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オレは魔族でも魔王でもねぇ!  作者: 結城ゆき
1章 金黒眼の少年と魔法少女
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13話 レナの実力




 オレの叫びにレナはにっこりと笑い、空に手をかざして魔法を唱えた。


火風土三属性結合魔法(トライデントコネクト)惨劇の爆裂風(エクスプロージョン)!」


 レナが手をかざした先を見ると、巨大な魔方陣が空に描かれている。

 その魔方陣に一筋の光が縦に割って入り、その光が鎧の軍勢に達した時。


 ドゴゴゴゴゴゴオオオオオオオオオオオォォオォオオオオオオン!!!


 耳をつんざくほどの爆発音がした。

 一筋の光が通り抜けた所から爆発の連鎖が起きていく。

 敵は聖天反射鏡(ミラーフォース)を盾にして必死に抵抗する。

 尋常ではない衝撃が敵たちを襲ったが、しりもちをついたり体制を崩したりしながら、レナの必殺魔法をこちらに跳ね返してきた。


 風属性が火属性を強化し、さらに土属性が魔法に耐久性を持たせるという超高位魔法。

 魔族が扱える属性は通常1つだけ。

 それを3つも組み合わせるという強すぎるその魔法を跳ね返した聖天反射鏡(ミラーフォース)

 しかし、その代償に敵の聖天反射鏡(ミラーフォース)に小さなひびが入る。


 オレたちの間を一筋の光が走り抜けた。

「来る」そう確信したオレは、聖天反射鏡(ミラーフォース)10個が入ったバックパックを前に突き出す。


 先ほど見たものとは比べ物にならないほどの大爆発が迫ってくる。

 立っていられないほどの衝撃がオレを襲う。

 踏ん張っている地面から足が離れた。


「ヤバいッ」


 耐えきれなかった。

 このままでは魔法を打ち返すことができない。

 またオレが足を引っ張るのか、やはりオレは何の役にも立たないのか。


 クソっクソっクソっクソっクソっクソっクソっ。


 浮遊感を味わいながら、心の中で盛大に己を罵る。

 しかし、唐突に感じていた浮遊感がなくなった。


「えっ!?」


「えへへへ、一緒に頑張るっすよ」


 後ろを振り返るとそこには、レナがいた。

 服は焼け焦げ、体の至る所に傷を刻んだ満身創痍のレナが、にっこりと笑ってオレを支えてくれていた。


 あぁ、オレは一人じゃない、部屋にこもってたあの頃とはもう違う。

 オレがダメでも助けてくれるやつがいる。

 一緒に戦ってくれる仲間がいる。

 オレはもう、一人じゃないんだ。


 そう思ったら自然と体に力が湧いてきた。

 衝撃で腕が飛ばされそうになりながら、必死に笑顔を作って振り返る。

 

「ああ、あいつらをやっつけよう」


「はいっす」


 オレは、持てる力のすべてを出して衝撃に耐える。

 レナも歯を食いしばりながら、必死に俺を支えていた。

 

「「ははあああああああああぁぁぁぁあああぁぁああ!!」」


 バキッ、バキッバキッと聖天反射鏡(ミラーフォース)にひびが入る。

 この時ばかりは敵の作ったアイテムに「耐えろ!」と念じ続けた。


しかし、無情にもパリンッという音が1つ、また1つ聞こえてくる。

そして何度目ともしれない聖天反射鏡(ミラーフォース)が壊れる音がして、オレはもうダメだと諦めかけたその時、オレに襲いかかっていた衝撃が無くなった。


突然無くなった力に思わず前のめりになり、レナを引き連れてコケる。

顔を上げるとそこには、元の世界でやっていた戦争映画のような光景が広がっていた。


もう耳がおかしくなったのだろう、音は遠くに聴こえて、ただただ爆炎と爆煙だけが舞い上がる。

鎧が砕け散り、敵の何人かは宙を舞っている。

地面に転がっているのは黒く焼け焦げた人。

悲痛なうめき声を上げる者、意識を失っている者、跳ね返された強大な魔法に敵は全滅していた。


敵の持つ聖天反射鏡(ミラーフォース)は全て粉々に割れていて、オレの前にコロコロとただ一つだけ無事だった聖天反射鏡(ミラーフォース)が転がってきた。


「やった、のか?」


「......みたいっすね」


 無数のうめき声が聞こえてくるので、奇跡的に死者は出ていないみたいだ。

親亀の上に子亀が乗るという格好で、オレとレナはあまりの惨劇に顔を引きつらせるのだった。




しばらくすると、別の脅威がオレを襲ってきた。

具体的には、オレの背中に当たる少し弾力のあるふわふわしたナニカ(・・・)

というか、今まで生きてきてこれだけ女の子と密着した事があっただろうか?

いや、ない。

そう断言し、そして、そんな事を思ってしまったのがいけなかった。

思春期の、ましてや今まで女の子と接点がなかった男の子が、そんな事を考えたら当然ながらとある生理現象が起こる。


オレは慌てた。

もし、コレ(・・)をレナに見られたら、今までオレに味方してくれていた優しいレナに軽蔑の眼差しを向けられる。

エリシアが見せたあの、まるでゴミ虫を見るかのような蔑んだ目を、今度はレナが?

そして、エリシアの耳に伝わったりしたら?


今度こそ殺され......ヤバい、ヤバすぎる!?

オレはこの危機をどうやって脱するかと、頭がはじけ飛ぶほど思考を巡らせた。




一方、レナもまた顔を赤らめてユウの背中にへばりついていた。

成り行きとはいえ、こんなにも異性と密着するのは初めてだった。


うれしいけど、いつまでもこうしていると変なやつと思われるかもしれない、という感じで顔を真っ赤にしていた。

 そして、レナがユウから離れようとしたちょうどその時。




 オレが考え抜いた答えは、とりあえずコレ(・・)になった原因を取り除くことだった。


「レ、レナ? ちょっとどいてくれないか? お、重い」


「お、重い、っすか......そうっすか、重いっすか。ねぇ、レナは重いっすか? ねぇねぇ?」


 レナの声はだんだと不機嫌になっていき、おまけに自分の体重をオレに押し付けてきた。

 慎ましくも少し膨らみのあるレナの胸とオレの背中から「むにゅう」という擬音が響いている。

 それに、レナが喋る度にオレの首筋にかかる吐息がかなり厄介だ。


 起きようにも起きられない。

 いや、別の所は起き出してきているけども。


「軽い、軽いからどいてくれぇぇぇぇ~」


 まだ黒い煙が立ちのぼる戦場には似つかわしくない悲鳴が轟いた。




 レナは、自分が満足するまでユウに引っ付いてたという。






最後まで読んでいただいてありがとうございます。


戦闘シーンはいかがだったでしょうか?

え? 全然物足りない?

ぐぬぬ、もっと精進します。


次話、内密に裏口から侵入するエリシアに強大な影が!


次のページでお会いできることを祈りつつ......。


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