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オレは魔族でも魔王でもねぇ!  作者: 結城ゆき
1章 金黒眼の少年と魔法少女
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5話 聖剣姫様はお人好し?




 ユウがエリシアをからかって、追いかけて、それから......。


「み、見失ってしまったわ。まさかこの私から逃げ切るなんてね」


 少し驚き交じりでつぶやくエリシアは、盛大にため息をつく。


「はあぁっ、まぁ仕方ないわね、ここに入られちゃ。これから、どうしようかしら」


 あの男を放っておいて特務(・・)取りかかろうか、それとも、捜し出して大人しくさせようか。

 どちらにしても、面倒な人に出会ってしまったと顔に手を当てて項垂(うなだ)れる。。


 しかし、その反面エリシアはどこか嬉しそうだった。


(でも初めてかしら、私とまともに喋った男の子は)


 そんなことを思っていると、ふと昔の事を思い出していた。



 ■■■



 エリシア・シュペッツボルク。

 シュペッツボルク家に生まれた一人娘。

 シュペッツボルク家は代々聖十字騎士団師団長を務めてきた名家だ。


 女であろうと関係なく、幼少の頃から剣の鍛錬に始まり、名家としての作法など、貴族としての教えを一心に受けてきた。


 エリシアを相手にするのは皆大人で、同年代の子供たちと遊んだ記憶はない。

 最年少で騎士団入りしたエリシアを待っていたのは、(みにく)い大人達の嫉妬(しっと)だった。

 師団長のコネ入団だの貴族の特権だのと、何かにつけて好奇の目にさられてきた。


 だからエリシアは努力した、戦争で敵を倒して倒して倒しまくって。

 気づけば聖剣姫と呼ばれるようになっていた。


 騎士団にも民衆にも()それられるようになり、私と同年代で普通に話す人は他の聖剣姫と剣聖(あのバケモノたち)くらいだ。



 ■■■



「ねぇねぇ、あの騎士団のお姉ちゃん、さっきから何か言ってるよ?」


「こらっ、いいからこっちに来なさい」


 唐突に聞こえてきた親子の会話で、エリシアは我に返った。

 羞恥で全身が熱くなり、すたすたと歩き始める。


「もぅ......」


――特務、それは国王を含めた8人の権力者(ロイヤルエイト)から下される強制任務である。

 主に、騎士団の団長や師団長に課せられる。


 しかし、エリシアたちの代の師団長、その内4人の女騎士はケタ違いの力を持っていて、師団長統括という新たな地位を授かった。

 師団長統括、通称『聖剣姫』。

 この役職が出来てから、特務は団長と聖剣姫たちに下されることが多くなった。


 聖剣姫であるエリシアも、とある特務を受けて動いているのだが、少々(・・)面倒な人と関わってしまったみたいだ――。


 特務は絶対遵守だけど、今彼を放っておくのは得策ではないわね。

 万が一彼の素顔を見られてしまったら、彼を連れてきた私にまでに面倒事が降りかかる。

 そうよ、私のため、私のためなんだから。

 決して彼の身が心配とかじゃないんたから、うん。


 エリシアは拳を握りしめて何度も心に言い聞かせる。

 

「それにしても、こんなに早く使う事になるとは思わなかったわね」


 エリシアがユウに渡したローブには聖法気が込められていて、魔力や聖法気を探知できるエリシアにはその位置がわかるという簡易的な魔法具(マジックアイテム)になっている。

 目を閉じて自分の聖法気の位置を円状に探索する。


 ―――......。


 20M、40M、60M......。



 ドゴォン!



「! な、何?」


 突然、ラビリンス通りから爆音が聞こえてきた。

 意識を音のする方へ向けると、わずかながら魔力を感知した。


「魔族!? まさか本当に......」


 エリシアが請け負った特務は、人間領に魔族が秘密裏に集結してるという噂の実態調査だった。


 何かすごく嫌な感じがする。

 感知した魔力の近くに自身の聖法気も感じ取ってしまったのだ。


(まさか、ユウは魔族の仲間?)


 エリシアは初めてユウと会った時のやり取りを思い出していた。

 いや、あの時のユウの言葉に嘘はなかったと、彼の必至な眼差しを思い出す。


(じゃあ、魔族集結の噂は本当だった?)


