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病院に着いた涼太だったが肝心の自分の身体がどこにあるのかが分からず院内をうろうろと彷徨っていた。するとちょうど廊下の長椅子に母親が座っているのが遠くから見えた。


母親の美和子は近寄る涼太に気付く訳もなくただ呆然としているだけだった。


『母ちゃん…… 』


普段は定職にも就かず好き勝手やってる涼太を厄介者のようにしか扱わない美和子だったが、そこにあったのは正しく我が子を心配する母親の姿だった。


「美和子! 」


やって来たのは父親の和樹だった。


「涼太は? 涼太はどうなんだ? 」


和樹もまた普段は涼太に対しては渋い顔しか見せないが、慌てて職場から駆けつけたのだろう、ワイシャツの背中には中に着ているタンクトップの形がくっきり分かる程の汗をかいている。


「怪我はどこにも無いの、脳波とかにも異常は見当たらないんですって、ただ…… 意識が戻らなくて…… 先生の話だとすぐに戻ることもあれば、一年や二年、それ以上戻らなくてある日突然戻るなんてこともあるそうで…… 」


「涼太…… 」


『父ちゃん、母ちゃん、ごめんよ心配ばっかり掛けて、俺絶対元に戻ってみせるから! そしたらちゃんと就職して安心させてやるからよ! 』



~~~~~~



「ふうっ、さっぱりした~ 」


涼太が居なくなったあと小夏は一気に疲労感に襲われ、スーツのままベッドの上で一時間程寝てしまっていたらしく、目を覚ましてからシャワーを浴びたところだった。


『ちわっす』


「うわっ! なんで居るのよ! 今日は帰るって言ってたでしょ!? 」


『そうも言ってられなくてよ、俺も色々忙しいんだよ、期限もあるし』


「知らないわよそんなこと」


『なあ、それよりこれ見てくれよ、ほら』


涼太はそう言うと両手で頭を掻き始めた。すると元々半透明だった涼太の身体は、だんだんと透明度を増して遂には完全に見えなくなってしまった。


そして涼太の居た場所からパシッ パシッ という音が聞こえたかと思うと、今度は徐々にその姿がはっきりと分かるようになってきた。


『な? 』


「な? って別にそれがどうしたの? 」


『さっき偶然気付いたんだよ、凄くねえか? こうやって頭を掻くと消えて、ほっぺたを叩くと見えるんだぜ! 』


「どっちにしろ他の人には見えてないんだから意味無いでしょ? 」


『ニヤニヤ』


「はっ! あ、あなたいつからこの部屋に居たの? …… 」


『いつから? って…… 今だよ、今』


「嘘よ! あなたその能力使って私がシャワー浴びてる所覗いたでしょ!?」


『んなことしねえよ! 』


「嘘だ! 絶対見た! だってさっきからやたらとニヤニヤしてるんだもん! 」


『だ~か~ら~、どうせ見るんだったらお前みたいな貧乳Aの裸なんかじゃなくて銭湯でもどこでも行ってナイスボディな綺麗なお姉さんの裸でも見るわ! 』


「ま、まあ確かにそう…… ? ってなんで私がAカップって知ってんのよ! ってかBですから! 」


『そりゃ無理してBのブラ付けてるだけじゃねえか! 』


「ひっどーい! やっぱり覗いてたんじゃない! 警察呼ぶわよ! 」


『残念ですが警察にも俺の姿は見えないだろうし頭が変な奴だと思われてオシマイだろうな』


「ギギギ…… 」


『おい? どうしたんだよ? 』


「ト、トイレに…… 行き…… たい…… 」


『は? 行って来いよ』


「出て行ってよ~ 」


『ったく、しょうがねえなぁ、じゃあ結界の作り方教えてやるよ』


「結界? 」


『ああ、結界を張っとけば俺達みたいなのはそこに入れないからよ』


小夏はトイレに入ると涼太に教わった通り、急いで東西南北に向かって印を結んだ。


「本当にこれで入って来れないんでしょうね? 」


『…… 』


「…… …… …… そこっ!」


『ギクッ 』


「居るわね? 」


『…… 』


「やっぱりデタラメじゃないの! ちょっと本当に出て行ってよ! もう! 」


『おい』


もう駄目だと小夏が諦めようとしたその時、二人しか居ない部屋に突然女性の声が聞こえたのだった。

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