11話 作戦開始
ラビリンス通りをしばらく走ると、とある大きな建物が見えてきた。
気の遠くなるほど横長で、高さも大型重機が楽々入るくらいはある。
一見すると巨大な倉庫のように思えるが、工場らしい。
正面の壁には大きな時計が設置されていて、屋根からは闇夜の色とは対照的にもくもくと白い煙が出ている。
オレたちは、工場の正門が見える位置の近くにある物陰に隠れた。
当然のように、見張りが何人もいる。
エリシアが決然とした表情で、ルミナ救出作戦の第一段階を始める合図をする。
「ここからは手はず通りにお願い」
「わかった」
「了解っす」
オレとレナも表情を引き締め、作戦に移る。
「それじゃあレナちゃん、ユウが来るまで踏ん張ってね」
「任せるっす」
「レナ、すぐに行くからな」
「はいっす」
オレとエリシアは、決意に満ちた顔をしたレナを残してその場を後にした。
「はぁ、はぁ、はぁ」
レナと別れたオレは、エリシアに振り切られないように全力で走っている。
肺が潰れそうだ。
吐き出しても次から次へと口に唾がたまる。
おそらくオレにペースを合わせてくれているのだろうが、エリシアのスピードはかなり速い。
それでも、ここでオレがへたばったら全てが失敗に終わる。
エリシアの力になりたい。
レナの笑顔が見たい。
オレはその一心で走り続けた。
ようやく工場の裏口にたどり着いた。
オレはスマホの時計を確認する。
何とか間に合った。
「エリシア、あと1分だ」
「わかったわ」
作戦の第一段階は、工場正門でレナが大暴れをして、敵の注意を正門側へ向けるのが目的だ。
注意が薄くなった裏門でエリシアが隠密に残る敵を一掃し、聖天反射鏡をできるだけ多く手に入れる
オレはそれをレナの元へと届ける。
オレの到着が遅れれば遅れるほどレナの身が危険にさらされる。
ここからが本場、失敗は許されない。
自然と手に力が入る、さっきから心臓がやけにうるさい。
ゴクリと生唾を飲み、手元のスマホに目を向ける。
......56、57、58、59、
「「「作戦開始!」」」
ドゴオオオォォオン!
正面入口の方で特大の爆発音がした。
黒い煙がもくもくと上がっている。
レナの火炎魔法だろう。
「敵襲だ!」「中の者を起こせ!」「正面から来たぞ!」と言った声が聞こえてくる。
突然の襲撃に敵さん達は、混乱しているようだ。
裏門の見張りをしている敵達も動揺を隠しきれず、それぞれが神妙な顔をしている。
しびれを切らした見張りの1人が隣の者に話しかける。
「なあ、俺達も行った方がよくないか?」
「でも、勝手に持ち場を離れるのはダメだろ」
「けど、敵だとか叫んでたぞ? ここに攻め込んでくる奴なんて初めてだよな」
「確かにそうだな。よし、じゃあお前見てこい。1人くらいいなくなっても平気だろうし」
「へへっ、じゃあちょっくら行ってくるわ」
見張りの1人が陽動に引っかかってくれたが、今、視認できる限りでも5人はいる。
「結構残ったなぁ、エリシア、大丈夫か?」
「見たところ普通の人達ね、なら、問題ないわ」
相手が魔族や聖法気使いではない限り、エリシアの事は心配しなくて大丈夫だろう。
なら、オレはオレでしっかり仕事をしなくちゃな。
オレが気合いを入れ直している間にエリシアが動く。
【天使の羽衣】
エリシアの体が白く光ったと思えば、もうそこにエリシアはいなかった。
バタンッ。
見張りがいた所から突如、変な音がした。
見ると、見張りが1人倒れているではないか。
他の見張り番もそれに気づき、何事かと倒れた者に近寄ろうとすると。
白い閃光が走った。
次の瞬間には、また1人見張り番が倒れていた。
他の見張り達も異変に気づくが、もう遅い。
彼らが何か行動する前にはもう気を失っている。