 気づけばラビリンス通りへ走り出していた。

 ユウに渡したローブからわずかに感じる聖法気を頼りに、右へ左へとラビリンス通りを進んでいく。


 途中で人相の悪い3人組の男達に出くわした。

 1人は全身焦げていて、足を引きずっている。


「何があったの!?」


「ぅぇ!? 騎士団っ......あっ、ああ、騎士様、大丈夫でございます」


「大丈夫って、全身やけどしてるじゃない」


「へえ、なので早く治療しに行かないといけませんので」


 そう言って男たちは、早々に話を切り上げて去っていった。

 エリシアは彼らの行動に少し引っかかりを覚えたが、今感じている魔力と自分の聖法気の位置が限りなく近くにいる事の方が気がかりだったので、そのまま彼らを見送り、また走り出した。


「ユウ、無事でいてよ......」


 無意識的につぶやいて、走るスピードも早まっていく。


 しばらくすると、戦闘があったと思しき場所へとたどり着いた。

 壁は焼けていて、辺りが焦げ付いている。


「火属性の魔法......。さっきの男たちとの戦闘かしら?」


 !?


 辺りの状況を調べていると、突然魔力が感じられなくなった。

 おそらく結界的な魔法を使ったのだろう。

 同時に自身の聖法気も感知しづらくなってしまった。


「まさか、連れ去られたの!?」


 思わず声を上げてしまう。

 それから、より一層集中して自身の聖法気の位置を探る。


 ............いたわっ!


 かなり距離が離れてるけど、捉えきれない場所ではない。


(急がないと)


 まだ出会って間もないけど、悪いやつじゃないし。

 何より、人間が魔族に殺されるのは聖十字騎士団として、絶対に阻止しなければと心に誓う。


「ユウ......」




 エリシアは何の変哲もないただの裏路地にある壁の前に立っていた。

 この中から、ユウに渡したフーデッドローブの聖法気を感じる。

 それに、知覚しにくいが認識阻害の魔法も感じる。

 

(普通の人は見逃すかもしれないけど、相手が悪かったわね)


 エリシアは腰に挿してある剣を抜いて突入しようとした。


「見つけたわよ。......なっ、何!? 何なのこの魔力は!」


 今までに感じたことのない強大過ぎる魔力に身が(すく)む。

 戦場で何度か対峙したことがある魔族大元帥すらをも凌駕(りょうが)するほどの魔力。



――魔族大元帥は魔王の次に魔力が高い4人の魔族、魔王の側近のことを指す。

16年前に魔王が死んでからは、彼らが最強の魔族となり、人間たちに猛威を奮ってきた。

しかし、人間が聖法気を手にしてから数年、聖剣姫たちが彼らと拮抗する力を持つようになる――。



 この魔力はヤバい。

 エリシアの手に負える相手ではない。

 もしかしたら、ここが魔族が集結しているアジトかもしれないという疑念。

 連れ去られたかもしれない、魔力の全く感じられない金黒眼の男の子の安否。

 

 壁に抜刀したままいること数秒、彼女の持つ剣が小刻みに震えている。

 それに気づいた彼女は「ははっ」と笑みを浮かべて、震えが止まるのを待った。

 

(大丈夫、私ならできる。絶対にできる)


 エリシアは震える心に何度も言い聞かせ、一度深い深呼吸をする。


「すーっはああぁ。ユウ、無事でいてよ!」


 エリシアは覚悟を決めて中へ突入しようと剣を振り上げた。

 しかし、次の瞬間に、先程までのデタラメな魔力がまるで最初から何もなかったかのように消えた。


「はあ!? どういう、こと?」


 中で一体何が起こっているのか?

 何が何だか全く分からない。

 

(とりあえず、中に入ってみなきゃわからなさそうね)


 もう一度剣を振り下ろして、結界魔術にぶつける。


「はあああああっ!」


 エリシアの聖法気を(まと)った剣は、凄まじい威力で結界魔術をあっさり破る。

 そして、そこにはドアがあった。

 そのドアを蹴破って中へ突入する。


 ドカンッ!


「ユウ無事? さっきの魔力はいったい何? ここで何が起こっ、てる......の?」


 エリシアが見た光景は、想像の斜め上を行くものだった。






最後まで読んでいただいてありがとうございます。


本編から少し横にずれたエリシアのストーリーです。

エリシア視点で書き進めていたのですが、一人称がめちゃくちゃ難しくて完成したやつを書き慣れている三人称に変えました。

女の子じゃない僕に女の子の一人称はハードルが高すぎたみたいです。

......もっと勉強します(白目)


次話、ユウとエリシアの感動?の再会が待っている!


次のページでお会いできることを祈りつつ......。

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