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オレは魔族でも魔王でもねぇ!  作者: 結城ゆき
1章 金黒眼の少年と魔法少女
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18話 奴隷にされた者の生きる意味とは?




 肩のあたりまで伸びて、くすんだオレンジの髪をした青年を解放してから、オレはまた別の檻へと足を運んだ。

 次々と捕らえられている魔族を解放していく中で、オレはある違和感を覚えた。

 解放した魔族の全員が男なのだ。

 

「あの、すみません。捕らえられている魔族はここで全員ですか?」


「......いや、奥に」


 最初に解放した青年が、部屋の奥を指さして言葉を濁す。

 彼の指に倣って視線を向けてみると、別の部屋に通じる扉があった。

 オレがその部屋へと足を踏み出そうとすると、青年が慌てたように声をかけてきた。


「あの......やめたほうが、いいかと」


「へっ!?」


 思ってもみなかった発言に困惑する。

 それから、魔族の青年は奥の部屋について説明してくれた。


 この部屋を出て長い通路を通り過ぎると、ある大きな部屋に出るらしい。

 そして、その部屋にはいくつかの扉があり、同じような大きな部屋を何度か通った先に、【儀式の間】と呼ばれる部屋があるそうだ。

 その【儀式の間】と呼ばれる部屋に女の子の魔族が1人、捕らえられているとのこと。

【儀式の間】には奴隷組織のボスらしき人物がいて、その右腕と思しき男は強力な聖法気の使い手らしく、笑いながら人を殴るような狂った人物らしい。

 青年は説明を終えると、苦虫を嚙み潰したような顔をして、再度オレに忠告する。

 

「ですから、このまま逃げ......」


「ダメだ! それだけはできない......あっ、すみません」


 オレは、魔族の青年の言葉を遮って大声を上げる。

 青年は少し驚いた表情をしたが、「いえ、大丈夫です」と手を振って許してくれた。

 

 確かにたった一人を見捨てれば、ここにいる全員は助かる可能性が高いだろう。

 しかし、オレが、オレたちがここに来た目的は、レナの友達を助けることだ。

 だからと言って、この魔族の人たちを見捨てることもできない。

 

 青年の話を聞く限り、オレが通ってきた道は裏口に当たる。

 見張りが1人と少なかった事から、普段は誰も使わないのだろう。

 

 あの見張りがカギを持っていたのは、緊急事態の時に裏道を通って行くためのものだろうか。

 答えのない疑問に(さいな)まれるが、今はどうでもいいことだ。

 それよりも、魔族が捕らえられてここで何をさせられていたのかが気になる。

 エリシアが、あんなにも深刻な顔をしてたしな。

 

「あのぉ、思い出したくないことを聞くようで申し訳ないんですが、ここで何をやらされていたんですか?」


「それは、単純な労働ともう一つ......。我々の体から魔力を抽出することです」


「魔力の抽出?」


「儀式の間にある装置で......私たちの魔力を強制抽出するのです。そして、それには......激しい苦痛が......伴う、の...です」


 当時のことを思い出してしまったか、青年の声がだんだんと小さくなり、その体はブルブルと震えだす。

 後ろでオレたちの話を聞いていた他の魔族の人たちの何人かは、彼と同じように自分の体を抱きしめ、その場にしゃがみこんでしまった。

 彼らにこれ以上話を聞くことは難しそうだと思い、これからのことを話すことにした。

 

「すみません、聞いてください!」


 オレの声に反応した解放された魔族たちは、黙って耳を傾けてくれた。

 オレは自分の考えを告げる。


「皆さんには、オレが来た道から脱出してもらいます。ここに来るまで、敵らしい敵というのはいませんでしたが、もしかしたら敵と遭遇するかもしれません。この中で、まだ戦える人はいますか? いたら手をあげてください」


