ひょっひょっひょっ、さすがは聖剣姫様だぁね。私が加工したから、ちょっとやそっとじゃ破壊は無理だろうぉね。」
ガレイは言い終わるや、懐に手を伸ばし新たな小瓶を握りしめる。
このまま、魔道具で押し切れば、エリシアの聖法気を削り切れるだろうという考えを抱いて。
またエリシアも話はここまでのようだと、全身に纏った聖法気をさらに強く纏い直す。
しかし、エリシアはここまでの話で、ガレイを倒すための情報をかなり得ていた。
「「この勝負、私が勝つッ!!」」
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
この度、前回作った話の出来が悪く、勝手に全部消去してしまい、本当に申し訳ありませんでした。
前の話をせっかく読んでくださったのに、本当にごめんなさい。
でも、今回は、自分でも納得のいく出来になったので、楽しんでもらえたら何よりです。
さて、今回、満を持してメインヒロインが活躍します。
これまでは、銀髪魔女っ娘に現を抜かしていたので、メインヒロインが誰なのかわからなくなってしまいそうでした(汗
僕が銀髪っ娘大好きなのがいけないんですね...。
王道ファンタジーでのメインヒロインと言ったら、金髪の美少女ですからね。
今後も銀髪も金髪も可愛がってやってくださいね♪
次話、エリシアとガレイが巻き起こす異次元の対決に決着が!?
次のページでお会いできることを祈りつつ......。




