21話 その戦い方は経験済みっす
レナの態度と言動に苛立ちを覚えたローガは、稲妻模様の剃り込みと同じように額にも筋が入る。
「誰に......」
「えっ!?」
「誰にお前なんて言ってんだああああぁぁぁっ!」
ローガがキレた。
自分の思い通りにならないことがあると、駄々をこねる子供のように、ローガはその手に持った棍棒をブンブンと振り回して地を蹴る。
「うるぅらああぁ」
一瞬にしてレナの目の前に現れたローガは、半身の状態から体を回転さて棍棒を縦殴りに振り下ろす。
レナは当たれば一撃で戦闘不能に追いやられる攻撃をバックステップで間一髪回避するも、振り下ろされた棍棒が床面を爆散させて、その風圧と瓦礫の破片で完全には避けきれなかった。
速い。
レナが素直に感じたことだ。
以前、ルミナが襲われていたときにレナが対峙し、一方的にやられた相手がローガ・アームストロングだ。
ルミナが連れ去られてしまうことへの不安と恐怖でやたらめったらと魔法を連射したが、彼はそのすべてを聖天反射鏡で跳ね返し、レナを撃退したのだ。
当時は、未知の魔道具に困惑して敗北を期したが、今は違う。
その対抗策も彼女から教わった。
自分にも人にも厳しいけど、本当は心の優しい人間での初めての友達。
強くて頼もしくて、そして何よりレナの恩人。
【疾風の飛翔】
レナは足に新緑の気流を纏った。
そして、その気流はレナの全身を包み込む。
正門の戦闘で見せた風魔法だ。
ローガは渾身の一撃を外し、苛立ちをさらに加速させ再び地を蹴った。
「おとなしく、くらいやがれえええぇぇッ!」
またも一瞬にして距離を詰めたローガは、すくい上げの要領で棍棒を振るってくる。
レナは半身をずらして紙一重で攻撃を躱し、風を纏った拳をローガのがら空きになった腹へと撃ち込む。
「なっ!?」
「へへっ」
レナの完全に決めにいった一撃を、ローガは仁王立ちのままビクとも動かず受け止めた。
驚愕に染まるレナの瞳と余裕の笑みを浮かべるローガの瞳が交錯する。
だがしかし、レナは素早く切り替えて次の一手を打つ。
「火風二属性結合魔法、新緑の業火」
「がはっ」
ゼロ距離からの二属性結合魔法をもろに受けたローガは、数十メートル先へと吹き飛ばされた。
何度かバウンドした後にようやく止まる。
ローガは「クソッ」と悪態をついて、爆煙の中から立ち上がる。
裸の上から羽織っただけのジャケットが焼け焦げて切り刻まれている。
その傷は、彼の6つに割れた腹筋にも及んでいた。
「ははっ、効いたぜ」
「聖法気......厄介っすね」
普通なら戦闘不能になる程の攻撃を受けても立ち上がれるのは、ローガが聖法気を纏っていたからだ。
魔法と対をなす聖法気。
その中でも、聖法気を極めた使い手は普通の魔法では太刀打ちできないと言われている。
「まだ俺に反抗するのか。へへっ、いいぜ。その表情を絶望に染めてやる」
ローガはポケットの中から聖天反射鏡を手にする。
「またそれっすか......」
レナは顔を歪めて、ため息を漏らす。
ローガほどの聖法気の使い手なら、遠距離からの魔法はすべて反応してしまう。
これで、レナに遠距離魔法は封じられた。
「だったらっ......火風二属結合性魔法、新緑の業火」
あろうことか、レナは遠距離からの魔法攻撃を仕掛けた。
ローガは待ってましたと言わんばかりの顔で、聖天反射鏡を掲げる。
二属性結合魔法という強力な衝撃がローガを襲うが、鍛え抜かれたボディビルダーの体を持つ彼は難なく跳ね返した。
「ふふっ、それを持ってるのはお前だけじゃないっすよっ!」
レナは【疾風の飛翔】で、跳ね返って来た【新緑の業火】へと駆け出した。
風の力を宿したレナのスピードは亜音速に匹敵する。
その勢いのまま聖天反射鏡を突き出した。
レナ一人では到底耐え切れなかった衝撃も、超速で突撃することで跳ね返すことに成功する。
しかし、レナが持つ聖天反射鏡にひびが入った。
「なにッ!?」
まさか、跳ね返した魔法を更に跳ね返されるとは思ってもみなかっただろう。
ローガの顔が驚愕に染まる。
聖天反射鏡の性質上、受けた魔法を倍速かつ倍加した威力で跳ね返すことになる。
2度の跳ね返しをしたレナの魔法は威力もスピードも4倍になってローガへと向かう。
猛スピードで向かってくる、大型トラックもまる飲みにするほどの巨大な風を纏った火柱を前に、ローガは跳ね返すという選択肢を選ぶしかなかった。
ローガのスピードをもってしても避けきれないと判断したからだ。
「くぅっ!」
ローガは棍棒を持った手も添えて、先ほどは見せなかった必死の形相で【新緑の業火】を受け止める。
バキッ、バキッバキッ......。
ローガの手の中で、音を立てて聖天反射鏡に亀裂が入りだす。
「耐えてくれ」と心の中で念じ、衝撃に耐えるローガを見てレナは口元を緩めた。
「追加っす。火風土三属性結合魔法、惨劇の爆裂風ッ!」
ローガに向けてかざしたレナの手から、巨大な魔法陣が現れた。
その魔法陣を突き抜けるように一条の光が、【新緑の業火】の後を追う。
直後、その光に沿って耳がおかしくなるほど大きな音を立てて、連鎖大爆発を起こす。
4倍の【新緑の業火】と、かろうじて均衡を保っていたローガの持つ聖天反射鏡は、続くレナの2撃目で木っ端微塵に砕け散る。
2つの強力すぎる魔法を一身に受けたローガの体は、力なく宙を舞っていた。
そして、爆炎と爆煙の中へと消えていった。
「聖天反射鏡での戦い方は、もう経験済みっす」
肩で息をするレナはユウと共闘した正門での戦いを思い出しながら、小さくガッツポーズをとる。
レナが勝利の余韻に浸っていると、突如、爆炎と爆煙の中から怒声が響き渡った。
「うがああああぁぁぁぁぁっ!」
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
今回がこの物語初の1VS1の戦闘シーンになります。
手に汗握る戦い...というよりかは、なんだかレナにゃん無双回になってしまった感が(汗
楽しんでもらえてたなら嬉しいです。
次話、ローガの超絶ハイパー本気モード炸裂!!
次のページでお会いできることを祈りつつ......。