 お互い顔を見合わせて「誰かいないのか?」といった感じて、誰も手をあげない。

 誰もが疲弊しきっているのは当然だ。

 もし、オレが彼らと同じような状態だったなら、他人に任せたくなるだろう。

 彼らが手をあげないことは、仕方がないことなのかもしれない。


 だが、オレは知っている。

 彼らよりも幼くして奴隷をさせられた彼女は、自分がいくら傷つこうが、辛酸をなめようが、そこから立ち上がってきたということを。

 ただ一心に、ここにはいない誰かを助けるために、彼女は今も全力で走り続けている。

 そんな女の子を、オレは知っている。


 彼らと彼女の違いはたった一つ。

 生きるための目的があるかどうかということだ。

 なので、彼らをここで責める事は間違いだし、意味の無いことだ。

 なら、彼らにも生きるため目的を与えてやればいい。

 何としてでもここから抜け出してやる、と思わせればいい。


 しかし、言うほど簡単なことじゃない。

 特にオレみたいな頭の悪い奴には、彼らに何て声を掛けていいのかわからない。

 

 彼らの生きる目的ってなんだ?

 この世の地獄を味わってきただろう彼らが、この先を生きたいと思う事ってなんだ?

 

 オレが頭を悩ませていると、辺りがざわざわしだした。

 ふと顔を上げると、オレに忠告してくれたあの青年がおずおずと手をあげているではないか。


「えっ!?」


「私、戦います。少しだけなら、魔力が戻ったので......戦えます」


 驚きをあらわにするオレに向かって、先ほどまでの虚ろな瞳ではなく、しっかりと意思を宿した眼で、青年は力強く宣言する。

 その意思が、決意が伝染したのか、他の魔族の人たちも手をあげて「俺も、俺も」と名乗りをあげだす。

 その光景にオレは胸が熱くなるのを感じながら、彼らに、彼らの想いに応えようと強く思った。

 

 オレができる事なんて、たかが知れてる。

 戦うこともできず、彼らの船頭になってやることもできないが、オレにもできる事はある。


「皆さんの勇気は十分に伝わりました。では、これから脱出するルートを説明します」


 魔族一同は、オレの話に耳を傾ける。

 

「先ほどの彼からの話を踏まえると、オレが入ってきた扉が裏口である可能性が高いです。ここに来るまで、1人の見張り以外とは誰とも会いませんでした。なので、皆さんには、オレが通ってきた道を使って脱出してもらおうと思います」


 それから、オレは説明を続けた。


 分かれ道が2つあるので、どちらも左へ進むようにと。

 その先の水路の壁に上へと続くハシゴのようなものがあること。

 工場にいたほとんどの敵は倒しているので、そこまで心配しなくていいと。


「そして、できる事なら......どこかで服を調達してください」


「「「はっはっはっ」」」


 目のやり場に困る光景を前に、オレは苦笑いでお願いする。

 そんなオレを見た魔族の人たちは、自分たちの体を見合って「確かにな」などと言って笑いだした。


「これが最後になりますが......皆さん、絶対に生きてここを出ましょう!」


「ええ、そうですね」「おっしゃ、やってやるぜ」などと、各々が想いを口にする。

 それから、先ほどの青年がオレの手を握り、勢いよく頭を下げた。


「あなたには感謝しています。本当に、本当にありがとうございました」


「「「ありがとうございました」」」


 彼に倣って他の魔族の人たちも頭を下げる。


「このご恩は一生忘れません。もし、あなたに困ったことがあればすぐに駆け付けます。いつでも呼んでください」


「いや、うん。ありがとうございます。オレは三舌悠(みしたゆう)、ユウでいいですよ」


「ありがとうございます、ユウさん。私は、サイモンと言います」


「よろしく、サイモンさん。じゃあ、お言葉に甘えて、何かあったら頼りますね」


「はい」


 それから、わらわらとオレの周りに集まってきて、それぞれが感謝の言葉を述べてきた。

 

(こ、これは、異世界物によくあるハーレムというやつなのか......)


