9話 ルミナ救出作戦
オレは、懇切丁寧にエリシアたちから説明を受けた。
馬鹿なオレもようやく理解できた。
エリシアが請け負った任務とは、人間領であるこのドルベルの街に魔族が秘密裏に集結しているという噂の調査だ。
そこで出会ったのが人間に奴隷にされていた魔族の女の子。
そのアジトには多数の魔族がいるということをレナが確認している。
だから、魔族が集結しているというのは、そのアジトに奴隷として集められた魔族を指しているのではないかと推察したらしい。
ならば、エリシアはその奴隷の実態の調査をするため、奴隷商のアジトを知っているレナにその場所を教えてもらうのを交換に、レナは友達であるルミナ救出を聖剣姫であるエリシアに手伝ってもらおうということで話が進んでるようだ。
それに、エリシアは人間が魔族を奴隷にするということをかなり重要視しているようだ。
その鍵をになっているのが『聖天反射鏡』。
エリシアによるとそんな魔道具は聞いたことが無いそうだ。
超レアアイテム、この世界の情勢を変えてしまうかもしれない程の代物。
「そんな便利な魔道具があれば、今頃、騎士団は戦いを圧倒的有利にすすめることができたでしょうね」
「聖天反射鏡がある限り、レナはほとんど役に立たないっす。聖剣姫さんに全ての負担がかかるっす......」
下を向くレナにエリシアは得意気に言う。
「あら、そんなことないわよ。魔道具って言うのは魔族が作った道具なのは知ってるわよね。魔道具に注ぎ込める力は製作者の魔力ということになるのよ。レナ...さん、がその製作者の魔力を上回る力で攻撃すればいいだけよ。それに道具は道具、いつか必ず使用限界を迎えるわ」
「なるほどっす。でも、レナの魔力じゃ聖天反射鏡を壊すのはキツイっす」
たしかにレナの言う通りかもしれない。
相手は何十人もいるんだ、聖天反射鏡を使われる度に全力の力を出していたら、レナのほうが先に力尽きてしまう。
しかし、そんなことは百も承知とばかりにエリシアは続ける。
「だ・か・ら、私達も聖天反射鏡を使えばいいのよ」
「「えっ?」」
どういうことかよくわからないオレとレナは目を丸くする。
エリシアは「何でこんなことも気づかないの?」と言った顔で答えてくれる。
「そもそも、聖天反射鏡は万能じゃないわ。この効果は相手の魔法を2倍にして跳ね返すというものよね。なら、こっちもその跳ね返ってきた魔法を聖天反射鏡で跳ね返してやれば4倍の威力で相手に跳ね返ることになるわ。それでも跳ね返されたら、こちらももう一度跳ね返せばいいだけのこと。消耗品である道具はいつかは壊れる。最初に攻撃を加えている分、相手の聖天反射鏡の方が耐久値は低くなるわ。」
「たしかにそうっすね。気づかなかったっす。さすが聖剣姫さんっす。あと、レナのことはレナでいいっすよ。」
「ふふっ、ありがとう。私のこともエリシアでいいわよ」
2人は、ルミナ奪還に希望が見えたのか、かなりはしゃいでいる。
最初、魔族は敵だとか言ってたのはどこの誰だったか。
でも、これならレナの魔法も通用するはず。
まぁ、アジトの場所がわかっているんだから奇襲攻撃で聖天反射鏡の1つや2つは簡単に手に入るだろう。
だが、それでも問題は山積みだ。
まず第一に、人数差が圧倒的すぎる。
相手は少なくとも50人はいるだろう。
それに対して、こっちは3人しかいない。
そのうちの1人は数時間前まではヒキコモリの元いじめられっ子である。
そもそも、ケンカした記憶も遠い昔。
実質的にエリシアとレナの2人でなんとかしないといけない。
やる気になってる2人には非常に申し訳ないが。
「な、なぁ、エリシア、盛り上がってるとこ悪いんだが......レナも、すまない。オレは...戦力にならない」
オレはエリシア達に目も合わせられず、ただ頭を下げることしかできなかった。
オレだってレナの友達を助けたい。
レナに笑顔になってほしい。
どこの誰だかわからないオレを面倒見てくれているエリシアの力になりたい。
でも、力のないオレが敵のアジトに向かったところで足手まといにしかならない。
無力な自分に腹が立つ。
歯を食いしばり、自然と握った拳に力が入る。
そんなオレの手をレナは優しく包んでくれて。
「その気持だけで十分っすよ」
「......」
レナは本当に優しい子だ。
悔しさと情けなさで目が熱くなる。
だが、そんな少し感動的な雰囲気をエリシアが真顔でぶっ壊す。
「何言ってるの? ユウにもきっちり働いてもらうわよ?」
「へ?」
「へ? じゃないわよ。ユウには重要な役割があるんだからね♪」
エリシアはそのキレイな顔で黒い笑みを浮かべている。
役、割...。
何かすごくヤバそうな予感がする。
それからオレたちはルミナ救出の準備に取り掛かった。
いろいろな準備をすること5日。
結局オレたちはレナの隠れ家で寝食を共にした。
エリシアが買い出しを、レナが食事などの家事全般をやり、オレは...非常に肩身の狭い思いをしていた。
料理なんてカップ麺くらいしか作ったことがないし、洗濯機のないこの世界での洗濯のやり方なんて知らないし、掃除をするほど散らかっていないし。
部屋から一歩も出ずに、ただ、ご飯を食べて、寝るという、元いた世界での生活を再現する形で過ぎていった。
ルミナ奪還作戦の当日、オレたちは奇襲攻撃に向けて、まだ日が昇らない薄暗い街を静かに駆け抜けるのであった。
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
アニメやマンガの世界ではご都合主義がよく働いてくれますが、現実はなかなかそうはいかないものです。
誰かの力になりたくても、自分の無力さに嫌気がさすことも多々あります。
エリシアのように前向きにとらえることのできる人は本当に強い人です。
その前向きさはうらやましいです。
レナのように心優しい子がいるなら、その人は絶対に大切にしましょうね。
僕にとってはここまで読み進めてくれたあなたが大切な人です。
「オエー~~~オロロロロロロォォ」という声が聞こえてきたような(汗)
次話、本編......には入らず、ちょっとした番外編です。ユウがまた死のピンチに!?
次のページでお会いできることを祈りつつ......。