そして、見張りが最後の1人になったところで、ようやくエリシアの姿を捉えることが出来た。
見張り番の背後に立ち、右手を振りかぶり手刀を当てる。
首に手刀がクリーンヒットした見張り番は、なす術なく地に倒れる。
ものの数秒で見張り番の全てを戦闘不能にしたエリシアに戦慄を隠せない。
これからは、エリシアをからかうのはやめておこう。
オレは心からそう思った。
「ユウ、これを......」
エリシアは倒した敵の懐から聖天反射鏡を取り出し、オレに渡してくる。
運良く倒した敵全員が聖天反射鏡を持っていたので、オレはそれをバックパックに詰め込んでいく。
「たった5個で大丈夫か?」
「大丈夫よ、レナちゃんのところでもある程度回収できると思うし」
「要は使いようってことだな。じゃあ行ってくる」
「気を付けるのよ」
「エリシアもな。みんなで無事に帰って祝杯をあげようぜ」
「ふふっ、ええ、そうね」
オレたちはそれぞれの作戦についた。
オレは、来た道を全力で走る。
行き道の全力疾走がここに来てかなり堪えている。
足が重く腕が上がらない。
肺がひしゃげそうだ。
前方では、今もなお激しい爆撃音が鳴り響いている。
レナはまだ無事のようだが、大丈夫だろうか。
早くこれを届けないと、レナの身が危ない。
こんなことなら、もっと鍛えておくんだった。
「クソッ」
この時ばかりは、怠惰な生活を送っていた自分を呪う。
爆音がだんだんと大きくなってくる。
もう少しで正門に着く。
少し大回りして、物陰に隠れて中で行われている戦闘の様子を見ると、アクション映画のワンシーンを見ているかのような情景がオレの目に飛び込んできた。
建物の正面玄関は半壊状態で、壁には無数の亀裂が入っていた。
工場内のいたるところで炎と黒い煙が上がっており、砂塵が舞って視界が悪い。
そんな中を縦横無尽に走り回って、白銀の髪を躍らせながら魔法を放つ美少女は疲労の色が隠せない。
「レナ......」
険しい顔をして肩で息をするレナを見て、思わず名前をつぶやいた。
レナの周りには、数十人の敵が横たわっている。
今、敵はレナ一人にしか注意していない。
なので、オレがレナから一番遠くにいる倒れている敵の元へ歩み寄り、その懐を漁っていても誰も気づかない。
レナが頑張っている今、オレが出来ることはなるべく多くの聖天反射鏡を回収することしかない。
10個目の聖天反射鏡を回収した直後、レナがものすごい勢いでこちらに飛ばされてきた。
オレはとっさに地面に横たわり、やられた敵にカモフラージュする。
地面に顔を付け、レナのほうを見ると苦渋の顔をしている。
そのレナに何十人もの男が剣を振りかざして襲い掛かろうとしている。
「ここらが限界か......」
オレは回収した10個目の聖天反射鏡を手に、レナの元へ走った。
「レナあああああああ、撃てええええええええええぇぇえええ!」
そして、作戦の第二段階の――レナの全力魔法攻撃を放つ――合図を叫ぶ。
手に入れた聖天反射鏡を利用するために。
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
突然ですが、パソコンが壊れてしまい執筆が思うように進まなくなりました。
すごく中途半端ですが、しばらく更新停止します。
楽しみにしてくれている人には本当にすみません。
しばらく読み専になり色々勉強しようと思います。
先日、心優しき神さまからの贈り物でパソコンが手に入りました。
更新停止期間中に僕のTwitterをフォローして下さったの作品を読み終えたら、更新し始めます。
おそらく2月末あたりから3月始めくらいになります。
次話、レナの華麗な戦闘シーンが見れる...のか!?
次のページでお会いできることを祈りつつ......。




