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『おい! お前はいったい何しに来たんだ』
『奪衣婆…… さん…… 』
見るとそこにはいつのまにか涼太があの世で逢った川越さんと呼ばれる奪衣婆が姿を現していた。
『なんで奪衣婆さんが? 』
『お前がこういう事をしないかと閻魔大王様が心配されていたんだが、まさかその通りになるとはな』
『おい!日前宮よ、安心しろ、コイツは私が監視しておく』
「ど、どなたか知りませんがどうも…… 」
小夏がトイレから出てくると、ワンルームの部屋の真ん中に置かれた小さな折り畳みのテーブルに涼太と奪衣婆は座っていた、いや座るように身体の裾の部分を折り畳んでいた。
「あ、あのぅ…… あなたは?」
『奪衣婆さんだよ』
『お前さっきからヒトの事を " 奪衣婆 "" 奪衣婆 " って、私には川越千里という名前があるんだからな、ババア呼ばわりするな! 』
『えっ!? 川越さんってババアじゃないんですか? 死んでるから見た目は年を取らないけど実は三百歳とか、そういうアレじゃないんですか? 』
『はぁ? 私はまだ24歳だ、 " 奪衣婆 " ってのは職業名であって別に私の名前では無い』
『へぇ…… 俺達の一個上なんだ、それにしては老け…… 』
バシッ!
『痛ってぇ! 』
『余計なことを言うな! それに私はまだ…… いや、どうでもいい』
奪衣婆の千里は何かを言おうとしたが思い直し口を噤んだ。
「で? 私はいったいどうなるんでしょうか? 」
『気にしなくていいぞ、普段の生活をしていろ』
「そう言われましても…… 」
『おっ、そうだ良いモノをやろう、そこの引出しを開けてみろ』
小夏は千里に言われるままいつも使っている小さなドレッサーの引出しを開けてみた。すると中には明らかに小夏のものではない小さな朱色の布の袋が入っており、その中には黒い手鏡が入っていた。
「鏡? 」
『そうだ、さっきみたいにコイツが邪魔な時はその鏡を出して上を向けて置いておけ、そうすれぱ半径5メートル位の範囲内にはコイツは入って来れなくなる』
「だったらずっと出しておくようにします」
『まあそう言うな、コイツももしかしたら役に立つことがあるかも知れんし、そこまで悪い奴でもないと思うぞ』
「はぁ…… 」