 できる事なら、女の子がよかった。

 などと、裸の男たちに囲まれるという悪夢を直視しないように視線を斜め上へと逸らすのだった。


「ところで、一つ(うかが)いたいのですが......」


 オレが現実逃避していると、サイモンさんがオレを不思議そうに見て訊ねてきた。


「その眼はいったい......」


「あっ! こ、これは、あはははっ。気にしないでください、はっはっはっ」


 オレは片手で左の黒眼を隠しながら、笑ってごまかす。

 

 色々なことがあり過ぎてすっかり忘れていたが、オレはルミナ救出作戦が開始してから今の今まで、ずっと両眼を開けていた。

 エリシアにあれほど言われていたのに。

 幸いにも、サイモンさんはそれ以上突っ込んでこなかったので、その場は事なきを得た。

 それから表側の扉へと向かったが、どうやら内側からはカギを開けることができないみたいだ。


 レナならこんな扉、魔法でぶっ壊すだろう。

 サイモンさんたちは、オレのことを魔族と認識しているみたいだが、生憎(あいにく)とオレは、魔族じゃない。

 魔法なんてもってのほかだ。

 

 しかし、オレが魔法を使えないとわかれば、サイモンさんたちにオレの正体を勘繰(かんぐ)られる。

 まぁ、正体って言っても、ただの元ヒキコモリでいじめられっ子の人間なんだが。

 ここは彼らと同族、ということにしておいたほうがいいだろう。

 レナの一件もあるしな。


 どうしたものかと、考えていると。

 ある一つの名案が浮かんだ。


「サ、サイモンさん?」


 若干声が裏返ったが、気にせず続ける。


「魔力が戻ったと言ってましたが、これから先、どんな敵に出くわすかわからないので少し心配です。よかったら、ここの扉を壊してもらえませんか?」


「ええ、かまいませんよ。ご心配ありがとうございます」


 そう言って、サイモンさんは表側の扉を雷の魔法で、見事に破壊してくれた。


「ありがとうございます。大丈夫そうですね」


「ええ、まだまだ本調子じゃないですが、ただの人間なら何とか()れそうです」


「やれそう?......そ、そうですか。それでは気を付けてくださいね」


「はい、本当にありがとうございました」


 サイモンさんの言動に少し疑問を感じたが、あまり長居するのも得策ではないので、ここで別れることにした。




 サイモンさんたちはぺこりと頭を下げながら、オレに手を振って裏口から出ていく。

 そんな彼らの後ろ姿を見届けていると。


「あっ、そうだ!」


 そう言えば、裏口に1人、見張りがいたんだった。

 パンツ一丁で。

 

 目を覚まして襲われても困るので、見張り番の男をサイモンさんたちがいた檻に閉じ込めておこうと思い、彼らの出ていった裏口へと走っていく。

 裏口からピカッと光りが走り、次には少し熱気を帯びた光が見えた気がしたので、何かあったのかと足を速めた。

 

 オレが扉から顔を(のぞ)かせると、サイモンさんたちが小走りで地下通路の奥へと消えていくのが見えた。

 そして、オレが倒した見張り番の姿は、どこにもなかった。

 

 もしかしたら、目を覚ましてここから逃げたのかもしれない。

 オレはそう思い、表側の扉に向かった。

 



 誰もいなくなった地下水路にある鉄格子に浮かぶ衣服の側で、全身焼け焦げた人間の死体が、まるで自分の服だと主張するかのように、ぷかぷか浮いているのを、オレが知ることはなかった。






最後まで読んでいただいてありがとうございます。


これぞ腐のハーレム。

すっぽんぽんの男たちにもてはやされるなんて、想像しただけでエチケット袋必須。

そっち方面の人は(*´Д`)ハァハァものなのかもしれませんが。


「いつまでむさくるしい男しか出てこない話が続くんだよ!」

は、はい、次で、次で最後ですから。

もう少しだけお付き合いくださいませ(土下座


次話、儀式の間と呼ばれる部屋へ訪れたユウに絶体絶命の危機が!?


次のページでお会いできることを祈りつつ......。


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