12話 正門での攻防
ユウたちと別れたレナは、その場で静かに時を待っていた。
前を見るだけでも敵の数は5人。
工場正面にある大きな時計の長い針があと1分というところに来た。
レナは、静かに魔力を練り始める。
すると、レナの足元に緑色の気流が生まれた。
レナの足を覆うように緑の気流が纏わり出す。
【疾風の飛翔】
心の中で静かに数えた60秒も、あと10秒で作戦開始時間だ。
レナは、大きく上に向かって飛ぶ。
まるで空を翔るように空中を大きく走った。
残り5秒。
レナは両手に炎を纏わせて、工場全体が見渡せるほどの高さに上ると空中で浮遊した。
......3、2、1。
「それじゃあ、ちょっと暴れるっすよ。」
レナは静かにつぶやくと、手にまとった炎を大きくしていく。
「風火二属性結合魔法、新緑の業火!」
レナの腕から車一台は優に飲み込むほどの大きな火柱が、炎々と燃え盛る火柱の周りを緑色の気流が覆うようにして工場正面玄関めがけて突き進む。
突如、暗闇の空に明かりが灯り見張り達が空を見上げると、特大級の炎が迫ってくるではないか。
「「「!!!」」」
見張り達が声を上げる間もなく、大炎塊が爆音と共に着弾した。
見張りの何人かを飲み込んで着弾したまではよかったが、そこから竜巻状に火の粉が舞い上がり、辺り一帯の建物や人を切り裂きながら飛び散っていく。
切り裂かれた建物からは、焦げ跡も見られた。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああ!」
敵の一人が腕を抑えながら悲鳴を上げる。
切られた所から炎が上がり、切創と同時に火傷の外傷を負わすというえげつない魔法だ。
おそらく彼の左腕は、もう使い物にならないだろう。
そんなことはお構いなしに、レナは空中から急降下して手に炎を宿し、火球を連射する。
「敵襲だあああああ!」
見張りの一人がレナを指さして警告するも、直後、火球が直撃する。
「グホォッ」という声を残し、全身を黒焦げにして地面に倒れこむ。
空中を縦横無尽に飛び回るレナから、次々と火球が撃ち込まれる。
見張り番達がバタバタと倒れていく中、何人かが聖天反射鏡で反撃してきた。
「チィっ、思ったよりも早いっすね」
レナは悪態をつきながら、跳ね返ってきた火球を避けた。
これからは、全ての魔法が跳ね返されるだろう。
なんて魔族に優しくないアイテムなんだ。
これを魔族が作ったというのだから驚きだ。
作戦会議でエリシアが言った衝撃の事実。
『聖天反射鏡は魔族が作ったものよ』
確かに魔道具は魔族にしか作り出せない。
魔力という強力な力があって初めて機能する道具。
だから、人間には絶対に作れない道具なのだ。
そんな魔族が不利になるようなものを魔族が作るなんて、到底信じられない。
しかし、その謎も含め今回の奴隷騒動の解決は、聖剣姫であるエリシアに任せることになった。
自分がやる事はたった一つ、ルミナを助けることだけ。
注目されるだけなら空から攻撃し続ければいいだけだが、それでは意味がない。
レナが脅威の存在であると敵に認識させて、工場内にいる大多数を引っ張り出してこなければならない。
裏口に向かったエリシアが侵入しやすいように。
レナは魔法を放つのをやめて、見張り番をめがけて急降下した。
遠くから撃っても跳ね返されるだけなので、接近戦に出たのだ。
足に、そして手にも風魔法を纏ったレナは、まるで台風が襲来したかのように、一撃で見張り番を吹っ飛ばす。
見張り番は、高速回転しながら工場の壁に激突した。
その様子を呆然と見ていた見張り番達は、一斉に聖天反射鏡を取り出し、レナの魔法に対抗しようとした。
それと同時に、工場内から続々と敵さんが現れてきた。
全員鎧と剣を装備し、片手には聖天反射鏡を持つという完全武装。
雰囲気でわかる。
彼らはただの見張り番達とは違う、と。
レナはここからが本場だと気合いを入れ直し、地を蹴った。
見張り番達は一撃で倒せるが、鎧を着た敵はそうはいかない。
レナの攻撃を難なく躱し、手に持ったブロードソードで斬りかかってくる。
危うく腕を斬られそうになるが、手に纏った風魔法で防ぐ。
レナはそこから左足を軸に回転して、敵の頭めがけて回し蹴りをお見舞いする。
しかし、身長差からレナの蹴りは相手の胸当てに直撃した。
先程の見張り番のように回転しながら吹っ飛んでいくが、1つ違う点があった。
「くそッ、ってぇな」と悪態をつきながら立ち上がってきたのだ。
レナは慌てて火球を撃ち込むが、聖天反射鏡で返される。
威力と速度が倍加した火球を横っ飛びで回避する。
しかし、回避した火球がレナの背中に直撃した。
「ぐはっ」
背中に受けた突然の衝撃でレナの体はエビ反りになり、肺から空気が吐き出される。
突然、背中に受けた攻撃に困惑する。
しかし、その謎は後ろを振り返るとすぐにわかった。
鎧を着た敵の一人が聖天反射鏡を掲げていたのだ。
「なっ!?」
レナは、顔をゆがませて敵を見渡す。
20程の鎧軍勢が、レナを取り囲もうと陣を取り始めている。
囲まれれば、レナは終わる。
魔法を放っても返され、それを避けたとしても今みたいに背後の敵に聖天反射鏡を使われて、高威力の自分の魔法を食らうことになる。
レナは、まだ完全に包囲されていない一点を目指して走る。
風魔法を纏っているレナの速度はかなり早い。
唯一スピードだけが敵を上回っている。
「真空の斬撃波!」
レナは、敵の足元へ風魔法を打ち込む。
敵の足元に着弾した魔法は、敵に聖天反射鏡を使うことを許さず、大きな土煙を上げて敵の視界を塞いだ。
何とか敵の包囲を突破したレナは肩で息をして、鎧の軍勢をにらむ。
「ホント、厄介なアイテムっすね」
レナは小さく愚痴を言うと、敵めがけて駆け出した。
敵の足元への魔法攻撃で聖天反射鏡と視界を遮断して、敵の横っ腹を風魔法を纏った手刀で薙ぎ払う。
「うほあああっ」
悶絶の声とギギギッと金属がこすれる音をさせて敵を吹っ飛ばした。
吹っ飛ばされた敵の横っ腹からは、ぽたぽたと血が流れている。
そして、敵がレナを囲む前に大きく後退して距離をとり、また別の敵へと向かっていく。
スピードを生かした今レナができる最良の戦法、まさに一撃離脱。
「奴の手はこの鎧を斬るぞ、気をつけろ!」
敵の一人が注意を促し、またレナを取り囲むように動き出す。
今度はレナから距離をとって、大きな円を描くようにしてレナの周りを固めていく。
レナも必死に包囲されないようにと走るが、残念ながら工場という建物によって逃げ道を阻まれた。
敵は工場を背にするレナを半円状に囲み、じりじりと距離を詰めていく。
追い詰められたこの状況を突破するには、飛行魔法【疾風の飛翔】を使うしかない。
レナは足に風魔法を纏わせ始めると、それを見た敵の一人が持っていたブロードソードをレナに向かって投擲した。
「やらせるかよっ」
「チィっ」
レナは横っ飛びで難なく回避するも、その一投で敵が一斉に襲ってきた。
矢次に降りかかってくる剣の嵐を必死に回避するが、完全にはよけきれずレナの体に切り傷が刻まれていく。
たまらず【火球】を打ち込むが、聖天反射鏡で難なく跳ね返されてレナを襲う。
「がはっ」
レナは何とか直撃は避けたが、倍の威力で返ってきた【火球】が後ろの壁を粉砕し、その爆風で大きく飛ばされてしまう。
運よく包囲網を抜けることはできたが、かなりのダメージを追ってしまった。
このままではやられてしまう。
そう思った矢先、彼の叫ぶ声が聞こえた。
「レナあああああああ、撃てええええええええええぇぇえええ!」
レナは胸が熱くなるのを感じながら、にっこりと微笑んで空に向かって腕を伸ばす。
「火風土三属性結合魔法、惨劇の爆裂風!」
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
「ルビ祭りですね(笑)」
はい、そうですね~。
ルビは中二病を患っている者にはご馳走なのです。
魔法や必殺技のルビを振る楽しさにこそ中二病の根源と言っても過言ではない(キリッ)
次話、ユウが戦場で悲鳴を上げる!?
この度のパソコンぶっ壊れという非常事態でも、たくさんの人が応援してくださり、また執筆できるところまで来れました。
本作品をツイッターで拡散してくださる心優しき方々。
およそ2か月ぶりの更新という長い期間にもかかわらず、待って下さった読者様。
サクサク動くパソコンをご厚意で譲っていただいた神様。
本当に、本当~~~~~~に感謝しています!
それでは、次のページでお会いできることを祈りつつ......。




